筋強直性ジストロフィー1型、del-desiranが有望/NEJM

提供元:ケアネット

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公開日:2026/03/03

 

 筋強直性ジストロフィー1型(DM1)は、常染色体優性遺伝性の進行性神経筋疾患であり、DMPK遺伝子の3'-非翻訳領域におけるCTGリピートの伸長によって発症する。本症は、身体機能障害を引き起こし、余命を短縮させるが、承認された治療法はない。米国・Virginia Commonwealth UniversityのNicholas E. Johnson氏らは「MARINA試験」において、本症の治療薬として開発中の抗体-オリゴヌクレオチド複合体delpacibart etedesiran(del-desiran[AOC 1001])の筋組織への送達が一部の患者で確認され、異常な選択的スプライシング(ミススプライシング)の改善を示唆するデータを得たことを報告した。del-desiranは、抗体部分がトランスフェリン受容体1を、オリゴヌクレオチド部分がDMPK遺伝子mRNAを標的とする。研究の成果は、NEJM誌2026年2月19日号で発表された。

米国の無作為化プラセボ対照第I/II相試験

 MARINA試験は、米国の8施設で実施した二重盲検無作為化プラセボ対照第I/II相試験(Avidity Biosciencesの助成を受けた)。2021年10月~2022年9月に、年齢18~65歳、遺伝子診断でDM1と診断され、DMPK遺伝子のCTGリピートが100回以上に伸長した患者38例(平均年齢42[±12.9]歳、女性28例[74%])を登録した。

 本試験は2つのパートから成り、パートAではdel-desiran 1mg/kg体重を1回静脈内投与する群(6例)またはプラセボ群(2例)に、パートBではdel-desiran 2mg/kg体重を3回(1、43、92日)静脈内投与する群(9例)、同4mg/kg体重を3回(同)静脈内投与する群(13例)、またはプラセボ群(8例)に無作為に割り付けた。

 主要エンドポイントは安全性であった。副次エンドポイントは、del-desiranの薬物動態・薬力学的プロファイル、および1mg群では投与43日目、2mg/4mg群では投与92日目(2回目投与後49日目)における下流の異常スプライシングパターンの変化とした。

重篤な有害事象の1件が試験薬関連と判定

 38例中35例に軽度または中等度の有害事象が発現した。プロトコールで規定された投与中止基準に該当した患者はいなかった。投与期間中に、del-desiranの投与を受けた患者のうち5例以上に発現した有害事象は、筋生検に伴う痛み、貧血、新型コロナウイルス感染症、頭痛、悪心であった。

 2mg群の1例と4mg群の1例に、重篤な有害事象が1件ずつ発現した。前者は試験薬との関連はないと判定された。後者では、初回投与後24時間以内に記憶力低下と視覚障害の症状が発現し、数日後の頭部MRI検査で視床外側膝状体核領域の両側性の虚血とそれに続く出血性変化の可能性が推定され、試験薬関連と判定されたためその後の投与を中止した。

 これにより、米国食品医薬品局によって新規の患者登録が一時的に停止されたが、すでに登録されていた参加者は投与の継続が許可された。この停止措置は、その後解除されている。

DMPK mRNAの低下率は3つの用量で同程度

 筋生検標本におけるDMPK mRNAレベルの変化率は、del-desiran 1mg群で-46%、2mg群で-44%、4mg群で-37%といずれも同程度に低下し、プラセボ群では0.9%増加した。また、低分子干渉RNA(siRNA)の血漿中最大濃度および曲線下面積は用量の増量に比例して増加し、尿中からは微量のsiRNAが回収された。

 ベースラインからの平均複合ミススプライシングスコアの減少率は、1mg群で3%、2mg群で17%、4mg群で16%、プラセボ群で7%であり、2mgおよび4mg群におけるミススプライシングの改善が確認された。

 著者は、「総DMPK mRNAの明らかな減少と、オルタナティブスプライシング調節の回復は、siRNAが筋組織に送達されたことを示すと考えられる」「これらのデータは、臨床研究の継続を支持するものである」としている。

 現在、MARINA試験を完了した参加者を対象に、より長期の治療効果を評価する目的で、非盲検下の延長試験が進行中で、並行してdel-desiran 4mg/kg体重の8週ごとの投与を評価する二重盲検無作為化プラセボ対照第III相試験(HARBOR試験)が進められているという。

(医学ライター 菅野 守)