日本語でわかる最新の海外医学論文|page:539

肺がん患者の7割が合併。食欲不振など悪液質の実態

 がん悪液質は、がん克服の重要な課題の1つとされており、肺がんでは死亡率上昇との関連も指摘されている。悪液質の定義と分類については2011年に、主に体重減少、サルコペニア(骨格筋量減少)、炎症および食欲不振に基づくものとの国際的なコンセンサスが発表されているが、フランス・パリ・サクレー大学のSami Antoun氏らは、非小細胞肺がん患者について初となるFearon基準に基づく分類を試みた。その結果、Fearon悪液質ステージ分類と、QOLの機能尺度および身体活動レベルはリンクしており、早期の悪液質を臨床的に検出するのに役立つ可能性が示されたという。Journal of Cachexia, Sarcopenia and Muscle誌オンライン版2019年4月1日号掲載の報告。

双極性障害維持療法に対するリチウムとラモトリギンの有効性と安全性~メタ解析

 リチウムまたはラモトリギンで臨床的に安定している成人双極性障害(BD)患者に対し、これらの薬剤を投与し続けるべきかについては、十分に確立されていない。藤田医科大学の大矢 一登氏らは、臨床的に安定している成人BD患者へのリチウムおよびラモトリギン維持療法の有効性と安全性について評価するため、システマティックレビュー、メタ解析を実施した。Neuropsychopharmacology Reports誌オンライン版2019年4月26日号の報告。  本メタ解析には、リチウムまたはラモトリギンに対し急性反応を示した患者を選択した強化デザインによる、二重盲検ランダム化プラセボ対照試験のみを含めた。PubMed、Cochrane Library、Embaseより、2018年11月15日までの研究を検索した。主要アウトカムは、試験終了時点での気分エピソードの再発率とした。その他のアウトカムは、試験終了時の躁病/軽躁病/混合エピソードまたはうつ病による再発率、試験中止率、死亡、自殺による死亡とした。

HER2陽性乳がん術前療法、T-DM1 vs.HPD(PREDIX HER2)/ASCO2019

 HER2陽性の乳がん患者を対象とした、術前療法としてのトラスツズマブ エムタンシン(T-DM1)と、トラスツズマブ+ペルツズマブ+ドセタキセル併用(HPD)療法との比較試験の結果が、米国臨床腫瘍学会年次総会(ASCO2019)で、スウェーデン・カロリンスカ研究所のJonas C. S. Bergh氏より発表された。これはオープンラベルの第II相無作為化比較試験である。

適切な乳がん補助化学療法のためのガイド情報が明らかに/NEJM

 乳がん患者において、21遺伝子アッセイに基づく再発スコアに臨床的な再発リスク層別化の予後情報を加味すると、治療による恩恵効果が高い閉経前女性の特定が可能であることが示された。米国・アルベルト・アインシュタイン医学校のJoseph A. Sparano氏らが、21遺伝子アッセイの有用性を検証したTrial Assigning Individualized Options for Treatment(TAILORx試験)の副次的解析結果を報告した。乳がん患者への補助化学療法の必要性は、臨床病理学的因子とオンコタイプDXによる再発リスクを確定するための21遺伝子アッセイに基づく再発スコアによって判断できる可能性が示されていたが、再発スコアに臨床的な再発リスクのレベル情報を追加する意義については明らかになっていなかった。NEJM誌オンライン版2019年6月3日号掲載の報告。

