高用量ARBが、ACE阻害薬に不耐容の心不全患者の臨床転帰を改善:HEAAL試験

提供元:ケアネット

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公開日:2009/12/10

 

 高用量のロサルタン(商品名:ニューロタン)は低用量に比べ、ACE阻害薬に不耐容の心不全患者において心不全による入院率および死亡率を有意に低減させることが、アメリカTufts大学医学部Tufts医療センターのMarvin A Konstam氏らが実施した無作為化試験(HEAAL試験)により明らかとなった。アンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)は、ACE阻害薬併用の有無にかかわらず心不全患者の合併症発生率や死亡率を低減し、左室駆出率(LVEF)を改善することが示されているが、これらの臨床試験は1種類の用量の評価にすぎないため、種々の用量のレジメンのうちの至適用量や相対的なリスク/ベネフィットのプロフィールの指針とはならないという。心不全患者に対するARB治療では、高血圧治療に使用される通常用量よりも高用量のほうが臨床転帰は改善される可能性が指摘されていた。Lancet誌2009年11月28日号(オンライン版2009年11月17日号)掲載の報告。

ロサルタンの高用量と低用量を比較する二重盲検試験

 HEAAL試験の研究グループは、ARBの一つであるロサルタンを用い、心不全患者の臨床転帰の改善効果は高用量と低用量のいずれが優れるかを検討する二重盲検無作為化試験を実施した。

 2001年11月~2005年3月までに、30ヵ国255施設からNYHAクラスII~IV、LVEF<40%で、ACE阻害薬に不耐容の心不全患者3,846例が登録された。これらの患者が、ロサルタン150mg/日を投与する群(1,927例)あるいは50mg/日を投与する群(1,919例)に無作為に割り付けられた。

 無作為割り付けの際に、施設およびβ遮断薬の併用の有無で層別化が行われ、患者、医師ともに割り付け情報は知らされなかった。主要評価項目は死亡および心不全による入院の複合エンドポイントとした。

高用量群で死亡および心不全による入院が有意に低減、ARB漸増法は有用

 両群とも、データの質の不良により6例ずつが除外された。フォローアップ期間中央値4.7年の時点で、死亡および心不全による入院の割合は50mg群の46%(889/1,913例)に対し、150mg群は43%(828/1,921例)と有意に低減した(ハザード比:0.90、p=0.027)。

 主要評価項目の2つの構成因子のうち、死亡については有意な差はなかった[150mg群:33%(635/1,921例) vs. 35%(665/1,913例)、ハザード比:0.94、p=0.24]が、心不全による入院は高用量群が低用量群よりも有意に優れた[150mg群:23%(450/1,921例) vs. 26%(503/1,913例)、ハザード比:0.87、p=0.025]。

 Kaplan-Meier法による主要評価項目の累積発現率は、150mg群では1年後11.7%、2年後21.4%、3年後28.9%、4年後35.7%であり、50mg群はそれぞれ13.3%、24.4%、31.5%、38.9%と推移した(ハザード比:0.90、p=0.027)。サブグループ解析では、高血圧の既往歴のない心不全患者では、高用量群が低用量群よりも有意に臨床転帰が優れた(p=0.01)。

 高用量群で、腎不全(150mg群:454例 vs. 50mg群:317例)、低血圧(203例 vs. 145例)、高カリウム血症(195例 vs. 131例)が多く見られたが、これらの有害事象によって高用量群の治療中止例が有意に増加することはなかった。

 著者は、「ロサルタン150mg/日は、50mg/日に比べACE阻害薬不耐容の心不全患者の死亡および心不全による入院の割合を有意に低減した」と結論し、「これらの知見は、臨床的ベネフィットがもたらされるまでARBを漸増する方法の有用性を示す」と指摘している。

(菅野守:医学ライター)