日本語でわかる最新の海外医学論文|page:1091

進行心不全患者に対する新型の連続流型人工心臓の治療効果

進行心不全患者の生存率およびQOLは、内科的治療よりも、拍動流型左心補助人工心臓の植込み手術治療を受けた方が改善されることは知られているが、新型の連続流型人工心臓「HeartMate II」はこの拍動流型よりも小型で、拍動流型装置を上回る耐久性が期待されている。米国イリノイ州Advocate Christ Medical CenterのMark S. Slaughter氏ら新型人工心臓の研究グループが、無作為化試験を行い、その評価結果を、NEJM誌2009年12月3日号(オンライン版2009年11月17日号)で発表した。

CTを用いた肺がん検診で肺がんをどこまで見つけられるか

解像度の高いマルチスライス・コンピューター断層撮影(CT)の、肺がんリスクの高い人への肺がんスクリーニング活用で、非石灰化肺結節が見つかる機会が増えている。しかし、そうした場合に臨床家が取るべき最善の行動指針(有病誤診率を増すことなく安価で手間のかからないフォローアップのあり方)に関しては明確になっておらず、各国で無作為化試験による模索が進められている。オランダ・エラスムス医療センターのRob J. van Klaveren氏らは、同国で行われている無作為化試験「NELSON」について、さらに詳細な基準(非石灰化肺結節の体積と体積倍加時間)規定のための無作為化試験評価を行い発表した。NEJM誌2009年12月3日号報告より。

大腸がん肝転移へのベバシズマブを含む化学療法、予後予測はCTがRECISTより適切

大腸がん肝転移に対するベバシズマブ(商品名:アバスチン)を含む化学療法について、コンピュータ断層撮影(CT)による形態学的判定の方が、固形がん治療効果判定基準(RECIST)よりも、病理学的所見や生存率予測に適切であることがわかった。米国テキサス大学腫瘍外科のYun Shin Chun氏らが、50人超の大腸がん肝転移患者について行った試験で明らかにしたもので、JAMA誌2009年12月2日号で発表した。RECISTは、細胞毒性化学療法後の腫瘍縮小を判定するために作られたもので、ベバシズマブのような細胞分裂阻害薬の効果判定にも用いることができるのか疑問視されていた。

ICU患者の半数以上が感染症、75ヵ国の調査結果

集中治療室(ICU)で治療を受ける患者のおよそ半数以上が、感染症を発症していることが、75ヵ国の調査結果で明らかになった。ベルギーのErasme大学病院集中治療部門のJean-Louis Vincent氏らEPIC 2研究グループが、約1万4,000人のICU患者を調べた結果で、JAMA誌2009年12月2日号で発表された。ICU患者の感染症に関する、世界的な調査結果報告がほとんどない中、本試験は1992年に行われたEPIC研究(西欧17ヵ国、ICU 1,417ヵ所)データのup-to-dateを目的に行われた。

低用量アスピリン、糖尿病患者の心血管イベント1次予防効果はメタ解析でもやはり不明

糖尿病患者の主要な心血管イベントの1次予防に、ほとんどのガイドラインで、低用量アスピリンの投与が推奨されている。しかし一方では、その効果については論争の的ともなっている。イタリアのConsorzio Mario Negri SudのGiorgia De Berardis氏らのグループは、最新の無作為化試験を含むメタ解析を行った結果、明白な利点は証明されなかったことを報告した。BMJ誌2009年11月28日号(オンライン版2009年11月6日号)掲載より。

多彩な冠疾患のリスクマーカー、その強みと弱み

冠疾患との関連が指摘されるリスクマーカーは心理社会的、行動的、生物学的など多様である一方、それぞれが現にガイドラインに含まれている。そうした中で、これまでのシステマティックレビューは、1つのリスクマーカー、1つの研究デザインに焦点を合わせた「縦」の比較検討がされてきたが、異なるタイプのリスクマーカー、異なる固有の限界や不足を有する異なる研究デザインを組み込んでの「水平」比較が必要ではないかとの指摘が高まった。ロンドン大学衛生熱帯医学校のHannah Kuper氏らは、この「水平」比較に取り組み、BMJ誌2009年11月28日号(オンライン版2009年11月5日号)で結果を発表した。

“ベンザルコニウム塩化物”+“低濃度アルコール”の手指用消毒液、抗インフルエンザウイルス効果を確認

ライオン株式会社は9日、同社と財団法人北里環境科学センターが、手指用消毒液のインフルエンザウイルスに対する効果を確認する中で、「ベンザルコニウム塩化物に低濃度アルコールを組み合わせた手指用消毒液」に、インフルエンザウイルスに対して殺菌効果があることを確認したと発表した。

高用量ARBが、ACE阻害薬に不耐容の心不全患者の臨床転帰を改善:HEAAL試験

 高用量のロサルタン(商品名:ニューロタン)は低用量に比べ、ACE阻害薬に不耐容の心不全患者において心不全による入院率および死亡率を有意に低減させることが、アメリカTufts大学医学部Tufts医療センターのMarvin A Konstam氏らが実施した無作為化試験(HEAAL試験)により明らかとなった。アンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)は、ACE阻害薬併用の有無にかかわらず心不全患者の合併症発生率や死亡率を低減し、左室駆出率(LVEF)を改善することが示されているが、これらの臨床試験は1種類の用量の評価にすぎないため、種々の用量のレジメンのうちの至適用量や相対的なリスク/ベネフィットのプロフィールの指針とはならないという。心不全患者に対するARB治療では、高血圧治療に使用される通常用量よりも高用量のほうが臨床転帰は改善される可能性が指摘されていた。Lancet誌2009年11月28日号(オンライン版2009年11月17日号)掲載の報告。

