日本語でわかる最新の海外医学論文|page:67

米国の入院患者の14人に1人が有害な誤診の被害者に?

 入院患者の14人に1人が、有害な誤診の被害者となっている可能性のあることが、新たな研究で明らかになった。これらの誤診の85%は回避できた可能性があることから、研究グループは、「このような誤診を防ぐためのサーベイランスを改善する必要性を強調する結果だ」との見方を示している。米ブリガム・アンド・ウイメンズ病院のAnuj Dalal氏らによるこの研究の詳細は、「BMJ Quality & Safety」に10月1日掲載された。  この研究は、2019年7月から2021年9月までの間にボストンの大規模病院に入院した患者9,147人の診療記録を用いて、誤診の発生状況とその影響を調べたもの。これらの患者の中から、1)集中治療室(ICU)に移された患者、2)90日以内に死亡した患者、3)複雑な臨床イベント(臨床的悪化、複数の医療チームによる治療、予期せぬ手術など)が発生した患者、4)上記3つの基準に該当しない低リスク患者、の4つの基準に従って、675人をランダムに抽出した。ただし、1)〜3)の高リスク患者は多めに選び出された(ICU入室患者の100%、90日以内に死亡した患者の38.5%、複雑な臨床イベントが生じた患者の7%、低リスク患者の2.4%)。患者が被った被害の程度は、軽度、中等度、重度、致命的の4つに分類し、また誤診がその被害の原因であったのかや回避可能だったかについても評価された。

ICU入室期間、専門医療チームによる遠隔医療vs.通常ケア/JAMA

 集中治療室(ICU)に入室した成人重症患者では、通常ケアと比較して、専門医資格を持つ集中治療医が主導し現地の集学的医療チームと行う遠隔医療による毎日の集学的回診は、ICU入室期間(ICU LOS)を短縮せず、患者レベルおよびICUレベルのアウトカムにも改善を認めないことが、ブラジル・Hospital Israelita Albert EinsteinのAdriano J. Pereira氏らが実施した「TELESCOPE試験」で示された。研究の詳細は、JAMA誌オンライン版2024年10月9日号で報告された。  TELESCOPE試験は、ICUにおける遠隔医療が重症患者の臨床アウトカムを改善するか評価することを目的とする非盲検クラスター無作為化対照比較試験であり、2019年6月~2021年4月の期間にブラジルの30ヵ所のICUで患者を登録した(ブラジル保健省などと提携した)。

感染症学会ほか、コロナワクチン「高齢者の定期接種を強く推奨」

 日本感染症学会、日本呼吸器学会、日本ワクチン学会の3学会は、10月21日に「2024年新型コロナワクチン定期接種に関する見解」を共同で発表した。3学会は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の⾼齢者における重症化・死亡リスクはインフルエンザより高く、今冬の流行に備えて、10月から始まった新型コロナワクチンの定期接種を強く推奨している。本見解は、接種を検討する際の参考となる科学的根拠を提供している。

発作性夜間ヘモグロビン尿症に経口治療薬が登場/ノバルティス

 ノバルティス ファーマは、発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)の単剤経口薬イプタコパン(商品名:ファビハルタ)の発売と適正使用の推進に向けて都内でメディアセミナーを開催した。  PNHは、後天性の遺伝子異常により赤血球が補体の攻撃を受けやすくなるまれな血液疾患。わが国には約1,000例程度の患者が推定されている。進行は緩徐であるが、溶血発作を繰り返すことで血栓症や造血不全になることもあり、脳卒中や臓器障害といった重篤な合併症を引き起こすリスクがある。

ついに始まったTAV in TAV、見えてきた課題と新アプリの役割/日本心不全学会

 大動脈弁狭窄症(AS)の非侵襲的治療としてカテーテル大動脈弁植え込み術(TAVI)が日本で使用されるようになり、今年で11年目を迎える。従来TAVIの適応は80歳以上の高齢者や、バイパス術などの開胸術の既往を有するなどの高リスク症例が対象であったが、低リスク症例への適応拡大や世界的に平均寿命が延伸する昨今、弁機能不全を呈して再治療を必要とする患者が増加傾向にある。2023年には再治療の選択肢として本邦でもSAPIEN3(以下、S3)によるTAV in TAV(現在はS3 in S3に限定)が承認されたことで、TAV in TAVの課題理解は急務とも言える。一方で、外科的大動脈弁置換術(SAVR)の時点でも、将来のTAV in SAVの可能性を踏まえた弁選択が問われるところである。

