日本語でわかる最新の海外医学論文|page:537

心不全は非心臓手術後の死亡リスクを増大/JAMA

 待機的非心臓手術を受けた心不全患者は、症状の有無にかかわらず、同様の手術を受けた非心不全患者に比べ術後90日死亡リスクが有意に高いことが、米国・スタンフォード大学のBenjamin J. Lerman氏らの検討で示された。研究の詳細は、JAMA誌2019年2月12日号に掲載された。心不全は、術後死亡の確立されたリスク因子であるが、左室駆出率(LVEF)や心不全の症状が手術アウトカムに及ぼす影響は、いまだ十分には知られていないという。

要するにLAD(解説:今中和人氏)-1008

本邦の初回冠動脈バイパス術の在院死亡率は1%台で安定し、PCIなど他の治療との比較にしても、オフポンプ手術にしても、グラフト素材にしても、論点はもっぱら長期予後である。本論文は、英国を中心とする28施設での冠動脈バイパス3,102例を、内胸動脈を1本(片側)使うか2本(両側)使うかでランダム化した前向き試験の10年報告である。バイパスは平均3本で、内胸動脈はいずれも左冠動脈系に吻合された。検討項目は全死因死亡、心臓死、心筋梗塞、脳卒中、再血行再建、周術期の出血と創感染である。

重度の精神疾患患者における脂質異常症と抗精神病薬に関するメタ解析

 重度の精神疾患患者は、抗精神病薬の悪影響に関連している可能性のある代謝系の問題への罹患率やそれに伴う死亡率の上昇を来す。第2世代抗精神病薬(SGA)は、第1世代抗精神病薬(FGA)と比較し、脂質代謝異常とより関連が強いと考えられているが、このことに対するエビデンスは、システマティックレビューされていなかった。英国・East London NHS Foundation TrustのKurt Buhagiar氏らは、重度の精神疾患患者における脂質異常症リスクについて、SGAとFGAの評価を行った。Clinical Drug Investigation誌オンライン版2019年1月24日号の報告。

血圧レベル別の脳卒中・冠動脈疾患死亡の生涯リスク~EPOCH-JAPAN

 生涯リスク(lifetime risk、以下LTR)は、生涯に対象疾患を罹患する確率であり、長期的な絶対リスクを示す。アジア人集団において、詳細な血圧分類別の脳卒中死亡および冠動脈疾患(coronary heart disease、以下CHD)死亡のLTRを算出した研究は存在しない。今回、日本の主要な循環器疫学コホート研究の個人レベルのデータを統合した大規模統合データベースEPOCH-JAPANを用いたことにより、血圧レベル別の脳卒中死亡およびCHD死亡のLTRが明らかになったことを、東北医科薬科大学の佐藤 倫広氏らが報告した。本研究で算出されたLTRは、とくに10年間の循環器疾患死亡率が低い若年の高血圧患者に対して、早期の生活習慣是正と降圧治療開始の動機付けに役立つだろう、と結論している。Hypertension誌2019年1月号に掲載。

強直性脊椎炎に新たな治療薬

 2019年1月30日、ノバルティスファーマ株式会社は、同社が製造販売(共同販売:マルホ株式会社)するセクキヌマブ(商品名:コセンティクス)が、昨年12月21日に指定難病である強直性脊椎炎への効能効果の追加承認を取得したことから都内でメディアセミナーを開催した。  セミナーでは、強直性脊椎炎の概要のほか、患者を交えてパネルディスカッションが行われ、医療者、患者双方から診療の課題などが語られた。

