手術リスクの低い症候性重症大動脈弁狭窄症患者を対象に、経カテーテル大動脈弁置換術(TAVR)と外科的大動脈弁置換術を比較した「PARTNER 3試験」の7年追跡解析の結果、死亡、脳卒中および再入院の複合エンドポイントを含む2つの主要エンドポイントについて、いずれも両群に有意差は認められなかったことが示された。米国・New York-Presbyterian HospitalのMartin B. Leon氏らが報告した。本試験の5年追跡解析でも同様の結果が得られていたが、臨床アウトカムと弁の耐久性に関して、より長期の評価が求められていた。NEJM誌オンライン版2025年10月27日号掲載の報告。
5年追跡と同じ2つの主要複合エンドポイントを比較
研究グループは、症候性大動脈弁狭窄症を有し、米国胸部外科医学会の予測死亡リスク(STS-PROM)スコア(範囲:0~100%、高スコアほど術後30日以内の死亡リスクが高い)が4%未満で、臨床的・解剖学的評価に基づき手術リスクが低いと判断された患者1,000例を、経大腿動脈アプローチでバルーン拡張型人工弁(SAPIEN 3)を留置するTAVR群(503例)、または外科的大動脈弁置換術を行う手術群(497例)に、1対1の割合で無作為に割り付けた。治療群にはTAVR群496例、手術群454例が含まれ、臨床アウトカムおよび心エコーアウトカムを経時的に評価した。
7年追跡解析に関する事前に規定された主要エンドポイントは、5年追跡解析と同一である。すなわち、第1主要エンドポイントは、死亡、脳卒中、手技・弁・心不全に関連した再入院の非階層的複合エンドポイント、第2主要エンドポイントは、死亡、後遺症のある脳卒中、後遺症のない脳卒中、手技・弁・心不全に関連した再入院日数の階層的複合エンドポイントであった。
7年追跡結果においても、TAVRと外科的大動脈弁置換術で差はなし
第1主要エンドポイントのイベントは、TAVR群で496例中165例(Kaplan-Meier推定値34.6%)、手術群で454例中156例(同37.2%)に発生した(群間差:-2.6%、95%信頼区間[CI]:-9.0~3.7、ハザード比:0.87、95%CI:0.70~1.08)。第2主要エンドポイントのwin比は1.04(95%CI:0.84~1.30)であった。
第1主要エンドポイントの各構成要素の発生率(Kaplan-Meier推定値)は、死亡がTAVR群19.5%、手術群16.8%、脳卒中がそれぞれ8.5%、8.1%、再入院が20.6%、23.5%であった。
7年時の平均大動脈弁圧較差(平均±SD)は、TAVR群13.1±8.5mmHg、手術群12.1±6.3mmHgであった。生体弁機能不全は、TAVR群で6.9%、手術群で7.3%に認められた。
(医学ライター 吉尾 幸恵)