CLEAR!ジャーナル四天王|page:1

AI搭載聴診器による心不全、心房細動、弁膜症の診断を検討したプラグマティック・クラスターランダム化比較試験―AI搭載聴診器を実装しても使用されなければ効果はない(解説:名郷直樹氏)

英国のプライマリ・ケア医を対象に、AI搭載聴診器(Eko DUO, Eko Health Inc, Emeryville, CA, USA)を支給し、トレーニングし、実際の臨床で使用するグループと従来の診療を行うグループを比較し、心不全の診断と診療のセッティングによる心不全診断の違いを1次アウトカムとしたプラグマティック・クラスターランダム化比較試験である。AI搭載聴診器はBluetoothでスマートフォンに接続され、AIによる分析がなされ、心疾患の診断がフィードバックされるようになっている。結果は1次アウトカムである心不全診断の罹患率比は0.94(95%信頼区間[CI]:0.87~1.00)、2次アウトカムの心房細動、弁膜症でもそれぞれの相対危険は1.01(95%CI:0.94~1.10)、1.00(0.91~1.10)と診断の増加を認めていない。

tenecteplaseは標準治療より脳底動脈閉塞症に有効か?(解説:内山真一郎氏)

TRACE-5試験は、中国で行われた、発症後24時間以内の脳底動脈閉塞症に対するtenecteplase静注療法と標準的治療を比較したPROBEデザインによる無作為化試験である。結果は、90日後に転帰良好例(改訂ランキンスケールスコア0または1)がtenecteplase群で対照群より有意に多く、頭蓋内出血例と死亡例は同等であった。この効果は、TRACE-3試験で示された、血栓回収療法を受けていない前方循環系の大血管閉塞例に対する効果に匹敵した。本試験結果は、tenecteplase静注療法は、発症後24時間以内という広い治療可能時間枠の脳底動脈閉塞症に対して、特別な画像検査を用いたミスマッチによる患者選択の必要なしに、血栓回収療法との併用効果が期待できることを示唆している。ただし、オープンラベルの試験であったこと、重症例(pc-ASPECT 6点未満)は含まれなかったこと、症例は中国人のみであったことに限界があり、プラセボ対照試験の実施、より重症例での検討、他の人種への全般化が今後の課題である。

日本発、期待の新薬をどう使うか?(解説:岡慎一氏)

islatravirは、世界初のエイズ治療薬AZTを開発した満屋 裕明博士が開発した日本発の新薬である。満屋氏は、これまでにも数多くの抗HIV薬を世に送り出し、抗HIV薬創薬の世界的権威であるが、その満屋氏が「この薬剤はすごい!」と話している。どうすごいかというと、とにかく試験管内での抗HIV効果がきわめて強いことと、細胞毒性が見られないらしい。要するに、「よく効いて安全である」ということになる。本臨床試験であるが、現在の非常に強力な3剤併用療法と、ドラビリンとの2剤の合剤1日1回服用を無作為割り付けで比較し、非劣性が証明されている。

一過性受容体電位カチオンチャネルサブファミリーCメンバー6(TRPC6)の阻害は筋ジストロフィーのみならず巣状分節性糸球体硬化症(FSGS)の治療にも有効(解説:浦信行氏)

FSGSは糸球体の一部に硬化が見られる疾患でネフローゼ症候群を示す。難治性であり、腎生存率は10年では85.3%、20年では33.5%となり、3人に1人が末期腎不全となって腎臓を失う。日本における患者数は約7,000人と推定されているが、現在FSGSに対する特異的な治療法はない。しかし、最近病態の一部が明らかにされ、TRPC6が注目されている。これの経口阻害薬であるBI 764198の第II相試験の結果が報告され、約40%の症例で尿蛋白が25%以上の減少を示した。その詳細は本年2月5日配信のCareNet.comに紹介されているので参照されたい。FSGSの病態の一部はTRPC6が上昇してポドサイトの細胞内Caが上昇し、ポドサイトが糸球体基底膜から脱落してポドサイトの減少を招き、糸球体の瘢痕化と尿蛋白漏出を招く。

がん合併急性冠症候群のリスク構造をどう読むか(解説:野間重孝氏)

がんを合併した急性冠症候群(ACS)患者は、これまで多くの大規模臨床研究から除外されてきた集団であり、その予後は必ずしも十分に定量化されてこなかった。本論文は、国際的大規模レジストリデータを用いて、がん合併ACS患者における6ヵ月以内の全死亡、大出血、虚血イベントを同時に予測する競合リスクモデル(ONCO-ACS)を開発し、外部検証を行ったものである。100万例超のACS症例群から約4万人のがん患者を解析対象とし、死亡・出血・虚血という相互に影響しうる転帰を統合的に扱った点に方法論的特徴がある。解析の結果、腫瘍種や転移の有無などのがん関連因子は全死亡予測には強く寄与する一方、虚血イベントの予測においては腎機能、貧血、Killip分類など従来の循環器臨床指標の影響がより支配的であることが示された。