ニボルマブ・イピリムマブ併用療法、去勢抵抗性前立腺がんに奏効を示す(CheckMate-650)/BMS

 ブリストル・マイヤーズ スクイブ社は、2019年2月14日、転移のある去勢抵抗性前立腺がん(mCRPC)患者におけるニボルマブ(商品名:オプジーボ)とイピリムマブ(商品名:ヤーボイ)の併用療法を評価した第II相CheckMate 650試験の中間解析データを発表した。  CheckMate -650試験は、mCRPC患者を対象に、ニボルマブ・イピリムマブ併用療法の安全性と有効性を評価する進行中の非盲検第II相臨床試験。試験は2つのコホートで構成されている。コホート1は、化学療法による治療歴がなく、第2世代ホルモン療法による治療後に病勢進行した無症候性または症候がほとんどない患者。コホート2はタキサン系抗がん剤による化学療法後に病勢進行した患者。患者は、ニボルマブ1mg/kgおよびイピリムマブ3 mg/kgを計4回投与され、その後、ニボルマブ480mgを4週間ごとに投与された。主要評価項目は、奏効率(ORR)および画像診断による無増悪生存期間(rPFS)など。

英国の心不全診断後の生存、改善はわずか/BMJ

 21世紀に入り、心不全と診断された後の生存期間は、わずかに改善しているのみで、がんなど他の重篤な疾患と比べると遅れをとっており、貧困の度合いによる生存期間の格差も広がっていることが示された。英国・オックスフォード大学のClare J. Taylor氏らが、英国のプライマリケアにおける地域住民を対象としたコホート研究の結果を報告した。心不全患者は増加の傾向にあり、英国では92万人が患っているとされる。心不全患者の生存率は低いが、長期にわたる生存傾向を調べた研究では一貫した結果が得られていなかった。BMJ誌2019年2月13日号掲載の報告。

早期乳がん術後化療、dose-intenseが有益/Lancet

 早期乳がんの術後化学療法において、治療サイクル間隔の短縮、あるいは同時投与ではなく逐次投与により用量強度を高めるレジメンは、他の原因による死亡を増加させることなく、乳がんの10年再発リスクおよび死亡リスクを低下させうることが、英国・オックスフォード大学のEarly Breast Cancer Trialists' Collaborative Group(EBCTCG)らの検討で明らかとなった。治療サイクルの間隔短縮や低用量の同時投与よりも、むしろ十分量の逐次投与による細胞傷害性化学療法の用量強度の増強は、有効性を高めるのではないかと考えられていた。Lancet誌オンライン版2019年2月7日号掲載の報告。

揚げ物フェチの死亡リスクは上昇する可能性高い?(解説:島田俊夫氏)-1009

私達は生きるために、食物を摂取することによりエネルギーを獲得している。ところが、現代社会では、昔と異なり自宅で食事をする習慣が希薄になり、外食産業への依存が増していることは明らかな事実である。なかでも揚げ物は、調理の簡便性や嗜好の視点から好まれる傾向がある。とくにファストフードの普及で、フライドチキン、フライドポテト1)らが、世界中の多くの国々において、日々の生活の中で愛用されている。このような食生活環境の変化の中で、揚げ物、とくにフライドチキンや魚介類フライの摂取量増加が死亡リスク高めている可能性を、米国・アイオワ大学のYangbo Sun氏らが、閉経後女性を対象とした大規模前向きコホート研究(Women’s Health Initiative:WHI)のデータ解析結果から明らかにし、揚げ物による深刻な死亡率への影響を2019年1月23日のBMJ誌に報告した。この論文に関して私的見解をコメントする。

幼児期のペットはアレルギーにどう影響

 ここ数年、わが国では猫ブームが続いている。2月22日は「猫の日」として認知され、全国で猫に関するイベント、グッズの販売などが行われている。こうしたペットは、私たちの健康にどのような効果をもたらしてくれるのだろうか。  スウェーデン・イエーテボリ大学のBill Hesselmar氏らは、幼児期からのペット飼育がその後のアレルギーリスクを軽減するか、また、ペット数とどう関係するか検討を行った。PLOS ONE誌2018年12月19日号の報告。

