日本語でわかる最新の海外医学論文|page:535

血栓溶解を用いた低侵襲脳内血腫除去術の有効性と安全性(MISTIE-III)/Lancet(解説:中川原譲二氏)-1031

テント上の脳内出血による急性脳卒中は、高いmorbidityとmortalityを伴う。開頭血種除去術は、大きなRCTで何らの有効性も得られていない。本研究(MISTIE-III)では、血種サイズを15mL以下に低下させることを目標とする低侵襲脳内血腫除去術(MISTIE)が、脳内出血患者の機能的転帰を改善するかどうかを検討した。MISTIE-IIIは、非盲検エンドポイント盲検無作為化対照比較第III相試験である。対象は、年齢18歳以上の非外傷性テント上脳内出血(30mL以上)の患者であった。

低線量CTの肺がんスクリーニング、5年以上実施で10年生存が改善/Ann Oncol

 肺がんスクリーニングは肺がん死を減少するのか。National Lung Screening Trial(NLST)では、低線量CTによる年1回3年間の肺がんスクリーニングが肺がん死を減少させたことが示されている。イタリア・Foundation IRCCS国立がん研究所のUgo Pastorino氏らは、低線量CTによるさらに長期のスクリーニングについて評価する前向き無作為化臨床試験「Multicentric Italian Lung Detection:MILD試験」を行った。その結果、5年を超える長期スクリーニングは、NLST研究と比較し、早期発見のベネフィットの増強が可能であり、全死亡および肺がん死を大きく減少できる可能性が認められたという。

低食物摂取アルツハイマー病患者に対するリバスチグミンパッチの有効性

 多くのアルツハイマー病(AD)患者は、食物摂取不良や食欲不振を経験し、認知障害の進行を加速させる。これまでのいくつかの報告によると、リバスチグミンがAD患者の食欲を改善させることが示唆されている。香川大学の角 徳文氏らは、AD患者における低食物摂取を改善させるためのリバスチグミンパッチの有効性について検討を行った。Geriatrics & Gerontology International誌オンライン版2019年3月12日号の報告。  対象は、「AD患者の食物摂取に対するリバスチグミンの効果に関する研究」にて募集した、食欲不振または不十分な食物摂取のいずれかを経験したAD患者。

職場の健康プログラム、社員の健康や医療費減に効果なし?/JAMA

 職場における栄養・運動指導といった健康プログラムは、定期的な運動や体重管理を促す効果はあるものの、血圧やコレステロールなどの検査測定値や医療費の削減には効果がないことが示された。米国・ハーバード・メディカル・スクールのZirui Song氏らが、米国内160ヵ所の職場を対象に、クラスター無作為化比較試験を行い明らかにしたもので、JAMA誌2019年4月16日号で発表した。企業は、社員の健康改善や医療費削減のために職場健康プログラムへの投資を増やしているが、それらプログラムの効果に関する実証エビデンスはほとんどないという。

オリゴ転移へのSABR、OSを1年以上延長/Lancet

 原発腫瘍のコントロールが良好で転移病巣が少数(1~5ヵ所)の患者に対し、体幹部定位放射線治療(SABR)は、全生存期間(OS)を有意に延長させることが示された。一方で、SABR治療関連死の発生は3/66例(4.5%)であった。英国・London Health Sciences CentreのDavid A. Palma氏らが、99例を対象に行った第II相の非盲検無作為化比較試験の結果で、Lancet誌オンライン版2019年4月11日号で発表した。結果を踏まえて著者は、「第III相試験を行い、OSへの確固たるベネフィットが示されるのかを確認し、SABRの恩恵が得られる最大転移病巣数を明らかにする必要がある」と述べている。

アルツハイマー型認知症の薬はうたかたの夢か(解説:岡村毅氏)-1030

私たちの世代はアルツハイマー型認知症の薬の恩恵にはあずかれない。いつかは実現するかもしれないし、そう願うが、現実を見つめよう。 本論文は、アルツハイマー型認知症について広く信じられているアミロイド仮説(「アルツハイマー型認知症のセントラルドグマ」)に基づくものだ。つまりアミロイドをつくる酵素(BACE)を阻害する物質が、治療薬となるのではという考え方であった。しかし、本欄でも過去に紹介したように、すでに認知症になっている人に対して行われた研究では効果は見られなかった(「認知症の薬はいったいいつできるのか? バプティスト史観から」)。

「働き方改革」一歩前進へ-ロボット麻酔システム-

 2019年4月16日、福井大学医学部の重見 研司氏(麻酔・蘇生学教授)、ならびに松木 悠佳氏(同、助教)とその共同研究者らは、全身麻酔の3要素である鎮静・鎮痛・筋弛緩薬をすべて自動的に制御する日本初のシステムについて厚生労働省で記者発表した。本会見には共同研究者の長田 理氏(国立国際医療研究センター麻酔科診療科長)、荻野 芳弘氏(日本光電工業株式会社 呼吸器・麻酔器事業本部専門部長)も同席し、実用化に向けた取り組みについて報告した。