転移ホルモン感受性前立腺がん、標準治療+エンザルタミドが有効/NEJM

 新規アンドロゲン受容体標的薬エンザルタミド(商品名:イクスタンジ)は、転移を伴うホルモン感受性前立腺がん(mHSPC)患者において、標準治療と比較し無増悪生存期間(PFS)と全生存期間(OS)を有意に延長した。ただし、エンザルタミド群では、とくに初期にドセタキセルの治療を受けた患者において、痙攣発作や他の有害事象が多くみられた。オーストラリア・モナッシュ大学のIan D. Davis氏らが、mHSPCの1次治療としてテストステロン抑制±ドセタキセルへのエンザルタミド併用の有効性および安全性を検証した、無作為化非盲検第III相試験「Enzalutamide in First Line Androgen Deprivation Therapy for Metastatic Prostate Cancer trial:ENZAMET試験」の結果を報告した。エンザルタミドは、去勢抵抗性前立腺がん患者のOSを改善することが示唆されていたが、ドセタキセルの有無にかかわらずテストステロン抑制とエンザルタミドとの併用がmHSPC患者のOSを改善するかは不明であった。NEJM誌オンライン版2019年6月2日号掲載の報告。

適応拡大に向けた朗報!〜論文を読み解く上で重要な“国民性”〜(解説:西垣和彦氏)-1062

明らかな原因が見当たらない脳梗塞である塞栓源不明脳塞栓症に対する、ダビガトランの再発予防効果を検証する国際共同臨床試験RE-SPECT ESUS試験が発表された。さらに日本脳卒中学会2019で、RE-SPECT ESUS日本人サブグループ解析も発表され、この分野は大変注目されている。脳梗塞は世界各国の死因の上位を占める重篤な疾患である。とくに日本を含めた東アジアでの罹患率が高く、わが国の死因順位第4位が脳血管疾患である。脳梗塞の最も重要な問題点は、脳梗塞後遺症のため介護が必要となる可能性が高いことであり、超高齢社会を迎えるわが国の最重要疾患と位置付けられる。

乳がん化学療法、望ましいアントラサイクリンは?

 アントラサイクリン系抗がん剤の心毒性は古くから知られており、抗腫瘍効果との兼ね合いがよく話題に上る。中国・上海中医薬大学のZhujun Mao氏らは、乳がんに対するアントラサイクリン系薬の有用性はなお議論の的であり結論が得られていないとして、無作為化臨床試験のネットワークメタ解析を行った。その結果、心毒性と抗腫瘍効果を考慮すると乳がんの化学療法に適したアントラサイクリン系薬は、ドキソルビシンリポソームまたはエピルビシン+デクスラゾキサンであることが示されたという。Oncology Research and Treatment誌オンライン版2019年5月17日号掲載の報告。

胃がん、ペムブロリズマブによる1次治療の結果(KEYNOTE-062)/ASCO2019

 国内の進行・再発胃がんでの免疫チェックポイント阻害薬の使用は、化学療法無効後のニボルマブ、同じく化学療法無効後の高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-High)例に対するペムブロリズマブがそれぞれ単剤療法で承認されている。ただ、現時点ではこうした進行・再発胃がんでの1次治療で承認されている免疫チェックポイント阻害薬は存在しない。  そうした中、進行胃・胃食道接合部腺がんに対する1次治療での抗PD-1抗体ペムブロリズマブの有効性を評価した第III相試験「KEYNOTE-062」の結果から、PD-L1陽性(CPS1以上)の患者で、ペムブロリズマブ単独療法は標準治療の化学療法に対して、全生存期間(OS)で非劣性、CPS10以上では臨床的に意義のある改善を示すことがわかった。また、ペムブロリズマブと化学療法の併用は、化学療法単独に対してOSで優越性を示せなかった。スペインVall d’Hebron University Hospital and Institute of OncologyのJosep Taberneroがシカゴで開催された米国臨床腫瘍学会年次総会(ASCO2019)で報告した。

成人の8割が感染、歯周病予防に効く「ロイテリ菌」とは

 5月30日、オハヨー乳業・オハヨーバイオテクノロジーズは「歯周病への新たな良化習慣」をテーマとしたプレスセミナーを開催した。国内の歯周病(歯肉炎および歯周疾患)患者数は330万人を超え、30~50代の約8割が罹患するなど、最も罹患率の高い疾患とされる。本セミナーでは、若林 健史氏(日本歯周病学会理事・専門医・指導医/日本大学 客員教授)と坂本 紗有見氏(銀座並木通りさゆみ矯正歯科デンタルクリニック81 院長)が講演し、ロイテリ菌(Lactobacillus reuteri)の「バクテリアセラピー」によって歯周病予防効果が期待できる、との研究内容を発表した。