睡眠薬、抗コリン薬を処方中の患者を受け持つプライマリケア医に、電子カルテを介し減薬を勧める介入は、不適切処方を減らす効果があるが、死亡リスクを高めるかもしれない(解説:名郷直樹氏)

高齢者の不適切処方は日本においても大きな問題の1つだが、本研究は米国のプライマリケア医を対象として、65歳以上の高齢者でベンゾジアゼピン、非ベンゾジアゼピン系睡眠薬、抗コリン薬が処方されている患者の不適切処方に対し、電子カルテを通し、前もって介入する群、診察後減薬を検討させる群と標準的な診療を比較し、1剤以上の減薬の効果を検討したクラスターランダム化比較試験である。ランダム化はプライマリケア医ごとに行われ、結果は患者ごとで解析されている。2つの介入方法であるが、診療前群では、医師が電子カルテを開くと、初回には薬剤継続のリスクの患者との共有、患者向け説明資料、代替治療や減薬アルゴリズムへのリンクが表示され、2回目以降は、前回の情報提供を想起させ、具体的な減薬のお勧めが表示される。

出血と血栓のジレンマの問題は本当に根深いね(解説:後藤信哉氏)

 組織因子と血液凝固第VII因子は止血に重要な役割を演じる。遺伝子組み換え第VII因子(rFVIIa)は各種出血性疾患に対して止血効果を示した。本研究では発症後2時間以内の頭蓋内出血を対象として、rFVIIaの有効性を検証したランダム化比較試験である。  発症後2時間以内の脳梗塞症例を選定するのも難しい。本試験では626例のランダム化比較試験を試行するために、3,288例のスクリーニングが必要になっている。頭蓋内の出血がrFVIIaの使用により止血したか否かを検証するのは容易ではない。画像診断による血腫の増大、臨床症状などを間接的指標とせざるを得ない。

コーヒーやお茶を飲むと認知症にならない?(サハラ砂漠のお茶)(解説:岡村毅氏)

とても楽しい論文だし、科学的にもしっかり書いてある。一方で、ああそうですか、というのが私の正直な感想だ。例えるならば「夕方の天気を予測する因子を探したところ、傘を持っている人が多い日は、夕方から雨になる可能性が高いことが判明した!」と言われたような感じだ。そうかもしれないが、別に意味のある発見じゃないよな、ということだ。あと、この論文は「コーヒーやお茶が認知症予防になる」とは一言も言っていない。しかしそのように誤読される危険があるという意味で、このコラムで取り上げる価値はある。この論文が明らかにしたことは、「米国の医療職の長期コホートで、カフェイン入りコーヒーおよび茶の摂取量が多いことは、認知症リスクの低下と関連しており、カフェインレスコーヒーではそうではなかった」というだけのことだ。

肥満症薬物療法の「出口戦略」なき処方への警鐘!(解説:島田俊夫氏)

GLP-1受容体作動薬などの新薬の登場により、肥満症治療は劇的な変貌を遂げました。しかし、これら「魅惑の肥満治療薬」がもたらす減量は、果たして「治癒」と言えるのでしょうか。2026年1月にBMJ誌に掲載されたOxford大学Sam West氏らの体系的レビュー/メタ解析論文は、薬物療法の中止後に待ち受ける過酷なリバウンドの現実を浮き彫りにし、現在の安易な処方ブームに冷や水を浴びせています。本論文は、肥満治療薬(WMM)と行動療法(BWMP)の中止後を比較し、以下の事実を明らかにしました。リバウンドの「速さ」:薬物療法を中止すると、月平均0.4kgという猛烈な速度で体重が戻ります。これは行動療法中止後のリバウンド速度の約4倍に相当します。

PD-L1陽性転移TNBC1次治療におけるADC+ICI(解説:下村昭彦氏)

