定位放射線、5個以上の脳転移で症状負担・日常生活機能を改善/JAMA

提供元:ケアネット

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公開日:2026/03/09

 

 米国・ダナファーバーがん研究所のAyal A. Aizer氏らは、5~20個の脳転移を有するがん患者において、定位放射線照射(stereotactic radiation:STR)が海馬回避全脳照射(hippocampal-avoidance whole brain radiation:HA-WBR)と比較して、生活の質の重要な要件である症状負担と日常生活機能への支障を有意に改善することを示した。がん患者では脳転移が高頻度にみられるが、血液脳関門が薬剤の通過を阻害するため一般に放射線治療が行われる。脳転移が4個以下の患者では腫瘍に限定して集中照射するSTRが標準とされるが、5個以上の場合の標準治療は確立されていない。もう1つの選択肢である全脳照射は、認知機能障害を来すリスクがあるが、記憶に重要な海馬領域への照射を控えたHA-WBRが開発されていた。研究の成果は、JAMA誌オンライン版2026年2月19日号に掲載された。

2つの照射法を直接比較する米国の第III相試験

 本研究は、米国の4施設で実施した非盲検無作為化第III相試験であり、2017年4月~2024年5月に、生検で確認された固形がんで、5~15個(2018年10月に一般化可能性を重視して5~20個に変更)の脳転移を有し、脳への放射線照射を受けたことがない患者を対象とした(Varianの助成を受けた)。

 被験者を、STR(1日照射[定位手術的照射、標準線量20Gy]または5日間の分割照射[定位放射線治療、標準線量30Gy])を受ける群(98例)、またはHA-WBR(線量30Gy、10日間の分割照射、メマンチンを併用)を受ける群(98例)に無作為に割り付けた。

 主要アウトカムは、MD Anderson症状評価表-脳腫瘍版(MDASI-BT)(0~10点[高スコアほど重症度が高く支障が大きい]、スコアの変化の範囲:-10~10点、-10点が最良)を用いた、患者報告による症状の重症度と日常生活への支障のスコアの、ベースラインから6ヵ月後までの変化の加重平均値。臨床的に意義のある変化量は0.98と定義した。

主要アウトカムが有意に改善、生存期間は同程度

 196例(平均年齢61歳、女性129例[66%])が登録された。ベースラインの全体の脳転移数中央値は14個(四分位範囲:11~18)で、49例(25%)が脳神経外科的切除術を受けた経験があった。83例(42%)が6ヵ月間の評価を完了した。

 主要アウトカムについては、ベースラインから、6ヵ月間の追跡期間のベースライン後評価までの加重複合MDASI-BTスコアが、HA-WBR群で2.29点から3.03点へと悪化(平均変化量0.74点)したのに対し、STR群では2.69点から2.37点へと改善(同-0.32点)し、両群間に臨床的に意義のある有意な差を認めた(平均群間差:-1.06点、95%信頼区間:-1.54~-0.58、p<0.001)。

 STR群で80例、HA-WBR群で85例が死亡し、生存期間中央値はそれぞれ8.3ヵ月および8.5ヵ月であった(p=0.30)。神経学的死亡は、STR群で19例(19%)、HA-WBR群で18例(18%)に発生し、年間累積発生率は9.4%および8.5%であった(p=0.35)。

 新規脳転移の発生率はSTR群で有意に高く(年間累積発生率:45.4%vs.24.2%、p=0.003)、局所再発率はSTR群で有意に低かった(3.2%vs.39.5%、p<0.001)。頭蓋内病変の進展率には差がない(46.4%vs.39.4%、p=0.15)が、画像上の放射線脳壊死の発生率はSTR群で高かった(14.8%vs.1.1%、p=0.001)。また、12ヵ月時の認知機能はSTR群で有意に良好だった(p=0.004)。

Grade3~5の有害事象に差はない

 最も頻度の高い放射線照射関連有害事象は、STR群ではGrade1~3の疲労(27例[28%])、頭痛(15例[15%])、悪心(13例[13%])であり、HA-WBR群ではGrade1~3の疲労(43例[44%])、食欲不振(22例[22%])、頭痛(13例[13%])であった。Grade3~5の有害事象の発生率は両群で同程度だった(12例[12%]vs.13例[13%])。

 著者は、「これまで4個以下の転移に限定されていたSTRの適応が、5~20個の多発性脳転移でも標準的な選択肢となりうることが裏付けられた」「この結果は、患者のwell-beingを優先する精密技術へのパラダイムシフトを強く主張するもの」としている。

 また、「これらの知見は、頻回のMRIベースの監視とSTRを組み合わせれば、全脳照射を単に遅延させるだけでなく回避も可能と示唆するが、確認のための検討が必要である」と指摘している。

(医学ライター 菅野 守)