日本語でわかる最新の海外医学論文|page:536

外来がん患者でのリバーロキサバンの血栓予防効果/NEJM

 Khoranaスコアが2以上の高リスク外来がん患者に対し、リバーロキサバンの投与により、試験期間180日間において、静脈血栓塞栓症や静脈血栓塞栓症による死亡などのリスクに有意な低下はみられなかったことが報告された。一方でリバーロキサバン投与期間中については、同イベントの発生は約6割低下し、重大出血の発生も低かった。米国・クリーブランドクリニックのAlok A. Khorana氏らが、800例超を対象に行った第III相無作為化プラセボ対照二重盲検試験の結果で、NEJM誌2019年2月21日号で発表した。全身性のがん治療を受けている外来患者は、静脈血栓塞栓症について異なるリスクが認められる。一方で、これらの患者の血栓予防のベネフィットについては確認されていなかった。

会員医師が感じる医師不足・偏在の問題

 2月15日に厚生労働省において「医療従事者の需給に関する検討会 医師需給分科会(第28回)」が開催され、将来の医師数不足、診療科による医師数偏在に関する資料が公開された。CareNet.comでは、この発表をうけ、「現在・将来の医師不足、偏在について」をテーマに緊急アンケートを会員医師に行った。今回、その結果がまとまったのでお伝えする。  調査は、2019年2月20日にCareNet.comの医師会員を対象に、インターネット上で実施。回答者総数は340名。

非肥満で冠動脈疾患を有する2型糖尿病の血糖管理

 非肥満者の糖尿病はインスリン抵抗性よりインスリン分泌低下による可能性が高い。それゆえ、内因性もしくは外因性のインスリン供給(IP)治療が、インスリン抵抗性改善(IS)治療よりも有効かもしれないが、最適な戦略は不明のままである。今回、国立国際医療研究センターの辻本 哲郎氏らは、非肥満で冠動脈疾患(CAD)を有する糖尿病患者の血糖コントロールについて検討したところ、IS治療のほうがIP治療より有益である可能性が示唆された。International Journal of Cardiology誌オンライン版2019年2月7日号に掲載。

日本におけるレビー小体型認知症の診断、治療に関する調査

 レビー小体型認知症(DLB)は、認知症患者の行動と心理症状(BPSD)を伴う進行性の認知症である。横浜市立大学の小田原 俊成氏らは、日本におけるDLB治療に関して、現在の臨床診断の状況調査を行った。Psychogeriatrics誌オンライン版2019年2月5日号の報告。  日本で認知症臨床に携わっている医師を対象に調査を行った。対象医師は、精神科医(P群)と神経内科・脳神経外科医(NS群)の2群に分けられた。DLBの診断と治療、とくにBPSD治療に関するアンケートを実施し、両群間の比較分析を行った。

中高年の歩数にポケモンGOが影響

 『Pokemon GO(ポケモンGO)』は、位置情報機能を利用し、現実世界のさまざまな場所でポケモンを捕まえて楽しむ、スマートフォン向けゲームアプリである。2016年夏の発売以降、いまだに根強い人気のあるこのゲームの意外な効果が、東京大学の樋野 公宏氏らの研究で明らかになった。  現在、スマートフォンは健康アウトカム改善ツールとしての役割が期待され、とくに身体活動(PA)を増加させる可能性への関心が寄せられている。ポケモンGOに関するいくつかの研究ではゲーム発売前後の歩数が比較されているが、試験期間が短く、若者だけが対象となっている。今回、研究者らは、ポケモンGOの発売前後における、中高年の利用者と非利用者の歩数の差を確認し、歩数は発売後7ヵ月までの期間で多いことを明らかにした。Journal of Medical Internet Research誌2019年2月5日号掲載の報告。

