糖尿病管理のための持続グルコース測定器「リブレ」や循環器疾患領域などの医療機器を全世界で開発・販売しているアボットは、夏の熱中症対策と高血糖リスクの関連について、都内でメディアセミナーを開催した。セミナーでは、「ペットボトル症候群」への警鐘と夏期の糖尿病患者への対応などが解説された。
負の連鎖を起こす夏の「ペットボトル症候群」
「『理想的な水分補給』と血糖管理~夏の熱中症対策が“高血糖のリスク”になる?~」をテーマに、川名部 新氏(おばな内科クリニック 院長)が、夏期の脱水予防と血糖管理の重要性について講演した。
20歳以上の男女で「糖尿病が強く疑われる人」が年々増加している中で、糖尿病診療では近年、新しい血糖管理の指標として「血糖トレンド」が注目されている。血糖トレンドとは、24時間の中で血糖値がどのように変動しているかを示すものであり、血糖自己測定(SMBG)や持続グルコース測定(CGM)により、1日の血糖変動の可視化を行うことができる。より良い糖尿病のセルフケアには、血糖トレンドの変動幅を小さくすることが重要と考えられている。
わが国は、近年、夏の平均気温が上昇し、日中・日没後の暑さが厳しくなっている。こうした環境の中では、飲料水を摂る機会も多い。糖分の多い清涼飲料水を大量に飲み続けることで高血糖となり、強いのどの渇きが生じ、さらに甘い飲料水を飲んでしまい、高血糖が悪化するという悪循環に陥る「ペットボトル症候群」(清涼飲料水ケトーシス)が懸念されている。本症候群になりやすい人としては、糖尿病患者または糖尿病予備群、糖分入り飲料水を1日1L以上飲む習慣のある人、運動不足であまり汗をかかない人などがいる。
本症候群は3つの段階を経て起こる。初期段階では「強いのどの渇き」「多飲」「多尿」などが起こる。中期段階では「倦怠感」「集中力低下」「眠気」などが起こる。そして、症状が進行すると「脱水症状」「意識障害」などが起こり、救急搬送が必要となるケースもある。
実際、ペットボトル飲料について、スポーツドリンクでは角砂糖約8個分、経口補水液では約3個分、オレンジジュースでは約10個分に相当する糖分が含まれており、適量摂取が重要となる。また、カロリーゼロを謳う飲料でも「厳密にはゼロではなく、水と同じように飲むべきではない」と川名部氏は警鐘を鳴らす。
高血糖を抑え、脱水を予防する水分摂取として夏期の理想的な水分補給の「4つのS」を川名部氏は提言する。
Soon:のどが渇く前にこまめに飲む
Sugar less:糖分を含む飲料は控える
Simple drink:飲み物は水かお茶を基本とする
Salt:汗をかいたら塩分補給
ただ、過度の飲水による「水中毒への注意が必要」とも川名部氏は指摘するとともに、SGLT2阻害薬などのように尿量が多くなる糖尿病治療薬では、夏期には脱水のリスクもあるために用量の変更や他剤への切り替えの検討も必要であると語った。
血糖値の現在地を血糖トレンドで患者に説明する
続いて持続グルコース測定器を用いた血糖管理について触れ、糖尿病診療と夏の血糖トレンドの関係について説明した。通常、健康な人の血糖変動はほぼフラットであり、1日を通じて変動幅が少ない。その一方で、糖尿病患者の血糖は、血糖トレンドの変動幅が大きく(食事後に急上昇する)、とくに清涼飲料水を摂取した後は変動幅がさらに大きくなる。
持続グルコース測定器を活用して血糖管理に成功した症例(50代・男性、BMI26.0)を提示した。一定の食品(たとえば菓子パン、甘いアイスココアなど)の摂取後には、血糖値が急上昇する。患者にこうした血糖変動を可視化した図で示すことで、血糖変動の大きい食事を減らす指導が可能となり、血糖変動幅を減少させることができたと紹介した。
別の症例(30代・男性、BMI34.7)は、糖分の多い清涼飲料水を過剰に摂取していた糖尿病患者で、救急搬送後にインスリン教育入院となった。そのインスリン治療に加え、血糖トレンドと血糖自己管理を理解させることで、現在、血糖値は安定し、退院後は川名部氏のクリニックでフォロー中という症例を紹介した。患者には、血糖値の現在地を血糖トレンドをカーナビになぞらえて指導することで、理解されやすいという。また、高血糖リスク予防のため、食事と運動指導として次の項目を指導していると紹介した。
【食事編】
・朝食を食べる
・野菜は最初に、炭水化物は最後に食べる
・間食はできるだけ控え、食べるなら食後に
・甘いドリンクは控える
・アルコールの飲み過ぎに注意する
・よく噛んでゆっくり食べる(30回程度)
【運動編】
・座りっ放しに気を付け、立位の時間を増やす
・家事で積極的に体を動かす
・家の中でもこまめに運動をする(椅子を使ったスクワットなど)
・エスカレーターやエレベーターより階段を使う
・ウォーキングなどの運動は朝夕の涼しい時間帯に行う
最後に川名部氏は「夏の猛暑には熱中症に加え高血糖にも注意が必要」と述べ、「ペットボトル症候群に注意して、『4つのS』と『血糖トレンド』を意識して乗り切りましょう!」とまとめ、講演を終えた。
(ケアネット 稲川 進)