日本語でわかる最新の海外医学論文|page:538

肝細胞がん、ソラフェニブ治療後のラムシルマブの有効性(REACH、REACH-2)/ASCO2019

 ソラフェニブは現在、転移を有する肝細胞がんの標準治療であるものの、ソラフェニブに不耐症例のための新たな薬剤が必要とされている。また、αフェトプロテイン(AFP)が上昇した進行期肝細胞がんは予後不良である。マウントサイナイ医科大学のJosep M Llovet氏らは、ソラフェニブ治療後の進行期肝細胞がん患者の2次治療としてラムシルマブを投与した第III相臨床試験であるREACHとREACH-2のプール解析結果を米国臨床腫瘍学会年次総会(ASCO2019)で報告。AFP400ng/mL以上の進行期肝細胞がんでのラムシルマブの忍容性は高く、有害事象による治療中断は低率であった。

ABCP療法、肺がん肝転移例に良好な結果(IMpower150)/ASCO2019

 非小細胞肺がん(NSCLC)のうち化学療法未治療の肝転移を有する非扁平上皮がんでは、ベバシズマブ・化学療法併用にアテゾリズマブを追加することで、ベバシズマブ・化学療法併用に比べ、無増悪生存期間(PFS)と全生存期間(OS)を有意に延長することがわかった。NSCLCを対象に行った無作為化オープンラベル第III相試験IMpower150の試験開始時に規定した探索的解析に基づき、米AdventHealth Cancer InstituteのMark A. Socinski氏らが米国臨床腫瘍学会年次総会(ASCO2019)で発表した。

メトホルミン、軽度~中等度腎機能障害にも処方可-使用上の注意改訂

 2型糖尿病治療薬のメトホルミン含有製剤の添付文書について、2019年6月18日、厚生労働省より使用上の注意改訂指示が発出された。  これまで、メトホルミン含有製剤は軽度~中等度腎機能障害の患者も禁忌とされてきたが、今回の改訂でeGFR(推算糸球体濾過量)30未満の重度の腎機能障害患者のみを禁忌とすることになった。これに伴い、腎機能障害患者に対する1日最高用量については、eGFRに基づいた目安が記載される。

高齢者のてんかん治療とADLとの関連

 高齢者におけるてんかん発作の抑制は、比較的容易であると広く考えられている。これは、高齢者の生活様式がてんかんの治療結果に影響を及ぼしている可能性があるとも考えられる。聖隷浜松病院てんかんセンターの藤本 礼尚氏らは、高齢てんかん患者のADLを調査し、てんかんの治療結果との比較を行った。Psychogeriatrics誌オンライン版2019年5月6日号の報告。  てんかんセンターに紹介された65歳以上の患者177例中、84例がてんかんと診断された。その後ADLレベルに応じて3群(ADL 1群:ADLに支障なし、ADL 2群:一部の手段的日常生活動作のみ支障あり、ADL 3群:一部の基本的なADLに支障あり)に分類し、ADLと治療アウトカムについて検討を行った。てんかん症候群および抗てんかん薬の使用も評価した。

PPI服用、心血管疾患・CKD・上部消化管がんの過剰死亡と関連か/BMJ

 プロトンポンプ阻害薬(PPI)の服用は、心血管疾患・CKD・上部消化管がんに起因する過剰死亡と少なからず関連することが明らかにされた。米国・セントルイス退役軍人ヘルスケアシステムのYan Xie氏らによる長期観察コホート研究の結果で、BMJ誌2019年5月29日号で発表した。著者は「結果はPPI服用への警戒感を高めることを支持するものだった」とまとめている。これまでに、PPI服用は重篤な有害事象と関連しており、全死因死亡リスクを増大することが報告されていた。

NSCLC1次治療、ペムブロリズマブ+化学療法のOS、PFS2(KEYNOTE-189)/ASCO2019

 未治療の転移を有する非扁平上皮非小細胞肺がん(NSCLC)での1次治療としてのペムブロリズマブとプラチナベースの化学療法の併用は、化学療法のみと比べ、PD-L1発現レベルにかかわらず、全生存期間(OS)、無増悪生存期間(PFS)、2次治療までの無増悪生存期間(PFS2)を約2倍に有意に改善することがプラセボ対照無作為化二重盲検第III相試験KEYNOTE-189の解析結果から明らかになった。米Karmanos Cancer InstituteのShirish M. Gadgee氏らが米国臨床腫瘍学会年次総会(ASCO2019)で発表した。  同試験の対象は、再発・転移のある無治療のStageIV扁平上皮NSCLC患者616例。

抗てんかん薬、皮膚がんリスクと関連?

