日本語でわかる最新の海外医学論文|page:367

わが国のEGFR陽性NSCLCに対するゲフィチニブのアジュバント治療の結果(IMPACT)/ASCO2021

 EGFR変異陽性非小細胞肺がん(NSCLC)の完全切除後の術後療法としてのゲフィチニブの有用性を検討した国内臨床試験の結果が、米国臨床腫瘍学会年次総会(2021 ASCO Annual Meeting)において、吹田徳洲会病院の多田弘人氏から報告された。  このIMPACT試験は日本のWJOGにより実施されたオープンラベルの無作為化比較第III相試験である。

日本における統合失調症患者の早期再入院の減少につながる院内看護

 統合失調症は、精神症状の再発を特徴とする疾患である。統合失調症入院患者の15~30%は、退院後90日以内に自傷行為、他傷行為、セルフネグレクトにつながる症状の悪化により再入院している。椙山女学園大学の牧 茂義氏らは、統合失調症患者の早期再入院減少につながる院内看護の構造およびその予測因子を調査するため、横断的研究を行った。PLOS ONE誌2021年4月30日号の報告。  調査対象は、日本の精神科病棟に勤務する正看護師724人。統合失調症患者の早期再入院の減少につながる院内看護について評価するため、質問票を新たに作成した。質問票を用いて、項目分析、探索的因子分析を行い、早期再入院減少につながる院内看護の構造を調査した。

進行TN乳がんIMサブタイプの1次治療にfamitinib+camrelizumab+nab-パクリタキセルが有望(FUTURE-C-PLUS)/ASCO2021

 immunomodulatory(IM)サブタイプの進行トリプル(TN)乳がんの1次治療として、中国で複数のがんに承認されている抗PD-1抗体camrelizumabとnab-パクリタキセルの併用に、VEGFR-2、PDGFR、c-kitを標的とした経口チロシンキナーゼ阻害薬famitinibを追加することにより、有望な抗腫瘍活性および管理可能な毒性プロファイルを示したことが、前向き単群第II相試験のFUTURE-C-PLUS試験で示された。中国・Fudan University Shanghai Cancer CenterのZhi-Ming Shao氏が、米国臨床腫瘍学会年次総会(2021 ASCO Annual Meeting)で発表した。

皮膚病変からコロナ重症度もわかる?その具体的な症状とは

 新型コロナ患者での皮膚病変が報告されているが、具体的にはどのような症状なのだろうか。福田 知雄氏(埼玉医科大学総合医療センター皮膚科 教授)がメディアセミナーにおいて、「皮膚は健康のバロメーター ~意外と多いコロナの皮膚症状、爪からわかる健康状態~」と題し、皮膚病変が新型コロナ重症度判定にも有用な可能性を示唆した(主催:佐藤製薬)。  福田氏はまず、昨年3月にイタリアの皮膚科医が報告した論文1)を挙げ、「彼らは“新型コロナ(以下、COVID-19)病棟の多くの患者に皮膚症状が出ていた”ことに注目し調査を実施した。その結果、20.4%(18/88例)に皮膚症状(紅斑性発疹、広範囲の蕁麻疹、水痘様水疱など)が認められたことを報告した」と説明。しかし、この段階ではCOVID-19と重症度の相関関係は認められておらず、その後9月に発表されたドイツの研究者の論文2)で、COVID-19のリスク層別化などに役立つ可能性が示唆された。これを踏まえ同氏は、「ある症状はより軽度のCOVID-19の経過を示す臨床的徴候であり、別の症状はより重度の経過を示す赤旗であることが示された。つまり、どんな皮膚症状から何がわかるのか、皮膚症状の理解を深めておくことがCOVID-19の指標確認にもなる」とコメントした。

高リスク尿路上皮がんの術後補助療法、ニボルマブが有効/NEJM

 根治手術を受けた高リスクの筋層浸潤性尿路上皮がん患者の術後補助療法において、ニボルマブはプラセボと比較して、6ヵ月後の無病生存率が統計学的に有意に高く、プログラム細胞死リガンド1(PD-L1)発現率≧1%の患者集団でも無病生存(DFS)率が優れることが、米国・スローン・ケタリング記念がんセンターのDean F. Bajorin氏らが実施した「CheckMate 274試験」で示された。NEJM誌2021年6月3日号掲載の報告。  研究グループは、高リスク筋層浸潤性尿路上皮がん患者の術後補助療法におけるニボルマブの有用性を評価する目的で、二重盲検無作為化対照比較第III相試験を行った(Bristol Myers Squibb、Ono Pharmaceuticalの助成による)。2016年4月~2020年1月の期間に、日本を含む29ヵ国156施設で参加者の無作為化が行われた。

