日本語でわかる最新の海外医学論文|page:364

多剤併用の高齢者、他の薬剤継続もスタチン中止で心血管リスク増

 高齢者の多剤併用(ポリピル)は主要な健康問題に発展するため、近年問題になっている。処方薬を中止すれば薬の使用を減らすことができる一方、臨床転帰への影響は不確かなままである。そこで、イタリア・University of Milano-BicoccaのFederico Rea氏らがスタチン中止によるリスク増大の影響について調査を行った。その結果、多剤併用療法を受けている高齢者において、ほかの薬物療法を維持しつつもスタチンを中止すると、致命的および非致命的な心血管疾患発生の長期リスクの増加と関連していたことが示唆された。JAMA Network Open誌2021年6月14日号掲載の報告。

認知症患者におけるAChEI治療と抗ムスカリン薬処方カスケード

 アセチルコリンエステラーゼ阻害薬(AChEI)による治療では、過活動膀胱(OAB)の治療のために抗ムスカリン薬による治療を開始しなければならないリスクが増加することが知られている。米国・ヒューストン大学のPrajakta P. Masurkar氏らは、認知症高齢者におけるAChEI治療と抗ムスカリン薬処方カスケードとの関連を調査した。Drugs & Aging誌オンライン版2021年5月24日号の報告。  対象は、AChEI(ドネペジル、ガランタミン、リバスチグミン)治療を行った65歳以上の認知症高齢者。2005~18年の米国TriNetXレセプトデータベースを用いて、レトロスペクティブコホートを実施した。2006年1月~2018年6月に各AChEIを使用開始した患者を確認した(ウォッシュアウト期間:1年間)。AChEI使用開始前1年に抗ムスカリン薬の使用またはOAB診断を受けた患者は除外した。主要アウトカムは、AChEI使用開始6ヵ月以内の抗ムスカリン薬の使用とした。AChEI治療と抗ムスカリン薬処方カスケードとの関連の評価には、いくつかの共変量でコントロールした後、Cox比例ハザードモデルを用いた。

Ph陽性ALLへのポナチニブ・ブリナツモマブ併用療法は有望/ASCO2021

 新規診断または再発/難治性のフィラデルフィア染色体(Ph)陽性急性リンパ性白血病(ALL)に対し、BCR-ABL1チロシンキナーゼ阻害薬(TKI)ポナチニブ+二重特異性T細胞誘導抗体ブリナツモマブ併用の有効性と安全性を評価した第II相単群試験の結果を、米国・テキサス大学MDアンダーソンがんセンターのNicholas J. Short氏が米国臨床腫瘍学会年次総会(2021 ASCO Annual Meeting)で発表した。忍容性は良好で、ほとんどの患者で化学療法および自家造血幹細胞移植(AHSCT)を必要とせず、とくに初発患者に有望な治療であることを報告した。  初発Ph陽性ALLにおいて標準療法とされる化学療法+第1・第2世代TKIの5年全生存率(OS)は30~50%であり、T315I変異例では最大75%で再発を認める。一方で、ポナチニブおよびブリナツモマブは、それぞれ高い奏効が報告されており、ポナチニブ+ブリナツモマブ併用の評価が行われた。

フィルゴチニブ、潰瘍性大腸炎の寛解導入・維持に有効/Lancet

 中等症~重症の活動期潰瘍性大腸炎患者の治療において、JAK阻害薬フィルゴチニブ(200mg)は、忍容性が良好で、プラセボと比較して寛解導入療法および寛解維持療法における臨床的寛解の達成割合が高いことが、カナダ・ウェスタンオンタリオ大学のBrian G. Feagan氏らが実施した「SELECTION試験」で示された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2021年6月3日号で報告された。  研究グループは、潰瘍性大腸炎の治療におけるフィルゴチニブの有効性と安全性を評価する目的で、2つの寛解導入療法試験と1つの寛解維持療法試験から成る二重盲検無作為化プラセボ対照第IIb/III相試験を行った(米国・Gilead Sciencesの助成による)。本試験には、日本を含む40ヵ国341施設が参加し、2016年11月~2020年3月の期間に患者登録が行われた。

スクリーニング普及前後の2型糖尿病における心血管リスクの予測:リスクモデル作成(derivation study)と検証(validation study)による評価(解説:栗山哲氏)-1404

