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BCMA標的治療後の再発・難治性多発性骨髄腫、CAR-T vs.遺伝子改変抗体

 B細胞成熟抗原(BCMA)標的治療後の再発・難治性多発性骨髄腫(RRMM)に対するサルベージ治療として、CAR-T細胞療法と遺伝子改変抗体療法の有効性および安全性を比較したメタ解析の結果を、中国・Huazhong University of Science and TechnologyのYun Kang氏らが報告した。解析の結果、CAR-T細胞療法は抗体ベースのアプローチと比較して有意に高い全奏効率(ORR)を示し、とくにGPRC5D標的CAR-Tが有望であることが示唆された。Blood Cancer Journal誌オンライン版2026年7月14日号に掲載。 本研究は、BCMA標的治療後に再発したRRMM患者の後続治療の有効性を評価するため、2020~25年までに発表された34件の研究(1,280例)を対象に実施された系統的レビューおよびメタ解析である。 主な結果は以下のとおり。・統合されたORRは60%であった。・CAR-T細胞療法は、抗体ベースのアプローチと比較して有意に高いORRを達成(77%vs.52%、p<0.0001)し、完全奏効率は同程度であった。・安全性に関して、サイトカイン放出症候群(CRS)および免疫エフェクター細胞関連神経毒性症候群(ICANS)の発現率は同等であったが、Grade3以上の血球減少症はCAR-T細胞療法群でより頻繁に認められた。・標的抗原別に見ると、GPRC5D標的CAR-Tは、BCMA標的CAR-Tよりも高いORRを示した(86%vs.66%、p=0.0006)。・BCMA二重特異性抗体の曝露歴のある患者は、CAR-T曝露歴がある患者と比較して奏効率が有意に低かった(71%vs.86%、p=0.0404)。・中央値で10ヵ月以上の間隔を置いた研究では、10ヵ月未満の研究よりも有意に高い奏効率を示した(70%vs.50%、p=0.0146) 著者らは、「GPRC5D CAR-TはBCMA標的治療後の治療において、遺伝子操作された抗体よりも優れた有効性を示した。これらの結果は、早期のCAR-T使用を優先することを支持し、治療シークエンスを最適化するうえでの抗原選択の重要性を強調するもの」としている。

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高齢でフレイルの再発・難治性多発性骨髄腫患者、ダラツムマブ+イキサゾミブが許容可能

 高齢の再発・難治性多発性骨髄腫患者では、身体機能のばらつきや高い有害事象発現率および治療中止率により予後が悪化する。フランス・Poitiers University HospitalのArthur Bobin氏らは、高齢でフレイルの再発・難治性多発性骨髄腫患者に対してデキサメタゾンを含まないダラツムマブとイキサゾミブの併用療法(I-Dara)を評価したIntergroupe Francophone du Myelome(IFM)2018-02試験において、I-Daraが許容可能な安全性プロファイルを示したことを報告した。また、対象集団を考慮すると奏効率および生存率は許容範囲内であったという。British Journal of Haematology誌2026年7月号に掲載。 本試験は前向き第II相試験で14のIFM加盟施設で実施された。対象は65歳以上、国際骨髄腫ワーキンググループ(IMWG)のフレイルスコアが2以上かつECOG PS 0~2の初回または2回目の再発患者で、ダラツムマブ16mg/kg、イキサゾミブ4mg(28日サイクルで1、8、15日目に週1回投与)、メチルプレドニゾロンを投与した。主要評価項目はVGPR(very good partial response)以上の奏効率。 主な結果は以下のとおり。・登録された55例の年齢中央値は82歳であり、90%が75歳以上であった。・VGPR以上の奏効率は32%であった。・追跡期間中央値は35.3ヵ月で、無増悪生存期間中央値は19.5ヵ月であった。全生存期間中央値は未到達であったが、33.6ヵ月時点での生存率は75%であった。・Grade3以上の有害事象は36例(67%)に認められ、うち18例が血球減少症、8例が感染症(うち6例は肺炎)であった。

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exa-cel細胞療法、小児の輸血依存性βサラセミア・鎌状赤血球症に有効/NEJM