PD-L1陽性転移トリプルネガティブ乳がん(TNBC)の初回治療は、IMPassion130試験(Schmid P, et al. N Engl J Med. 2018;379:2108-2121.)、KEYNOTE-355試験(Cortes J, et al. N Engl J Med. 2022;387:217-226.)の結果に基づき、化学療法+免疫チェックポイント阻害薬(ICI:抗PD-L1抗体アテゾリズマブ、もしくは抗PD-1抗体ペムブロリズマブ)が標準治療として用いられている。IMPassion130試験では全生存期間(OS)延長の可能性が示され、KEYNOTE-355試験では統計学的有意にOSが延長された。一方、2次治療以降では抗体薬物複合体(ADC)の開発が活発に行われており、TNBC全体に対するサシツズマブ ゴビテカン(SG)(Bardia A, et al. N Engl J Med. 2021;384:1529-1541.)やHER2低発現TNBCに対するトラスツズマブ デルクステカン(T-DXd)(Modi S, et al. N Engl J Med. 2022;387:9-20.)が用いられており、いずれもOS延長が示されている(T-DXdは探索的)。

HR+HER2+乳がん1次治療導入療法後のパルボシクリブ維持療法(解説:下村昭彦氏)

ホルモン受容体陽性(HR+)HER2陽性(HER2+)転移乳がんに対してはCLEOPATRA試験の結果をもとにトラスツズマブ+ペルツズマブ+タキサン(HPT)療法後のトラスツズマブ+ペルツズマブ(HP)維持療法が行われてきた。HR+の場合の維持療法に内分泌療法を併用するかどうかは、第II相試験であるPERTAIN試験(Rimawi M, et al. J Clin Oncol. 2018;36:2826-2835.)によりある程度の有用性が示されているが、維持療法として内分泌療法を併用するかどうかは施設ごとに判断が分かれている。PATINA試験はHR+HER2+転移乳がんに対するHPT療法導入後に維持療法としてHP+内分泌療法(ET)+パルボシクリブ併用療法とHP+ETを比較した第III相試験である(Metzger O , et al. N Engl J Med. 2026;394:451-462.)。

現行世代の薬剤溶出性ステントを改善するハードルは高い(解説:山地杏平氏)

新しい世代のシロリムス溶出ステントであるAbluminus DES+を検証したランダム化比較試験であるABILITY Diabetes Global試験の結果がLancet誌に掲載されました。本ステントはシロリムスを薬剤として用い、ポリマーをステント外側(abluminal side)に限定し、さらにバルーン表面にもコーティングを施すことで、血管壁への薬剤送達効率を高めることを狙った設計となっています。  本試験では、糖尿病患者という再狭窄リスクが高い症例において、12ヵ月時点の虚血を伴う標的病変再血行再建(ID-TLR)および標的病変不全(TLF)を主要エンドポイントとして評価が行われました。

妊娠前・妊娠初期におけるGLP-1受容体作動薬の中止による影響(解説:小川大輔氏)

 妊娠中に初めて発見または発症した糖代謝異常である「妊娠糖尿病」と、妊娠前から糖尿病を患っている「糖尿病合併妊娠」は、どちらも高血糖が胎児の発育に影響を与えるため妊娠中の血糖管理が非常に重要になる。そして妊娠中の糖尿病の薬物療法はインスリン療法が原則となる。妊娠前から経口血糖降下薬などで治療していた場合でも、妊娠する前、あるいは妊娠が判明した時点でインスリンへの変更が必要となる1)。これは、経口血糖降下薬が胎盤を通して胎児に運ばれ、低血糖を引き起こす可能性があるためである。  GLP-1受容体作動薬に関しては、ラットやラビットを用いた動物実験でGLP-1受容体作動薬の投与により胎児の構造異常、子宮内での発育制限、胎児の死亡などが報告されており、妊娠中はGLP-1受容体作動薬の使用を避けるべきとされている1)。

政府主導の現金給付プログラムが死亡率に関連する行動および健康決定要因に与える影響:差の差研究(解説:名郷直樹氏)

ランダム化比較試験で検討困難な疑問に関して、ビッグデータを用いた観察研究によって検討しようという流れの中にある研究である。37の低~中所得国家を対象とし、政府主導の現金給付プログラムを提供している国と提供していない国を比較し、また提供された国における提供前と提供後を比較して、死亡に関連する17のアウトカムを検討している。 解析方法は、“difference-in-differences study”とあるように、少し特殊である。具体的には、現在現金給付を行っている国の行っていない時期とのアウトカムの差から、行っていない国の現在のアウトカムと行っている国の行っていないのと同時期のアウトカムの差を差し引いたものを効果の指標としている。

静脈血栓塞栓症における抗凝固薬の継続は出血リスクの増加はあるが、再発リスクの低下の効果が大きい(Target Trial Emulation:TTEによる検討)(解説:名郷直樹氏)

