日本語でわかる最新の海外医学論文|page:366

AZ製ワクチン接種後のVITT、免疫グロブリン療法による治療転帰/NEJM

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対するアデノウイルスベクターワクチンの、まれな副作用であるワクチン誘発性免疫性血栓性血小板減少症(VITT)の治療として、高用量免疫グロブリン静注(IVIG)療法と抗凝固薬の併用療法が推奨されている。カナダ・マックマスター大学のAlex Bourguignon氏らは、ChAdOx1 nCoV-19(AstraZeneca製)の接種後にカナダで確認されたVITTの、最初の3例におけるIVIG療法について報告した。NEJM誌オンライン版2021年6月9日号掲載の報告。

子供への新型コロナワクチン、学会が声明発表/日本小児科学会

 2021年6月16日、日本小児科学会は新型コロナワクチンの子供への接種について、学会としての見解を発表した。「新型コロナワクチン~子どもならびに子どもに接する成人への接種に対する考え方~」と題したこの声明では、子供を感染から守るためには、周囲の成人が免疫を獲得することが重要とし、まずは成人の接種が優先されるべきで、とくに医療的ケア児等や重篤な基礎疾患のある子供に関わる業務従事者、そして健康な子供に関わる業務従事者は、職種・勤務形態を問わずワクチンを接種することが重要とした。  そのうえで子供自身への接種に関しては、以下のように提言している。

新型コロナ変異株、デルタ株の増加傾向顕著

 厚生労働省は6月16日、都道府県別の懸念される変異株(VOCs:Variant of Concern)について、最新の事例数を公表した(6月14日までにHER-SYSで把握した国内事例の累計)。このうち、インドで最初に報告されたB.1.617系統の変異株(デルタ株等1))への感染は新たに30例が確認され、累計は11都府県で117例となった。いわゆる南アフリカ型のベータ株やブラジル型のガンマ株がいずれも1例程度の増減だったのに比べ、デルタ株の新規感染例が大幅に増加しており、拡大が懸念される。

食道がんのニボルマブ術後補助療法、追加解析の成績(CheckMate 577)/ASCO2021

 CheckMate577試験は、食道がん/食道胃接合部がんに対する術後補助療法としての免疫チェックポイント阻害薬を評価した世界初の第III相無作為化二重盲検プラセボ対照試験で、ニボルマブはプラセボと比較して無病生存期間(DFS)を統計学的に有意に延長することが報告されている(N Engl J Med. 2021; 384: 1191-1203.)。米国・ベイラー医科大学医療センターのRonan Joseph Kelly氏は、既報の結果も含め有効性、安全性およびQOLに関する追加解析の結果を米国臨床腫瘍学会年次総会(2021 ASCO Annual Meeting)で発表。ニボルマブ群で無遠隔転移生存期間(DMFS)、無増悪生存期間2(PFS2;無作為化から2次治療の増悪、3次治療の開始または死亡までの期間)を延長したことを報告した。

ペムブロリズマブの腎細胞がん術後アジュバントが予後を改善(KEYNOTE-564)/ASCO2021

 淡明細胞型腎細胞がん(RCC)に対する腎摘除手術後の術後療法としてのペムブロリズマブの単剤治療が、生存の延長に寄与するという発表が、米国臨床腫瘍学会年次総会(2021 ASCO Annual Meeting)において、米国・Dana-Farber Cancer InstituteのToni K. Choueiri氏より発表された。  本試験(KEYNOTE-564)は、国際共同の無作為化二重盲検比較の第III相試験であり、今回が初めての中間解析結果報告である。 ・対象:腎摘除術を12週間以内に受け、再発リスク分類で中程度以上と判定された淡明細胞型RCC ・試験群:ペムブロリズマブ200mg/日 3週間ごと最長1年間投与(Pembro群) ・対象群:プラセボ 3週間ごと最長1年間投与(Pla群) ・評価項目: [主要評価項目]主治医判定による無病生存期間(DFS) [副次的評価項目]全生存期間(OS)、安全性