 エクサガムグロゲン オートテムセル(exagamglogene autotemcel:exa-cel)は、体外でのCRISPR-Cas9法を用いた遺伝子編集により、BCL11A遺伝子の赤血球特異的エンハンサー領域で、胎児型ヘモグロビン合成を再活性化するように改変した自家CD34+造血幹細胞と前駆細胞を用いた細胞療法である。米国・Children’s Hospital at TriStar CentennialのHaydar Frangoul氏らは「CLIMB THAL-141試験」および「CLIMB SCD-151試験」において、exa-celの静脈内投与により、輸血依存性βサラセミアのすべての小児で輸血からの離脱が、鎌状赤血球症のすべての小児で重度の血管閉塞性発作の解消が達成され、その一方で全例にGrade3または4の有害事象が発現することを示した。研究の成果はNEJM誌オンライン版2026年6月11日号で報告された。5ヵ国の非盲検第III相試験 CLIMB THAL-141試験およびCLIMB SCD-151試験は、年齢5~11歳の小児患者を対象に、2022年5月に5ヵ国(カナダ、ドイツ、イタリア、米国、英国)の8施設で開始された進行中の非盲検第III相試験(Vertex PharmaceuticalsとCRISPR Therapeuticsの助成を受けている)。 CLIMB THAL-141試験の対象は、輸血依存性βサラセミアと診断され、スクリーニング前の2年間に、少なくとも100mL/kg体重/年の赤血球輸血を受けていた患者15例(平均年齢7.5[SD 2.2]歳、女児5例[33%])であった。CLIMB SCD-151試験の対象は、鎌状赤血球症と診断され、登録前の2年間に年2回以上の血管閉塞性発作を発症した患者11例(平均年齢8.5[SD 2.6]歳、女児6例[55%])だった。 被験者は、exa-cel投与前にブスルファンを用いた骨髄破壊的前処置を受けた。exa-celは、ブスルファン投与から2~7日目に、中心静脈カテーテルを介して1回、静脈内投与した。 主要エンドポイントは、輸血依存性βサラセミアでは12ヵ月以上持続する輸血からの離脱、鎌状赤血球症では12ヵ月以上持続する重度血管閉塞性発作の解消であった。全例で好中球の生着を達成、編集BCL11A遺伝子アレルも安定的に推移 exa-cel投与後の追跡期間中央値は、CLIMB THAL-141試験16.0ヵ月(範囲:2.2~32.1)、CLIMB SCD-151試験16.9ヵ月(7.6~33.1)であった。 CLIMB THAL-141試験では、全例で好中球の生着(生着までの期間中央値30日、範囲:19~38)が達成され、生着前に死亡した1例を除く全例で血小板の生着(51日、22~82)が得られた。また、CLIMB SCD-151試験では、全例で好中球の生着(28日、範囲:20~37)および血小板の生着(47日、24~78)が達成された。 16ヵ月以上追跡した輸血依存性βサラセミアの8例では、全例が12ヵ月以上持続する輸血からの離脱を達成した。残りの7例は評価不能であった。輸血非依存となった8例の平均輸血非依存期間は23.4ヵ月(範囲:13.3~28.5)で、輸血中止までの平均期間は1.3ヵ月(0.5~2.4)だった。 6ヵ月時の平均(±SD)胎児型ヘモグロビン濃度は10.8(±1.7)g/dLであった。編集されたBCL11A遺伝子アレルの割合の平均値は、3ヵ月以降は60%以上で維持されていた。6ヵ月時の骨髄のCD34+細胞における編集されたBCL11A遺伝子アレルの割合の平均値は77.4(±8.5)%で、これ以降は安定的に維持された。 一方、16ヵ月以上追跡した鎌状赤血球症の8例では、全例が12ヵ月以上持続する血管閉塞性発作の解消を達成し、残りの3例は評価不能だった。血管閉塞性発作が解消した8例の平均発作消失期間は19.0ヵ月(範囲:13.2~30.1)で、exa-cel投与後の連続する12ヵ月以上、本症による入院を認めなかった。 総ヘモグロビンに占める胎児型ヘモグロビンの割合の平均値は、3ヵ月時が38.1(±8.3)%、6ヵ月時は49.5(±6.4)%で、これ以降は45%以上で維持された。末梢血中の編集されたBCL11A遺伝子アレルの割合の平均値は、3ヵ月時が67.9(±7.3)%で、これ以降は66%以上で維持された。6ヵ月時の骨髄のCD34+細胞における編集されたBCL11A遺伝子アレルの割合の平均値は84.5(±4.9)%で、これ以降は安定的に維持された。2例に前処置関連の重度静脈閉塞性肝疾患 すべての小児患者で、少なくとも1件のGrade3または4の有害事象が発現した。輸血依存性βサラセミアの2例で重度の静脈閉塞性肝疾患を認めたが、いずれもブスルファンによる前処置に関連すると判定された。このうち1例が死亡した。 著者は、「この新しい自家遺伝子治療は、移植片対宿主病や移植片拒絶のリスクがないため移植後の免疫抑制療法を必要としない。これは、患者の約80%が適切な同種ドナーを持たない輸血依存性βサラセミアおよび鎌状赤血球症の小児にとって重要である」としている。

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発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH:paroxysmal nocturnal hemoglobinuria)