心房細動アブレーションに対するエドキサバン継続 vs.ワルファリン継続(ELIMINATE-AF)【Dr.河田pick up】

 エドキサバンはFXa(活性化血液凝固第X因子)を選択的に阻害することにより、心房細動患者において脳梗塞を予防する。心房細動アブレーションを受ける患者に対するエドキサバンの継続療法に関しては、これまで試験が行われていない。  ELIMINATE-AF試験は、多国籍、多施設共同、オープンラベルの無作為化並行群間比較試験。カテーテルアブレーションを受ける心房細動患者における、ワルファリンと比較したエドキサバン(1日1回60mg、減量投与が必要な患者には30mg)の安全性と有効性を評価するために行われた。

境界性パーソナリティ障害に対する集団精神療法のメタ解析

 境界性パーソナリティ障害(BPD)治療ガイドラインでは、必須とはいかないまでも、患者ケアの重要な要素として精神療法を推奨している。米国・Rawson-Neal Psychiatric HospitalのStephanie P. B. McLaughlin氏らは、BPDに対する集団精神療法と通常治療(TAU)を比較したランダム化比較試験のメタ解析を行った。Psychotherapy誌オンライン版2019年3月14日号の報告。  グループおよび患者の特性、バイアス変数リスク、TAU比較条件の治療要素(精神療法が含まれるかどうかなど)に基づくアウトカムの違いを調査するため、モデレーター分析を行った。

SGLT1/2阻害薬sotagliflozin、1型糖尿病の転帰改善/BMJ

 sotagliflozinは、ナトリウム・グルコース共輸送体(SGLT)1とSGLT2を、ともに阻害する経口薬。イタリア・Humanitas University Gradenigo HospitalのGiovanni Musso氏らは、1型糖尿病患者において、この新規SGLT1/2阻害薬のメタ解析を行い、血糖値および非血糖値関連のアウトカムの改善をもたらし、低血糖や重症低血糖の発現を抑制することを明らかにした。研究の成果は、BMJ誌2019年4月9日号に掲載された。1型糖尿病患者では、血糖目標値(HbA1c<7%)の達成率は30%にすぎず、インスリンによる低血糖や体重増加がみられ、とくに重症低血糖は至適な血糖コントロールを妨げる主要な因子とされる。sotagliflozinは、グルコースの腸管吸収だけでなく腎臓での再吸収を阻害する。この作用機序により、食後の血糖変動が抑制され、最終的にボーラスインスリン追加の補正の必要性や、低血糖リスクを低下させる可能性があるという。

完全磁気浮上遠心ポンプLVAD HeartMate 3 米国臨床試験最終報告(MOMENTUM 3 Trial)(解説:許俊鋭 氏)-1029

2018年4月にNEJM誌に「Two-Year Outcomes with a Magnetically Levitated Cardiac Pump in Heart Failure」が掲載され、軸流ポンプLVAD(HeartMate II)に対する完全磁気浮上遠心ポンプLVAD(HeartMate 3)の2年の非劣性臨床試験(MOMENTUM 3)の結果が報告された。後遺症が残る脳卒中回避2年生存率(79.5% vs.60.2%、p<0.001)およびLVADポンプ機能不全に対する再手術(1.6% vs.17.0%、p<0.001)において、HeartMate 3群はHeartMate II群に比べて非劣性かつ優越性があることが示された。本論文はAbbott社から資金提供を受けているMOMENTUM 3臨床試験の最終分析結果報告である。

女性化乳房のPPIによる発症リスクを調査

 プロトンポンプ阻害薬(PPI)による女性化乳房の症例報告は多いが、大規模な疫学研究はなかった。今回、カナダ・ブリティッシュコロンビア大学のBonnie He氏らが大規模な後ろ向きコホート研究を実施し、男性患者におけるPPIによる女性化乳房リスクを調べた。その結果、PPI使用による女性化乳房発症リスクはアモキシシリン使用に比べ、50歳超で1.5倍であった。Pharmacotherapy誌オンライン版2019年3月13日号に掲載。

日本人の悪性黒色腫4,594例を解析、その特徴が判明

 筑波大学医学医療系皮膚科長・准教授・病院教授の藤澤 康弘氏を含む日本皮膚悪性腫瘍学会・Japanese Melanoma Study(JMS)の研究グループらは、日本人患者4,594例の悪性黒色腫による臨床的特徴や予後因子を分析した成果を、Cancer Medicine誌オンライン版2019年4月1日号で発表した。各ステージの5年疾患特異的生存率は白人種と同等の傾向がみられること、あらゆるステージで病型と生存率に関連性はみられないが、末端黒子型黒色腫(ALM)がStageIIIAでは予後不良と関連することなどが明らかになったという。著者は「このようなまれな浸潤性が強い悪性黒色腫をターゲットとした臨床試験の実施を提案する」と述べている。