進行TN乳がんへのアテゾリズマブ、どの免疫フェノタイプや分子サブタイプに有効か(IMpassion130)/ASCO2021

 未治療の進行トリプルネガティブ乳がん(TNBC)に対する第III相IMpassion試験の探索的解析から、免疫フェノタイプや分子サブタイプによりアテゾリズマブの上乗せ効果が異なることが示された。米国・University of Pittsburgh Medical Center Hillman Cancer CenterのLeisha A. Emens氏が、米国臨床腫瘍学会年次総会(2021 ASCO Annual Meeting)で発表した。  IMpassion130試験は、進行TNBCの1次治療として、アテゾリズマブ+nab-パクリタキセル(アテゾリズマブ併用群、451例)をプラセボ+nab-パクリタキセル(プラセボ群、451例)と比較した第III相試験で、PD-L1 IC+(腫瘍浸潤免疫細胞が1%以上発現)患者において、アテゾリズマブ併用群で有意な無増悪生存期間(PFS)の改善と臨床的に意味のある全生存期間(OS)の改善が報告されている。また探索的分析では、腫瘍微小環境(TME)がリッチな患者や腫瘍遺伝子変異量が多い患者におけるアテゾリズマブ併用による臨床アウトカムの改善が、PD-L1 IC+患者に限られることも報告されている。今回は、アテゾリズマブの併用効果に関連するTMEの構成要素を特定するために探索的解析を実施した。

骨髄腫新薬、ダラツムマブ皮下注が患者負担を軽減/ヤンセンファーマ

 ヤンセンファーマは5月に多発性骨髄腫の治療薬としてヒト型抗CD38モノクローナル抗体「ダラツムマブ(以下、ダラツムマブ)」を配合した皮下投与製剤「ダラキューロ配合皮下注(以下、ダラキューロ)」を発売開始した。これに伴い6月3日にメディアセミナーを開催し、日本赤十字社医療センターの鈴木 憲史氏が、多発性骨髄腫の基礎知識と新薬が診療に与える影響について講演を行った。  多発性骨髄腫は血液がんの一種で、骨髄にある形式細胞ががん化する疾患。国内における新規罹患者数は7,000人/年程度で、人口10万人当たりでは5.4人となる。診断時の年齢中央値は66歳で罹患率・死亡率とも高齢になるほど増加する。

統合失調症の認知機能とキノリン酸との関連

 トリプトファンとその代謝産物(TRYCATs)は、統合失調症やうつ病の病態生理に影響する末梢免疫系の活性化や中枢神経伝達物質の異常と関連することが示唆されている。しかし、これらの疾患におけるさまざまな精神病理的な関連は、まだ解明されていない。スイス・チューリヒ大学のFlurin Cathomas氏らは、統合失調症およびうつ病患者におけるTRYCATsの潜在的な違いを調査し、認知機能への影響について検討を行った。Scientific Reports誌2021年5月11日号の報告。  統合失調症患者45例、うつ病患者43例、健康対照者19例を対象に、血漿中のトリプトファン、キヌレニン、キヌレン酸、3-ヒドロキシキヌレニン、キノリン酸の違い、血漿タンパク質と認知機能との関連を調査した。

進行胃・食道がん1次治療、ニボルマブ+化学療法でOS延長/Lancet

 未治療の進行胃がん・胃食道接合部がんまたは食道腺がんの1次治療について、ニボルマブ+化学療法の併用療法は化学療法単独に対して、全生存(OS)期間および無増悪生存(PFS)期間を有意に延長し、許容可能な安全性プロファイルが示された。米国・スローン・ケタリング記念がんセンターのYelena Y. Janjigian氏らが、第III相国際多施設共同無作為化非盲検試験「CheckMate 649試験」の結果を報告した。進行または転移のあるHER2陰性の胃がんまたは胃食道接合部腺がんにおける、1次化学療法のOS期間中央値は1年未満である。CheckMate 649試験は、胃がん・胃食道接合部がん/食道腺がんの1次治療としての、抗PD-1阻害薬ベースの化学療法の評価を目的に行われた。本論はニボルマブ+化学療法vs.化学療法単独の有効性および安全性に関して初となる報告で、結果を踏まえて著者は、「ニボルマブ+化学療法は、これらの患者における1次治療の新たな標準治療である」とまとめている。Lancet誌オンライン版2021年6月4日号掲載の報告。

