双極症患者は、一般集団よりも自殺率および死亡率が高いことが知られている。韓国・Korea University College of MedicineのSol A. Park氏らは、同国の双極症患者におけるリチウム、バルプロ酸、非定型抗精神病薬の長期投与が自殺企図および自殺に及ぼす影響を検討した。Journal of Affective Disorders誌2026年1月1日号の報告。
研究チームは、2002〜20年に双極症と診断され、リチウム、バルプロ酸、カルバマゼピン、非定型抗精神病薬(リスペリドン、クエチアピン、オランザピン、アリピプラゾール、ziprasidone)を2回以上処方された韓国人患者4万4,694例(平均年齢31.09±9.81歳、女性58.07%)の医療保険請求データを用いて分析を行った。各薬剤の投与期間中の自殺企図および自殺リスクの評価にはCox比例回帰を用いた。
主な結果は以下のとおり。
・リチウム単独投与(ハザード比[HR]:0.608、95%信頼区間[CI]:0.434〜0.852)およびバルプロ酸単独投与(HR:0.740、95%CI:0.577〜0.949)における自殺リスクは、リチウム、バルプロ酸、非定型抗精神病薬を併用しない場合と比較し、それぞれ39.2%および26.0%の減少が認められた。
・個別分析では、リチウムと非定型抗精神病薬を併用した場合の自殺リスクは0.154(95%CI:0.055〜0.428)であった。
・リチウム、バルプロ酸、非定型抗精神病薬を併用した場合のHRは0.235(95%CI:0.056〜0.980)であった。
・バルプロ酸単独投与のHRは0.251(95%CI:0.090〜0.698)、バルプロ酸と非定型抗精神病薬を併用した場合のHRは0.302(95%CI:0.152〜0.599)であった。
著者らは「リチウム単独またはバルプロ酸単独投与による治療中に、双極症患者の自殺リスクは減少した。自殺リスクの高い双極症患者において、非定型抗精神病薬はリチウムまたはバルプロ酸と併用した場合の自殺リスクの減少と関連していた」としている。
(鷹野 敦夫)