統合失調症に対するセロトニン5-HT1A受容体パーシャルアゴニスト(5-HT1A-PA)補助療法は、注意力/処理速度の改善と関連していることが報告されている。また、5-HT1A受容体は、気分障害の病態生理においても重要な役割を果たしていることが示唆されている。さらに、5-HT1A受容体への刺激が抗うつ効果を増強することを示す説得力のあるエビデンスも報告されている。国立精神・神経医療研究センターの山田 理沙氏らは、気分障害患者の認知機能改善に対する5-HT1A-PA補助療法の有効性を評価するため、ランダム化比較試験(RCT)のシステマティックレビューを実施した。Neuropsychopharmacology Reports誌2025年6月号の報告。
1987〜2024年1月に公表された研究をPubMed、Cochrane Library、Web of Scienceデータベースより検索した。選択基準は、RCT、ヒトを対象、精神疾患(統合失調症/統合失調感情障害を除く)患者を対象、認知機能への影響を評価、英語論文とした。
主な結果は以下のとおり。
・スクリーニングした80件の研究のうち、3件が選択基準を満たした。
・血管性うつ病対象が2件、うつ病対象が1件。
・うつ病において、buspironeとメラトニンの併用療法は、buspirone単独またはプラセボと比較し、主観的な認知機能の改善に有効であった。
・血管性うつ病における実行機能および言語流暢性の改善に対し、エスシタロプラムとタンドスピロン併用療法は、エスシタロプラム単独よりも有効であった。
著者らは「気分障害患者の認知機能に対して潜在的により強力な効果の可能性を検討するためにも、新規5-HT1A-PAを用いたさらなる研究が求められる」としている。
(鷹野 敦夫)