ニボルマブ・低用量イピリムマブ併用、腎細胞がんで継続的な生存ベネフィット示す(CheckMate-214)/BMS

 ブリストル・マイヤーズ スクイブ社は、2019年2月14日、第III相CheckMate-214試験の最新の結果を発表した。同データでは、未治療の進行または転移のある腎細胞がん(RCC)患者において、ニボルマブ(商品名:オプジーボ)と低用量イピリムマブ(商品名:ヤーボイ)の併用療法が、引き続き長期生存ベネフィットを示した。  CheckMate-214試験は、未治療の進行または転移のあるRCC患者を対象に、ニボルマブとイピリムマブの併用療法をスニチニブと比較評価した無作為化非盲検試験。併用療法群の患者は、ニボルマブ3mg/kgおよびイピリムマブ1mg/kgを3週間間隔で計4回投与され、その後ニボルマブ3mg/kgを2週間間隔で投与された。対照群の患者は、スニチニブ50mg/日を4週間投与後2週間休薬を病勢進行または忍容できない毒性が認められるまで継続した。試験の主要評価項目は、中~高リスク患者における全生存期間(OS)、無増悪生存期間(PFS)、および奏効率(ORR)。

統合失調症患者におけるプラセボ効果~RCT複合分析

 慶應義塾大学の久保 馨彦氏らは、統合失調症患者におけるプラセボ効果を予測するため、プラセボ反応患者の特徴を調査し、プラセボによる早期改善の最適基準について探索を行った。Acta Psychiatrica Scandinavica誌2019年2月号の報告。  抗精神病薬の二重盲検試験9件において、プラセボ群にランダム化された統合失調症患者672例のデータを分析した。6週目のプラセボ効果(PANSSスコア25%以上低下)と年齢、性別、学歴、ベースライン時のPANSS合計スコアまたはMarder 5項目スコア、1週目のPANSSスコア減少率との関連を調査するため、多重ロジスティック回帰分析を行った。また、プラセボ効果に対する1週目改善の予測力を調査した。

女性医師、外科研修の中途離脱を回避するには/Lancet

 外科医の研修プログラムを途中で辞めた女性医師を対象に、その理由を調査したところ、「休暇を取るのが困難」「同じ専門医の女性同士の交流が少ない」「支援体制の欠如」など6つの要因が浮き彫りになった。オーストラリア・Gold Coast Hospital and Health ServiceのRhea Liang氏らが、女性医師12人へのインタビューで明らかにしたもので、Lancet誌2019年2月9日号で発表した。英国とオーストララシアでは、外科専門医のうち女性医師の占める割合はわずか11%で、外科研修プログラムを途中で辞めてしまう割合も女性医師が男性医師より高いという。

MRSA保菌者、衛生教育+除菌指導で退院後感染リスク3割減/NEJM

 メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)の保菌患者に対し、病院や介護施設を退院・退所する際、衛生教育に加えてクロルヘキシジンによる口腔洗浄や入浴などの除菌指導を行うことで、退院後1年のMRSA感染リスクが約3割減少したことが示された。米国・カリフォルニア大学アーバイン校のSusan S. Huang氏らが、2,000例超を対象に行った多施設共同無作為化比較試験の結果で、NEJM誌2019年2月14日号で発表した。MRSA保菌入院患者は、退院後の感染リスクが高いことが知られている。  研究グループは、病院や介護施設に入院・入所し、MRSA保菌が確認された被験者を無作為に2群に分け、退院・退所時に、一方には衛生管理に関する教育を、もう一方には衛生教育と除菌指導を行い、1年間追跡した。除菌指導のレジメンは、クロルヘキシジンによる口腔洗浄と入浴またはシャワー浴、ムピロシンの鼻腔内塗布(5日間を月2回、6ヵ月)だった。

感染性心内膜炎の静注抗菌薬による治療を部分的に経口抗菌薬に変更できるか(解説:吉田敦氏)-1007

感染性心内膜炎の静注抗菌薬による治療は長期にわたる。中には臨床的に安定したため、抗菌薬の静注が入院の主な理由になってしまう例もある。安定した時期に退院とし、外来で静注抗菌薬の投与を続けることも考えられるが、この場合、患者本人の負担は大きく、医療機関側の準備にも配慮しなければならない。このような背景から、今回デンマークにおいて左心系の感染性心内膜炎を対象とし、静注抗菌薬による治療を10日以上行って安定した例において、そのまま静注抗菌薬を継続・完遂するコントロール群と(治療期間中央値19日)、経口抗菌薬にスイッチして完遂する群(同17日)について、死亡率、(あらかじめ想定されていない)心臓手術率、塞栓発生率、菌血症の再発率が比較された(プライマリーアウトカム指標)。

16県が医師少数、改正医療法で是正となるか?