2型糖尿病の心血管リスクを、予知因子を用いてリスクモデルを作成(derivation study)し、さらにその検証(validation study)を行うことで評価した。ニュージーランド(NZ)からの本研究は、国のデータベースにリンクして大規模であること、データの適切性、対象者の95%がプライマリケアに参加していること、新・旧コホートの2者の検証を比較して後者での過大評価を明らかにしたこと、などの点で世界に先駆けた研究である。本研究のような最新の2型糖尿病スクリーニング普及は、低リスク患者のリスク評価にとっても重要である。

治療抵抗性/不耐容の慢性期CML、ポナチニブの最適レジメン(OPTIC)/ASCO2021

 BCR-ABL1チロシンキナーゼ阻害薬(TKI)ポナチニブは、前治療に治療抵抗性または不耐容の慢性期(CP)の慢性骨髄性白血病(CML)に対し、1日45mgから投与を開始し、BCR-ABL1IS≦1%を達成した時点で15mgに減量する投与量調整レジメンが最適であることが、第II相「OPTIC試験」で示され、米国・オーガスタ大学ジョージアがんセンターのJorge Cortes氏が、米国臨床腫瘍学会年次総会(2021 ASCO Annual Meeting)で発表した。  第II相OPTIC試験は、ポナチニブの有効性と安全性の最適化を目的として、3用量(45mg、30mg、15mg)から投与を開始し奏効に基づき投与量を調整するレジメンをプロスペクティブに評価する無作為化非盲検試験である。

腎細胞がん1次治療のペムブロリズマブ+アキシチニブ、最終報告でも良好な生存改善(KEYNOTE-426)/ASCO2021

 進行再発の淡明細胞型腎細胞がん(RCC)に対する1次治療としてのペムブロリズマブ・アキシチニブ併用療法は、長期フォローアップの結果からもスニチニブより有用であるという発表が、米国臨床腫瘍学会年次総会(2021 ASCO Annual Meeting)において、米国・Vanderbilt-Ingram Cancer CenterのBrian I. Rini氏より発表された。  本試験KEYNOTE-426は、国際共同非盲検無作為化比較の第III相試験であり、過去のASCO(2019/2020)でもペムブロリズマブ+アキシチニブ(PemAx)併用療法の有意な生存延長が報告されてきている。今回は観察期間中央値42.8ヵ月時点(データカットオフ2021年1月)での最終結果報告である。

小児で新型コロナが重症化する3つの因子~日本含む観察研究

 日本、中国、シンガポール、マレーシア、インドネシア、インド、パキスタンのアジア7ヵ国における小児の新型コロナウイルス感染例の観察研究から、小児における重症化の危険因子として、1歳未満、併存疾患の存在、診察時の咳症状が特定された。シンガポール・KK Women's and Children's HospitalのJudith Ju Ming Wong氏らが報告した。The American Journal of Tropical Medicine and Hygiene誌オンライン版2021年6月15日号に掲載。  7ヵ国の研究者グループは、小児のCOVID-19重症化の危険因子を特定するため、Pediatric Acute and Critical Care COVID-19 Registry of Asia(PACCOVRA)にデータ提供している病院の小児COVID-19の観察研究を実施した。主要アウトカムは、世界保健機関(WHO)の定義によるCOVID-19の重症度(軽症、中等症、重症、重篤)とした。単変量および多変量ロジスティック回帰モデルを使用し、重症/重篤なCOVID-19の危険因子を検討した。

オリゴ転移乳がん、サブタイプ別の予後良好因子(OLIGO-BC1サブセット解析)/ASCO2021

 日本、中国、韓国によるオリゴ転移乳がんに関する後ろ向きコホート研究(OLIGO-BC1)のサブセット解析として、乳がんサブタイプ別に各予後因子における全生存期間を検討した結果を、中国・Guangdong Provincial People's HospitalのKun Wang氏が米国臨床腫瘍学会年次総会(2021 ASCO Annual Meeting)で発表した。どのサブタイプにおいても、局所療法と全身療法の併用およびECOG PS0が予後良好で、luminalおよび HER2タイプでは、診断時Stage I、オリゴ転移が1個のみ、長い無病生存期間も生存ベネフィットと関連していた。

統合失調症患者における重度心血管疾患の有病率

 フランス・ロレーヌ大学のJ-C Marche氏らは、統合失調症患者における入院が必要な重度の心血管疾患の有病率について、調査を行った。L'Encephale誌オンライン版2021年5月20日号の報告。  2015年にフランスの精神科病院5施設に入院した統合失調症または精神疾患患者を対象とし、調査を行った。心血管疾患患者の定義は、精神科入院前の5年または入院後の3年に一般病院での入院対応歴(ICD-10コード)を有する患者とした。心血管疾患には、心筋梗塞、脳卒中、心不全、冠動脈疾患、末梢動脈疾患を含めた。高血圧、肥満、糖尿病などのリスク因子についてのデータを収集した。