術前化療後に残存病変を有するTN乳がん、術後カペシタビンvs.プラチナ(ECOG-ACRIN EA1131)/ASCO2021

 術前療法施行後にも残存腫瘍を有するトリプルネガティブ乳がん(TNBC)患者に対する、術後の追加療法としてのプラチナ製剤とカペシタビンとの比較試験の結果が、米国臨床腫瘍学会年次総会(2021 ASCO Annual Meeting)において、米国・ECOG-ACRINグループのIngrid A. Mayer氏から発表された。  術前療法後に残存腫瘍を有するTNBC患者に対するカペシタビン追加投与の有用性は、すでに日韓共同のCREATE-X試験によって示唆されている。本試験は対象患者層が異なるプラチナ製剤とカペシタビンとの第III相の無作為化比較試験である。

CLL/SLL初回治療、イブルチニブ+ベネトクラクスは高リスク群でも高い有用性/ASCO2021

 慢性リンパ性白血病(CLL)/小リンパ球性リンパ腫(SLL)に対する1次治療として、ブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)阻害薬イブルチニブとBCL-2阻害薬ベネトクラクスの併用療法の有用性をみた国際多施設共同第II相試験CAPTIVATEの追加解析結果について、イタリア・ビタ・サルート・サンラファエル大学のPaolo Ghia氏が米国臨床腫瘍学会年次総会(2021 ASCO Annual Meeting)で発表した。  CAPTIVATE試験は、被験者を微小残存病変(MRD)コホートと治療期間を固定したFixed-duration(FD)コホートに分けて実施。MRDコホートの分析結果は2020年の米国血液学会(ASH)で既に報告されており、イブルチニブを3サイクル投与後、12サイクルのイブルチニブ(Ib)+ベネトクラクス(V)を投与したところ、3分の2以上が検出不能なMRD(uMRD)となり、さらにIb+V投与後にMRDの状態に基づいた無作為化治療を実施したところ、30ヵ月後の無増悪生存(PFS)率が95%以上と高い奏効を示した。

急性期統合失調症におけるルラシドンの有効性と安全性

 千葉大学の伊豫 雅臣氏らは、日本および世界各国における急性期統合失調症に対するルラシドンの有効性を評価するため、検討を行った。Psychiatry and Clinical Neurosciences誌オンライン版2021年4月23日号の報告。  18~74歳の統合失調症患者483例を対象に、ルラシドン40mg/日(ルラシドン群)またはプラセボ群にランダムに割り付けた。有効性の主要エンドポイントは、6週間後の陽性・陰性症状評価尺度(PANSS)合計スコアのベースラインからの変化とし、副次的エンドポイントは、臨床全般印象度の重症度(CGI-S)スコアの変化とした。安全性のエンドポイントには、有害事象、検査値、心電図のパラメータを含めた。

子供への新型コロナワクチン、接種を進めるべき9つの理由

 2021年6月1日、日本におけるCOVID-19ワクチンの接種対象が、16歳から12歳に引き下げられた。海外での子供を対象とした治験のデータ等を踏まえたものだ。Pediatrics誌2021年6月号には、子供へのワクチン接種を進めるべきとする提言が掲載されている。  この中で、成人へのワクチン接種が進むことでCOVID-19の感染流行は抑えられるものの、ワクチン忌避者や抗体価の低下によって、COVID-19を根絶することは難しいとし、今後も散発的な発生や時折の大流行という形で存続する可能性がある、とした。それを踏まえ、子供の臨床試験でワクチンの有用性が明らかになれば、子供たちへのワクチン接種を義務付けることが重要だとし、その根拠として下記を挙げている。