1 疾患概念■ 定義発作性夜間ヘモグロビン尿症(paroxysmal nocturnal hemoglobinuria:PNH)は、glycosylphosphatidylinositol(GPI)アンカー生合成に関わるPIGA遺伝子などに後天的変異を獲得した造血幹細胞が、クローン性に拡大することで発症するまれな造血幹細胞疾患である1)。GPIアンカー型タンパク質の欠損により、赤血球表面の補体制御因子であるCD55およびCD59の発現が低下・欠損し、補体による血管内溶血を来す。PNHは単なる溶血性貧血ではなく、血管内溶血、血栓症、造血不全を三主徴とする疾患として理解する必要がある。■ 疫学PNHは希少疾患であり、わが国では指定難病に含まれる。2024(令和6)年度の特定医療費(指定難病)受給者証所持者数は1,264人であり、人口10万人当たり約1.0人に相当する。ただし、これは医療費助成制度に基づく患者数であり、軽症例、未申請例、subclinical PNH、骨髄不全に伴う微小PNHクローンなどは含まれにくいため、実際の有病者数を過小評価している可能性がある。PNHは若年から中年期の成人に多いが、小児から高齢者まで幅広く発症しうる。わが国での診断時年齢中央値は45歳で、20~60代と均等に分布する。欧米では溶血や血栓症を主体とする古典的PNHが多いのに対し、わが国を含むアジアでは、再生不良性貧血など骨髄不全を背景とするPNHが比較的多いとされる2)。■ 病因PNHの直接的な原因は、PIGA遺伝子などGPIアンカー生合成関連遺伝子の後天的変異である。ただし、PIGA変異を有する微小なPNHクローンは健康な人にも検出されることがあり、変異の獲得だけでは臨床的PNHの発症を十分に説明できない。PNHクローンの拡大には、再生不良性貧血に代表される免疫学的骨髄不全の環境が重要と考えられている。すなわち、免疫学的機序により正常造血が抑制される一方で、GPIアンカー欠損造血幹細胞が相対的に生存優位性を獲得し、PNHクローンとして拡大する。このためPNHは、補体介在性溶血と骨髄不全が併存する疾患である(図1)。図1 補体活性化経路とPNH古典経路、レクチン経路、第2経路の3つの活性化経路はいずれもC3の活性化を経て、C5から始まる終末補体経路の活性化に至る。健康な人では、CD55によりC3転換酵素(C4b2b、 C3bBb)とC5転換酵素(C4b2b3bとC3bBb3b)の形成が抑制、崩壊が促進され、CD59によりC5b-9(MAC)の形成が阻害され、過剰な補体活性化が抑制されているが、これらを欠損したPNH型赤血球では、補体による溶血が進行する。画像を拡大する■ 症状PNHの症状は多彩である。典型的には、貧血に伴う倦怠感、息切れ、動悸、黄疸、ヘモグロビン尿を認める。血管内溶血により遊離ヘモグロビンが血中に放出されると、平滑筋弛緩作用を持つ一酸化窒素が消費され、平滑筋攣縮に伴う腹痛、嚥下困難がしばしばみられるほか、勃起障害、肺高血圧症などを来すことがある。また、遊離ヘム、破壊された赤血球に由来する膜成分、血小板活性化、血管内皮障害、組織因子発現、好中球細胞外トラップ形成などが複合的に関与し、血栓傾向をもたらす3)。血栓症はPNHの生命予後を左右する重要な合併症であり、肝静脈、門脈、脳静脈洞など非典型部位に生じることがある。慢性のヘモグロビン尿により鉄欠乏、尿細管障害、慢性腎臓病を来すこともある。■ 分類PNHは、臨床像により(1)溶血を主体とする古典的PNH、(2)再生不良性貧血や骨髄異形成症候群などに合併する骨髄不全型PNH、(3)両者の性質を併せ持つ混合型PNHの3つに分類される。ただし実臨床では、溶血と造血不全の要素を併せ持つ症例が多く、分類名にこだわるよりも、個々の患者で溶血、血栓症、造血不全のどれが臨床的に問題となっているかを評価することが重要である。■ 予後PNHの予後は、C5阻害薬の登場により大きく改善した。エクリズマブおよびラブリズマブは、血管内溶血を強力に抑制し、血栓症リスクを低下させ、PNH患者の生命予後を、健康な人に近い程度にまで改善した。その一方で、貧血の改善が十分でない症例や、骨髄不全や腎障害の合併、血栓症の既往のほか、抗補体薬治療中の溶血(breakthrough hemolysis:BTH)の問題は、長期予後や生活の質に影響する。したがって、現在のPNH診療では、生命予後の改善に加え、貧血、倦怠感、輸血依存、治療負担をどこまで改善できるかが重要な課題となっている。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)PNHは、溶血性貧血を疑う所見(血清LDH値高値、ハプトグロビン低下、網赤血球増加、間接ビリルビン上昇)があり、Coombs陰性の場合にまず鑑別疾患に挙がる。また、ヘモグロビン尿、原因不明の血栓症、あるいは再生不良性貧血や低リスク骨髄異形成症候群に伴うPNH血球の検出を契機に疑う。確定診断には、フローサイトメトリーによるGPIアンカー型タンパク質欠損血球の検出と定量が必須である。『発作性夜間ヘモグロビン尿症診療の参照ガイド 令和4年度改訂版』では、臨床的PNHの基準として、PNHタイプ赤血球(II型+III型)が1%以上、かつ血清LDH値が正常上限の1.5倍以上であることが明確化された。赤血球ではCD55、CD59の欠損を評価し、type II、type III赤血球の割合を確認する。顆粒球や単球ではFLAERを用いた高感度解析が有用であり、輸血の影響を受けにくい。鑑別診断としては、自己免疫性溶血性貧血、遺伝性球状赤血球症をはじめとする先天性溶血性貧血、発作性寒冷ヘモグロビン尿症、血栓性微小血管症(TTP、HUS、補体介在性TMAなど)、機械弁関連溶血などが挙げられる。また、骨髄不全を伴う場合には、再生不良性貧血、低形成性MDS、MDS/AMLへの進展を鑑別する必要があり、骨髄検査、染色体検査、遺伝子検査を併用する。3 治療(図2)図2 補体活性化経路とPNH治療薬C5阻害薬は、補体終末経路を阻害することで血管内溶血を速やかかつ持続的に抑制し、貧血を改善し、血栓症リスクも低下させる。しかし、補体活性化経路の上流に位置する補体成分C3がPNH型赤血球上に蓄積し(オプソニン化)、肝臓や脾臓のマクロファージに貪食される(血管外溶血)ことで、貧血が残存する患者が存在する。こうした患者に対しては、補体上流(近位補体)を阻害する薬剤であるペグセタコプラン(C3阻害薬)、イプタコパン(B因子阻害薬)、ダニコパン(D因子阻害薬、ただしC5阻害薬と併用)が適応となる。画像を拡大する治療は溶血、血栓症、骨髄不全のそれぞれに対する対症療法が中心となる。骨髄不全の治療は、再生不良性貧血に準じて行う。軽症例では経過観察、葉酸補充、鉄欠乏への対応などを行い、subclinical PNHでは背景にある骨髄不全の評価・管理を行う。慢性溶血に対する長期ステロイド投与は推奨されない。鉄欠乏を伴う場合、抗補体療法が導入されていない症例では、鉄補充によりPNH型赤血球の産生が増加し、溶血が増悪することがあるため注意を要する。高度貧血には赤血球輸血を行うが、通常、洗浄赤血球を用いる必要はない。臨床的に問題となる溶血、輸血依存、血栓症またはその既往、腎障害、平滑筋攣縮症状を有する例では、抗補体療法を検討する。わが国では初回治療として、C5阻害薬であるエクリズマブ(商品名:ソリリス)およびラブリズマブ(同:ユルトミリス)、クロバリマブ(同:ピアスカイ)が使用可能である。これらのC5阻害薬は、終末保体経路を阻害することで血管内溶血を速やかかつ持続的に抑制する。これにより、貧血症状や輸血依存の改善に加えて、PNHの重大な合併症である血栓症リスクの低減にもつながる。ラブリズマブは長時間作用型であり、8週に1度の点滴投与、クロバリマブは、リサイクリング抗体技術を用いたC5阻害薬であり、4週ごとの皮下投与が可能である。エクリズマブ、ラブリズマブからクロバリマブに切り替える、あるいはその逆の場合、drug-target-drug complexに関連する一過性の免疫反応に注意する必要がある。C5阻害薬によりLDHが十分抑制されても、C3沈着に伴う血管外溶血、骨髄不全、腎性貧血などにより貧血や倦怠感が残存することがある。C5阻害薬による適切な治療でも十分な効果が得られないPNHに対し、近位補体阻害薬が適応となっている。C3阻害薬ペグセタコプラン(同:エムパベリ)は、C5阻害薬で効果不十分な症例においてHb改善、輸血回避、倦怠感改善を示した。D因子阻害薬ダニコパン(同:ボイデヤ)は、C5阻害薬に併用する経口薬であり、血管外溶血が残存する症例で貧血改善が期待される。B因子阻害薬イプタコパン(同:ファビハルタ)は、補体第2経路を阻害する経口単剤治療薬であり、血管外溶血を引き起こさずに血管内溶血を阻害する。骨髄不全型PNHでは、抗補体薬のみでは血球減少が十分改善しないため、再生不良性貧血に準じた免疫抑制療法を検討する。ATG投与時には補体活性化により溶血発作を来す可能性があり、溶血が強い症例では抗補体療法を先行または併用することが望ましい。同種造血幹細胞移植は根治療法であるが、治療関連死亡や合併症のリスクが高いため、抗補体療法後も反復する血栓症、重症造血不全、MDS/AMLへの進展例などに限って慎重に検討する。4 今後の展望PNH治療は、C5阻害薬による血管内溶血の制御を基盤としつつ、残存貧血、血管外溶血、倦怠感、輸血依存、治療負担を改善する方向へ進展している。今後は、LDHを正常上限の1.5倍未満に抑えることに加え、Hb値の改善、輸血回避、QOL改善、BTH予防を含めた総合的な治療目標が求められる。その一方で、近位補体阻害薬単剤では、感染、ワクチン接種、手術、服薬アドヒアランス不良などを契機としたBTHに注意が必要である4,5)。とくに経口薬では、飲み忘れや中断が生じた場合に補体制御が不十分となり、溶血が再燃する可能性がある。また、感染対策は薬剤ごとの電子添付文書に従う。C5阻害薬では髄膜炎菌、近位補体阻害薬では髄膜炎菌に加えて肺炎球菌、インフルエンザ菌b型などへの感染対策が必要となる。治験中の薬剤としては、抗C5抗体pozelimabと、肝臓でのC5産生を抑制するsiRNA製剤cemdisiranを組み合わせた治療が挙げられる。わが国でも活動性PNH患者を対象とした第III相臨床試験が実施されており、血中C5の直接阻害とC5産生抑制を組み合わせることで、持続的なC5制御と治療負担の軽減が期待される。その一方で、抗C5抗体に補体制御因子Factor Hの機能を組み合わせたKP104のような二重機能性薬剤も海外で開発が進められているが、現時点でわが国におけるPNH治験の実施は確認できない。MASP-3阻害抗体zaltenibart(OMS906)は、pro-factor Dからfactor Dへの成熟を阻害し、補体第2経路を抑制する薬剤で、海外では第III相開発が進められている。今後は、このような新規薬剤に加え、既存薬間のスイッチ、併用療法、妊娠・周術期管理、長期安全性、医療経済性に関する実臨床データの蓄積が重要となる。診断面では、PNHクローンサイズ、赤血球C3沈着、補体活性、BTHリスク、骨髄不全の程度を組み合わせた評価により、患者ごとに最適な抗補体薬を選択する個別化医療が進むと考えられる。PNHは希少疾患であるが、補体制御異常、骨髄不全、クローン性造血が交差する疾患であり、その診療の進歩は他の補体関連疾患の理解にも波及することが期待される。5 主たる診療科血液内科※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報難病情報センター 発作性夜間ヘモグロビン尿症(指定難病62)(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)発作性夜間ヘモグロビン尿症診療の参照ガイド 令和4年度改訂版(医療従事者向けのまとまった情報)一般社団法人日本PNH研究会(医療従事者向けのまとまった情報) 1) Hill A, et al. Nat Rev Dis Primers. 2017;3:17028. 2) 三谷絹子ほか. 発作性夜間ヘモグロビン尿症診療の参照ガイド 令和4年度改訂版. 厚生労働科学研究費補助金 難治性疾患政策研究事業 特発性造血障害に関する調査研究班 2023. 3) Rother RP, et al. JAMA. 2005;293:1653-1662. 4) Notaro R, et al. N Eng J Med. 2022;387:160-166. 5) Fattizzo B, et al. Blood. 2025;146:411-421. 公開履歴初回2026年7月10日