再発多発性骨髄腫、イサツキシマブ追加でPFS延長/Lancet

 既治療の再発・難治性多発性骨髄腫患者の治療において、抗CD38モノクローナル抗体イサツキシマブをカルフィルゾミブ+デキサメタゾンと併用すると、カルフィルゾミブ+デキサメタゾンと比較して、無増悪生存(PFS)期間が延長するとともに深い奏効の割合が改善し、新たな標準治療となる可能性があることが、フランス・University Hospital Hotel-DieuのPhilippe Moreau氏らが実施した「IKEMA試験」で示された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2021年6月4日号で報告された。  本研究は、日本を含む16ヵ国69施設が参加した非盲検無作為化第III相試験であり、2017年11月~2019年3月の期間に患者登録が行われた(フランスSanofiの助成による)。

F1 CDx、MSI-Hightがんのコンパニオン診断として承認/中外

 中外製薬は、2021年06月22日、遺伝子変異解析プログラム「FoundationOne CDx がんゲノムプロファイル」について、ニボルマブおよび、:ペムブロリズマブの高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-High)を有するがんに対するコンパニオン診断として厚生労厚生労働省より承認を取得したと発表。  今回の承認により、FoundationOne CDx がんゲノムプロファイルにて、ニボルマブの「がん化学療法後に増悪した治癒切除不能な進行・再発の高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-High)を有する結腸・直腸癌」、およびペムブロリズマブの「がん化学療法後に増悪した進行・再発の高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-High)を有する固形癌(標準的な治療が困難な場合に限る)」に対し各々の薬剤の適応判定補助として利用が可能となる。

尋常性乾癬治療剤ドボベットのフォームタイプ新発売/レオファーマ・協和キリン

 レオファーマと協和キリンは、2021年6月18日、尋常性乾癬治療剤ドボベットの新剤形「ドボベットフォーム」を新発売した。  本剤は、既存の軟膏の有効性を担保したうえで、簡易性と利便性の観点から治療の新たな選択肢を提供することを目的に開発が進められ、2015年に米国で初めて承認された。以来、すでに欧州諸国など世界40ヵ国以上で承認されている。  ドボベット(一般名:カルシポトリオール水和物/ベタメタゾンジプロピオン酸エステル)は、尋常性乾癬の外用剤としてレオファーマの親会社LEO Pharma A/Sが開発し、本邦では2014年9月にドボベット軟膏が、2018年6月にドボベットゲルが発売されている。今回、軟膏及びゲルに加え、本剤をラインナップに追加することで、両社はより多くの患者のQOLの向上に貢献を目指す。

筋層浸潤性膀胱がんに対するGC+ニボルマブの有用性評価/ASCO2021

 筋層浸潤性膀胱がん(MIBC)を対象に、シスプラチン+ゲムシタビン+ニボルマブ併用投与の有用性評価と、膀胱温存が可能な症例の予測に関する報告が、米国臨床腫瘍学会年次総会(2021 ASCO Annual Meeting)において、米国・Icahn School of Medicine at Mount SainaiのMatthew D. Galsky氏よりなされた。  本試験(HCRN GU16-257)は米国で行われた多施設共同第II相試験である。MIBCでは、プラチナベースの術前化学療法により30~40%の症例が病理学的完全奏効(pCR)を得られることと、そのpCR症例は予後良好であることが知られているが、そのpCRが明らかになるのは膀胱摘除後である。

抗CGRP抗体治療中止後の片頭痛日数の変化

 抗カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)抗体は、片頭痛予防におけるゲームチェンジャーとして期待される。しかし、治療費が高額となるため、治療期間を必要最低限に抑えることが求められる。スイス・チューリヒ大学病院のAndreas R. Gantenbein氏らは、12ヵ月間の抗CGRP抗体治療を中止した後、月間片頭痛日数がどの程度変化するかを検討した。Cephalalgia誌オンライン版2021年5月17日号の報告。  抗CGRP抗体で12ヵ月間治療を行った片頭痛患者のデータを収集した。

