強直性脊椎炎、指定難病認定への期待

提供元:ケアネット

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公開日:2015/07/22

 

 2015年7月10日都内にて「強直性脊椎炎、指定難病認定への期待~治療環境とQOLの向上について考える~」と題したプレスセミナーが開催された。
 本セミナーでは、大阪大学大学院 医学系研究科 運動器バイオマテリアル学 准教授の冨田 哲也氏、順天堂大学医学部附属順天堂医院 整形外科・スポーツ診療科 非常勤講師の井上 久氏、大阪行岡医療大学 医療学部理学療法科教授の村田 紀和氏、そして、患者の代表として日本AS友の会の政岡 泰雅氏の4名が、強直性脊椎炎(AS)の概要やAS診断・治療の問題点、患者自身の経験談、指定難病認定について講演を行った。

■ASの概要
 ASは仙腸関節炎や脊椎炎、末梢関節炎、靱帯・腱の付着部炎などを来す慢性炎症性疾患であり、10~30歳代の男性に多く発症する。
 初期症状は腰部、臀部、背部の痛みであり、その痛みはとくに夜間・朝方に強く、機械的腰痛とは異なり運動により軽快するという特徴がある。
 また、ASの80%以上でHLA-B27遺伝子が陽性であることからその関与が示唆されている。

■AS診断・治療の問題点
 わが国では諸外国と比較して患者数が少ないこともあり、その診断・治療法が十分に認知されておらず、発症から確定診断に至るまでに10年もの歳月を費やしてしまうケースも少なくない。生物学的製剤の登場により、治療の選択肢は広がっていることからも早期診断・早期治療が求められている。
 また、ASと診断され、治療を開始した後も患者はさまざまな問題を抱えている。たとえば、器質的障害を抱えている患者は脊柱・股関節可動制限によるADL障害があり、MRI・DXA装置などの検査機器内に水平に入れないことによる疾患の見逃しや誤診の可能性が否定できない。また、人工関節がある場合には感染の原因となったり、画像検査で雑信号が発生することによる疾患の見逃しなどの可能性があり注意が必要である。

■患者の立場から
 ASは少年~青年期に発症することが多く、また症状の発現に波があることから、「さぼっている」「怠け者」として扱われ、家庭・学校・職場などで理解を得られないことも少なくない。実際、政岡氏自身も職場の理解が得られずに退職に追い込まれたという。その後ASに造詣が深い医師に出会い、生物学的製剤を投与することで病状は安定し、仕事を再開できるようになった。生物学的製剤は高額であることもあり、今回の指定難病認定は患者の立場からも非常に喜ばしいことだという。

■指定難病認定について
 平成3年に設立された日本AS友の会は、指定難病認定に向けて、患者実態調査や厚生労働省への陳情活動、関連団体との連携を行ってきた。これまでの努力が実を結び、昨年5月23日に成立した難病新法(難病の患者に対する医療などに関する法律)により、ASは医療費助成対象疾患である指定難病に認定された。ただし、医療費助成の対象となるのは重症例であるため、申請にあたり、世界初となるASの重症度分類を作成したという。
 ASが指定難病に認定されたことは大きな一歩である。この制度を活用し、社会復帰に向けて歩みを進めていただければ幸いである。

(ケアネット 有田 衣里)