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再発・難治性B細胞NHL、CAR-T細胞療法の10年追跡結果/NEJM

 再発または難治性のB細胞非ホジキンリンパ腫(NHL)患者において、チサゲンレクルユーセルの単回投与により、大細胞型B細胞リンパ腫(LBCL)患者では約3分の1、濾胞性リンパ腫(FL)患者では約半数が、10年に及ぶ寛解(リンパ腫無再発生存)を得たという。米国・ペンシルベニア大学のMarco Ruella氏らが、同大学で実施した第II相試験の10年追跡調査の結果を報告した。抗CD19キメラ抗原受容体(CAR)T細胞療法は、再発・難治性B細胞NHLに対する標準治療であるが、長期アウトカムや治癒の可能性は依然として不明であった。NEJM誌2026年6月25日号掲載の報告。チサゲンレクルユーセル投与の患者38例を10年追跡 研究グループは、CD19を標的とし、4-1BB共刺激ドメインを有するキメラ抗原受容体を発現する自家T細胞であるCTL019(現在のチサゲンレクルユーセル)の投与を受けた、再発または難治性のB細胞NHL患者について、10年の長期アウトカムを評価した。 49例が登録され、このうち38例(LBCL患者24例、FL患者14例)がチサゲンレクルユーセルの投与を受け、長期有効性および安全性の評価対象となった。 評価項目のリンパ腫無再発生存期間は、チサゲンレクルユーセル注入からリンパ腫の再発またはリンパ腫関連死亡までの期間と定義した。非再発死亡および2次原発がんの発生率は、Aalen-Johansen法を用いて推定した。 本研究は2014年1月~2019年9月に実施され、長期追跡調査のデータカットオフ日は2025年10月1日であった。10年リンパ腫無再発生存率はLBCL32%、FL47%、奏効例の半数以上は奏効が持続 追跡期間中央値10.1年(範囲:7.9~11.5)の時点で、患者の約3分の1が寛解を維持しており、LBCLでは5.4年を超えて、FLでは2.7年を超えての再発は認められなかった。 10年リンパ腫無再発生存率は、LBCL患者で32%(95%信頼区間[CI]:14~51)、FL患者で47%(95%CI:20~71)であった。 全死因死亡を含めた10年無増悪生存率は、LBCL患者で17%(95%CI:5~34)、FL患者で29%(95%CI:9~52)、10年全生存率はそれぞれ17%(95%CI:5~34)および50%(95%CI:23~72)と推定された。 奏効例における10年時点での奏効持続率は、全患者では57%(95%CI:35~74)、 LBCL患者で54%(95%CI:25~77)、FL患者で60%(95%CI:25~83)であった。 長期的な造血機能の回復を評価したところ、慢性貧血または血小板減少は認められず、38例中36例で好中球数の回復が安定しており、2例(5%)でGrade2または3の好中球減少症が持続していた。 9例に2次原発がんが発生し(10年累積発生率21%)、2次がん診断までの期間の中央値は4.7年(範囲:0.7~10.8)であった。 非再発関連死の10年累積発生率は18%(新型コロナウイルス感染症関連死を除外した場合は14%)であった。 CAR導入遺伝子の持続性が、長期的な奏効に関連していると考えられた。長期奏効例の44%において、B細胞無形成が持続していた。

