CLL治療のアンメットニーズを埋めるピルトブルチニブ/日本新薬

提供元:ケアネット

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公開日:2025/11/07

 

 慢性リンパ性白血病(CLL)の治療において、初回治療の共有結合型BTK阻害薬に無効になった場合、これまでBCL2阻害薬ベネトクラクスとリツキシマブの併用療法が唯一の選択肢であり、この併用療法が無効の場合の対応が課題であった。そのような中、2025年9月に非共有結合型BTK阻害薬ピルトブルチニブ(商品名:ジャイパーカ)が再発・難治性のCLLに承認され、3次治療はもちろん、2次治療で本剤とベネトクラクス+リツキシマブのどちらかを選択することが可能になった。今回の承認に際し、10月30日に日本新薬によるメディアセミナーが開催され、新潟薬科大学医療技術学部長の青木 定夫氏がCLL治療における最新知見とアンメットニーズ、新たな選択肢であるピルトブルチニブについて講演した。

初回治療の共有結合型BTK阻害薬への耐性例にも効果を発揮

 日本血液学会の造血器腫瘍診療ガイドライン第3.1版(2024年版)におけるCLL診療のアルゴリズムでは、CLLの診断後、症候性もしくは活動性で治療が必要と判断された場合にのみ治療を行う。アルゴリズムは17p欠失/TP53変異の有無やfit/unfitで分かれるが、最終的に推奨レジメンはすべてBTK阻害薬となる。

 BTK阻害薬には、共有結合型と非共有結合型の2種類あり、共有結合型では現在、イブルチニブ、アカラブルチニブ、ザヌブルチニブがCLLに承認されている。今回、ピルトブルチニブが非共有結合型BTK阻害薬として初めてCLLに承認された。

 青木氏は、2種類のBTK阻害薬について、共有結合型BTK阻害薬はBTKのC481に結合しBTKを阻害するため、C481に変異が起こると耐性が生じるが、非共有結合型のピルトブルチニブはBTKへの結合にC481を利用しないため、共有結合型BTK阻害薬に対してC481変異により耐性になった患者にも効果を発揮する、と違いを説明した。

再発・難治性CLL治療の今後

 青木氏は、現時点における再発・難治性CLLの治療について、初回治療に共有結合型BTK阻害薬を使っていない場合は共有結合型BTK阻害薬が有効と思われるが、現在は初回治療に共有結合型BTK阻害薬が使われている場合が多いため、薬剤を変更しても共有結合型BTK阻害薬は効かないことが想定され、非共有結合型BTK阻害薬のピルトブルチニブや、ベネトクラクス+リツキシマブを投与することになると述べた。青木氏は、「これまではベネトクラクス+リツキシマブが唯一の選択肢であったが、ピルトブルチニブが選択可能となったことは非常に患者さんにとって恩恵をもたらす」と、期待を示した。

国際共同第III相試験におけるPFSのハザード比は0.583

 ピルトブルチニブの国際共同第III相試験(BRUIN CLL-321試験)は、BTK阻害薬による治療歴がある再発・難治性CLL患者を対象とし、対照群は治験医師の選択治療(ベンダムスチン+リツキシマブなど)で、ITT解析対象は日本人3例を含む238例であった。

 主要評価項目である無増悪生存期間(PFS)は、ピルトブルチニブ群が有意に良好(ハザード比:0.583、95%信頼区間:0.383~0.887)で、サブグループ解析でも高齢者を含めピルトブルチニブが良好であった。重要な副次評価項目である全生存期間には有意差がなかったが、これについて青木氏は、クロスオーバー可能であったことが関係しているかもしれないが、後から投与しても効果があるとも言える、と説明した。

 安全性については、BTK阻害薬では特徴的な有害事象があることが知られているが、ピルトブルチニブに特別な有害事象は認められていないという。

共有結合型BTK阻害薬抵抗例やベネトクラクス無効例にも効果が期待できる

 最後に青木氏は、「CLLの初回治療は共有結合型BTK阻害薬であり、2次治療以降の選択肢はこれまでベネトクラクス+リツキシマブ、ほかの共有結合型BTK阻害薬しかなかった」とCLL治療の現状を述べ、「ピルトブルチニブはBTK阻害薬抵抗例でも有効性が期待でき、ベネトクラクス無効例でも効果が期待できることから、アンメットメディカルニーズを埋められる」と期待を示し、講演を締めくくった。

(ケアネット 金沢 浩子)