医療一般|page:1

青年期統合失調症患者に対するブレクスピプラゾールの長期安全性

 米国・Evolution Research GroupのSarah D. Atkinson氏らは、青年期統合失調症の維持療法として非定型抗精神病薬ブレクスピプラゾールを使用した際の長期的な安全性および忍容性を評価するため、24ヵ月多施設共同単群オープンラベル試験を実施し、その中間解析結果を報告した。JAACAP Open誌2024年5月27日号の報告。  対象は、13〜17歳の統合失調症患者。経口ブレクスピプラゾール1〜4mg/日(可変用量)を投与した。主要エンドポイントは、治療関連有害事象(TEAE)、重症度別TEAE、重篤なTEAE、治療中止に至った有害事象の発現率とした。  主な結果は以下のとおり。

慢性肝疾患急性増悪に遺伝子編集された豚の肝臓を用いる治験開始

 慢性肝疾患の急性増悪の治療として、豚の肝臓を利用する治験が米国で間もなく開始される。この治験では、豚の肝臓を患者に移植するのではなく、血液を体外で循環させ肝機能を豚の肝臓に代替させる。それによって患者の肝臓を一時的に休息させて、その間に肝機能が回復する可能性を期待できるという。  AP通信によると、遺伝子編集された豚の臓器を開発している米国マサチューセッツ州のeGenesis社がこのほど、米食品医薬品局(FDA)から、この種の治療としては初となる治験の実施を承認された。

子ども向けネット動画にジャンクフードの宣伝が氾濫

 YouTubeで動画を見ている子どもは、キャンディーや加糖飲料、ファストフード、甘いスナックや塩辛いスナックなどのジャンクフードを宣伝するメッセージを頻繁に目にしていることが、新たな研究で明らかにされた。この研究によると、6~8歳の子どもの75%、3~5歳の子どもの36%が、自分のモバイル端末で自由に選んだYouTubeまたはYouTube Kidsの動画を視聴中にジャンクフードの宣伝にさらされていたという。米コネチカット大学ラッド・センター・フォー・フードポリシー・アンド・ヘルス(以下、ラッド・センター)のJennifer Harris氏らによるこの研究結果は、「Journal of the Academy of Nutrition and Dietetics」に6月25日掲載された。

入力ミスや俗語はAIの医療評価に影響する

 誤字・脱字や余分な空白などの一般的な入力ミスは、医療記録を確認して医療従事者を支援するために設計された人工知能(AI)プログラムに悪影響を及ぼす可能性のあることが、新たな研究で明らかになった。米マサチューセッツ工科大学(MIT)のAbinitha Gourabathina氏らによるこの研究結果は、米国計算機学会(Association for Computing Machinery;ACM)主催によるFAccT 2025(6月23〜25日、ギリシャ・アテネ)で発表された。  臨床現場における大規模言語モデル(LLM)の採用は増加傾向にあり、慢性疾患の管理、診断支援、文書作成、請求、患者とのコミュニケーションなどの管理タスクを含むさまざまな医療アプリケーション向けに開発されている。この研究は、Gourabathina氏が、患者から送られてくる症状報告や相談などのメッセージに記されている性別に関する手がかりを入れ替え、それをAIに提示する実験を行ったことから始まった。同氏は、単純な書式の誤りがAIの回答に意味のある変化をもたらすことに驚いたという。

最新の新型コロナワクチンは新たな変異株にも有効

 最新の新型コロナワクチンは、新たな新型コロナウイルス変異株に対しても有効であることが、新たな研究で示された。2023〜2024年版の新型コロナワクチンについて検討したこの研究では、ワクチンは特に重症化予防に対して明確な追加的効果のあることが確認されたという。米レーゲンストリーフ研究所生物医学情報センターのShaun Grannis氏らによるこの研究結果は、「JAMA Network Open」に6月25日掲載された。  この研究では、米国の6つのヘルスケアシステムの2023年9月21日から2024年8月22日までのデータを用いて、新型コロナワクチン(オミクロン株XBB.1.5対応1価ワクチン)の有効性が検討された。主要評価項目は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による救急外来(ED)や緊急ケア(UC)受診、入院、および重症化(集中治療室〔ICU〕入室または入院死亡)の予防に対する有効性を検討した。なお、本研究の対象期間には、オミクロンXBB株およびJN.1株の流行期も含まれている。