認知症は失明よりも身体障害の重大な要因:低~中所得国の高齢者

 認知症は、低~中所得国の高齢者の身体障害に寄与する最大の要因であることが、イギリスKing’s College London精神研究所精神保健センターのRenata M Sousa氏らによる地域住民ベースの調査で明らかとなった。2004年の世界疾病負担(Global Burden of Disease)の推計では、身体障害を伴う生存年(YLD)は全世界で7億5,100万年であり、その68%は非伝染性の慢性疾患によるものだが、この慢性疾患に起因する身体障害の負担の84%は低~中所得国で発生している。しかし、特に低~中所得国の高齢者の身体障害について検討した調査はほとんどないという。Lancet誌2009年11月28日号掲載の報告。

リアルタイムPCR 法による検出キットが発売

扶桑薬品工業株式会社は7日、同社と公立大学法人大阪府立大学が産学共同で開発し、タカラバイオ株式会社に実施許諾しているカンピロバクター検出のためのプライマー配列(細胞膨化致死毒素:Cytolethaldistending toxin 遺伝子のC サブユニットをターゲット)について、新たにタカラバイオ社より、リアルタイムPCR 技術を組み合わせたカンピロバクター属菌の2菌種を特異的かつ迅速に検出・同定する「CycleavePCR Campylobacter (jejuni/coli) Typing Kit」を発売すると発表した。

Florbetaben(フロルベタベン)の第III相臨床試験を開始

独バイエル・シエーリング・ファーマ社(以下 BSP社)は11月30日(現地時間)、アルツハイマー病(AD)の診断を支援するflorbetaben(フロルベタベン)の臨床開発を前進させると報告した。BSP社は、第95回北米放射線学会(RSNA)で、脳内におけるベータアミロイドの沈着を検出するPETトレーサーとしてフロルベタベン(BAY94-9172)の有効性と安全性を評価する国際第III相臨床試験について、最初の患者が登録されたと発表した。試験には、明らかな認知症患者(例えばAD)とそうでない患者が登録される予定だという。フロルベタベンは先の第II相臨床試験で、AD患者の病理学的特徴である脳のベータアミロイド沈着が検出可能となることを成功裏に実証した。

自己免疫性膵炎と関連する特異的抗体が同定、しかし……

自己免疫性膵炎は、臓器機能障害に至る炎症の進行が特徴とされるが、疾患の原因はわかっていない。自己免疫由来が示唆されているものの、これまで証明はされておらず、この病態の病因についてはほとんどわかっていなかったが、イタリア・ヴェローナ大学のLuca Frulloni氏らの研究グループがその一端に迫ることができたようだ。NEJM誌2009年11月26日号より。

スタチン併用療法ではniacinがエゼチミブを凌駕

スタチン単独療法患者の脂質プロファイルを改善する併用療法としては、高比重リポ蛋白(HDL)コレステロールを高める併用療法と、低比重リポ蛋白(LDL)コレステロールを低下させる併用療法の2つがある。ウオルター・リード米軍医療センターのAllen J. Taylor氏らの研究グループは、それぞれの併用療法の臨床効果を比較した有効性比較試験ARBITER-6 HALTSの結果について発表した。NEJM誌2009年11月26日号(オンライン版2009年11月16日号)より。

二次救命処置の薬剤静脈内投与、アウトカムは非投与と同等

二次救命処置(ACLS)における薬剤の静脈内投与に関して、投与を行わなかった場合と退院時生存率などが同等であることがわかったという。ノルウェー・オスロ大学病院実験医学研究所のTheresa M. Olasveengen氏らが、無作為化対照試験を行い明らかにしたもので、JAMA誌2009年11月25日号で発表した。現行のACLSガイドラインには、薬剤の静脈内投与が盛り込まれているものの、投与によるアウトカム改善に関するエビデンスは不明だった。

慢性筋骨格痛が2ヵ所以上ある高齢者、転倒リスク約1.5倍

 慢性筋骨格痛が2ヵ所以上ある高齢者は、転倒リスクがおよそ1.5倍に増大するようだ。米国ベス・イスラエル・ディーコネス医療センター総合内科・プライマリ・ケア部門のSuzanne G. Leveille氏らによる試験で明らかになった。高齢者の慢性痛と転倒リスクについての研究結果はこれまでほとんど見られていない。JAMA誌2009年11月25日号掲載より。

カナダ製の新型インフルエンザワクチン「Arepanrix」 WHOの事前認定を取得

英グラクソ・スミスクライン社は1日(現地時間)、同社のカナダ製新型インフルエンザワクチン 「Arepanrix」 (アジュバント添加新型インフルエンザワクチン)が、世界保健機関(WHO)より事前認定(Pre-qualification)を取得したと発表した。同社の日本法人が報告した。