日本人高齢者の認知症発症率に対する感覚障害の影響

認知症および認知症の周辺症状(BPSD)は、高齢者の介護の必要レベルに影響を及ぼす。高齢者では、加齢に伴い感覚障害の発生率が上昇し、認知症の発症を加速させる。大勝病院の丸田 道雄氏らは、視覚障害(VI)、聴覚障害(HI)などの感覚障害とBPSDおよび認知症の発症率との関連について調査を行った。Psychogeriatrics誌オンライン版2019年12月4日号の報告。
日本のある都市における2010~17年の介護保険データを用いて、レトロスペクティブ研究を実施した。2010年時点で認知症でなかった高齢者2,190人を、感覚障害の4つのカテゴリー、VI群、HI群、VIとHI両方の感覚障害(DSI)群、感覚障害なし(NO)群に分類した。認知症の発症率は、カプランマイヤー生存分析およびlog-rank検定を用いて調査した。NO群と比較した、感覚障害に関連する認知症発症リスクは、Cox比例ハザード分析を用いて調査した。4群間のBPSD有病率は、ピアソンのχ2検定を用いて比較した。
主な結果は以下のとおり。
・HI群(log-rank χ2:10.42、p<0.001)とDSI群(log-rank χ2:39.92、p<0.001)は、NO群と比較し、認知症の累積発症率が高かった。
・DSI群はHI群と比較し、認知症の累積発症率が高かった(log-rank χ2:11.37、p=0.001)。
・Cox比例ハザード分析では、感覚障害の中でDSIが認知症発症に対する最も大きなリスク因子であることが示唆された(ハザード比:1.45、95%CI:1.22~1.71、p<0.001)。
・VI群は、そのほかの群と比較し、昼夜逆転の有病率が有意に高かった。
著者らは「感覚障害を有する高齢者では認知症の発症率が高く、DSIは最もリスクが高いことが示唆された。また、VIを有する高齢者では、認知症の発症時に昼夜逆転を呈する可能性が高いことが示唆された」としている。
(鷹野 敦夫)
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