昼~午後早い時間の昼寝、死亡リスクが上昇する可能性

 中高年層にとって午後の昼寝は魅惑的かもしれないが、大きな代償を伴う可能性があるようだ。特定の昼寝パターンを持つ人では、全死因死亡リスクが高まる可能性のあることが、米マサチューセッツ総合病院のChenlu Gao氏らによる研究で明らかになった、この研究結果は、米国睡眠医学会(AASM)と米睡眠学会(SRC)の合弁事業であるAssociated Professional Sleep Societies, LLC(APSS)の年次総会(SLEEP 2025、6月8〜11日、米シアトル)で報告された。  Gao氏は、「健康や生活習慣の要因を考慮しても、日中に長く眠る人や日中の睡眠パターンが不規則な人、正午から午後の早い時間に多く眠る人は全死因死亡のリスクが高かった」とAPSSのニュースリリースで述べている。

高齢の日本人男性で腸内細菌叢がサルコペニアと相関か

 我々の腸内には、約1,000種類・100兆個にも及ぶ細菌が存在している。これらの細菌は、それぞれ独自のテリトリーを維持しながら腸内細菌叢(GM)という集団を形成している。近年では、GMが全身疾患と関連していることが明らかになってきた。今回、日本の高齢者を対象とした研究において、男性サルコペニア(SA)患者では、非SA患者に比べてGMのα多様性が有意に低下しβ多様性にも有意な違いを認めることが報告された。研究は順天堂大学医学部附属順天堂東京江東高齢者医療センター消化器内科の浅岡大介氏らによるもので、詳細は「Nutrients」に5月21日掲載された。

HR+/HER2-乳がんで術後S-1が本当に必要な再発リスク群は?/日本乳癌学会

 経口フッ化ピリミジン系薬剤S-1(テガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム)は、POTENT試験によって、HR+/HER2-乳がんに対する標準的な術後内分泌療法に1年間併用することで再発抑制効果が高まることが示され、2022年11月に適応が拡大した。しかし、POTENT試験の適格基準はStageI~IIIBと幅広く、再発リスク群によっては追加利益が得られないという報告もあるため、S-1の追加投与が本当に必要な患者に関する検討が求められていた。名古屋大学医学部附属病院の豊田 千裕氏らの研究グループは、S-1適応拡大以前の症例によるPOTENT試験に準じた適格基準別の予後を比較してS-1追加投与の意義について検討し、その結果を第33回日本乳癌学会学術総会で発表した。

Lp(a)による日本人のリスク層別化、現時点で明らかなこと/日本動脈硬化学会

 第57回日本動脈硬化学会総会・学術集会が7月5~6日につくば国際会議場にて開催された。本稿ではシンポジウム「新たな心血管リスク因子としてのLp(a)」における吉田 雅幸氏(東京科学大学先進倫理医科学分野 教授)の「今こそ問い直すLp(a):日本におけるRWDから見えるもの」と阿古 潤哉氏(北里大学医学部循環器内科学 教授)の「二次予防リスクとしてのLp(a)」にフォーカスし、Lp(a)の国内基準として有用な値、二次予防に対するLp(a)の重要性について紹介する。

老年期気分障害における多様なタウ病理がPET/剖検で明らかに

 老年期気分障害は、神経変性認知症の前駆症状の可能性がある。しかし、うつ病や双極症を含む老年期気分障害の神経病理学的基盤は依然としてよくわかっていない。国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構の黒瀬 心氏らは、老年期気分障害患者におけるアルツハイマー病(AD)および非ADタウ病態の関与について調査した。Alzheimer's & Dementia誌2025年6月号の報告。  対象は、老年期気分障害患者52例および年齢、性別をマッチさせた健康対照者47例。18F-florzolotauおよび11C-Pittsburgh compound Bを用いたtau/Aβ PET検査を実施した。さらに、さまざまな神経変性疾患を含む208例の剖検例における臨床病理学的相関解析を行った。

前立腺全摘除術後3カ月以上のPSAモニタリングで過剰治療リスクが低減

 前立腺がんに対する根治的前立腺全摘除術(RP)後は前立腺特異抗原(PSA)値を3カ月以上にわたり測定することで、RP後の過剰治療リスクを最小限に抑えられる可能性があるという研究結果が「JAMA Oncology」に3月13日掲載された。  ハンブルク・エッペンドルフ大学病院(ドイツ)のDerya Tilki氏らは、RP後の持続的なPSA値を正確に記録するために必要なモニタリング期間について、コホート研究で調査を行った。この研究には、1992年から2020年の間に2カ所の大学病院でRPを受けたT1N0M0からT3N0M0の前立腺がん患者を対象とした。探索コホートには3万461人の患者が、検証コホートには1万2837人の患者が含まれた。