統合失調症における洞察力と服薬アドヒアランスとの関連~CATIEデータ分析

 統合失調症治療において、抗精神病薬の服薬アドヒアランスは重要である。疾患に対する洞察力低下は、服薬ノンアドヒアランスの主な要因の1つであり、臨床アウトカムに悪影響を及ぼす。カナダ・トロント大学のJulia Kim氏らは、CATIE研究データを用いて、統合失調症患者の洞察力低下と抗精神病薬の服薬ノンアドヒアランスの割合、および服薬ノンアドヒアランスまでの期間との関係について検討を行った。Neuropharmacology誌オンライン版2019年5月8日号の報告。

MET阻害薬tepotinibのMETΔex14変異NSCLCに対する効果(VISION)/ASCO2019

 METエクソン14スキッピング変異(METΔex14)は非小細胞肺がん(NSCLC)の3~4%にみられる。tepotinibはMET受容体チロシンキナーゼ(c-MET)に高い選択性を有するMET-TKIであり、わが国でも非小細胞肺がんに対する先駆け審査指定制度対象品目に指定されている。VISION試験は、MET遺伝子変異を有するNSCLCに対するtepotinibの第II相シングルアーム試験で、コホートA(MET△ex14対象)とコホートB(MET増幅対象)に分かれる。米国臨床腫瘍学会年次総会(ASCO2019)ではコホートAの結果について発表された。

ribociclib、HR+/HER2ー閉経前乳がんでOS改善(MONALEESA-7)/ASCO2019

 閉経前のホルモン受容体(HR)陽性HER2陰性進行乳がん患者を対象にした、ribociclib+ホルモン療法の第III相二重盲検無作為化比較試験の結果が、米国臨床腫瘍学会年次総会(ASCO2019)で、米国・UCLA Jonsson Comprehensive Cancer CenterのSara A. Hurvitz氏より発表された。本内容は、NEJM誌2019年6月号に同時掲載されている。

アパルタミド、転移去勢感受性前立腺がんのPFS、OSを改善/NEJM

 転移を伴う去勢感受性前立腺がんの患者に対し、アンドロゲン除去療法(ADT)+アパルタミド(商品名:アーリーダ)の併用は、ADT単独と比べて2年後の放射線学的無増悪生存率(PFS)および全生存率(OS)は、いずれも有意に改善したことが示された。副作用プロファイルは両群でほとんど異ならなかった。カナダ・BC Cancer and Vancouver Prostate CentreのKim N. Chi氏らが1,052例を対象に行った第III相プラセボ対照無作為化二重盲検試験の結果で、NEJM誌オンライン版5月31日号で発表された。被験者には、局所前立腺がん治療歴やドセタキセル投与歴のある人も含まれていたという。アパルタミドは、経口アンドロゲン受容体シグナル伝達阻害薬で、本邦では5月30日に発売が開始された。

2型糖尿病への強化療法vs.標準療法、15年追跡結果/NEJM

 2型糖尿病の患者に対する強化血糖コントロールを中央値5.6年間行い、合計で15年間追跡したところ、標準療法を受けて追跡を受けた参加者と比べて、主要心血管イベントリスクは、両群の糖化ヘモグロビン値曲線の分離が持続していた期間(オリジナル試験中の中央値約7.1年間)に限り有意な低下が認められ、強化血糖コントロールの遺産効果(legacy effect)や死亡率への有益性を示す知見は認められなかったことが明らかにされた。米国・フェニックス退役軍人(VA)ヘルスケアシステムのPeter D. Reaven氏らによる検討で、NEJM誌2019年6月6日号で発表された。同試験のオリジナルの介入・観察試験(合計10年間追跡)では、強化血糖コントロール群の同リスクが有意に17%低下したことが報告されていた。

