日本語でわかる最新の海外医学論文|page:534

高齢者の尿路感染症、抗菌薬即時処方で死亡リスク減/BMJ

 プライマリケアにおいて尿路感染症(UTI)と診断された高齢患者では、抗菌薬の非投与および待機的投与は、即時投与に比べ血流感染症および全死因死亡率が有意に増加することが、英国・Imperial College LondonのMyriam Gharbi氏らの調査で示された。研究の成果は、BMJ誌2019年2月27日号に掲載された。大腸菌(Escherichia coli)による血流感染症の約半数が、原疾患としてのUTIに起因し、高齢患者はリスクが高いとされる。また、自然治癒性の疾患(上気道感染症など)では抗菌薬の「非投与」「待機的または遅延投与」は重度の有害アウトカムとはほとんど関連しないが、若年女性のUTI患者ではわずかだが症状発現期間が延長し、合併症が増加するとの報告がある。しかし、これらの研究は症例数が少なく、その一般化可能性は限定的だという。

超急性期に脳卒中が疑われる患者に対する搬送中の経皮型ニトロは機能的転帰を改善しない(中川原譲二氏)-1014

高血圧は急性期脳卒中によくみられ、不良なアウトカムの予測因子である。大規模な降圧試験でさまざまな結果が示されているが、超急性期の脳卒中に関する高血圧のマネジメントについては不明なままだった。著者らは、経皮型ニトログリセリン(GTN)が、発症後超早期に投与された場合に、転帰を改善するかどうかについて検討した。 研究グループ「The RIGHT-2 Investigators」は多施設共同の救急隊員による救急車内でのシャム対照無作為化試験を行った。被験者は、4時間以内に脳卒中を発症したと考えられ、FAST(face-arm-speech-time)スコアは2または3、収縮期血圧値が120mmHg以上の成人だった。被験者を無作為に2群に分け、GTN群には経皮型GTNを投与し(5mg/日を4日間)、シャム群にはシャム処置を、いずれも救急隊員が開始し、病院到着後も継続した。救急隊員は治療についてマスキングされなかったが、被験者はマスキングされた。主要アウトカムは、90日後の7段階修正Rankin Scale(mRS)による機能的アウトカムのスコアだった。評価は治療についてマスキングされた追跡調査員が電話で行った。分析は段階的に行い、まずは脳卒中または一過性脳虚血発作(TIA)と診断された患者について(コホート1)、次に被験者全員を対象に無作為化した患者について行った(コホート2)。

ブルガダ症候群、ICD植込み後の成績に関するメタアナリシス【Dr.河田pick up】

 日本を含めたアジアでよくみられるブルガダ症候群に対する植え込み型除細動器(ICD)の適応は、以前と比べて変わってきており、どの症例で本当にICDが必要なのかの判断はいまだに難しい。オランダ・エラスムス大学医療センターのAdem Dereci氏らが、メタアナリシスの結果をJACC.Clinical Electrophysiology誌2019年2月号に報告している。  本研究の目的は、ICDが植込まれたブルガダ症候群患者の予後を要約することである。ブルガダ症候群は、心臓伝導障害や突然死につながる心室性不整脈の発生リスクが高いことで知られる。臨床的な予後、適切および不適切なICD治療、そしてICD治療による合併症についてすべて要約したものはない。

双極性障害と統合失調感情障害の維持治療に対する持効性注射剤抗精神病薬に関するシステマティックレビュー

 抗精神病薬の長時間作用型持効性注射剤(LAI)は、主に統合失調症スペクトラム障害における服薬アドヒアランス不良を改善するために用いられる。スペイン・バルセロナ大学のIsabella Pacchiarotti氏らは、双極性障害(BD)および/または統合失調感情障害(SAD)に対する抗精神病薬LAIとプラセボまたは経口剤を比較した利用可能なエビデンスの要約を行った。European Neuropsychopharmacology誌オンライン版2019年2月12日号の報告。