 全国からの「医師不足」の声に対し、医師確保計画を通じた医師偏在の解消は喫緊の課題である。医師偏在の度合いを示す新たな指標として「医師偏在指標」の導入が決まっている。2019年4月に施行される改正医療法では、都道府県が二次医療圏単位で医師偏在指標に応じ、医師少数区域・医師多数区域を設定する。医師多数/少数区域の基準値として、医師偏在指標の上位/下位33.3%が定められる方針だ(三次医療圏においても同様の基準を使用)。また、医師少数区域以外で医師の確保をとくに図るべき区域(離島、へき地など)を、別枠の「医師少数地区」として省令で定めるという。医師確保計画の終了時点である2036年までに、最も医師偏在指標が小さい医療圏においても医療需要を満たすことが目標とされる。

内科医不足、2030年には推計1万6,226人になる恐れ

 厚生労働省は2019年2月、診療科ごとに将来必要な医師数の見通しと、都道府県ごとに将来時点で推測される不足医師数の推計を公表した。  資料によると、2016年時点での不足医師数は内科で9,275人、外科で5,656人、産婦人科で2,179人、小児科で2,033人、脳神経外科で1,309人、整形外科で1,153人であり、6つの科で1,000人以上不足している状況だった。このまま医師の数が変わらない場合、5年後の2024年に不足する内科医は1万4,468人、外科医は5,831人、2030年に不足する内科医は1万6,226人、外科医は5,520人となる恐れがあるという。

高齢者うつ病発症率の潮流、10年間で減少

 うつ病の発症率における出生コホート差やそれらの説明要因に関する研究は、うつ病の病因を明らかにする可能性があり、世界的なうつ病負担を軽減するための予防戦略を最適化する一助となる。オランダ・アムステルダム自由大学のH. W. Jeuring氏らは、高齢者におけるうつ病の発症率について調査を行った。Epidemiology and Psychiatric Sciences誌オンライン版2019年1月26日号の報告。

細菌性皮膚感染症に新規抗菌薬、MRSAにも有効/NEJM

 新規抗菌薬omadacyclineの急性細菌性皮膚・軟部組織感染症への効果は、リネゾリドに対し非劣性で、安全性プロファイルはほぼ同等であることが、米国・eStudySiteのWilliam O’Riordan氏らが行ったOASIS-1試験で示された。研究の詳細は、NEJM誌2019年2月7日号に掲載された。急性細菌性皮膚・軟部組織感染症は合併症の発症率が高く、高額な医療費を要する。omadacyclineは、抗菌薬耐性株を含め、この種の感染症を高い頻度で引き起こす病原菌に活性を有する。本薬は、1日1回の経口または静脈内投与が可能なアミノメチルサイクリン系抗菌薬で、テトラサイクリン系薬剤由来の抗菌薬だが、テトラサイクリン耐性の機序である薬剤排出およびリボソーム保護を回避するという。

たった一晩の絶食が筋力低下のリスクに

 入院時の夜間絶食は、患者の筋力にどの程度影響を及ぼすのか。今回、ブラジル・Universidade Federal de Mato GrossoのWesley Santana Correa-Arruda氏らにより、成人患者を対象とした前向き臨床試験が行われた。その結果、入院中の夜間絶食により、とくに低栄養、栄養失調および高齢の患者における筋肉機能が損なわれる可能性が示された。Einstein誌2019年1月14日号に掲載。