EGFR変異陽性NSCLC1次治療の新たな選択肢ダコミチニブ

 ファイザー株式会社は、ダコミチニブの承認にあたり、本年(2019年)2月、都内で記者会見を開催した。その中で近畿大学医学部内科学腫瘍内科部門 中川 和彦氏と国立がん研究センター中央病院 先端医療科長/呼吸器内科 山本 昇氏がEGFR変異陽性非小細胞肺がん(NSCLC)治療とダコミチニブについて紹介した。  2000年時点のNSCLCの標準治療はプラチナ併用化学療法で、当時の全生存期間(OS)は約1年だった。昨年、オシメルチニブが1次治療薬に承認となったEGFR変異陽性NSCLCは、無増悪生存期間(PFS)でさえ19.1ヵ月1)となった。EGFR-TKI、化学療法と治療選択肢が増えるなか、「EGFR陽性NSCLCの今の問題は、治療シーケンスである」と、中川氏は述べる。

andexanet alfa、第Xa因子阻害薬による大出血に高い止血効果/NEJM

 andexanet alfaは、第Xa因子阻害薬の使用により急性大出血を来した患者において、抗第Xa因子活性を著明に低下させ、良好な止血効果をもたらすことが、カナダ・マックマスター大学のStuart J. Connolly氏らが行ったANNEXA-4試験で示された。研究の詳細は、NEJM誌オンライン版2019年2月7日号に掲載された。andexanet alfaは、第Xa因子阻害薬の中和薬として開発された遺伝子組み換え改変型ヒト第Xa因子不活性体で、2018年、米国食品医薬品局(FDA)の迅速承認プログラムの下、アピキサバンまたはリバーロキサバン治療中に出血を来し、抗凝固薬の中和を要する患者への投与が承認を得ている。本試験は2016年に中間解析の結果が発表され、現在、エドキサバン投与例を増やすために、継続試験としてドイツで患者登録が続けられ、2019年中には日本でも登録が開始される予定だという。

レビー小体型認知症のBPSD、対応のポイントは?

 2019年2月20日、大日本住友製薬主催により、レビー小体型認知症(DLB)に関するプレスセミナーが開催され、その中で2つの講演が行われた。  初めに、小田原 俊成氏(横浜市立大学 保健管理センター教授・センター長)が、DLBの現状、認知機能障害、行動・心理症状(BPSD)の特徴について講演を行った。  現在、日本国内におけるDLBの推定患者数は、50~100万人程度とされている。しかし、類似疾患との鑑別が難しく、DLBと診断されていない患者も多く存在すると考えられている。実際に、臨床診断されるDLBの割合は4%程度だが、病理診断される割合は20%近いという報告もある。

皮膚がんの遠隔診断、その有効性は?

 遠隔医療のもたらすさまざまな効果が期待されているが、海外では一歩進んだ検討が行われているようだ。米国・カイザーパーマネンテのS. Marwaha氏らは、皮膚病変の診断に対する遠隔皮膚診断(テレダーマトロジー)と対面診断による有効性や有用性は十分に検討されていないとして、対面診断とテレダーマトロジーによる皮膚がんの診断について後ろ向きに検討。テレダーマトロジーのほうが皮膚がん検出力の向上、生検率低下、対面診断の減少において、対面診断よりも優れている可能性が示唆された。ただし、今回の検討では、各テレダーマトロジーのワークフロー遂行力の違い、紹介を受けた医師による患者選択で、バイアスが生じた可能性があった。Journal of the American Academy of Dermatology誌オンライン版2019年2月1日掲載の報告。

アリピプラゾール治療と精神医学的イベントリスク

 抗精神病薬で治療されている精神疾患患者に対するアリピプラゾール初回使用に関連した潜在的な精神医学的悪化を懸念する報告がいくつかあるが、とくに長期的なアリピプラゾール使用が、重篤な精神医学的イベントリスクを増大させるかは、よくわかっていなかった。カナダ・Jewish General HospitalのFrancois Montastruc氏らは、他の抗精神病薬で治療されていた精神疾患患者に対するアリピプラゾールへの切り替えまたは追加(アリピプラゾール群)が、アリピプラゾール以外の抗精神病薬への切り替えまたは追加(非アリピプラゾール群)と比較し、重篤な精神医学的イベントと関連性が認められるかについて評価を行った。JAMA Psychiatry誌オンライン版2019年1月30日号の報告。