D-ダイマー高値COVID-19入院患者、治療的 vs.予防的抗凝固療法/Lancet

 D-ダイマー値上昇の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)入院患者に対し、リバーロキサバンやエノキサパリンなどによる治療的抗凝固療法は、予防的抗凝固療法に比べ臨床アウトカムを改善せず、一方で出血リスクを増大したことが示された。米国・デューク大学のRenato D. Lopes氏らが、600例超を対象に行った多施設共同非盲検(評価者盲検)無作為化比較試験「ACTION試験」の結果で、著者は「経口抗凝固療法適応のエビデンスがない場合は、リバーロキサバンおよびその他の直接経口抗凝固薬の治療的投与は避けなくてはならない」と警鐘を鳴らした。COVID-19は、有害転帰につながる血栓形成促進との関連が示されているが、これまで治療的抗凝固療法がCOVID-19入院患者の転帰を改善するかどうかは不明だった。Lancet誌2021年6月12日号掲載の報告。

進行上咽頭がん、化学放射線療法後のカペシタビンによるメトロノーム療法でFFS改善/Lancet

 ハイリスク局所進行上咽頭がんにおいて、根治的化学放射線療法実施後に遠隔転移のない患者に対し、メトロノーム投与法による経口カペシタビンによるアジュバント療法を1年間行うことで、転移のない3年治療成功生存率(failure-free survival)を有意に改善したことが、中国・中山大学がんセンターのYu-Pei Chen氏らが400例超を対象に行った、第III相無作為化比較試験の結果、示された。局所進行上咽頭がん患者においては標準治療後、完全奏効を得る患者の割合が高いにもかかわらず再発のリスクが高く、効果的なアジュバント療法が切望されている。Lancet誌オンライン版2021年6月4日号掲載の報告。

ワクチン2回接種で、デルタ株に90%超の入院回避効果

 ファイザー社とアストラゼネカ社の新型コロナウイルスワクチンが、2回の接種でB.1.617.2系統の変異株「デルタ株(インド型)」による入院回避に非常に高い効果を示すことが明らかになった。英・イングランド公衆衛生庁(PHE)が、14日付のプレスリリースで発表した。  PHEでは、2021年4月12日~6月4日の間に、「デルタ株」感染が確認された1万4,019例を対象に分析を実施。

抗HER3-ADC薬、治療抵抗性EGFR変異NSCLCに有望/ASCO2021

 前治療としてのTKIやプラチナ製剤に抵抗性となったEGFR変異陽性非小細胞肺がん(NSCLC)に対する、HER3を標的とした抗体薬物複合体(ADC)であるPatritumab-Deruxtecan(HER3-ADC)は、新規治療薬として有望であるとの発表が、米国臨床腫瘍学会年次総会(2021 ASCO Annual Meeting)において、米国・Dana-Farber Cancer InstituteのPasi A. Janne氏よりなされた。  HER3-ADCのNSCLCでの推奨用量は第I相試験で5.6mg/kgとされた。今回は第I相試験用量拡大パートの報告である。

「リモート医事(iisy)」で医療事務作業を改善/ソラスト

 医療事務受託サービスを展開する株式会社ソラストは、医療従事者の業務負担の軽減や患者の待ち時間短縮など、これからの時代に即した医療DX(Digital Transformation)パッケージ「リモート医事(iisy)」に関するメディア発表会をオンラインで行った。  今回発表された「リモート医事」は、医療機関の医療事務作業を“リモートセンター”からリアルタイムにサポートするサービスであり、医療事務だけでなく、「診療サポート」「経営支援」「ITサポート」を包括的にDX化して支援する。

