長期介護における抗精神病薬再投与の要因

提供元:ケアネット

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公開日:2019/07/31

 

 抗精神病薬は、有害事象などが懸念されるにもかかわらず、認知症の周辺症状(BPSD)に対して一般的に用いられる。長期介護における抗精神病薬の使用中止(Halting Antipsychotic Use in Long-Term care:HALT)試験では、抗精神病薬の減量に成功したが、抗精神病薬の再使用または中止に達しなかった患者が19%でみられた。オーストラリア・ニューサウスウェールズ大学のLiesbeth Aerts氏らは、抗精神病薬の再使用の理由や現在使用中の要因と、介護スタッフの要望や行動変化との関連について調査を行った。International Journal of Geriatric Psychiatry誌オンライン版2019年7月5日号の報告。

 HALT試験に参加した133例中39例は、抗精神病薬の使用を中止したことがないか、定期または頓服で使用されていた。これらの結果に至るまでの状況に関する看護スタッフ、総合診療医、家族の見解について、アンケートベースのアプローチを介して収集した。これらの情報は、観察と詳細ファイル(経過記録、医療記録、処方チャート、インシデントレポート、退院サマリー)を用いて三角法で測定した。

 主な結果は以下のとおり。

・抗精神病薬再使用の最も一般的な要因は、看護師(63.2%)であり、次いで家族(39.5%)、総合診療医(23.7%)、専門医(13.2%)、病院スタッフ(10.5%)であった。
・参加者の46.2%において、抗精神病薬使用のための複数のドライバーが認められた。
・客観的尺度でこれらの変化が時間とともに識別されなかったとしても、抗精神病薬の再使用の最も多かった理由は、興奮性および攻撃性行動の増加によるものであった。
・同意や抗精神病薬使用の習慣は、教育を行ったにもかかわらず不十分なままであった。

 著者らは「男性患者の興奮や攻撃性が認められ、介護スタッフによりとくに悪化していると認識されることが、抗精神病薬使用の重要なドライバーとなっていた。HALT試験で使用されたトレーナーモデルは、行動変化に対応する際、スタッフの能力と非薬理学的アプローチを適応することへの自信を向上させるためには不十分であった可能性がある」としている。

(鷹野 敦夫)