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再発・難治性B-NHLへのglofitamab、日本人第I相試験の結果

 glofitamabは、T細胞誘導型CD20/CD3二重特異性抗体であり、欧米において再発・難治性びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)に承認されている。今回、日本人の再発・難治性B細胞非ホジキンリンパ腫(B-NHL)患者における安全性・薬物動態・有効性を評価した第I相試験で、glofitamabが管理可能な安全性プロファイルを示し、有望な奏効率が認められたことを、がん研究会有明病院の城内 優子氏らが報告した。International Journal of Clinical Oncology誌オンライン版2026年7月2日号に掲載。 本試験では、glofitamabの初回投与の7日前にオビヌツズマブ(1,000mg)を前投与し、1サイクル目のday1、8に段階的に増量、2サイクル目のday1(1サイクル目のday8の7日後)から3週ごとに目標用量(コホート1:2.5/10/16mg、コホート2:2.5/10/30mg)を病勢進行まで投与した。主要評価項目は安全性および薬物動態、副次評価項目は有効性であった。 主な結果は以下のとおり。・B-NHL患者8例(DLBCL:5例、濾胞性リンパ腫:2例、形質転換した濾胞性リンパ腫:1例)が登録され(コホート1:5例、コホート2:3例)、年齢中央値は64.5歳、7例がAnn Arbor分類III/IV期であった。・濾胞性リンパ腫の2例は、オビヌツズマブ投与後の血液学的有害事象のため、glofitamabは投与されなかった。・glofitamabの投与サイクルの中央値は、コホート1が48サイクル、コホート2が43サイクルであった。・7例にGrade3/4の有害事象が認められたが、Grade5は報告されなかった。・重篤な有害事象は2例に認められたが、用量制限毒性は認められなかった。・glofitamab投与を受けた全患者でサイトカイン放出症候群が認められた(Grade1:3例、Grade2:2例、Grade3:1例)が、ほとんどがコホート1で発現した。・血清glofitamab濃度は両コホートで同様の経時変化を示し、曝露量は用量に比例して増加した。・全奏効率および完全奏効率はいずれも75.0%(8例中6例)で、コホート1で60.0%(5例中3例)、コホート2で100%(3例中3例)であった。

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移植適応のある未治療多発性骨髄腫へのテクリスタマブベースの導入療法~第II相試験(MajesTEC-5)

 移植適応のある未治療多発性骨髄腫(NDMM)に対する、BCMA/CD3二重特異性抗体テクリスタマブベースの導入療法の安全性と有効性を検討した第II相GMMG-HD10/DSMM-XX(MajesTEC-5)試験の結果、移植適応のあるNDMMに対して、テクリスタマブベースの導入療法レジメンが、構成する各薬剤と比較して一貫した安全性プロファイルと顕著な早期微小残存病変(MRD)陰性率を示した。ドイツ・Heidelberg University HospitalのMarc S. Raab氏らがNature Medicine誌オンライン版2026年6月25日号に報告した。 本試験は、移植適応のあるNDMMを対象とした第II相試験で、事前規定された3つのコホートのプール解析に49例が組み入れられ、テクリスタマブ+ダラツムマブ+レナリドミド(Tec-DR、arm AおよびA1)、またはTec-DRにボルテゾミブを併用したTec-DVR(arm B)の投与を受けた。主要評価項目は有害事象および重篤な有害事象の発現頻度と重症度、副次評価項目は全奏効率(ORR)、MRD陰性率、MRD陰性完全寛解(CR)率など。今回の解析は維持療法前時点までの導入療法および自家幹細胞移植フェーズであった。 主な結果は以下のとおり。・Grade3/4のTEAE(治療中に発現した有害事象)は91.8%にみられ、その多くは血液毒性(リンパ球減少59.2%、好中球減少59.2%、白血球減少18.4%)であった。Grade5のTEAEは報告されなかった。・重篤な有害事象は55.1%にみられ、発熱(12.2%)が最も多かった。感染症は全Gradeで81.6%、Grade3/4は36.7%で、最も頻度の高いGrade3/4の感染症はCOVID-19と肺炎(いずれも6.1%)であった。サイトカイン放出症候群は67.3%にみられたが、すべてGrade1または2で自然軽快し、治療中止には至った例はなかった。治療関連のICANS(免疫エフェクター細胞関連神経毒性症候群)は認められなかった。・維持療法前時点におけるMRD陰性CR率は91.8%であった。・MRD陰性率は、寛解導入後サイクル3時点(10-5:46/46例)、サイクル6時点(10-5:46/46例、10-6:46/46例)、維持療法前時点(10-5:40/40例)のいずれも100%であった。・ORRは100%であった。・総採取幹細胞数の中央値は8.1×106/kgであった。 著者らは、「これらのデータは、移植適応のあるNDMMにおけるTec-D(V)R導入療法の実現可能性を支持するものであり、レジメンの各薬剤と比較して一貫した安全性プロファイルと顕著な早期MRD陰性率が示された」としている。

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既治療の再発・難治性多発性骨髄腫、mezigdomide追加が有効/Lancet