 抗てんかん薬と皮膚がんリスクとの関連を検討した、デンマーク・南デンマーク大学のKasper Bruun Kristensen氏らの報告によると、大半の抗てんかん薬では、皮膚がんとの関連は認められなかったが、カルバマゼピンとラモトリギンで有棘細胞がん(SCC)との関連が認められたという。抗てんかん薬には光感作性のものがあるが、これまで、それらが皮膚がんリスクを増大するかは不明であった。なお、本検討では皮膚がんの重要なリスク因子に関するデータ(日光曝露など)が入手できず、結果は限定的であった。著者は、「所見が再現性のあるものか、また、さらにほかの設定で特性付けられるかを調べる必要があり、直接的な臨床的意味のあるものではない」と述べている。

うつ病に対するアリピプラゾール増強療法と血漿ホモバニリン酸レベル

 福島県立医科大学の堀越 翔氏らは、うつ病に対する低用量(LD)および高用量(HD)のアリピプラゾール増強療法の有効性を評価するため、ランダム化比較試験を行った。さらに、アリピプラゾール増強療法中の臨床反応と血漿ホモバニリン酸(pHVA)レベルの変化との関係を調査した。Human Psychopharmacology誌2019年5月号の報告。  抗うつ薬に対し治療反応不十分なうつ病患者31例を対象として、LD(3mg/日)群17例またはHD(最大12mg/日)群14例にランダムに割り付け、6週間にわたるアリピプラゾール増強療法を行った。ベースライン、2週目、試験終了時に、Montgomery-Asbergうつ病評価尺度(MADRS)による評価およびpHVAの測定を行った。

TNBCへのアテゾリズマブ+nab-PTX、PD-L1陽性でより良好な生存ベネフィット(IMpassion130)/ASCO2019

 トリプルネガティブ乳がん(TNBC)1次治療における抗PD-L1抗体アテゾリズマブ+nab-パクリタキセル(PTX)併用療法についての試験結果の第1報は、すでに2018年のNEJM誌にてPFSの改善が報告されている。この試験は二重盲検プラセボ対照の第III相試験である。今回はその2回目の中間解析結果が、米国臨床腫瘍学会年次総会(ASCO2019)で、英国・Barts Cancer InstituteのPeter Schmid氏より発表された。 試験デザイン ・対象:未治療の進行・再発TNBCで、PD-L1検査可能な患者

ダラツムマブ併用で、多発性骨髄腫の厳格な完全奏効が改善/Lancet

 初発多発性骨髄腫の治療において、自家造血幹細胞移植の前後に、ボルテゾミブ+サリドマイド+デキサメタゾン(VTd)にダラツムマブ(商品名:ダラザレックス)を併用した薬物療法(D-VTd)を行うと、VTd単独と比較して、厳格な完全奏効(sCR)の割合が有意に改善し、毒性は許容範囲内であることが、フランス・University Hospital Hotel-DieuのPhilippe Moreau氏らが実施したCASSIOPEIA試験で示された。研究の成果はLancet誌オンライン版2019年6月3日号に掲載された。ダラツムマブは、CD38を標的とするIgG1κモノクローナル抗体。多発性骨髄腫の第III相試験において、ボルテゾミブ+デキサメタゾン、レナリドミド+デキサメタゾン、ボルテゾミブ+メルファラン+プレドニゾンに、それぞれダラツムマブを併用すると、病勢進行または死亡のリスクが、少なくとも50%低減し、微小残存病変陰性の割合が3倍になることが確認されている。

