日本人男性の遅漏有病率/日本性機能学会

提供元:ケアネット

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公開日:2025/10/20

 

 日本性機能学会 臨床研究促進委員会が実施した、日本全国の一般男性を対象にした大規模インターネット調査で、性交経験のある男性における遅漏(Delayed Ejaculation:DE)の有病率は5.16%であることが報告された。有病者の58.18%が治療を望む一方、実際に医療機関を受診したのは11.88%に留まり、潜在的ニーズとの乖離が明らかになった。順天堂大学医学部附属浦安病院・泌尿器科の白井 雅人氏らによる本研究結果はSexual Medicine誌2025年8月号に掲載された。

 研究者らは2023年5月29日~6月24日、20~79歳の日本人男性を一般パネルからリクルート、有効回答6,228例のうち性交歴のある5,331例を解析した。DEは「遅漏に関する苦痛の自覚がある」場合と定義し、多変量ロジスティック回帰で関連因子を同定した。

 主な結果は以下のとおり。

・DEの有病率は5.16%(275/5,331例)であった。このうち1.73%(n=92)が軽度遅延射精に分類され、3.43%(n=183)が重度遅延射精の基準を満たした。
・DEの有病率は年齢とともに有意に減少した。
・DEに関連する苦痛を訴えた参加者のうち、58.18%が治療を希望したが、実際に医療専門家へ相談したのはわずか11.88%にとどまった。
・遅漏リスクにおける、独立関連因子は以下のとおりだった。
 -向精神薬使用/オッズ比(OR):2.41(95%信頼区間:1.68~3.47)
 -骨盤外傷/OR:2.39(1.18~4.84)
 -パートナー関係満足度の低さ/OR:2.27(1.57~3.29)
 -勃起障害(ED)/OR:2.04(1.53~2.70)
 -神経疾患/OR:2.02(1.10~3.69)
 -肥満/OR:1.51(1.15~2.00)
 -自慰頻度の高さ/OR:1.24(1.15~1.33)
 -性交頻度の高さ/OR:1.17(1.10~1.24)
・子供がいることは遅漏リスク減少に関連した(OR:0.57)。
・遅漏有病者の内訳は生涯性遅漏(LDE)1.73%、後天性遅漏(ADE)3.43%で、サブ解析の結果、LDEはADEより若年で自慰頻度が高く、ADEはED合併、パートナー関係満足度の低さ、主観的性欲低下がより目立つ傾向を示した。

 研究者らは「DEは心理・関係性・身体要因が交錯する多因子性の障害であり、EDとの併存や向精神薬、神経疾患、肥満、骨盤外傷などの医学的背景に留意が必要となる。問診では薬剤歴(とくにSSRI等)と外傷歴、関係満足度を系統的に確認し、ED評価を含む包括的アセスメントを行うべきである。若年層での有病率の高さは、挙児希望に伴う苦痛の顕在化や性活動様式の影響が示唆される。治療希望者は多いが実際の受診は少ないため、啓発と受療行動の促進、相談しやすい導線づくりが課題である。薬剤調整、カップル介入、性行動の再学習(自慰スタイルの修正を含む)など、多職種・個別化アプローチが推奨される」とまとめている。

(ケアネット 杉崎 真名)