進行卵巣がん、後腹膜リンパ節郭清は必要か/NEJM

 進行卵巣がんの手術において、腹腔内腫瘍が肉眼的に完全切除され、術前・術中ともにリンパ節が正常な患者への骨盤・傍大動脈リンパ節の系統的郭清は、非郭清例と比較して全生存(OS)期間および無増悪生存(PFS)期間のいずれをも延長させず、術後合併症の頻度は高いことが、ドイツKliniken Essen-MitteのPhilipp Harter氏らが行ったLION試験で示された。研究の成果は、NEJM誌2019年2月28日号に掲載された。肉眼的完全切除例に対する骨盤・傍大動脈リンパ節の系統的郭清がもたらす生存への有益性は、その可能性を示唆する後ろ向きの解析がいくつかあるが、無作為化試験のエビデンスは限られているという。

血糖コントロールに有効な携帯型デバイス/Lancet

 d-Navインスリン・ガイダンス・システム(Hygieia)は、血糖値を測定してその変動を記録し、自動的に適切なインスリン量を提示する携帯型デバイス。2型糖尿病患者では、医療者による支援に加えてこのデバイスを用いると、医療支援のみの患者に比べ良好な血糖コントロールが達成されることが、米国・国際糖尿病センターのRichard M. Bergenstal氏らの検討で示された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2019年2月23日号に掲載された。インスリン療法は、用量の調整を定期的かつ頻回に行えば、最も有効な血糖コントロールの方法とされるが、多くの医師にとってほとんど実践的ではなく、結果としてインスリン量の調整に不均衡が生じているという。

うつ病や不安症状に対する食事療法~メタ解析

 不適切な食生活は、メンタルヘルスに悪影響を及ぼす可能性が示唆されている。しかし、食事介入療法が気分やメンタルに及ぼす影響に関するエビデンスは、十分に評価されていない。オーストラリア・西シドニー大学のJoseph Firth氏らは、食事介入療法がうつ病や不安症状に及ぼす影響を検討するため、システマティックレビューおよびメタ解析を行った。Psychosomatic Medicine誌オンライン版2019年2月5日号の報告。

最新鋭のがん患者用手引きHPで公開-静岡がんセンター

 近年、がん治療の分野では、分子標的薬や免疫チェックポイント阻害剤などの新薬が次々に発売されている。また、多剤併用による治療、外来患者の増加により、治療・副作用対策の指導が複雑なものになりつつある。そんな折、2019年2月25日に静岡県立静岡がんセンターは、これらの問題を解決するべく、「処方別がん薬物療法説明書【患者さん向け】」をホームページ上に公表した。  この説明書は、抗がん剤治療の全貌がわかるように作成されている。そして、これを患者に渡すのは医師であり、がん薬物療法の決定後、治療前に患者へ手渡しされる。その後、薬剤師や看護師がその冊子を用いて、必要に応じて説明を行うそうだ。

プライマリケアでの抗菌薬処方、推奨期間を超過/BMJ

 英国では、プライマリケアで治療されるほとんどの一般感染症に対し、抗菌薬の多くがガイドラインで推奨された期間を超えて処方されていたことが、英国公衆衛生庁(PHE)のKoen B. Pouwels氏らによる横断研究の結果、明らかとなった。プライマリケアにおける抗菌薬の使用削減戦略は、主に治療開始の決定に焦点が当てられており、抗菌薬の過剰な使用に、どの程度治療期間が寄与しているかは不明であった。著者は、「抗菌薬曝露の大幅な削減は、処方期間をガイドラインどおりにすることで達成できる」とまとめている。BMJ誌2019年2月27日号掲載の報告。

オピオイド使用障害に持効性ブプレノルフィン注が有用/Lancet

 オピオイド使用障害治療の月1回皮下注薬であるRBP-6000(徐放性ブプレノルフィン:BUP-XR)について、多施設共同無作為化二重盲検プラセボ対照第III相臨床試験の結果、プラセボと比較してオピオイド断薬率が有意に高く、忍容性も良好であることが示された。米国・Indivior社のBarbara R. Haight氏らが報告した。BUP-XRは、月1回投与によりオピオイド乱用の薬物嗜好を遮断するブプレノルフィン血中濃度を維持し、同時に離脱症状や渇望症状をコントロールすることから、医療現場ではBUP-XRの投与が中毒や乱用等も軽減することが期待されていた。Lancet誌2019年2月23日号掲載の報告。

