結核性髄膜炎患者に対する治療において、リファンピシンの高用量投与は標準用量投与と比較して6ヵ月以内の死亡率を改善せず、有害な作用をもたらす可能性も否定できないことが、ウガンダ・Makerere UniversityのDavid B. Meya氏らHARVEST Trial Teamが実施した「HARVEST試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌2025年12月18・25日号に掲載された。
3ヵ国の無作為化プラセボ対照第III相試験
HARVEST試験は、インドネシア、南アフリカ、ウガンダの9ヵ所の病院で実施した二重盲検無作為化プラセボ対照第III相試験であり(英国医学研究審議会[MRC]などの助成を受けた)、2021年3月~2024年7月に成人(18歳以上)の結核性髄膜炎患者499例(ITT集団)を登録した。
被験者を、標準用量のイソニアジド+リファンピシン(10mg/kg/日)+エタンブトール+ピラジナミド(配合錠)に加え、追加リファンピシン錠(総投与量35mg/kg/日)を連日経口投与する群(高用量群、249例)、またはプラセボを投与する群(標準用量群、250例)のいずれかに無作為に割り付け、8週間投与した。両群とも、9~12ヵ月の治療期間の残りの期間は標準治療を受けた。
主要アウトカムは、無作為化から6ヵ月以内の死亡であった。
ITT集団(499例)の年齢中央値は37歳(四分位範囲[IQR]:28~45)で、222例(44.5%)が女性であった。428例(85.8%)はdefinite/probableの結核性髄膜炎だった。また、306例(61.3%)がMRC疾患重症度分類のグレード2で、304例(60.9%)はHIV感染者であった。ベースラインで348例(69.7%)が抗結核治療(中央値で3日間)を受け、473例(94.8%)がグルココルチコイドを処方されていた。
サブグループ、副次アウトカムにも有益性はない
無作為化から6ヵ月以内の死亡(主要アウトカム)は、高用量群で109例(Kaplan-Meier推定値44.6%)、標準用量群で100例(40.7%)に発生し、両群間で有意差を認めなかった(ハザード比[HR]:1.17、95%信頼区間[CI]:0.89~1.54、p=0.25)。
また、6ヵ月以内に死亡した被験者の死亡までの期間中央値は、高用量群が13日(IQR:4~39)、標準用量群は24日(6~56)だった。
サブグループ解析でも、高用量群で有益な作用を示すエビデンスは認めなかった。高用量群で死亡率が高いサブグループとして、ベースラインで抗レトロウイルス療法(ART)を受けていたHIVの被験者(高用量群42%vs. 標準用量群25%、HR:2.01、95%CI:1.07~3.78)と、脳脊髄液(CSF)中の白血球数が<5/mm
3の被験者(59%vs.36%、2.01、1.14~3.54)を認めた。
Kaplan-Meier法による12ヵ月時の死亡率(高用量群47.0%vs.標準用量群43.7%、HR:1.14、95%CI:0.88~1.49)や、24週時の修正Rankinスケールスコア(オッズ比:0.80、95%CI:0.58~1.11)にも両群間で有意差はみられなかった。また、他の副次アウトカム(Liverpool Outcomeスコア、グラスゴー・コーマ・スケールスコアなど)にも、両群間で有意差はなかった。
新たな安全性シグナルの発現はない
新たな安全性シグナルは観察されなかった。重篤な有害事象(高用量群33.7%vs.標準用量群40.4%、p=0.12)の頻度は両群で同程度だった。グレード3~5の誤嚥性肺炎(6.4%vs.1.6%、p=0.006)が、高用量群で多く発生した。
グレード3/4の肝イベントのうち、総ビリルビン値の上昇(≧2.6×基準範囲上限[ULN]、9.6%vs.3.6%、p=0.007)が高用量群で高頻度にみられた。グレード3/4の薬剤性肝障害(8.0%vs.4.4%、p=0.09)は高用量群で頻度が高い傾向を認めたが、薬剤性肝障害による死亡は両群とも発生しなかった。
著者は、「高用量リファンピシンによる有益性が得られなかった説明として、次の2点が挙げられる。(1)高用量群では、肝代謝の誘導がより強かったため、グルココルチコイドの曝露量が低かった可能性がある、(2)高用量リファンピシンによるマイコバクテリアのより迅速な殺菌が、理論上は、より強い(有害な)免疫学的反応を引き起こした可能性がある」としている。
(医学ライター 菅野 守)