 主に抗CD38抗体薬やレナリドミドによる治療に抵抗性を示す多発性骨髄腫において、セレブロンE3リガーゼ調節薬であるmezigdomideとカルフィルゾミブ+デキサメタゾンの併用(MeziKd)は、カルフィルゾミブ+デキサメタゾン(Kd)と比較して無増悪生存期間(PFS)の有意な延長をもたらし、感染症を含むGrade3または4の有害事象の頻度が高いものの管理可能であることが、ギリシャ・アテネ大学のMeletios A. Dimopoulos氏らが実施した「SUCCESSOR-2試験」の中間解析で明らかとなった。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2026年6月14日号に掲載された。26ヵ国の無作為化対照比較第III相試験 SUCCESSOR-2試験は、日本を含む26ヵ国160施設で実施した非盲検無作為化対照比較第III相試験(Bristol Myers Squibbの助成を受けた)。 2023年2月~2025年11月に、測定可能な多発性骨髄腫を有し、少なくとも1つの治療レジメン(抗CD38抗体薬およびレナリドミドを含む)による前治療歴があり、その治療で最小奏効(minimal response)以上を達成し、直近の治療中または治療後に病勢の進行が確認された成人患者を登録した。 被験者479例(年齢中央値68歳[四分位範囲[IQR]:61~75]、女性227例[47%]、アジア人147例[31%])を、MeziKdを受ける群(288例)またはKdのみを受ける群(191例)に無作為に割り付けた。 主要評価項目は、PFSとし、独立審査委員会が評価した。PFSが2倍以上に、全奏効も良好 ベースラインで479例中120例(25%)が75歳以上で、診断後の経過期間中央値は4.5年(IQR:2.5~7.3)であった。411例(86%)が抗CD38抗体薬抵抗性、363例(76%)がレナリドミド抵抗性で、前治療ライン数中央値は2(IQR:2~4、範囲:1~9)であり、127例(27%)が前治療ライン数4以上であった。 追跡期間中央値10.6ヵ月の時点で、PFS中央値は、Kd群8.3ヵ月に対し、MeziKd群は18.0ヵ月と有意に延長した(ハザード比[HR]:0.48、95%信頼区間[CI]:0.36~0.63、p<0.0001)。 また、完全奏効以上は、MeziKd群77例(27%)、Kd群17例(9%)(群間差:18%、95%CI:11~24)、非常によい部分奏効以上は、それぞれ173例(60%)および59例(31%)(群間差:29%、95%CI:20~37)であり、全奏効(部分奏効以上)は、231例(80%)および102例(53%)(群間差:27%、95%CI:18~35)で達成された。 今回の中間解析時において、死亡はMeziKd群の22%(62/288例)、Kd群の27%(51/191例)で報告された(HR:0.79、95%CI:0.54~1.15)。Grade3、4の好中球減少、感染症が多い Grade3または4の有害事象は、MeziKd群で241例(84%)、Kd群で105例(56%)に認められ、好中球減少(176例[61%]、17例[9%])および感染症(98例[34%]、29例[16%])の頻度が高かった。Grade3または4の好中球減少は、アジア(81%[71/88例])に比べ米国(44%[12/27例])および欧州(46%[50/109例])で頻度が低かった。これらの多くは、標準治療および支持療法で管理可能であった。 重篤な有害事象は、MeziKd群で188例(65%)、Kd群で63例(34%)に発現し、肺炎(44例[15%]、12例[6%])の頻度が高かった。また、Grade5の治療関連有害事象は、それぞれ8例(3%)および1例(1%)で報告された(群間差:2%、95%CI:-1~5)。死亡は、MeziKd群で62例(22%)、Kd群で51例(27%)に認められ、その主な原因は病勢の進行であった。 著者は、「経口mezigdomideと静注カルフィルゾミブ+経口または静注デキサメタゾンの併用療法は、地域医療を含む多様な医療現場で広く導入が可能な外来治療の選択肢となる」「これらの知見は、この3剤併用療法が再発・難治性多発性骨髄腫に対する強力で導入しやすい新たな標準治療となることを示すものである」としている。

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急性感染症患者の鉄欠乏性貧血、鉄剤は投与する?/Blood

 鉄欠乏性貧血に対する静注鉄は速やかな鉄補充が期待できるが、急性感染症患者の場合は、病原体への鉄供給により感染を悪化させる可能性が懸念されている。そこで、米国・Charleston Area Medical CenterのHaris Sohail氏らは、鉄欠乏性貧血を有する急性感染症患者を対象に、静注鉄投与と生存、ヘモグロビン(Hb)値の回復などとの関連を検討した。その結果、静注鉄投与は検討したすべての感染症で14日および90日生存率の上昇と、Hb値の良好な回復に関連していた。本研究結果は、Blood誌2026年5月21日号に掲載された。 本研究は、111医療機関の匿名化された電子健康記録を集積したTriNetX Research Networkの2000年1月~2025年6月のデータを用いた後ろ向きコホート研究である。対象は、MRSA菌血症、肺炎、尿路感染症、大腸炎、蜂窩織炎のいずれかと鉄欠乏性貧血を併発し、感染症診断から2日以内に抗菌薬を投与された18歳以上の入院患者とした。診断から7日以内に静注鉄を投与された患者と非投与患者を、感染症ごとに1:1の傾向スコアマッチングを行って比較した。主要評価項目は14日および90日生存率で、副次評価項目は入院期間、輸血実施日数、Hb値の変化などとした。 主な結果は以下のとおり。・選択基準を満たした患者は33万9,145例であった。傾向スコアマッチング後の各群の患者数は、MRSA菌血症8,433例、肺炎1万9,281例、尿路感染症1万8,613例、大腸炎5,340例、蜂窩織炎8,404例であった。・静注鉄群では、すべての感染症で14日および90日生存率が非投与群より有意に高かった。各感染症の90日生存率は以下のとおり(静注鉄群vs.非投与群、ハザード比[95%信頼区間]を示す)。 MRSA菌血症:88.6%vs.83.8%、0.67(0.62~0.73) 肺炎:84.7%vs.78.1%、0.66(0.63~0.69) 尿路感染症:89.1%vs.85.6%、0.73(0.69~0.78) 大腸炎:89.7%vs.83.8%、0.60(0.53~0.68) 蜂窩織炎:92.2%vs.89.2%、0.70(0.63~0.78)・感染症および鉄欠乏性貧血診断後60~90日までのHb値の上昇幅は以下のとおり(静注鉄群vs.非投与群)。 MRSA菌血症:1.32g/dL vs.1.00g/dL 肺炎:1.25g/dL vs.0.97g/dL 尿路感染症:1.39g/dL vs.1.02g/dL 大腸炎:1.45g/dL vs.0.74g/dL 蜂窩織炎:1.41g/dL vs.0.92g/dL (いずれもp<0.0001)・赤血球輸血を実施した日数は、蜂窩織炎を除くすべての感染症で静注鉄群が有意に少なかった。・入院期間は、MRSA菌血症と尿路感染症では静注鉄群でわずかに長かったが、肺炎、大腸炎、蜂窩織炎では有意差を認めなかった。 本研究結果について著者らは、鉄欠乏性貧血を有する急性感染症の入院患者に対する静注鉄投与は、感染症の種類を問わず、生存率の上昇とHb値の良好な回復に関連していたとまとめた。ただし、本研究は後ろ向き観察研究であり、静注鉄による生存改善を示したものではない。感染症の重症度や静注鉄を投与した臨床的理由など、未測定交絡の影響も否定できず、安全性と有効性の確認には前向き研究が必要であるとしている。