EGFR陽性MET増幅NSCLCに対するオシメルチニブとsavolitinib併用(TATTON)/AACR2019

 MET増幅は、EGRF変異陽性進行NSCLCのEGFR-TKIの獲得耐性の1つとして注目されている。savolitinibは高い親和性を持つ経口MET-TKIとして開発中の薬剤である。進行NSCLCを対象にした第Ib相オープンラベル多施設共同試験TATTONの中間解析として、EGFR変異陽性MET増幅患者に対するオシメルチニブとsavolitinibの併用治療の結果米国がん研究会議年次集会(AACR2019)で報告された。  オシメルチニブとsavolitinib併用のコホートは2つ。コホート1では第1世代または第2世代EGFR-TKI治療での進行患者が、コホート2では第3世代EGFR-TKI治療での進行患者がそれぞれ登録された。対象患者にはオシメルチニブ80mg/日とsavolitinib600mg/日が投与された。

小児におけるリスペリドン使用関連有害事象

 リスペリドンは、小児の行動障害によく使用されるが、この集団における薬剤関連有害事象の定義は、あいまいである。米国・ヴァンダービルト大学のKazeem A. Oshikoya氏らは、リスペリドン治療を受けた小児における有害事象発生率およびリスク因子について検討を行った。Drugs-Real World Outcomes誌オンライン版2019年3月27日号の報告。  ジェネラリストおよび小児科専門医が所属する学術医療センターで、4週間以上のリスペリドン治療を受けた18歳以下の患者を対象とした。

VT/VFに対するランジオロールの試験結果が発表/日本循環器学会

 短時間作用型β1選択的遮断薬ランジオロール(商品名:オノアクト)に対し、2019年3月に「生命に危険のある下記の不整脈で難治性かつ緊急を要する場合:心室細動、血行動態不安定な心室頻拍」の効能が追加承認された。  その根拠となった後期第II相/第III相試験[J-LandII study]の結果が、第83回日本循環器学会学術集会(2019年3月29~31日)で発表された。発表者は、東京女子医科大学循環器内科、志賀剛氏。  J-LandII studyは、III群抗不整脈薬を使用しているにも関わらず血行動態が不安定な心室頻拍(VT)/心室細動(VF)を呈する患者を対象に、ランジオロールの有効性と安全性を検討した多施設共同非盲検非対称試験である。主要評価項目には、有効性評価期間(1-49時間)における血行動態不安定なVTあるいはVFの非再発率が設定された。

大腸がん治療へのビタミンD補充、高用量 vs.標準用量/JAMA

 切除不能大腸がんの治療における標準化学療法へのビタミンD3補充療法の併用では、高用量は標準用量と比較して無増悪生存を改善しないことが、米国・ダナ・ファーバーがん研究所のKimmie Ng氏らが行ったSUNSHINE試験で示された。研究の成果は、JAMA誌2019年4月9日号に掲載された。転移を有する大腸がんの前向き観察研究により、血漿25ヒドロキシビタミンD(25[OH]D)値が高いほうが、生存は良好と報告されている。この知見を確証するための無作為化試験の実施が求められていた。

コレステロール過剰摂取、卵の食べ過ぎは心血管疾患および全死因死亡を増やす?(解説:島田俊夫氏)-1028

コレステロールの取り過ぎは体に悪い? これまでの欧米においては概して虚血性心疾患による死亡率がわが国と比較し圧倒的に多いことから、欧米からのエビデンスに基づき悪玉コレステロール高値は心血管疾患のリスク因子だとの考えが定着していた。もちろん家族性高コレステロール血症はとりわけハイリスクであるが、このような症例を一般化する解釈の根拠は必ずしも十分とは言えない。一方で高齢者の高コレステロール血症はむしろ健康状態が良いことが多く、スタチンを使用して下げている症例を時々みかけるが、個人的にはいらんお世話をしているのではと懸念している。

高血圧治療ガイドライン2019で降圧目標の変更は?

 本邦における高血圧有病者は約4,300万人と推計される。このうち、治療によって良好なコントロールが得られているのは30%以下。残りの70%は治療中・未治療含め血圧140/90mmg以上のコントロール不良の状態となっている。2014年以来5年ぶりの改訂となる「高血圧治療ガイドライン2019(JSH2019)」では、一般成人の降圧目標値が引き下げられ、より早期からの非薬物治療を主体とした介入を推奨する内容となっている。

糖尿病性腎臓病におけるエンパグリフロジンの複合腎・心血管アウトカム/国際腎臓学会

 SGLT2阻害薬エンパグリフロジン(商品名:ジャディアンス)によるEMPA-REG OUTCOME試験における、ベースライン時の顕性アルブミン尿を伴う糖尿病性腎臓病(DKD)患者での複合腎・心血管アウトカムの結果が、4月12~15日にオーストラリアで開催された国際腎臓学会(ISN)-World Congress of Nephrology(WCN)2019にて公表された。日本ベーリンガーインゲルハイム株式会社と日本イーライリリー株式会社が発表した。  EMPA-REG OUTCOME試験では、心血管イベントの発症リスクが高い2型糖尿病患者において、標準治療にエンパグリフロジンを上乗せ投与した結果、プラセボ群と比較して、主要評価項目である複合心血管イベント(心血管死、非致死的心筋梗塞、非致死的脳卒中)のリスクが14%減少し、心血管死リスクが38%減少したことが報告されている。