悪夢は早期死亡リスクを高める

 悪夢に関しては、「死ぬほど怖い」という表現が当てはまる可能性があるようだ。悪夢を頻繁に見る人は生物学的年齢が進んでおり、早死にするリスクが約3倍高まることが、新たな研究で明らかにされた。この研究結果は、英インペリアル・カレッジ・ロンドン(UCL)の神経科学者であるAbidemi Otaiku氏により、欧州神経学会(EAN 2025、6月21〜24日、フィンランド・ヘルシンキ)で発表された。  Otaiku氏は、「睡眠中の脳は夢と現実を区別することができない。それゆえ、悪夢を見て目が覚めたときにはたいていの場合、汗をかいて息を切らし、心臓がドキドキしている。これは、闘争・逃走反応が引き起こされているからだ。このストレス反応は、起きている間に経験するどんなことよりも激しい場合がある」と同氏は話す。

実臨床でのGLP-1RAの減量効果は治験の成績ほどでない

 減量目的で使われているGLP-1受容体作動薬(GLP-1RA)の実臨床における有効性は、治験段階で認められたほどには高くないようだ。米クリーブランドクリニックのHamlet Gasoyan氏らの研究によるもので、詳細は「Obesity」に6月10日掲載された。  GLP-1RAは、血糖降下作用とともに、食欲抑制作用などを介して減量効果を発揮する薬。セマグルチド(商品名はウゴービ)やチルゼパチド(同ゼップバウンド)などがあり、それらが承認される根拠となった治験では、15~21%の体重減が報告されていた。しかし今回の研究では、実際に処方された患者の1年後の体重変化は、平均9%弱の減少にとどまっていた。研究者によると、実臨床では治療を中止する人や、治験で使われた用量より少ない量が処方されているケースが多いことが、有効性低下の理由として考えられるという。

新型コロナでがん患者の自宅看取りが増加/がん研究センター

 国立がん研究センターがん対策研究所(所長:松岡 豊)は、2021年に死亡した患者の遺族を対象に、人生の最終段階で受けた医療や療養生活の実態を把握する全国調査を実施し、その結果をまとめ、公表した。  今回の調査は、新型コロナウイルス感染症の流行期とアンケート実施時期が重なったことから、特殊な社会環境下における人生の最終段階の医療や療養生活に関する情報も得られた。

ペムブロリズマブがHER2陽性切除不能胃がん1次治療に承認、14年ぶりのパラダイムシフト

 2025年5月、HER2陽性の治癒切除不能な進行・再発胃がんの1次治療において免疫チェックポイント阻害薬(ICI)ペムブロリズマブ併用療法が承認された。これまでもHER2陰性胃がんには化学療法+ICI併用療法が使われてきたが、今回の適応拡大によりHER2発現にかかわらず、ペムブロリズマブが1次治療の選択肢として加わることになる。  6月23日にMSDが開催したメディアセミナーでは、愛知県がんセンターの室 圭氏が登壇し、「胃がん一次治療の新たな幕開け~HER2陽性・陰性にかかわらず免疫チェックポイント阻害薬が使用可能に~」と題した講演を行った。

GLP-1受容体作動薬、高齢者はBMI低下の一方でサルコペニア加速

 GLP-1受容体作動薬(GLP-1RA)は、グルコースレベルを効果的に低下させ大幅な体重減少を促進することから、糖尿病や肥満症の治療薬として広く使用されている。一方、サルコペニアは筋肉量と筋力の低下を特徴とする進行性の疾患で、とくに高齢者に多くみられ、2型糖尿病の高齢者では、サルコペニアの有病率が非糖尿病患者に比べて2~3倍高いとされる。こうした背景から、GLP-1RAセマグルチドによる治療を受けた2型糖尿病の高齢者における筋肉量・筋力・筋機能の変化を調査したShijiazhuang People's Hospital(中国・河北)のQingjuan Ren氏らによる研究が、Drug Design, Development and Therapy誌オンライン版2025年7月3日号に掲載された。