1型糖尿病治療におけるSGLT1/2阻害薬sotagliflozinの可能性(解説:住谷哲氏)-1061

インスリン非依存性に血糖降下作用を発揮するSGLT2阻害薬が、インスリン分泌不全が主病態である1型糖尿病患者の血糖コントロールに有効であることは理解しやすい。わが国ではイプラグリフロジンが最初に1型糖尿病患者に対する適応を取得し、次いでダパグリフロジンも1型糖尿病患者に対して使用可能となった。SGLT2阻害薬は近位尿細管に存在するSGLT2を特異的に阻害することによって尿糖排出を増加する。それとは異なりsotagliflozinはSGLT2のみならず腸管に存在するSGLT1も阻害するdual inhibitorであり、尿糖排泄に加えて腸管からのグルコース吸収をも阻害する。

脳心血管病予防策は40歳からと心得るべき/脳心血管病協議会

 日本動脈硬化学会を含む16学会で作成した『脳心血管病予防に関する包括的リスク管理チャート2019』が日本内科学会雑誌第108巻第5号において発表された。2015年に初版が発行されてから4年ぶりの改訂となる今回のリスク管理チャートには、日本動脈硬化学会を含む14学会における最新版のガイドラインが反映されている。この改訂にあたり、2019年5月26日、寺本 民生氏(帝京大学理事・臨床研究センター長)と神﨑 恒一氏(杏林大学医学部高齢医学 教授)が主な改訂ポイントを講演した(脳心血管病協議会主催)。

潰瘍性大腸炎治療の高度化に対応する方法とは

 2015~16年に行われた全国疫学調査によると、潰瘍性大腸炎の全国有病者数は推計22万人であり、クローン病(推計7.1万人)と合わせると29万人を超える。炎症性腸疾患(IBD)は、もはや“common disease”と言えるのかもしれない。  2019年5月、ファイザー株式会社が「潰瘍性大腸炎とチーム医療の重要性」をテーマに、都内にてセミナーを開催した。併せて、新しくオープンした潰瘍性大腸炎に関する情報提供サイト「UC tomorrow」の紹介が行われた。  セミナーでは、伊藤 裕章氏(医療法人錦秀会 インフュージョンクリニック 院長)が「潰瘍性大腸炎診療の歩み」について講演を行った。

せん妄や認知症と院内死亡率との関連

 大規模多施設共同研究において、認知障害の有病率および院内死亡率に対する影響について検討されたエビデンスはほとんどない。イタリア・Fondazione Camplani HospitalのAlessandro Morandi氏らは、認知障害、認知症、せん妄の有病率および院内死亡率への影響を検討するため、高齢入院患者を対象とした大規模多施設共同試験「Italian Delirium Day:2016年」を行った。The Journals of Gerontology. Series A, Biological Sciences and Medical Sciences誌2019年5月16日号の報告。

MET阻害薬capmatinibのMETΔex14変異NSCLCに対する効果(GEOMETRY mono1)/ASCO2019

 METエクソン14スキッピング変異(METΔex14)は非小細胞肺がん(NSCLC)の3~4%にみられ、予後不良かつ標準治療に奏効しにくいとされる。capmatinibは最も強力なMET阻害薬である。第II相多施設マルチコホートGEOMETRY mono1試験の中間解析では、治療ラインにかかわらずMETΔex14変異を有する進行NSCLC患者に深い奏効を示した。米国臨床腫瘍学会年次総会(ASCO2019)にて発表された。

超加工食品の高摂取で死亡リスク増大/BMJ

 超加工食品を1日4サービング以上摂取すると、死亡のハザードが相対的に62%増加し、1日1サービング増えるごとに死亡リスクが18%増加することが、スペイン・ナバラ大学のAnais Rico-Campa氏らの調査で示された。研究の成果はBMJ誌2019年5月29日号に掲載された。既報の成人を対象とした前向きコホート研究により、超加工食品の摂取は、がん、過敏性腸症候群、肥満、高血圧のハザードの上昇と関連することが知られている。