高用量ベンゾジアゼピン使用の特徴とは

 フィンランド・トゥルク大学のHanna Sarkila氏らは、新たにベンゾジアゼピン(BZD)を使用した患者におけるBZDの高用量使用と関連する社会人口学的および臨床的要因を調査した。BJPsych Open誌2024年9月23日号の報告。  対象は、2004〜05年にBZD未使用で、2006年に使用を開始した18〜65歳の新規BZD使用患者。フォローアップ期間は、5年または死亡までとした。BZDの用量は、PR E2DUP法に基づき、開始後6ヵ月ごとに1日当たりの定義済み1日用量(DDD)とし、ポイント推定値を算出した。用量カテゴリーに関連する社会人口学的および臨床的要因は、多項ロジスティック回帰を用いて調査した。

脳刺激療法で頭部外傷後の手や腕の機能が回復か

 脳卒中や外傷性脳損傷(TBI)で手や腕の機能を失った患者に対し、脳深部刺激療法(DBS)を施行することで一部の機能が回復する可能性のあることが、米ピッツバーグ大学物理療法学助教のElvira Pirondini氏らの研究で示された。この研究結果は、「Nature Communications」に10月1日掲載された。  DBSは、手術で脳に電極を植え込み、特定の活動を制御している脳領域に電気信号を送って刺激を与える治療法で、パーキンソン病による運動障害の治療目的で施行されることが多い。Pirondini氏は、「腕や手の麻痺は、世界の何百万人もの人々の生活の質(QOL)に大きな影響を与えている。現在、脳卒中やTBIを経験した患者に対する効果的な解決策はないが、脳を刺激して上肢の運動機能を改善するニューロテクノロジーへの関心が高まりつつある」と説明する。

頬の内側の細胞を使った検査で寿命の予測が可能に?

 頬の内側を軽くこすって採取した口腔粘膜細胞を利用するCheekAgeと呼ばれる検査によって、寿命を予測できるようになる可能性があるとする研究結果が報告された。米ニューヨークの企業であるTally Health社とウェルカム・トラストの助成を受けて、Tally Health社計算生物学・データサイエンス部門の部門長であるMaxim Shokhirev氏らが実施したこの研究の詳細は、「Frontiers in Aging」10月1日号に掲載された。  CheekAge検査は「エピジェネティック・クロック」の一種で、頬の内側をこすって採取した細胞に含まれる特定のDNAメチル化の分析により、生涯を通じた環境や生活習慣が遺伝子の機能に影響を与える仕組み(エピジェネティクス)を調べるものである。DNAのメチル化は、エピジェネティクスの重要なメカニズムであり、遺伝子の塩基配列を変えることなくその働きに影響を与えるDNA領域での分子変化のことをいう。

GLP-1受容体作動薬が消化管の内視鏡検査に影響か

 上部消化管内視鏡検査(以下、胃カメラ)や大腸内視鏡検査では、患者の胃の中に食べ物が残っていたり腸の中に便が残っていたりすると、医師が首尾よく検査を進められなくなる可能性がある。新たな研究で、患者がオゼンピックやウゴービといった人気の新規肥満症治療薬(GLP-1受容体作動薬)を使用している場合、このような事態に陥る可能性の高くなることが明らかになった。米シダーズ・サイナイ病院の内分泌学者で消化器研究者のRuchi Mathur氏らによるこの研究結果は、「JAMA Network Open」に10月1日掲載された。

1次予防のICD装着患者に抗頻拍ペーシングは有効/JAMA

 近年、植込み型除細動器(ICD)の新たなプログラミング・ガイドラインが策定され、ICDの新技術の開発が進んでいるため、1次予防のICD装着患者における心室頻拍(VT)を停止させる方法としての抗頻拍ペーシング(ATP)の再評価が求められている。米国・ロチェスター大学のClaudio Schuger氏らAPPRAISE ATP Investigatorsは「APPRAISE ATP試験」において、1次予防として最新の不整脈検出プログラムを使用したICDを装着した患者では、電気ショックによる治療のみを行う方法と比較してショック作動の前にATPを1回行うアプローチは、全原因による初回ショック作動までの時間の相対リスクを有意に減少させ、適切なショック作動や不適切なショック作動が発生するまでの時間を改善することを示した。研究の成果は、JAMA誌オンライン版2024年10月3日号に掲載された。