1型DM成人患者、リアルタイムCGMで血糖コントロール改善/Lancet

 1型糖尿病成人患者の血糖測定法を、必要に応じて測定する間欠スキャン式持続血糖モニタリング(isCGM)から、リアルタイムで測定し血糖値の高低を予測して警告を発する機能の選択肢を有する持続血糖モニタリング(rtCGM)に変更すると、isCGMの使用を継続した場合と比較して、6ヵ月後のセンサーグルコース値が70~180mg/dLの範囲内にある時間の割合が高くなり、全体として血糖コントロールが改善されることが、ベルギー・KU Leuven病院のMargaretha M. Visser氏らが実施した「ALERTT1試験」で示された。Lancet誌オンライン版2021年6月2日号掲載の報告。

植込み型ループレコーダーの遠隔モニタリングが虚血性脳卒中のAF検出に有効/JAMA

 心房細動(AF)の既往歴のない虚血性脳卒中患者における長期間の心電計によるモニタリング法として、12ヵ月間の植込み型ループレコーダーは30日間の体外式ループレコーダーと比較して、1年間のAF検出率が有意に優れることが、カナダ・アルバータ大学のBrian H. Buck氏らが実施した「PER DIEM試験」で示された。研究の成果は、JAMA誌2021年6月1日号に掲載された。  本研究は、カナダ・アルバータ州の2つの大学病院と1つの地域病院が参加した医師主導の非盲検無作為化試験であり、2015年5月~2017年11月の期間に患者登録が行われた(カナダAlberta Innovates Health Solutions Collaborative Research and Innovations Opportunities[AIHS CRIO]などの助成による)。

アルツハイマー病に対する抗Aβ抗体の有効性と有害事象リスク~第III相RCTのメタ解析

 米国国立衛生研究所(NIH)のKonstantinos I. Avgerinos氏らは、アルツハイマー病におけるAβに対するモノクローナル抗体の認知、機能、アミロイドPET、その他のバイオマーカーへの影響およびアミロイド関連画像異常やその他の有害事象のリスクについて、調査を行った。Ageing Research Reviews誌オンライン版2021年4月5日号の報告。  PubMed、Web of Science、ClinicalTrials.govおよび灰色文献より第III相のRCTを検索し、ランダム効果メタ解析を実施した。  主な結果は以下のとおり。

CLLに対するBTK阻害薬、アカラブルチニブvs.イブルチニブ/ASCO2021

 2021年3月、再発・難治の慢性リンパ性白血病(CLL)治療に対して選択的ブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)阻害薬アカラブルチニブが国内承認された。アカラブルチニブの有用性を先行薬イブルチニブと比較した非盲検非劣性第III相無作為化比較試験ELEVATE-RRの結果について、オハイオ州立大学のJohn C. Byrd氏らが米国臨床腫瘍学会年次総会(2021 ASCO Annual Meeting)で発表した。

BRCA変異陽性HER2-早期乳がんへの術前talazoparib、単剤でpCR45.8%(NEOTALA)/ASCO2021

 生殖細胞系列のBRCA遺伝子(gBRCA)変異を有するHER2陰性早期乳がんに対する術前のtalazoparib単剤投与が、良好なpCR率を示した。米国臨床腫瘍学会年次総会(2021 ASCO Annual Meeting)で、米国・テキサス大学MDアンダーソンがんセンターのJennifer Keating Litton氏が、第II相NEOTALA試験の早期解析結果を発表した。  本試験は、非無作為化、単群の多施設共同非盲検試験。gBRCA変異を有するHER2陰性早期乳がんに対する術前補助療法としてのtalazoparibの有効性と安全性の評価を目的に実施された。

アトピー検査キットをコロナ重症化判定に適応追加/塩野義

 塩野義製薬は6月7日、アトピー性皮膚炎の重症度を診断する検査キット「HISCL TARC 試薬」について、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)陽性患者の重症化予測の補助を使用目的とする適応追加の承認を同日付で取得したと発表した。COVID-19の発症初期から重症化リスクを判別することで、リスクに応じた最適な措置につなげ、医療体制の逼迫や医療崩壊を回避する一助となることが期待される。現在、保険適用を申請中。  「HISCL TARC試薬」は、2014年にシスメックスと共同開発したTARCを測定する検査キットで、すでにアトピー性皮膚炎の重症度評価の補助を目的とした体外診断用医薬品として使用されている。国立国際医療研究センターによる臨床研究では、COVID-19重症化患者においては、発症初期から血清中のTARC値が低いことが確認されており、1回の測定で患者の重症化を早期に予測できる分子マーカーとしてTARCの有用性が示されているという。

