双極症は、若年成人期に発症することの多い精神疾患であるが、いくつかの研究では、高齢期でも発症することが報告されている。しかし、高齢期における双極症の発症率を明らかにし、遅発性と早発性の臨床的特徴を比較した研究は、これまでほとんどなかった。スイス・ローザンヌ大学のBenjamin Lavigne氏らは、35歳以上における双極症の発症率とその特徴を調査し、さらに遅発性と早発性の臨床的特徴を比較するため、本研究を実施した。International Journal of Bipolar Disorders誌2026年1月12日号の報告。
本研究の目的は、次の3つとした。(1)35歳以上の集団を対象としたプロスペクティブ研究において、双極症の発症率を評価する、(2)双極症患者の臨床的特徴を明らかにする、(3)ベースライン時に双極症を発症していた例と社会人口学的および臨床的特徴を比較する。人口ベースコホート研究に参加した3,709例(初回精神医学的評価時点の年齢:35~75歳、平均年齢:51.4歳、女性の割合:54.1%)を対象に、精神医学的評価を2回以上行った。ベースライン時に双極症と診断されなかった例における双極症発症率を評価するため、平均11.3年間のフォローアップ調査を実施した。精神疾患の診断基準は、DSM-IVに基づき、半構造化遺伝学的診断面接を用いて抽出した。
主な結果は以下のとおり。
・ベースライン時、双極症を発症していたのは94例であり、フォローアップ期間中に5例が双極症を発症した(10万人年当たり12.2例に相当する)。
・フォローアップ期間中に双極症を発症した例は、初回精神医学的評価時に双極症を発症していた例と比較し、初回エピソード発生時の年齢が著しく高かった(各々、49.8歳vs.29.0歳)。
・フォローアップ期間中に双極症を発症した例は、ベースライン時に双極症を発症していた例と比較し、混合症状を伴う初回エピソードの頻度が高く(p=0.003)、初回エピソードの持続期間が短く(p=0.005)、既存または併発する違法薬物使用障害の有病率が高かった(p=0.039)。
著者らは「本研究の結果は、中年成人における双極症の発症が遅いことを支持する一方で、この遅発例の初回症状は非典型的であり、混合症状エピソードの割合が高く、薬物使用障害との併存率が高いことが示唆された。臨床的観点から見ると、私たちのデータは、とくに薬物乱用があり気分エピソードの早期認識が遅れる可能性がある中年成人においても、双極症の最初の症状に対する徹底的なスクリーニングの必要性を示唆している」とまとめている。
(鷹野 敦夫)