ROS1/TRK阻害薬エヌトレクチニブ、国内承認/中外

中外製薬は、2019年6月18日、ROS1/TRK阻害薬エヌトレクチニブ(商品名:ロズリートレク)について、「NTRK融合遺伝子陽性の進行・再発の固形癌」を効能・効果とした製造販売承認を厚生労働省より取得したと発表。エヌトレクチニブは、先駆け審査指定制度対象品目、希少疾病用医薬品の指定を受けていた。

高齢者の医薬品適正使用に関する各論GLが完成/厚労省

 厚生労働省の高齢者医薬品適正使用検討会は 、2019年6月14日『高齢者の医薬品適正使用の指針(各論編[療養環境別])』を取りまとめたことを通知した。  高齢化の進展に伴い、わが国は、加齢による生理的な変化や複数の併存疾患を治療するための医薬品の多剤服用などによって、安全性の問題が生じやすい状況にある。厚労省は、2017年4月に「高齢者医薬品適正使用検討会」を設置し、高齢者の薬物療法の安全確保に必要な事項の調査・検討を進めており、2018年5月には『高齢者の医薬品適正使用の指針(総論編)』を取りまとめている。

neratinib併用、HER2陽性乳がんでPFS延長(NALA)/ASCO2019

 HER2陽性の転移・再発乳がん患者の3次治療における、HER1/2/4阻害薬neratinib+カペシタビン併用療法とラパチニブ+カペシタビン併用療法との比較試験の結果が、米国臨床腫瘍学会年次総会(ASCO2019)で発表された。これはオープンラベルの第III相無作為化比較試験である。  試験デザイン ・対象:中央判定で確認されたHER2陽性の転移・再発乳がん患者で、前治療として抗HER2療法を2ライン以上受けている患者(症状のない脳転移症例も許容) ・試験群:neratinib240mg/日(経口)+カペシタビン750mg/m2×2回/日(経口)の併用療法(neratinib併用群) ・対照群:ラパチニブ1,250mg/日(経口)+カペシタビン1,000mg/m2×2回/日(経口)の併用療法(ラパチニブ併用群)  neratinib/ラパチニブは連日投与、カペシタビンは2週間投与後に1週間休薬、これを1コースとして繰り返し投与  neratinib併用群では1コース目にロペラミドを投与 ・評価項目:[主要評価項目]中央判定による無増悪生存期間(PFS)と全生存期間(OS) [副次評価項目]主治医判定によるPFSと奏効率(ORR)、奏効持続期間(DOR)、クリニカルベネフィット率(CBR)、脳転移治療までの期間、安全性、患者報告QOL

緑茶摂取と認知症リスクに関するシステマティックレビュー

 認知症への対策は、緊急を要する大きな問題となっている。いくつかの研究において、食事での要因の影響により、認知症が予防できる可能性が示唆されている。サントリーワールドリサーチセンターのSaki Kakutani氏らは、緑茶に焦点を当て、緑茶の摂取と認知症、アルツハイマー病、軽度認知障害(MCI)、認知障害との関連を調査した観察研究のシステマティックレビューを実施した。Nutrients誌2019年5月24日号の報告。  PubMedより、2018年8月23日までの研究を検索し、お茶と認知機能との関連を調査した文献のリファレンスまたはレビューを調べた。次いで、緑茶の摂取と認知症、アルツハイマー病、MCI、認知障害との関連性を評価するオリジナルデータが、抽出した文献に含まれているかを調査した。

ペムブロリズマブ、進行肝細胞がん2次治療での最新結果(KEYNOTE-240)/ASCO2019

 進行肝細胞がん(HCC)2次治療におけるペムブロリズマブの有用性を評価した第III相試験KEYNOTE-240の最新結果が、米国臨床腫瘍学会年次総会(ASCO2019)で米国・カリフォルニア大学のRichard S. Finn氏により発表された。同患者に対するペムブロリズマブは、第II相試験KEYNOTE-224の結果に基づき、2018年11月にFDAが迅速承認している。  KEYNOTE-240は、ペムブロリズマブとBest Supportive Care(BSC;最善の支持療法=疼痛管理のほか、腹水などの合併症対策など、各医療機関の標準治療)の併用による、既治療の進行HCC患者を対象とした二重盲検プラセボ対照無作為化第III相試験。