ウェアラブルデバイスを活用し、間質性肺疾患の発症を予測/アストラゼネカ

 アストラゼネカは、2021年6月4日、化学放射線療法後にデュルバルマブ(製品名:イミフィンジ)による治療を受けたStage IIIの切除不能な非小細胞肺がん患者を対象に、間質性肺疾患(ILD)の発症を予測するモデル構築に向けた探索的試験(以下、iDETECT study)を、6月より開始する。  iDETECT studyの目的は、ウェアラブルデバイス等を用いて収集したデータを基に初期症状のILDを早期に検出することにより、将来的にILDが重症化する前に適切な医療サービスを受けることができる環境の創出。

AZ製ワクチン、血小板減少症を伴う血栓症5例の共通点/NEJM

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対するアデノウイルスベクターワクチンChAdOx1 nCoV-19(AstraZeneca製)の接種により、まれではあるが重篤な血栓症が発生する。ノルウェー・オスロ大学病院のNina H. Schultz氏らは、ChAdOx1 nCoV-19初回接種後7~10日に血小板減少症を伴う静脈血栓症を発症した5例について詳細な臨床経過を報告した。著者らは、このような症例を「vaccine-induced immune thrombotic thrombocytopenia(VITT):ワクチン誘発性免疫性血栓性血小板減少症」と呼ぶことを提案している。NEJM誌2021年6月3日号掲載の報告。

HR+/HER2+進行乳がん1次治療、トラスツズマブ+内分泌療法vs.化学療法(SYSUCC-002)/ASCO2021

 ホルモン受容体陽性HER2陽性(HR+/HER2+)進行乳がんの1次治療において、トラスツズマブ+内分泌療法がトラスツズマブ+化学療法に対し非劣性で毒性も少ないことが、第III相SYSUCC-002試験で示された。中国・Sun Yat-sen University Cancer CenterのZhongyu Yuan氏が、米国臨床腫瘍学会年次総会(2021 ASCO Annual Meeting)で発表した。  HER2+進行乳がんの1次治療において、抗HER2治療+化学療法は生存ベネフィットが示されている。一方、HR+進行乳がんには、安全性の面で化学療法より内分泌療法が推奨されている。しかしながら、HR+/HER2+進行乳がんの1次治療として、抗HER療法に内分泌療法と化学療法のどちらを併用したほうがよいのか示されていない。そこで、Yuan氏らは、中国の9病院で2013年9月16日~2019年12月28日に登録された、HR+/HER2+進行乳がん患者を対照に非盲検非劣性第III相無作為化比較試験を実施した。

2型DMの心血管リスク、スクリーニング普及で変化/Lancet

 糖尿病スクリーニングが広く普及する前に開発された心血管リスク予測式は、スクリーニングで検出された多くの患者の心血管リスクを過大評価することを、ニュージーランド・オークランド大学のRomana Pylypchuk氏らが明らかにした。スクリーニングで発見された最近の糖尿病患者の多くは、腎機能が正常で、血糖降下薬を投与されておらず、心血管リスクは低いことも示された。スクリーニング普及前は、ほとんどの糖尿病患者は糖尿病と診断された時に症候性であり、心血管リスクが高く心血管イベント予防薬を処方すべきと考えられていたが、ニュージーランドで世界初となる全国的な糖尿病スクリーニングが導入されて以降、その受検率は2012年の50%から2016年には90%に増加し、検出される糖尿病患者の多くは無症状で発症早期例が占めるようになったという。著者は、「肥満の増加、スクリーニング検査の簡素化、心血管イベントを予防する新世代の血糖降下薬の導入などにより、糖尿病スクリーニングが増加することは間違いないが、今回の結果は、ほとんどの心血管リスク評価式は現代の糖尿病患者集団において検証し更新する必要があることを強く示唆している」と述べている。Lancet誌オンライン版2021年6月2日号掲載の報告。