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“患者・市民の医療情報アクセス向上”のためのコンソーシアム発足

 患者・市民が治療選択や医療用医薬品の適正使用に必要な情報へ適切にアクセスできる環境整備を目指すため、「患者・市民の医療情報アクセス向上コンソーシアム」(代表世話人:奥瀬 正紀氏、垣添 忠生氏、片木 美穂氏、武川 篤之氏)が2026年7月1日に正式に発足した。 本コンソーシアムは、患者・市民が必要な医療情報へ適切にアクセスできる社会の実現を目的として設立されたマルチステークホルダーによる連携組織として、がんに限らずさまざまな疾患にわたって、患者団体を中心に、医療関係者、有識者、関係団体などが連携し、疾患啓発、治療選択、適正使用などに関する情報提供の在り方について議論・提言を行っていく。また、広告該当性への懸念から情報提供が過度に萎縮している現状を改善するため、疾患啓発、治療選択肢、適正使用、治験を含む臨床試験などに関する情報は、患者が自らの疾患を理解し、納得して治療を選択するための「教育・学習目的の情報」として位置付けるべきだという考え方に立つ。正確性、中立性、透明性に配慮した情報提供について、「直ちに広告に該当するものではない」という認識を社会全体で整理していくことを目指している。 代表世話人の奥瀬 正紀氏(日本乾癬性疾患協会/YORIAILab)は、「患者・市民が医療情報に適切にアクセスできることは、納得して治療を選択するために不可欠である。本コンソーシアムでの活動を通して必要な人が必要なときに科学的に信頼できる医療情報へアクセスできる社会の実現に貢献したい」とコメント。今後はステークホルダーの声を集め、具体的な提言活動を進める方針である。 コンソーシアムの主な活動内容は以下のとおり。 ・患者・市民の医療情報アクセスに関する課題の整理 ・教育・学習目的の医療情報提供の在り方に関する検討 ・患者団体をはじめとする関係者間の対話と連携の促進 ・社会への情報発信および提言の取りまとめ医療用医薬品の広告規制を巡る構造的課題 本コンソーシアム設立の契機となったのは、がん対策総合機構が2026年2月13日に公表した報告書『患者の知る権利の観点から見た医療用医薬品の情報提供と広告規制の制度・運用』である。同報告書では、日米欧の制度比較を通じて、日本の医療用医薬品情報提供における実態と構造的課題が検証された。報告書や関連する調査では、以下の実態が浮き彫りとなった。・日本では、薬機法に基づく広告規制などの厳格な運用により、患者向け医薬品情報の提供が事実上強く制限され、教育・学習目的の情報提供であっても過度な萎縮が生じている。・商品名を用いた情報提供が難しく、原則として一般名(成分名)での説明が求められるため、患者や家族の理解を妨げ、情報のわかりにくさや混乱につながっている。・患者が必要とする疾患啓発や治療選択肢、治験などの情報に十分にアクセスしにくい状況が、がんや希少疾患をはじめとする多くの疾患領域に共通する社会課題となっている。患者教育・学習目的の適切な医学情報の普及を目指して 2026年3月13日、同報告書の報告会がオンラインで開催され、患者団体や企業など多様な立場から約60名が参加した。報告会では、処方薬において知りたい情報や伝えたい情報が十分に発信されない構造的状況、患者が理解できる仕組みの必要性について活発な意見交換が行われた。 こうした課題認識が広がる中、2026年3月30日に厚生労働省医薬局から通知「治験等に係る情報提供の取扱いについて」が発出された。この通知では、治験などに係る情報提供について、目的や内容、導線設計などの条件を満たせば広告に該当しないことが明確化され、「情報提供=すべて広告ではない」という考え方が具体的に示された。がん対策総合機構などは、この通知を重要な前進と受け止める一方、この考え方は治験情報のみならず、教育・学習目的の一般的な医療情報提供にも適用されるべきであると判断。特定の疾患領域に限らず、患者団体、学会、医療従事者、研究者、企業、行政などが立場を超えて連携し、社会全体で取り組むためのプラットフォームが必要であるとして、コンソーシアムの設立に向けた検討が本格化した。 その後、2026年6月16日には「患者・市民の医療情報アクセス向上コンソーシアム」の立ち上げ構想と発足時の体制が公表され、さらなる議論と調整を経て、7月1日の正式発足へと至った。今後は、がんに限らずさまざまな疾患領域にわたって、患者目線に立った環境整備に向けた具体的なアクションを展開していく予定である。<コンソーシアム発起人団体>・有國 美恵子氏(ユーイング肉腫家族の会)・岩瀬 哲氏(NPO法人JORTC)・大井 賢一氏(認定NPO法人がんサポートコミュニティー)・大沢 かおり氏(NPO法人Hope Tree)・奥瀬 正紀氏(一般社団法人日本乾癬性疾患協会、一般社団法人YORIAILab)・垣添 忠生氏(公益財団法人日本対がん協会)・片木 美穂氏(卵巣がん体験者の会スマイリー)・岸田 徹氏(NPO法人がんノート)・後藤 悌氏(認定NPO法人キャンサーネットジャパン)・武川 篤之氏(認定NPO法人日本アレルギー友の会)・中島 弥生氏(認定NPO法人ミルフィーユ小児がんフロンティアーズ)・西舘 澄人氏(NPO法人GISTERS)・橋本 明子氏(NPO法人血液情報広場・つばさ)(五十音順)

