治療抵抗性うつ病に対する増強療法の性差

提供元:ケアネット

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公開日:2022/03/21

 

 女性は男性よりもうつ病の有病率が約2倍高い可能性が示唆されている。しかし、治療抵抗性うつ病患者に対する増強療法に関して、男女間で臨床アウトカムを比較した研究は、あまり行われていない。カナダ・マギル大学のChristophe Moderie氏らは、マギル大学ヘルスセンターにおける治療抵抗性うつ病に対する増強療法の効果について、男女間での比較を行った。The International Journal of Neuropsychopharmacology誌オンライン版2022年2月15日号の報告。

 抗うつ薬治療に気分安定薬(AD+MS)または抗精神病薬(AD+AP)およびその両方(AD+AP+MS)での併用療法を行った治療抵抗性うつ病患者76例(男性:34例、女性:42例)を対象に、健康記録のレビューを実施した。臨床アウトカムは、HAMD-17、MADRS、QIDS-C16、CGI-Sによる治療開始時(T0)から3ヵ月後(T3)までの変化とし、比較を行った。HAMD-17の各項目の変化についての比較も行った。

 主な結果は以下のとおり。

・男女ともに、T0からT3にかけてすべてのスコアで改善が認められた(p<0.001、ηp2≧0.68)。
・すべてのスコアにおいて、性別と時間の相互作用が認められ(p<0.05、ηp2≧0.06)、女性は男性と比較し、より大きな改善が認められた。
・女性において、より大きな改善が認められた項目は、以下のとおりであった。
 ●早期改善(p=0.03、ηp2=0.08)
 ●深夜の不眠(p=0.01、ηp2=0.09)
 ●精神運動障害(p<0.001、ηp2=0.16)
 ●精神的不安(p=0.02、ηp2=0.07)
 ●身体的不安(p=0.01、ηp2=0.10)

 著者らは「治療抵抗性うつ病に対するAD+AP/MSによる増強療法は、男性よりも女性において臨床反応が有意に高く、男女間での薬理学的プロファイルの違いが示唆された。女性に対する増強療法のベネフィットがとくに認められ、APやMSの併用により不眠症状や不安症状の改善に寄与すると考えられる」としている。

(鷹野 敦夫)