HFpEFに対するneladenosonの第II相試験結果/JAMA

 左室駆出率が保持された心不全(HFpEF)に対する、アデノシンA1受容体部分作動薬neladenoson bialanateの安全性と有効性を検討した、第IIb相無作為化試験の結果が、米国・ノースウェスタン大学のSanjiv J. Shah氏らにより発表された。5つの用量反応性について検討されたが、ベースラインから20週時点の運動能の変化について、用量間に有意差は認められなかったという。事前に定義した臨床的に意味のある変化差に到達した用量群もなく、著者は、「今回の結果を鑑みると、HFpEF患者の治療薬としてneladenosonのさらなる開発を進めるなら、新たなアプローチが必要と思われる」と述べている。HFpEFに対する効果的な治療法は現在までに確立されていない。neladenoson bialanateは前臨床試験において、心不全関連の心臓性・非心臓性異常を改善する可能性が示唆されたが、HFpEF治療についての評価は行われていなかった。JAMA誌2019年6月4日号掲載の報告。

CDK4/6阻害薬ribociclib、進行乳がんのOS延長/NEJM

 HER2陰性ホルモン受容体陽性進行乳がんの治療において、標準的な内分泌療法にサイクリン依存性キナーゼ4/6(CDK4/6)阻害薬ribociclibを併用すると、内分泌療法単独に比べ、全生存(OS)期間が有意に延長することが、韓国・ソウル大学校病院のSeock-Ah Im氏らが実施したMONALEESA-7試験で示された。研究の成果はNEJM誌オンライン版2019年6月4日号に掲載された。本試験の早期解析では、ribociclib追加によって、主要評価項目である無増悪生存(PFS)期間の延長が確認されており、今回は、プロトコルで規定された主要な副次評価項目であるOSの中間解析の結果が報告された。

血栓溶解療法は睡眠中の発症例では何時間以内まで有効か?(解説:内山真一郎氏)-1063

EXTENDは、発症後4.5~9.0時間以内か、睡眠の中間時刻から9時間以内の覚醒時に発症していた脳梗塞のうち、自動灌流画像解析装置(RAPID)で救済しうる血流低下部位がある症例において、アルテプラーゼかプラセボを無作為割り付けして投与し、90日後の転帰良好例(改訂ランキン尺度が0または1)の割合を比較した介入試験であった。この試験にはオーストラリアと台湾の10施設ずつと、ニュージーランドとフィンランドの1施設ずつが参加した。

食道がん3次治療以降、ペムブロリズマブの効果持続(KEYNOTE-180)/ASCO2019

 2レジメン以上の治療歴のある進行および転移のある食道扁平上皮がん、食道腺がん、食道胃接合部領域がん患者121例を対象にペムブロリズマブの単剤療法を行ったオープンラベル第II相試験KEYNOTE-180の長期追跡結果を、国立がん研究センター中央病院消化菅内科の加藤 健氏がシカゴで開催された米国臨床腫瘍学会年次総会(ASCO2019)で報告した。

TIMI Studyから学ぶ臨床研究

 NPO法人 臨床研究適正評価教育機構(J-CLEAR/理事長 桑島 巖氏)は2019年4月20日、都内においてJ-CLEAR講演会を開催。6名の講演者が特定臨床研究の現状や糖尿病領域の臨床試験の変遷などについて発表した。  本稿では、第1部「特定臨床研究法施行のあとさき」に続き、第2部、第3部の話題をお届けする。  第2部では、「相次ぐ糖尿病新規治療薬:助っ人、それとも敵?」をテーマに2題の講演が行われた。  はじめに「SGLT2阻害薬の腎機能保護作用に関する最近の知見」をテーマに栗山 哲氏(東京慈恵会医科大学 客員教授)が講演を行った。患者数が1,330万人と推定される慢性腎臓病(CKD)をコモンディジーズと位置付けた上で、CKDによる心血管イベント発生のリスクと関連性を概括し、腎臓を守ることは生命予後の改善になると述べた。そして、心・腎保護作用としてSGLT2阻害薬によるEMPA-REG、CANVAS、DECLARE TIMI 58、CREDENCEの各試験結果を示し、試験内容を説明した。