高出血リスクへのPCIステント、ポリマーベースvs.ポリマーフリー/NEJM

出血リスクが高い、経皮的冠動脈インターベンション(PCI)後に1ヵ月の抗血小板薬2剤併用療法を行った患者において、ポリマーベース・ゾタロリムス溶出ステントの使用は、ポリマーフリー・umirolimus被覆ステントの使用に対し、安全性および有効性の複合アウトカムについて非劣性であったことが示された。スイス・ベルン大学のStephan Windecker氏らが、約2,000例を対象に行った無作為化単盲検試験で明らかにした。これまで同患者において、ポリマーフリー・薬剤被覆ステントの使用は優れた臨床的アウトカムを示すことが報告されていたが、ポリマーベース・薬剤溶出ステントとの比較データは限られていた。NEJM誌オンライン版2020年2月12日号掲載の報告。
1年後の心臓死、心筋梗塞、ステント血栓症の統合アウトカムを比較
研究グループは、PCIを受ける患者で出血リスクの高い1,996例を対象に試験を行った。被験者を無作為に2群に分け、一方にはポリマーベースのゾタロリムス溶出ステントを(1,003例)、もう一方の群にはポリマーフリーのumirolimus被覆ステントを用いてPCIを施行した(993例)。被験者は術後、抗血小板薬2剤併用療法を1ヵ月、その後は抗血小板薬単剤療法を受けた。
主要アウトカムは、1年時点の心臓死、心筋梗塞、ステント血栓症の統合アウトカムだった。主な副次アウトカムは、標的病変不全と、心臓死、標的病変心筋梗塞または標的病変血行再建の臨床的必要性のいずれかで評価した有効性だった。両アウトカムともに、非劣性検証を行った。
主な副次アウトカムも非劣性
1年時点の主要アウトカム発生は、ゾタロリムス溶出ステント群17.1%(988例中169例)、ポリマーフリー・umirolimus被覆ステント群16.9%(969例中164例)だった(リスク差:0.2ポイント、97.5%片側信頼区間[CI]上限:3.5、非劣性マージン:4.1、非劣性のp=0.01)。主な副次アウトカムの発生も、ゾタロリムス溶出ステント群17.6%(174例)、ポリマーフリー・umirolimus被覆ステント群17.4%(169例)だった(リスク差:0.2ポイント、97.5%片側CI上限:3.5、非劣性マージン:4.4、非劣性のp=0.007)。
(医療ジャーナリスト 當麻 あづさ)
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冠動脈ステントのポリマー論争に決着か?(解説:中川義久氏)-1196
コメンテーター : 中川 義久( なかがわ よしひさ ) 氏
滋賀医科大学 循環器内科 教授
J-CLEAR評議員