砂糖/人工甘味料入りドリンクはアルツハイマー病リスクを高める可能性あり

 Lebanese UniversityのNagham Jouni氏らは、加糖ドリンク、人工甘味料入りドリンク、ソフトドリンクの摂取とアルツハイマー病リスクとの関連性を評価するため、プロスペクティブコホート研究のシステマティックレビューおよびメタ解析を実施した。Aging & Mental Health誌オンライン版2025年6月13日号の報告。  2024年9月までに公表された研究をPubMed、Scopus、Web of Scienceデータベースより網羅的に検索し、甘味料入りドリンクとアルツハイマー病リスクとの関連を報告した観察研究を抽出した。ランダム効果モデルを用いて、プールされた相対リスク(RR)および95%信頼区間(CI)を算出した。バイアスリスクの評価にはROBINS-Iツール、エビデンスの確実性の評価にはGRADEアプローチを用いた。

自己免疫疾患は気分障害リスクを高める

 関節リウマチ、炎症性腸疾患(IBD)、乾癬などの自己免疫疾患の罹患者は、一般集団に比べてうつ病、不安症(不安障害)、双極症(双極性障害)などの気分(感情)障害の発症リスクが約2倍高いことが、新たな研究で明らかになった。このようなリスク上昇は、男性よりも女性で顕著であることも示されたという。英エディンバラ大学臨床脳科学センターのArish Mudra Rakshasa-Loots氏らによるこの研究結果は、「BMJ Mental Health」に6月10日掲載された。  Rakshasa-Loots氏らはこの研究で、慢性炎症は抑うつ障害や不安症などの精神疾患の発症と関連していることを踏まえ、慢性炎症状態に置かれている自己免疫疾患患者では、精神的な健康問題を抱える割合が高いのではないかと考えた。この仮説を検証するために同氏らは、英国で新たに実施された大規模な健康調査(Our Future Health)に参加した18歳以上の成人156万3,155人のデータを解析した。この研究への参加にあたり、参加者は自身の身体的および精神的健康の履歴を報告していた。自己免疫疾患として、関節リウマチ、バセドウ病、IBD、全身性エリテマトーデス、多発性硬化症、乾癬の6つを対象としたところ、該当者は3万7,808人であった。

2型糖尿病のHbA1cコントロールにピアサポートアプリが有効か

 糖尿病患者の血糖管理においてHbA1cは重要な指標となるが、今回、デジタルピアサポートアプリの活用により2型糖尿病患者のHbA1cが統計学的に有意に低下する可能性が示唆された。アプリ内のチャットを通じたコミュニケーションが患者個人の意思決定や行動に影響を与えている可能性があるという。研究は北里大学大学院 医療系研究科の吉原翔太氏によるもので、詳細は「JMIR Formative Research」に5月20日掲載された。  HbA1cは過去2~3か月間の平均血糖値を反映し、糖尿病合併症のリスクを予測するためのゴールドスタンダードとされている。しかし、2型糖尿病患者にとっては、健康的な行動を自ら採用し維持することが困難な場合もあり、HbA1cの適切な管理が難しい患者も少なくない。ピアサポートは、共通の経験や課題を持つ個人同士が互いに支援し合うことと定義されており、2型糖尿病患者の健康的な行動を促進するための効果的な戦略となる可能性が示唆されている。デジタルヘルスの技術進歩により、ピアサポートもアプリ上で行うことが可能となりつつある。しかし、このようなアプリが2型糖尿病の管理に及ぼす影響については、十分な検討がなされていない。このような背景を踏まえ、著者らは2型糖尿病患者のHbA1cコントロールに対するデジタルピアサポートアプリの効果を検証するために、前向きの単群パイロット研究を実施した。

アルツハイマー病における興奮の診断・評価・治療に関するエキスパートの推奨事項

 アルツハイマー型認知症のアジテーションは、患者、介護者、家族、医療制度に大きな影響を及ぼす。アジテーション治療に関する新たなエビデンスが明らかになるにつれて、多専門分野の専門家によるラウンドテーブルが開催され、発表された文献(2024年10月1日現在のPubMed検索結果)をレビューし、米国のプライマリケア提供者のためのコンセンサス推奨事項が作成された。米国・セントルイス大学のGeorge T. Grossberg氏らは、プライマリケア提供者向けのアルツハイマー型認知症のアジテーションの診断とマネジメントに関するエビデンスに基づく臨床実践のコンセンサス推奨事項を報告した。Postgraduate Medicine誌オンライン版2025年6月17日号の報告。