日本人の牛乳・乳製品の摂取と不眠症との関連

 労働安全衛生総合研究所の佐藤 ゆき氏らは、日本人における牛乳や乳製品の習慣的な摂取と不眠症との関連を調査した。Nutrition and Health誌オンライン版2024年9月25日号の報告。  東日本で20〜74歳の6万633人(男性:2万2,721人、女性:3万7,912人)を対象に、コホート研究データを用いた横断的研究を実施した。牛乳、乳製品の摂取、睡眠状況、その他の生活習慣に関するデータは、自己記入式質問票を用いて収集した。牛乳、乳製品に関する質問は、全乳、低脂肪牛乳、チーズ、ヨーグルト、乳酸菌飲料を含め、摂取頻度(週1回未満、週1〜2回、週3〜6回、1日1回以上)を評価した。睡眠状況の評価には、アテネ不眠症尺度を用いた。

BRCA1/2変異保有者の避妊薬使用、乳がんリスクとの関連/JCO

 生殖細胞系列BRCA1/2変異保有者において、ホルモン避妊薬が乳がんリスクを増加させるかどうかは不明である。今回、オーストラリア・Peter MacCallum Cancer CentreのKelly-Anne Phillips氏らの研究で、ホルモン避妊薬は、とくに長期使用で、BRCA1変異保有者の乳がんリスク上昇と関連することが示された。Journal of Clinical Oncology誌オンライン版2024年10月2日号に掲載。  本研究では、4つの前向きコホート研究からプールされた観察データを用いて、避妊薬使用とBRCA1/2変異保有女性の乳がんリスクとの関連についてCox回帰を用いて評価した。

子供がコロナで入院すると子供も親も精神衛生に影響/国立成育医療研究センター

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に関連するスティグマは、抑うつ、不安、孤独感などの心身の苦痛を引き起こす世界的な問題となっている。しかし、COVID-19のスティグマと、それに関連する子供や親のメンタルヘルスへの影響を調査した研究はほとんどないのが現状である。  国立成育医療研究センター総合診療部の飯島 弘之氏らの研究グループは、COVID-19に感染した子供とその親に対して、COVID-19に関わるスティグマ(患者に対する「差別」や「偏見」)と、メンタルヘルスへの影響について調査する研究を実施した。その結果、主観的スティグマがある子供と推定スティグマがある親は、1ヵ月後もメンタルヘルスにネガティブな影響がみられた。本研究結果は、Pediatrics International誌2024年1~12月号に掲載された。

インフルワクチンの日本人の心不全に対する影響~PARALLEL-HF試験サブ解析/日本心不全学会

 呼吸器感染症に代表されるインフルエンザ感染は、心筋へウイルスが移行する直接作用、炎症惹起性サイトカイン放出による全身反応などによって心血管障害を及ぼす。また、プラークの不安定化、炎症による心拍数の不安定化への影響なども報告されているが、海外研究であるPARADIGM-HF試験が検証したところによると、インフルエンザワクチン接種が心不全患者の死亡リスク低下と関連する可能性を示唆している。

関節リウマチは気管支拡張症リスクを高めるが、その逆は認められない

 遺伝的に予測された関節リウマチ(RA)と気管支拡張症リスクとの間には因果関係があるというメンデルランダム化(MR)研究の結果が「Frontiers in Medicine」に6月20日掲載された。RAは気管支拡張症リスクを高めるが、その逆の関係は認められなかったという。  RAと気管支拡張症の関連を示唆する報告はいくつかなされているが、因果関係は明らかになっていない。武漢第四病院(中国)のYuanyuan Li氏らは、FinnGenコンソーシアムからRAのゲノムワイド関連研究(GWAS)データを、IEU Open GWASプロジェクトから気管支拡張症のGWASデータをそれぞれ収集し、RAと気管支拡張症の関連を検討した。単変量メンデルランダム化(UVMR)解析には、主に逆分散加重(IVW)推定を用いた。加えて、双方向MR解析、再現MR解析、多変量MR(MVMR)解析、媒介分析、感度分析も行った。

心血管疾患リスクの予測にはBMIよりも体丸み指数が有用

 過体重が人の心臓の健康に与える影響を予測する上では、「体丸み指数(body roundness index;BRI)」の方がBMIよりも優れた指標である可能性のあることが、新たな研究で明らかになった。6年にわたって継続的にBRIが高かった人では低かった人に比べて、心血管疾患(CVD)リスクが163%高いことが示されたという。南京医科大学(中国)Wuxi Center for Disease Control and PreventionのYun Qian氏らによるこの研究結果は、「Journal of the American Heart Association」に9月25日掲載された。  2013年に提唱されたBRIは、ウエスト周囲径と身長を基に算出する腹部肥満の指標で、BMIやウエスト周囲径などよりも体脂肪や内臓脂肪の割合を正確に反映すると考えられている。一方、従来から使われているBMIは体重と身長のみから算出する。そのため、筋肉量が非常に多い人では値が高くなることもあり、肥満度の指標としては不正確だとして批判されることもある。

