乳酸脱水素酵素(LDH)は、肝臓をはじめ、心臓、肺などほぼ全身の組織に細胞質酵素として存在する。これまで循環器領域では心筋梗塞の指標として用いられているが、このほど、LDHの上昇が心不全(HF)の予後予測に重要であることが明らかになった。英国・心臓財団グラスゴー心血管研究センターの小野 亮平氏らがGALACTIC-HF試験対象者を解析した結果、LDHの上昇が左室駆出率の低下した心不全 (HFrEF)の臨床アウトカムの上昇と独立して関連性を示したという。 JACC:Heart Failure誌オンライン版 2026年1月15 日号掲載の報告。
研究者らは、細胞障害の非特異的な指標であるLDH とHFrEFの臨床的特徴などを評価するため、GALACTIC-HF試験*データを用い、LDHと臨床アウトカムの関係を解析した。主要評価項目は初回心不全イベントの発生または心血管死。予後予測モデルPREDICT-HFにLDHを追加した場合のリスクモデル精度は、C統計量、統合判別改善度(IDI)、純再分類改善度(NRI)を用いて算出した。また、LDH高値は250U/L超と定義した。
*HFrEF患者における選択的心筋ミオシン活性化薬omecamtiv mecarbiの有効性・安全性を評価する国際第III相二重盲検ランダム化プラセボ対照多施設共同試験
主な結果は以下のとおり。
・GALACTIC-HF試験の8,179例(外来患者6,138例を含む)のベースラインのLDHデータを用いた。
・対象者の主な組み入れ基準は、(1)左室駆出率35%以下、(2)NYHA心機能分類II~IV、(3)利尿ペプチド(NT-proBNPなど)のレベル上昇、(4)1年以内の入院または緊急受診を伴うHFを経験した入院患者/外来患者であった。
・本対象者のLDH高値例は、女性が多く、重症HFであった。また、血清クレアチニン、肝酵素、クレアチンキナーゼ、NT-proBNP、高感度トロポニンIの上昇も認められた。
・対象者を四分位群に分類したところ、血清LDHの中央値は第1四分位群(Q1)155U/L、第2四分位群(Q2)183U/L、第3四分位群(Q3)207U/L、第4四分位群(Q4)253U/Lであった。
・主要評価項目のハザード比(HR)について、LDHが最も低いQ1と比較すると、Q2はHR1.15(95%信頼区間[CI]:1.02~1.31)、Q3はHR1.39(95%CI:1.23~1.58)、Q4はHR1.84(95%CI:1.62~2.08)であった。
・ほかの予後変数などの調整後もLDHの上昇は臨床アウトカムの悪化と独立して関連していた。
・ベースラインのLDHをPREDICT-HFモデルに追加すると、3つの指標(C統計量、IDI、およびNRI)全体における主要評価項目の予測精度が改善された。
(ケアネット 土井 舞子)