インスリン治療、認知症リスクに関連か

 糖尿病は認知症の危険因子と報告されているが、糖尿病治療薬と認知症との関連についての研究は少なく結果も一貫していない。今回、インスリン、メトホルミン、スルホニル尿素(SU)類の使用と認知機能および認知症リスクとの関連について、イスラエル・ハイファ大学のGalit Weinstein氏らが5つのコホートの統合解析により検討した。その結果、インスリン使用と認知症発症リスクの増加および全般的認知機能の大きな低下との関連が示唆された。著者らは、「インスリン治療は、おそらく低血糖リスクがより高いことにより、有害な認知アウトカムの増加と関連する可能性がある」としている。PLOS ONE誌2019年2月15日号に掲載。

非浸潤性乳管がん、局所治療しない場合の進行・死亡リスク

 非浸潤性乳管がん(DCIS)と診断された女性の大多数が治療を受けるため、局所治療していない女性の浸潤性乳がんへの進行および死亡リスクは不明である。今回、米国・デューク大学メディカルセンターのMarc D. Ryser氏らの研究により、局所治療を受けていないDCIS患者の浸潤がん進行リスクは限られることが示唆された。また、今回の研究コホートはDCISと診断された患者の一般集団を代表するものではないが、高齢者や併存疾患の多い患者においてとくに過剰治療の可能性があることが示唆された。Journal of the National Cancer Institute誌オンライン版2019年2月13日号に掲載。

研究助成の申請成功率、男女差の理由は/Lancet

 国や専門分野を超え、男性研究者は女性の同輩に比べ研究資金を得る機会が多いことを示す研究があるが、その多くは観察研究のため、この不均衡は女性研究者の力量によるのか、それとも提出された研究の質によるのかは明確でないという。カナダ・ラヴァル大学のHolly O. Witteman氏らは、同国の助成プログラムの審査基準が変更されたのを機に調査を行った。その結果、研究助成のジェンダーギャップは、主任研究者としての女性の力量の評価が好ましくないことに起因し、提出した研究の質の評価によるのではないことが示された。研究の詳細は、Lancet誌2019年2月9日号に掲載された。2014年、カナダ健康研究所(CIHR)は、研究者主導の資金提供の申請を、主任研究者としての力量に重点を置く明確な評価の有無で、2つの新たな助成プログラムに分けた。

不安は治るのだろうか?(解説:岡村毅氏)-1010

臨床経験のある方は十分におわかりだと思うが、不安症の人はさまざまな身体の症状を訴えてプライマリケアを受診する。したがって、精神科・心療内科のみならず、すべての科で不安な人に出会うと思っておいたほうがいいだろう。本論文ではデュロキセチン、プレガバリン、ベンラファキシン、エスシタロプラムが優れているとされた。まずデュロキセチン、ベンラファキシン、エスシタロプラムは比較的新しく、また臨床でもよく使用されるSSRIあるいはSNRIであり、きわめて妥当な結論だろう。プレガバリンについてはオフラベルとなるためコメントは難しい。

日本人学生のスマートフォン使用とうつ病リスク

 椙山女学園大学の西田 友子氏らは、高校生の男女ごとのスマートフォン使用とうつ病との関連性について評価を行った。Psychiatry Research誌オンライン版2019年1月26日号の報告。  日本の15~19歳の高校生295人を対象に、自己管理質問票を用いて、横断的研究を実施した。うつ病は、CES-Dうつ病自己評価尺度を用いて評価した。  主な結果は以下のとおり。 ・女性は、男性と比較し、1日のスマートフォン使用時間が長かった。