新規のアミノグリコシド系抗菌薬plazomicinの複雑性尿路感染症に対する効果(解説:吉田敦氏)-1013

腸内細菌科(Enterobacteriaceae)の薬剤耐性は、現在、われわれが日常最も遭遇する薬剤耐性と言ってよいであろう。たとえば本邦で分離される大腸菌の約4割はフルオロキノロン耐性、約2割はESBL産生菌である。実際に複雑性尿路感染症の治療を開始する際に、主原因である腸内細菌科細菌の抗菌薬耐性をまったく危惧しない場合は、ほぼないと言えるのではないだろうか。そして結果としてβラクタム系およびフルオロキノロン系が使用できないと判明した際、残る貴重な選択肢の1つはアミノグリコシド系であるが、腎障害等の副作用が使用を慎重にさせている点は否めない。

糖尿病患者への禁煙指導/糖尿病学の進歩

 喫煙は、血糖コントロール悪化や糖尿病発症リスク増加、動脈硬化進展、がんリスク増加などの悪影響を及ぼす。禁煙によりこれらのリスクは低下し、死亡リスクも減少することから禁煙指導は重要である。3月1~2日に開催された第53回糖尿病学の進歩において、聖路加国際病院内分泌代謝科の能登 洋氏が「喫煙と糖尿病合併症」と題して講演し、喫煙と糖尿病発症・糖尿病合併症・がんとの関連、禁煙指導について紹介した。  糖尿病患者の喫煙率は、日本の成人における喫煙率とほぼ同様で、男性が31.9%、女性が8.0%と報告されている。男女ともに30代がピークだという。

重度アルコール離脱症候群に対する早期集中ベンゾジアゼピン療法

 アルコール離脱症候群(AWS)治療の現在のエビデンスでは、symptom-triggered therapyが支持されている。早期段階での集中的なベンゾジアゼピン(BZD)治療は、ICU在室期間を短縮させるといわれているが、在院日数への影響については、よくわかっていない。米国・カリフォルニア大学のJin A. Lee氏らは、最初の24時間での集中的なBZD治療がAWS患者の在院日数を短縮させるかどうかについて、介入前後コホート研究により検討を行った。Clinical Toxicology誌オンライン版2019年2月7日号の報告。

小児ピーナッツアレルギー、経皮免疫療法は有効か/JAMA

 4~11歳のピーナッツアレルギーの患児に対するピーナッツパッチを用いた経皮免疫療法は、プラセボ投与と比べて、12ヵ月時点の評価でピーナッツへの耐性が強化された患児の割合が21.7ポイント高かった。米国・コロラド大学デンバー校のDavid M. Fleischer氏らが356例の患児を対象に行った、第III相プラセボ対照無作為化比較試験の結果で、JAMA誌オンライン版2019年2月22日号で発表された。ピーナッツアレルギーについては承認された治療法がまだない。今回示された結果について研究グループは、「事前に規定した“肯定的な試験結果”としての信頼区間(CI)下限値を満たさなかった。しかし、そもそも達成すべき下限値の臨床的な妥当性については議論の余地がある」と述べている。

心不全患者への在宅移行支援、予後は改善せず/JAMA

 心不全入院患者に対する、看護師などによる患者中心の在宅移行支援は、入院中の担当医の裁量の下で行われる通常ケアと比べて、再入院や救急受診などの複合臨床アウトカムを改善しなかったことが、カナダ・Population Health Research InstituteのHarriette G. C.Van Spall氏らによる、約2,500例を対象に行ったクラスター無作為化試験の結果、示された。在宅移行支援は心不全患者のアウトカムを改善可能とされるが、これまで系統的な検証は行われていなかったという。ただし、今回の試験はカナダ・オンタリオ州で行われたものであることを踏まえて著者は、「ほかのヘルスケアシステムや地域で有効かどうかのさらなる検討が必要だろう」と述べている。JAMA誌2019年2月26日号掲載の報告。

