セロトニン症候群の発現メカニズムが判明

提供元:ケアネット

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公開日:2014/03/14

 

 米国フロリダ・アトランティック大学のRui Tao氏らは、モノアミンオキシダーゼ阻害薬(MAOIs)と選択的セロトニン(5-HT)再取り込み阻害薬(SSRIs)併用時に惹起されるセロトニン症候群のメカニズムを明らかにするため、ラットにクロルギリンおよびパロキセチンを投与して検討を行った。その結果、5-HTの通常の10倍以上の過剰分泌がセロトニン症候群の発現に関連し、セロトニン症候群の重症度はMAOIによるシナプス後性回路の薬理学的変化に起因する可能性を示唆した。Neuropsychopharmacology誌オンライン版2014年2月28日号の掲載報告。

 MAOIsと選択的5-HT再取り込み阻害薬(SSRIs)の薬物相互作用として惹起されるセロトニン症候群は、通常は軽度であるが重度となることもある。しかしながら、本症候群の誘発と重症化に関連する神経メカニズムはほとんど知られていない。本研究では、セロトニン症候群の誘発と重症度は2種類の異なる、ただし相互に関係のあるメカニズムによるのではないかと仮説を立てた。すなわち、「セロトニン症候群は脳内5-HTの過剰により惹起され (シナプス前性のメカニズム)、重症度は5-HT2A およびNMDA受容体を含む神経回路に起因する(シナプス後性のメカニズム)」との仮説を検証するため、ラットにMAOIであるクロルギリンを1日1回、3、6または13日間投与し、5-HTの基礎分泌とシナプス後性回路を薬理学的に変化させた。セロトニン症候群の重症度は、クロルギリンとSSRIのパロキセチン併用に応答してみられる5-HT分泌、神経筋活性および体幹の温度から推定した。

 主な結果は以下のとおり。

・セロトニン症候群は、5-HTがベースラインと比べ10倍以上の過剰分泌となった段階で発現し、シナプス前性メカニズムの仮説が確認された。
・クロルギリンを3日間および6日間連日投与したラットにおいて、神経筋および体幹温度の異常は(薬剤非投与ラットでは軽度であったが)、セロトニン症候群を有意に重症化させた。ただし、13日間連日投与されたラットでは有意な重症化はみられなかった。
・重症化はM100907およびMK-801により阻害されたことから、5-HT2A およびNMDA受容体に関わる回路を介して重症度が多様になることが示唆される。
・以上より、MAOIによる前治療で薬理学的にシナプス後性回路を変化させることが、セロトニン症候群の重症度の変化に関与していると考えられた。

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(ケアネット)