STEMIのプライマリPCI、新世代ステントが有望/Lancet

提供元:ケアネット

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公開日:2019/09/24

 

 直接的経皮的冠動脈インターベンション(プライマリPCI)を受ける急性期ST上昇型心筋梗塞(STEMI)患者では、1年後の標的病変不全の発生に関して、生分解性ポリマー・シロリムス溶出ステントは耐久性ポリマー・エベロリムス溶出ステントよりも有効であることが、スイス・ジュネーブ大学病院のJuan F. Iglesias氏らが行ったBIOSTEMI試験で示された。研究の詳細は、Lancet誌オンライン版2019年9月2日号に掲載された。超薄型ストラット金属プラットホームと生分解性ポリマーを組み合わせた新世代の薬剤溶出ステントは、薄型ストラットを用いた第2世代の薬剤溶出ステントに比べて、プライマリPCIを受ける急性心筋梗塞患者の血管治癒を促進し、臨床アウトカムを改善する可能性が示唆されていた。

標的病変不全を評価する医師主導無作為化試験
 本研究は、スイスの10施設が参加した医師主導型の多施設共同単盲検無作為化試験であり、2016年4月~2018年3月の期間に患者登録が行われた(Biotronikの助成による)。

 対象は、年齢18歳以上、発症から24時間以内で、1つ以上の冠動脈責任病変を有し、プライマリPCIが検討されている急性期STEMI患者であった。

 被験者は、生分解性ポリマーからシロリムスを溶出する超薄型ストラット・コバルトクロム合金製ステント(Orsiro)を留置する群(生分解性ポリマー群)、または耐久性ポリマーからエベロリムスを溶出する薄型ストラット・コバルトクロム合金製ステント(Xience Xpedition/Alpine)を留置する群(対照群)に、1対1の割合で無作為に割り付けられた。

 主要エンドポイントは、12ヵ月後の標的病変不全(心臓死、標的血管の心筋再梗塞、臨床的に必要とされる標的病変再血行再建術)とした。

標的病変不全:4% vs.6%、不全の個々の項目に差はない
 1,300例(1,623病変)が登録され、生分解性ポリマー群に649例(816病変、62.2[SD 11.8]歳、女性21%)、対照群には651例(806病変、63.2[11.8]歳、女性27%)が割り付けられた。1年後のフォローアップデータは、生分解性ポリマー群が614例(95%)、対照群は626例(96%)で得られた。

 1年後の標的病変不全は、生分解性ポリマー群が649例中25例(4%)で発生し、対照群の651例中36例(6%)と比較して、有意に良好であった(群間差:-1.6、率比[RR]:0.59、95%ベイズ確信区間[Crl]:0.37~0.94、ベイズ事後確率:0.986)。

 1年後の心臓死(生分解性ポリマー群3% vs.対照群3%、RR:0.77、95%Crl:0.43~1.40、ベイズ事後確率:0.806)、標的血管の再心筋梗塞(1% vs.1%、0.55、0.19~1.60、0.875)、臨床的に必要とされる標的病変再血行再建術(1% vs.3%、0.55、0.26~1.13、0.949)、全死因死亡(4% vs.3%、0.97、0.58~1.62、0.553)、definiteステント血栓症(1% vs.1%、0.68、0.22~1.89、0.762)、出血(Bleeding Academic Research Consortium[BARC]基準の3~5)(3% vs.2%、1.26、0.73~2.45、0.205)は、両群間に差が認められなかった。

 著者は、「標的病変不全の差は、主に虚血による標的病変再血行再建術が生分解性ポリマー群で少なかったことによると考えられる」とし、「急性心筋梗塞患者のプライマリPCIでは、新世代の薬剤溶出ステントはベアメタルステントに比べ高い有効性をもたらすが、超薄型ストラット金属プラットホームと生分解性ポリマーを組み合わせたステント技術の改良により、臨床アウトカムがさらに改善する可能性が示唆される」と指摘している。

(医学ライター 菅野 守)

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コメンテーター : 上田 恭敬( うえだ やすのり ) 氏

国立病院機構大阪医療センター 循環器内科 科長

J-CLEAR評議員