ブレークスルー感染におけるリスク因子は?

提供元:ケアネット

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公開日:2021/09/13

 

 COVID-19ワクチンの2回接種を終了していても、その後感染するいわゆる「ブレークスルー感染」におけるリスク因子を調査した研究結果がThe Lancet Infectious diseases誌オンライン版9月1日号に掲載された。英国・キングス・カレッジ・ロンドンのMichela Antonelli氏らは、ワクチン接種後の感染におけるリスク因子を調査するために、英国のCOVID追跡アプリの利用者である成人から得られた自己申告データを用いた大規模なケースコントロール研究を行った。

 2020年12月8日~2021年7月4日の間にCOVID-19ワクチンの1回目または2回目の接種を受け、接種前の検査で陰性だった者を対象として、以下の群に分けた。

・1回目接種後14日以上経過し、COVID-19検査が陽性(症例群1)
・2回目の接種後7日以上経過し、検査が陽性(症例群2)
・1回目接種後14日以上経過し、2回目の接種前の検査が陰性(対照群1)
・2回目の接種後7日以上経過し、検査が陰性(対照群2)

 対照群1・2をワクチン接種後の検査日、医療従事者か、性別で症例群1・2に1対1でマッチさせた。疾患プロファイル分析では、症例群1・2の中から、陽性判定後、少なくとも14日間連続してアプリを使用した参加者(症例群3・4)をサブセレクトした。陽性を報告したワクチン未接種者で、検査後連続14日以上アプリを使用した参加者を対照群3・4とし、それぞれ症例群3・4と陽性検査日、医療従事者かどうか、BMI、年齢によって1:1でマッチさせた。単変量ロジスティック回帰モデルを用いて、危険因子とワクチン接種後の感染との関連、および個々の症状、全体の罹患期間、疾患の重症度とワクチン接種の有無との関連を分析した。

 主な結果は以下のとおり。

・期間内に124万9例が1回目のワクチン接種を報告し、そのうち6,030例(0.5%)がその後に陽性反応を示した(症例群1)。また、97万1,504例が2回目のワクチン接種を報告し、そのうち2,370例(0.2%)が陽性反応を示した(症例群2)。
・1回目接種のワクチンの種類の内訳はファイザー製:44万2,752例、アストラゼネカ製:75万137例、モデルナ製:1万7,958例だった。
・危険因子分析では、フレイルは高齢者(60歳以上)における1回目接種後の感染と関連し(オッズ比[OR]1.93、95%CI:1.50~2.48、p<0.0001)、貧困度の高い地域の居住者は1回接種後の感染リスクが高かった(OR:1.11、95%CI:1.01~1.23、p=0.039)。非肥満(BMI<30kg/m2)は1回目接種後の感染リスクが低かった(OR:0.84、95%CI:0.75~0.94、p=0.0030)。
・疾患プロファイル解析では、症例群3には症例群1の3,825例、症例群4には症例群2の906例が含まれた。ワクチン接種(無接種との比較)は、1回目または2回目接種後の入院または発病1週間以内に5つ以上の症状が出る率、および2回目接種後の長期にわたる症状(28日以上)の低下と関連していた。症例群において対照群よりも有意に多い併存疾患として報告されたのは、喘息と肺疾患だった。
・ワクチンの種類にも有意差があり、全群において症例群は対照群よりもアストラゼネカ製の接種例が多く、ファイザー製が少なかった。モデルナ製接種後の陽性例は1回目1万7,958例中86例、2回目3,417例中1例のみであった。
・ワクチン接種を受けた感染者では、ワクチン接種を受けていない感染者に比べて、ほぼすべての症状が報告される頻度が低く、とくに60歳以上の場合、ワクチン接種を受けた参加者は、完全に無症状である可能性が高かった。
・年齢とワクチン接種後の感染との間には有意な逆相関が認められ、それは高齢者では若年者よりも1回目の接種後(年齢1歳上昇ごとにOR:0.94、95%CI:0.93~0.95、p<0.0001)、2回目の接種後(0.93、0.92~0.95、p<0.0001)に顕著であった。

 著者らは「高齢者ほどワクチン接種後の感染リスクが低下することがわかった。一方で、フレイルの高齢者や貧困地域に住む人々はワクチン接種後の感染リスクが高く、ワクチン接種後もソーシャルディスタンスやその他の感染防止策を取り続ける必要があることを示唆しており、これらの結果は今後のブースター接種の戦略などにも影響を与える可能性がある」としている。また本研究の限界として「異なる年齢層や人口統計で投与されるワクチンの種類に影響を与える交絡因子があることを考慮すると、われわれの観察結果は慎重に扱うべきである。今回の研究は正式な比較ではなく、観察研究である」としている。

(ケアネット 杉崎 真名)