死と隣り合わせの日々を超えて(解説:岡村毅氏)-1012

集中治療室(ICU)では、患者は緊迫した部屋の中でさまざまな機械につながれる。陽の光は当たらず、時間もわからないこともある。睡眠は浅くなり、感覚は麻痺してゆく。患者はコミュニケーションができない状態であることもある。しかし自分以外の多くの患者が苦しみ、時に亡くなることはよくわかる。それはあまりにも苛烈な体験である。生き延びて無事に退院しても、「今も自分がそこにいるような体験をする」「多少似ているだけのものをも回避する」「常に覚醒し休まらない」といった事態が起きる。心的外傷後ストレス障害(PTSD)である。

尿失禁が生命予後に影響?OABに早期介入の必要性

 わが国では、40歳以上の約7人に1人が過活動膀胱(OAB)を持ち、切迫性尿失禁を併せ持つ割合は70%を超えると推定されている。定期通院中の患者が症状を訴えるケースも多く、専門医以外でも適切な診療ができる環境が求められる。  2019年2月28日、OAB治療薬「ビベグロン錠50mg(商品名:ベオーバ)」の発売元であるキョーリン製薬とキッセイ薬品が共催したメディアセミナーにて、吉田 正貴氏(国立長寿医療研究センター 副院長 泌尿器外科部長)が講演を行った。本セミナーでは、「OABの病態と治療―新たな治療選択肢を探るー」をテーマに、高齢のOAB患者を取り巻く現状と薬物療法について語られた。

ナッツ摂取、糖尿病患者でCVD・全死亡減:大規模前向きコホート

 心血管疾患(CVD)合併や早期死亡の予防に、ナッツ類(とくに木の実)の摂取を増やすことは、糖尿病と診断後いつからでも遅くはないのかもしれない―。これまで、CVDをはじめとした慢性疾患発症に対するナッツ摂取の効果が報告されてきたが、2型糖尿病とすでに診断された患者に対するナッツ摂取の長期的ベネフィットについては、エビデンスが十分ではなかった。米国・ハーバードT.H.Chan公衆衛生大学院のGang Liu氏らが、看護師健康調査(1980~2014年)と医療従事者追跡調査(1986~2014年)の参加者のうち、ベースライン時あるいは追跡期間中に2型糖尿病と診断された1万6,217例について行った試験で明らかにしたもので、Circulation Research誌オンライン版2019年2月19日号で発表した。

統合失調症患者の認知機能に対するNMDA受容体増強薬のメタ解析

 いくつかのN-メチル-D-アスパラギン酸(NMDA)受容体増強薬は、統合失調症の認知機能に対して有望な薬剤であるといわれている。しかし、その研究結果は矛盾している。台湾・中国医薬大学のChun-Hung Chang氏らは、認知機能に対するNMDA受容体増強薬の効果について、最新のメタ解析を実施した。Journal of Psychopharmacology誌オンライン版2019年2月7日号の報告。

1日1回plazomicin、複雑性尿路感染症に有効/NEJM

 多剤耐性株を含む腸内細菌科細菌による複雑性尿路感染症(UTI)および急性腎盂腎炎の治療において、plazomicin1日1回投与はメロペネムに対し非劣性であることが、ドイツ・ユストゥス・リービッヒ大学ギーセンのFlorian M. E. Wagenlehner氏らが行ったEPIC試験で示された。研究の詳細は、NEJM誌2019年2月21日号に掲載された。近年、グラム陰性尿路病原菌では多剤耐性菌が増加し、重篤な感染症に対する新たな治療薬が求められている。plazomicinは、アミノグリコシド系抗菌薬で、カルバペネム耐性を含む多剤耐性腸内細菌科細菌に対し殺菌活性を発揮するという。