症候性骨盤臓器脱患者において、リングペッサリーのエストロゲンクリーム使用は満足度の高いペッサリー使用継続を改善しなかったが、一般的な有害事象のリスク低下と関連している可能性があることが示された。中国・Chinese Academy of Medical Sciences & Peking Union Medical CollegeのYing Zhou氏らが、同国5地域8省の12施設で実施した無作為化二重盲検プラセボ対照比較試験の結果を報告した。骨盤臓器脱は閉経後女性によく見られ、生活の質に影響を与える。ペッサリーの使用は、症候性骨盤臓器脱に対する第1選択であるが、使用に伴う不満や合併症により、多くの女性が使用を中止している。膣エストロゲンがペッサリーの使用に及ぼす影響を調査した研究は限られており、症例数が少なく方法論的な問題があるため、エビデンスの質は低かった。結果を踏まえて著者は、「膣エストロゲンの使用に関する臨床的判断は、その有益性とリスク、そして患者の個人的な希望を考慮する必要がある」とまとめている。BMJ誌2025年6月27日号掲載の報告。
ペッサリー使用の継続と患者報告による改善をプラセボと比較
研究グループは、ステージ2以上の症候性骨盤臓器脱を有し、リングペッサリーの装着に成功した閉経後女性を、エストロゲン群またはプラセボ群に1対1の割合で無作為に割り付け、1gの結合型エストロゲンクリーム(0.625mg/g)またはプラセボクリームを、最初の2週間は毎晩、その後12ヵ月間は週2回、膣内に塗布してもらった。
患者または介護者には、ペッサリーのケア方法(就寝時に取り外し、翌朝に再挿入すること)について週1回以上指導を行うとともに、1年間3ヵ月ごとの追跡調査(対面、対面が困難な場合は電話)を行った。
主要アウトカムは、ペッサリー使用の継続と12ヵ月時の患者報告による改善の複合で、ペッサリー使用の継続は週5日間以上使用していること、患者報告による改善はPatient Global Impression of Improvement(PGI-I)質問票における「非常によくなった」または「かなりよくなった」と定義した。副次アウトカムは、患者報告による骨盤底症状および有害事象とした。
すべての解析は、無作為化され少なくとも1回追跡調査を受けたすべての患者(修正ITT集団)を対象とした。
エストロゲンクリーム使用も有意な改善なし
2020年5月~2023年6月に420例が無作為化され、うち411例が修正ITT解析に組み入れられた(エストロゲン群208例、プラセボ群203例)。平均年齢は66歳であった。
主要複合アウトカムは、エストロゲン群181/208例(87.0%)、プラセボ群176/203例(86.7%)に認められ、両群で有意差はなかった(リスク群間差:0.3%、95%信頼区間[CI]:-6.2~6.9、p=0.92)。
最も多く報告された有害事象である過剰な膣分泌物(エストロゲン群34/208例[16.3%]vs.プラセボ群52/203例[25.6%]、リスク群間差:-9.3%[95%CI:-17.1~-1.4])のほか、膣びらんまたは潰瘍(4/208例[1.9%]vs.14/203例[6.9%]、-5.0%[-8.9~-1.0])、膣出血(3/208例[1.4%]vs.13/203例[6.4%]、-5.0%[-8.7~-1.2])はエストロゲン群で少なかった。
(医学ライター 吉尾 幸恵)