うつ病エピソードや抗うつ薬使用が小児双極性障害に及ぼす影響

 小児双極性障害は、重度の機能障害につながる重篤な再発性疾患である。そして、最初に発現する気分エピソードが、疾患の長期的な経過に影響を及ぼす可能性がある。トルコ・Dokuz EylulUniversityのNeslihan Inal氏らは、全国多施設自然主義的フォローアップ調査のサンプルより小児双極性障害の臨床的特徴を評価し、躁症状発症年齢に対する最初の気分エピソードおよび以前の抗うつ薬治療効果の影響について検討を行った。Acta Psychiatrica Scandinavica誌オンライン版2021年6月2日号の報告。  双極I型障害の若年患者271例を対象に、トルコの代表的な6つの地域にある大学病院7施設と州立研究病院3施設の児童思春期精神科クリニックでフォローアップを行った。すべての診断は、構造化面接に従って実施した。すべてのデータは、臨床医が記録した診療データよりレトロスペクティブに収集した。

運動するなら、朝と夕方どちらが効果的?

 太り過ぎの男性が運動療法を行う場合、朝よりも夕方に行ったほうが代謝機能の回復効果が高いことが、ノルウェー科学技術大学のTrine Moholdt氏らによる研究の結果、わかった。Diabetologia誌オンライン版2021年5月19日号に掲載された。  研究者らは、高脂肪食の摂取が血糖コントロール、全身の健康マーカー、血清メタボロミスクに及ぼす影響が、運動トレーニングを行う時間帯(朝と夜)によって変化するかどうかを検討した。

新規CDK4/6阻害薬dalpiciclib+フルベストラント、進行乳がんのPFS改善(DAWNA-1)/ASCO2021

 内分泌療法で再発/進行したHR+/HER2-進行乳がんに、新規CDK4/6阻害薬dalpiciclibとフルベストラントの併用が、フルベストラント単独に比べ無増悪生存期間を大幅に改善し、安全性プロファイルも管理可能であったことが、第III相DAWNA-1試験の中間解析で示された。中国・National Cancer Center/Chinese Academy of Medical Sciences and Peking Union Medical CollegeのBinghe Xu氏が、米国臨床腫瘍学会年次総会(2021 ASCO Annual Meeting)で発表した。  dalpiciclibは新たなCDK4/6阻害薬で、単剤で、複数の治療歴のあるHR+/HER2-進行乳がんに対し、忍容性および予備的な抗腫瘍活性を示すことが報告されている。本試験は、内分泌療法で再発/進行したHR+/HER2-進行乳がんを対象に、本剤とフルベストラントとの併用についてフルベストラント単独と比較した無作為化二重盲検第III相試験である。今回は、PFSイベント(病勢進行/死亡)が162件(予測の71.4%)発生した時点(2020年11月15日)で、事前に計画されていた中間解析の結果を報告した(追跡期間中央値10.5ヵ月)。

再発/難治性B-ALL、CAR-T細胞療法「KTE-X19」が有望/Lancet

 再発/難治性前駆B細胞急性リンパ性白血病(ALL)の患者に対する、自家抗CD19 CAR-T細胞療法「KTE-X19」の有効性と安全性を検討した第II相国際多施設共同非盲検単群試験「ZUMA-3試験」の結果を、米国・モーフィットがんセンターのBijal D. Shah氏らが報告した。完全寛解率または血液学的回復が不十分な完全寛解率は高率で、奏効した患者における全生存(OS)期間中央値は未到達であり、安全性プロファイルは管理可能であったという。新たな治療法や自家造血幹細胞移植(allo-SCT)の治療にもかかわらず、再発/難治性前駆B細胞ALL患者の転帰は依然として不良であり、より効果的な治療の開発が求められている。著者は、「今回の試験結果は、KTE-X19はそれらの患者に長期的な臨床的ベネフィットをもたらす可能性があることを示すものであった」とまとめている。Lancet誌オンライン版2021年6月3日号掲載の報告。

新型コロナ抗体薬bamlanivimab、単剤投与で発症予防効果/JAMA

 介護付き有料老人ホームの入居者と職員を対象とした無作為化二重盲検プラセボ対照第III相試験「BLAZE-2試験」において、bamlanivimab単剤療法は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の発生を低下させることが認められた。米国・ノースカロライナ大学チャペルヒル校のMyron S. Cohen氏らが報告した。介護福祉施設でCOVID-19が発生した場合、入居者および職員をCOVID-19から守るために予防的介入が必要である。モノクローナル抗体薬のbamlanivimabは、SARS-CoV-2感染およびCOVID-19発症に対し速やかな予防効果を発揮することが期待されていた。JAMA誌オンライン版2021年6月3日号掲載の報告。