日本人の雇用形態と教育水準、LDL-Cに関連

 食事によるコレステロール摂取と血清コレステロールにおける良好な関係は、最近の一連のコホート研究によって疑問視されている。滋賀医科大学アジア疫学研究センターの岡見 雪子氏らは横断研究(INTERLIPID)を実施し、日本人における雇用形態と教育年数が、食事によるコレステロール摂取と血清低比重リポ蛋白コレステロール(LDL-C)濃度との関係に、どのように関連するかを調査した。その結果、被雇用者ではなく教育水準の低い男性で、食事によるコレステロール摂取量の増加が血清LDL-C濃度の上昇と関連していた。また、雇用されている男性、教育水準の高い男性では逆相関が見られたことが明らかになった。Journal of Atherosclerosis and Thrombosis誌2019年2月1日号掲載の報告。

日本人の進行NSCLC患者に対するニボルマブ治療における転移臓器が治療奏効に与える影響

 これまで、進行非小細胞肺がん(NSCLC)患者におけるニボルマブの効果予測因子として、臨床的に有意な転移部位についての詳細はわかっていなかった。今回、大阪国際がんセンターの田宮 基裕氏らにより、わが国の3施設において、2015年12月17日~2016年7月31日(フォロー期間は2017年3月31日まで)にニボルマブで治療された全症例が後ろ向きに抽出され、効果予測因子の検討が行われた。  その結果、ニボルマブによる治療を受けた進行NSCLC患者では、肝および肺への転移と全身状態(PS)不良の状態が、無増悪生存期間(PFS)中央値の短縮と関連していることが示唆された。PLoS ONE誌2018年2月22日号に掲載。

C型肝炎ウイルス感染症にエプクルーサ配合錠発売

 ギリアド・サイエンシズは、非代償性肝硬変を伴うC型肝炎ウイルス感染症の成人患者、および直接作用型抗ウイルス療法(DAA)の前治療歴を有する慢性肝炎又は代償性肝硬変を伴うC型肝炎ウイルス感染症の患者に対する1日1回投与の治療薬「エプクルーサ配合錠」(一般名:ソホスブビル/ベルパタスビル)を2月26日に発売した。  本剤は、核酸型NS5Bポリメラーゼ阻害剤ソホスブビル(商品名:ソバルディ、2015年3月承認)とNS5A阻害作用を有する新有効成分ベルパタスビルを含有する新規配合剤。日本における非代償性肝硬変を伴うC型肝炎ウイルス感染症の成人患者に対する最初の治療薬であり、また難治性患者に対して新たな治療選択肢を提供できることとなる。

セリチニブ、用法・用量変更で奏効率と安全性が向上/ノバルティス

 ノバルティス ファーマ株式会社は、2019年2月21日、ALK融合遺伝子陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺がんの治療薬セリチニブ(商品名:ジカディア)について、用法・用量を「450mg、1日1回食後投与」に変更するための製造販売承認事項一部変更承認を取得した。  セリチニブの用法・用量は、これまで「750mg、1日1回空腹時投与」であったが、主な副作用である悪心、嘔吐、下痢といった消化器症状が、治療継続の課題となっていた。今回、用法・用量が「450mg、1日1回食後投与」に変更されたことで、このような消化器症状の低減が期待される。

性差の記述、生物医学研究で依然少ない/Lancet

 臨床医学や公衆衛生学では性差関連報告を含む論文が増えているが、生物医学研究の分野では依然として少なく、筆頭および最終著者が女性の論文は性差関連の記述を含む確率が高いことが、米国・インディアナ大学のCassidy R. Sugimoto氏らの調査で明らかとなった。研究の成果は、Lancet誌2019年2月9日号に掲載された。性差は、遺伝学、細胞学、生化学、生理学的なレベルで存在することが、臨床および前臨床研究で示されているが、医学研究の対象への女性の組み入れは不十分とする多くの調査結果がある。医学研究への組み入れの男女間の格差は、その研究結果の、集団全体における効用性を著しく低下させる。一方、女性研究者の不足も指摘されているが、科学における女性の不足が、研究への組み入れや研究報告における男女格差と関連するかを評価した調査はほとんどないという。