早期乳がん、遺伝子診断を加えたリスク評価で術後内分泌療法も省略可能に?(MINDACT)/ASCO2021

 MammaPrintによるゲノムリスクが超低リスクの患者では、8年時の無遠隔転移生存率(DMFI)が97.0%と非常に高いことが明らかになった。米国臨床腫瘍学会年次総会(2021 ASCO Annual Meeting)で、オランダ・Netherlands Cancer InstituteのJosephine Lopes Cardozo氏が、第III相MINDACT試験から、超低リスク患者の長期生存についての解析結果を報告した。  本試験は、術後補助化学療法の対象の選択において、標準的な臨床病理学的判定基準に、70遺伝子シグニチャー検査を追加することの臨床的な有用性を前向きに評価する第III相無作為化試験。これまでに、臨床リスクが高いがゲノムリスクが低い患者において、化学療法が省略できる可能性があることを示唆する結果が報告されている。

片頭痛治療に対するメマンチンの有効性~RCTのメタ解析

 片頭痛患者に対するメマンチンの有効性を評価するため、中国・Wenzhou People's HospitalのZhili Xu氏らは、システマティックレビューおよびメタ解析を実施した。Clinical Neuropharmacology誌2021年5月・6月号の報告。  2020年2月までに公表された、片頭痛治療におけるメマンチンとプラセボの効果を比較したランダム化比較試験を、PubMed、EMbase、Web of Science、EBSCO、コクランライブラリーデータベースより検索した。本メタ解析では、ランダム効果モデルを用いた。

統合失調症患者における抗精神病薬の剤型と自殺および死亡リスクとの関連

 統合失調症は、死亡リスクが高いことから、最も深刻な精神疾患の1つとして考えられており、この死亡リスクの減少に寄与する方法を明らかにするための研究が行われている。台湾・Bali Psychiatric CenterのCheng-Yi Huang氏らは、長時間作用型注射剤(LAI)とすべての原因、自然死、自殺による死亡リスクとの関連を調査し、新規統合失調症患者におけるLAIの早期使用の影響について、検討を行った。JAMA Network Open誌2021年5月3日号の報告。  台湾全民健康保険研究データベースを用いて、2002~17年に経口抗精神病薬(OAP)治療を行った統合失調症患者を対象に、人口ベースのコホートを構築した。本コホートにおけるLAI群の定義は、LAIへの切り替え、1年間で4回以上のLAI使用とした。LAI群は、同成分のOAP治療を行った患者と1対1でマッチした。抗精神病薬の投与経路変更、死亡、研究期間終了(2018年末)のいずれか早いほうまで、すべての患者をフォローアップした。データ分析は、2002年1月~2018年12月に実施した。主要アウトカムは、すべての原因による死亡率、自然死死亡率、自殺による死亡率、自殺企図とした。

コントロール不良2型DM、CGMでHbA1c改善/JAMA

 食前インスリン療法は行わず、基礎インスリン療法でコントロール不良な2型糖尿病の成人患者の血糖測定法として、持続血糖モニタリング(CGM)は通常の血糖測定器(BGM)によるモニタリングと比較して、8ヵ月後の糖化ヘモグロビン(HbA1c)値が統計学的に有意に低下することが、米国・International Diabetes Center, Park Nicollet Internal MedicineのThomas Martens氏らが実施した「MOBILE試験」で示された。JAMA誌2021年6月8日号掲載の報告。  本研究は、プライマリケア施設で基礎インスリン療法を受けている2型糖尿病成人患者におけるCGMの有効性の評価を目的とする無作為化臨床試験であり、米国の15施設が参加し、2018年7月~2019年10月の期間に患者登録が行われた(米国・Dexcomの助成による)。

1日1,600人にコロナワクチン接種、その秘訣とは?/高砂市医師会インタビュー

 全国的に集団接種が実施されているが、多くは患者が各ブースを周る形式である。だが、兵庫県高砂市では、接種~経過観察までの被接種者の移動をなくし、接種者が巡回する接種者移動型を採用した。なぜ、同市はこの『接種者移動型』システムを思いつき、ワクチンの供給開始(同市へのワクチン供給は4月中旬)とともに集団接種を始めることが出来たのかー。それには、早期より行政からの相談があり、同市医師会主導のもとでシステム構築したことに秘訣があったようだ。今回、医師会長の増田 章吾氏(増田内科医院)に、実際の動線や関係者の内訳、そしてどのようにアイデアをまとめたのかインタビューした。