歯科患者の不安を客観的に評価できる質問票

 歯科治療を受ける患者の不安や恐怖の強さを、6種類の顔のイラストから選択してもらって客観的に評価する質問票が開発された。大阪歯科大学欠損歯列補綴咬合学講座の三野卓哉氏らによる研究によるもので、詳細は「The Journal of Advanced Prosthodontics」に8月20日掲載された。開発された質問票の信頼性や妥当性の検証結果も報告されている。  歯科治療に強い不安や恐れを抱く「歯科恐怖症」の有病率は、成人の5~22%と報告されている。歯科恐怖症では歯科受診の機会が少なくなり口腔疾患が進行してしまうというリスクばかりでなく、不安や恐怖のために痛みに対する感受性がより高くなったり、歯科医師の説明の理解がおろそかになったりすることも問題となる。また、医科においては、治療に伴う不安を評価するツール(例えば状態-特性不安尺度〔STAI〕)が確立され臨床に役立てられているが、歯科の日常診療で活用できる簡便な評価ツールは存在しない。

貧血を伴う急性脳損傷患者への輸血、非制限戦略vs.制限戦略/JAMA

 急性脳損傷患者に対する非制限輸血戦略または制限輸血戦略は、神経学的アウトカムにどのような影響をもたらすのか。ベルギー・ブリュッセル自由大学のFabio Silvio Taccone氏らTRAIN Study Groupが多施設共同無作為化試験にて検討し、貧血を伴う急性脳損傷患者では、非制限輸血戦略のほうが制限輸血戦略よりも神経学的アウトカムが不良となる可能性が低かったことを示した。JAMA誌オンライン版2024年10月9日号掲載の報告。  研究グループは、急性脳損傷患者における赤血球輸血の指針として、2つの異なるヘモグロビン閾値が神経学的アウトカムに与える影響を評価するため、22ヵ国72ヵ所のICUにて、研究者主導のプラグマティックな第III相多施設共同並行群間非盲検無作為化比較試験を行った。

膀胱がんの拡大リンパ郭清、周術期の合併症・死亡増(SWOG S1011)/NEJM

 膀胱全摘除術を受ける限局性筋層浸潤性膀胱がん患者において、拡大リンパ節郭清は標準的リンパ節郭清と比較して、無病生存期間(DFS)および全生存期間(OS)を延長しないばかりか、高率の周術期合併症および死亡の発生が認められた。米国・ベイラー医科大学医療センターのSeth P. Lerner氏らSWOG S1011 Trial Investigatorsが第III相多施設共同無作為化試験「SWOG S1011試験」の結果を報告した。NEJM誌2024年10月3日号掲載の報告。  研究グループは、臨床病期T2(筋層に限局)~T4a(隣接臓器に浸潤)、リンパ節転移は2個以下(N0、N1、N2)の限局性筋層浸潤性膀胱がん患者を、両側標準リンパ節郭清術(両側骨盤内のリンパ節郭清)または拡大リンパ節郭清術(総腸骨リンパ節、坐骨前リンパ節、仙骨前リンパ節の切除を含む)を受ける群に1対1の割合で無作為に割り付けた。

血栓除去術は単純CT上の大梗塞に有効か?(解説:内山真一郎氏)

発症後24時間以内の、単純CTで認めた大梗塞に血管内血栓除去術(IVT)が有効かどうかは証明されていない。TESLA試験は、前方循環の大血管閉塞があり、単純CT上大梗塞(Alberta Stroke Program Early CT Score、ASPECT2~5)を認めた、発症後24時間以内の300症例を対象とした米国での多施設共同無作為化比較試験であったが、90日後の機能予後はIVT群と通常の内科的治療のみの対照群との間で有意差がなかったという結果であった。単純CT上の大梗塞を対象とした試験としては、先にTENSION試験が行われていたが、TENSION試験では発症後11時間以内の症例に限定していたのに対してTESLA試験では半数が発症後12時間以上の症例であり、これらの症例では大梗塞による浮腫の影響がIVTの治療効果を弱めた可能性がある。