HIV陽性者の結核性髄膜炎、デキサメタゾン追加は有用か/NEJM

提供元:ケアネット

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公開日:2023/10/24

 

 結核性髄膜炎を有するHIV陽性の成人患者の治療において、抗結核化学療法に補助療法としてデキサメタゾンを追加する方法は、プラセボの追加と比較して、1年生存率を改善せず、神経障害や免疫再構築症候群(IRIS)の発生などに関しても有益性を認めないことが、ベトナム・オックスフォード大学臨床研究所(OUCRU)のJoseph Donovan氏らが実施した「ACT HIV試験」で示された。研究の詳細は、NEJM誌2023年10月12日に掲載された。

ベトナムとインドネシアの無作為化プラセボ対照試験

 ACT HIV試験は、ベトナムとインドネシアの施設で実施された二重盲検無作為化プラセボ対照試験であり、2017年5月~2021年4月の期間に参加者の無作為化を行った(Wellcome Trustの助成を受けた)。

 対象は、年齢18歳以上、HIV陽性(新規または過去の診断)で、臨床的に結核性髄膜炎(髄膜炎症状と脳脊髄液[CSF]の異常が5日以上持続)との診断を受け、担当医によって抗結核化学療法が予定されているか、開始された患者であった。

 被験者を、12ヵ月間の標準的な抗結核化学療法に加え、デキサメタゾンまたはプラセボを6~8週間で漸減投与する群に、1対1の割合で無作為に割り付けた。

 主要エンドポイントは、無作為化から12ヵ月間における全死因死亡とした。

 ITT集団として520例(年齢中央値36歳[四分位範囲[IQR]:30~41]、男性76.2%)を登録し、デキサメタゾン群に263例、プラセボ群に257例を割り付けた。255例(49.0%)は抗レトロウイルス療法(ART)を1回も受けたことがなく、データを入手できた484例のうち251例(51.9%)がベースラインのCD4細胞数が50/mm3以下であった。

死亡率は容認できないほど高い

 結核性髄膜炎の重症度は全般に軽度~中等度で、Medical Research Council(MRC)の修正重症度分類のグレード1または2が447例(86.0%)を占めた。登録時の抗結核化学療法レジメンとして、93.0%でリファンピシン、94.4%でイソニアジド、91.6%でピラジナミド、70.8%でエタンブトールが使用されていた。

 12ヵ月の追跡期間中に、デキサメタゾン群の263例中116例(44.1%)、プラセボ群の257例中126例(49.0%)が死亡し(ハザード比[HR]:0.85、95%信頼区間[CI]:0.66~1.10、p=0.22)、1年生存率に関して両群間に有意な差を認めなかった(主要エンドポイント)。

 事前に規定されたサブグループの解析では、デキサメタゾン群で明確な有益性を示したものはなかった。また、per-protocol集団とそのサブグループでも有益性を認めたものはなかった。

 副次エンドポイントについても、ITT集団およびper-protocol集団の双方で両群間に差はなかった。たとえば、ITT集団における12ヵ月時の神経障害(修正Rankinスケール3~5)のオッズ比は1.31(95%CI:0.80~2.14)、最初の6ヵ月間のIRIS発生のHRは1.11(95%CI:0.46~2.69)、12ヵ月間における新たな神経学的イベントの発生または死亡のHRは0.85(95%CI:0.67~1.08)、AIDSを定義するイベントの発生または死亡のHRは0.87(95%CI:0.68~1.12)だった。

 12ヵ月時までに少なくとも1件の重篤な有害事象を発現した患者は、デキサメタゾン群が263例中192例(73.0%)、プラセボ群は257例中194例(75.5%)であった(p=0.52)。また、重篤な神経学的有害事象が発現した患者の割合は、プラセボ群(115/257例[44.7%])よりもデキサメタゾン群(95/263例[36.1%])で低かった。

 著者は、「これらの結果は、HIV陽性者の結核性髄膜炎に伴う死亡率は依然として容認できないほど高く、HIVと結核の発見と早期治療の強化が世界的に重要であることを強調するものである」と指摘している。

(医学ライター 菅野 守)