アルツハイマー病に対する抗Aβ抗体の有効性と有害事象リスク~第III相RCTのメタ解析

提供元:ケアネット

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公開日:2021/06/14

 

 米国国立衛生研究所(NIH)のKonstantinos I. Avgerinos氏らは、アルツハイマー病におけるAβに対するモノクローナル抗体の認知、機能、アミロイドPET、その他のバイオマーカーへの影響およびアミロイド関連画像異常やその他の有害事象のリスクについて、調査を行った。Ageing Research Reviews誌オンライン版2021年4月5日号の報告。

 PubMed、Web of Science、ClinicalTrials.govおよび灰色文献より第III相のRCTを検索し、ランダム効果メタ解析を実施した。

 主な結果は以下のとおり。

・17件の研究(1万2,585例)をメタ解析に含めた。
・抗体によるアルツハイマー病評価尺度の認知アウトカム(ADAS-Cog、SMD:-0.06、95%CI:-0.10~-0.02、I2=0%)およびミニメンタルステート検査(MMSE、SMD:0.05、95%CI:0.01~0.09、I2=0%)の統計学的に有意な改善が認められた(エフェクトサイズ:小)。一方、臨床的認知症重症度判定尺度の認知、機能測定では改善は認められなかった(CDR-SOB、SMD:-0.03、95%CI:-0.07~0.01、I2=18%)。
・抗体によりアミロイドPET SUVR(SMD:-1.02、95%CI:-1.70~-0.34、I2=95%)およびCSF p181-tau(SMD:-0.87、95%CI:-1.32~-0.43、I2=89%)の減少が認められた(エフェクトサイズ:大)。
・抗体によりアミロイド関連画像異常リスク(RR:4.30、95%CI:2.39~7.77、I2=86%)の増加が認められた(エフェクトサイズ:大)。
・アミロイドPET SUVRの減少に対する抗体の影響は、ADAS-Cogの改善に対する抗体の影響と相関が認められた(r=+0.68、p=0.02)。
・サブグループ解析による薬剤別の影響は、以下のとおりであった。
 【aducanumab】
 ●ADAS-Cog、CDR-SOB、ADCS-ADLの改善(エフェクトサイズ:小)
 ●アミロイドPET SUVR、CSF p181-tauの減少(エフェクトサイズ:大)
 【solanezumab】
 ●ADAS-Cog、MMSEの改善(エフェクトサイズ:小)
 ●CSF Aβ1-40レベルの増加(エフェクトサイズ:中)
 【bapineuzumab】
 ●臨床アウトカムの改善なし
 ●CSF p181-tauの減少(エフェクトサイズ:小)
 【gantenerumab】
 ●臨床アウトカムの改善なし
 ●CSF p181-tauの減少(エフェクトサイズ:大)
 【crenezumab】
 ●臨床アウトカムの改善なし
・solanezumabを除くすべての薬剤において、アミロイド関連画像異常リスクの増加が認められた。

 著者らは「全体として、抗Aβモノクローナル抗体には、臨床アウトカムの改善(エフェクトサイズ::小)、バイオマーカーの改善(エフェクトサイズ:大)、アミロイド関連画像異常リスクの増加(エフェクトサイズ:大)が認められた。薬剤別では、aducanumabが最も有望であり、次いでsolanezumabが挙げられる」とし、「本結果は、アルツハイマー病治療薬としての抗Aβモノクローナル抗体の継続的な開発を支持するものである」としている。

(鷹野 敦夫)