 誘因のない静脈血栓塞栓症に対する経口抗凝固療法の継続と中止についてのTarget Trial Emulationが、Kueiyu Joshua Linらにより報告された。Target Trial EmulationはTTEと略されるが、経胸壁心エコー(Transthoracic Echocardiography)のことではない。Target Trial Emulationとは、観察データを使って、仮想的なランダム化臨床試験を模倣する方法論である。  まず、『日本循環器学会/日本肺高血圧・肺循環学会合同ガイドライン2025年改訂版 肺血栓塞栓症・深部静脈血栓症および肺高血圧症に関するガイドライン』ではどうなっているか。「誘因のない中枢型DVT(unprovoked 中枢型DVT)に対し,出血リスクが高くない場合には,中枢型DVTの治療および再発予防のための長期の抗凝固療法として,低用量DOACが使用できるなら可及的長期の抗凝固療法を行うことを考慮してもよい」とクラスIIbで推奨されている

伝統的なランダム化比較試験と脱中心型ランダム化比較試験の結果を比較したメタ分析(解説:名郷直樹氏)

伝統的なランダム化比較試験は、大学、大病院、研究施設などの専門施設に対象患者を集めることで行われるのが大部分であるが、通院、入院可能な施設近傍の患者に対象が限られたり、遠方からの定期的な通院が困難であったり、そのために追跡が不十分になったりという問題点などがある。また参加する患者が実臨床と異なる偏った集団になりがちという問題もある。それに対する1つの解決方法として、ランダム化比較試験を限られた専門施設だけではなく、患者の生活空間で参加できるように配慮したものが、脱中心(分散)型ランダム化比較試験(decentralised randomized controlled trials:DCT)である。

ラテンアメリカにおける最も一般的な非虚血性心筋症、シャーガス心筋症に対して、サクビトリル・バルサルタンはエナラプリルと比較して有効性は示されなかった(解説:原田和昌氏)

シャーガス病はトリパノソーマ・クルジという原虫によって引き起こされるラテンアメリカにおける非虚血性心筋症(慢性シャーガス心筋症:CCC)の最も一般的な原因である。CCCは急性心筋炎と慢性線維化性心筋炎を呈する。これまでエナラプリルがCCC患者の心機能に良い効果を有する、CCCの動物モデルでエナラプリルが心筋線維化と心機能を改善したという報告があるが、ガイドラインが推奨する心不全治療のCCC患者に対する有効性と安全性は明らかでない。

PPIの長期使用と胃がんリスクの関連性否定:北欧5ヵ国での集団ベースの症例対照研究(解説:上村直実氏)

北欧5ヵ国の全国登録レジストリーから前向きに収集したデータを用いた大規模症例対照研究の結果、1年超のPPI長期使用と胃がんリスクの関連性はなく、H2ブロッカーと同様であることが、2026年1月のBMJ誌に発表された。PPI長期使用による胃がんリスクの上昇を示唆する報告は多数あるが、コホート研究などの観察研究における精度の問題を指摘して、考えられるバイアスである診断前のPPI開始時期やH. pylori関連変数の調整不足、噴門部がんの混在などを厳密に調整するデザインを採用した結果、両者の関連性が否定されたとしている。

コロナワクチン接種を躊躇する理由を大規模解析についてのコメント(解説:栗原宏氏)

本調査は、英国の一般住民を対象とした大規模COVID-19モニタリングプログラムに参加した成人113万人を対象として、COVIDワクチンに対する態度(ためらいや拒否など)とその後実際にワクチンを接種したかどうかをNHSワクチン記録と照合して分析したコホート研究である。この研究のポイントは、ワクチン接種への考え方が変化しやすい群と拒否や不信が強く接種に至りにくい群を、理由・属性と併せて定量的に示した点にある。多変量ロジスティック回帰の結果では、接種を躊躇する傾向が強いのは、若年層(18~24歳)、女性、白人以外の民族(とくに黒人)、社会経済的な不利、低学歴、失業・非労働人口、COVID既感染、うつ病・不安症、喫煙者であった。

edaravone dexborneol、急性期脳梗塞患者の機能アウトカムを改善か(解説:内山真一郎氏)

edaravone dexborneolは、中国で開発されたエダラボンとdexborneolの合剤であり、日本で使用されている注射薬のエダラボンと異なり、舌下錠であり、エダラボンの抗酸化作用とdexborneolの抗炎症作用を併せ持つことから、エダラボンの単剤よりも多面的な神経保護効果が期待されている。前回行われたTASTE試験では、再灌流療法を受けていない急性虚血性脳卒中患者においてedaravone dexborneolはエダラボンを上回る転帰改善効果が報告されている。