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ASCO2026 レポート 老年腫瘍(後編)

レポーター紹介ここ数年、ASCO Annual Meetingでは、高齢者機能評価(Geriatric Assessment:GA)や、GAで明らかになった脆弱性に対するサポートの有用性を検証する研究が発表され、老年腫瘍学の領域を大いに盛り上げてきた。前編に続き、筆者が興味深いと感じた研究を抜粋して紹介する。AIはGAを日常診療に近付けるか - 「GAができない問題」をAIは解決できるのか前編で述べたように、高齢がん患者の治療判断においてGAは重要な情報を与える。しかし、GAの重要性が示されることと、それを日常診療で広く行えることは別問題である。外来診療では、病期、治療歴、遺伝子変異、治療選択肢、有害事象など、確認すべきことが多い。その中で、すべての高齢がん患者に十分なGAを行うことは容易ではない。会話型AIを用いてGAを行うプラットフォームGRACE(#1658)今回報告されたGRACE(Geriatric Oncology Risk and Capability Evaluation)についての研究は、この課題に対して、会話型AIを用いてGAを行うものである1)。GRACEは、自然言語で患者とやり取りしながらGAを実施するAIプラットフォームであり、手動GAとの一致度が検討された。対象は65歳以上の成人70例で、米国・カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)の患者向けオンラインポータルや関連する高齢者施設を通じて登録された。さらに、15人の医療者から質的な意見も収集された。AIによる評価結果と医療者が実施した従来のGAとの一致度を示す指標(感度、特異度、陽性的中率、陰性的中率、Cohen’s κ、Gwet’s AC1)が評価された。GRACEは全体として感度0.73、特異度0.94、Cohen’s κ 0.63、Gwet’s AC1 0.82と、医療者が実施したGAとおおむね良好な一致度を示した。とくにポリファーマシーの評価ではκが約0.97、Gwet’s AC1が約0.98と非常に高い一致度を示した。一方、生活機能、社会支援、心理面といった領域では相対的に一致度が低かった。本研究は70例を対象とした小規模なものであり、GRACEによって治療毒性、入院、QOL、治療方針の適正化などが改善するかは示されていない。したがって、現時点でAIがGAを代替できると結論付けることはできない。むしろ、AIが得意な領域と苦手な領域を示した研究と捉えるべきだろう。薬剤数や併存症のように構造化しやすい情報はAIでも拾いやすいが、社会支援、心理面、生活機能のように患者ごとの状況や背景によって評価が変わる領域では、医療者による確認が不可欠である。それでも、本研究は興味深い。診察前にAIが患者の問題点を拾い上げ、医療者が確認すべき項目を整理することができれば、GAを日常診療に持ち込むハードルは下がる可能性がある。AIが老年腫瘍学を代替するのではなく、GAを日常診療に近付ける補助線になるのかもしれない。術後せん妄を予防できるか - 「薬を足せば防げるのか」という問いへの明確な答え(#LBA12002)最後に、ASCOらしく正統派のランダム化比較試験を紹介したい。今回、日本から高齢がん患者における術後せん妄予防を目的としたラメルテオンの多施設共同プラセボ対照二重盲検比較試験が報告された2)。術後せん妄は、高齢がん患者において臨床的に重要な合併症であり、入院期間の延長、身体機能低下、施設退院などにつながりうる。ラメルテオンはメラトニン受容体作動薬であり、睡眠覚醒リズムへの作用を介したせん妄予防効果が期待された。主な適格規準は、65歳以上、全身麻酔下でがん手術を受ける患者、術後5日以上の入院が予定されていることなどであった。患者はラメルテオン群とプラセボ群に1:1で割り付けられ、ラメルテオン群では手術4~8日前から術後4日目までラメルテオン8mgを就寝前に内服した。プラセボ群でも同様のスケジュールでプラセボが投与された。なお、全例に多職種によるせん妄予防介入が行われていた。主要評価項目は75歳以上の集団における術後5日以内のせん妄発症割合であり、主要な副次評価項目として65歳以上全体での、術後せん妄発症割合などが設定された。766例がランダム化され、ラメルテオン群383例、プラセボ群383例に割り付けられた。75歳以上のITT集団はラメルテオン群316例、プラセボ群314例であり、平均年齢はいずれも78.5歳であった。結果、75歳以上の集団における術後せん妄発症割合は、ラメルテオン群22.5%、プラセボ群22.9%であり、統計学的有意差は認められなかった(p=0.9618)。65歳以上の集団でも、術後せん妄発症割合はラメルテオン群22.5%、プラセボ群21.3%であり、ラメルテオンによる予防効果は示されなかった。安全性では、めまいがラメルテオン群16.4%、プラセボ群9.0%と、ラメルテオン群で多かった。少なくとも本試験の結果からは、がん手術を受ける高齢患者に対して、術後せん妄予防を目的にラメルテオンをルーチンに投与することは支持されない。一方で、高齢がん患者で問題になりやすい術後せん妄を、二重盲検プラセボ対照第III相試験として検証した点には大きな意義がある。また、negativeな結果であったことは、せん妄予防が薬剤を1つ追加するだけで解決するほど単純ではないことも示している。せん妄の発症には、睡眠、疼痛、感染、脱水、薬剤、認知機能、感覚障害、環境変化など多くの因子が関与する。今後は、単剤投与だけでなく、多職種による包括的な予防策の中で、どの介入が本当に有効なのかを検証していく必要があるだろう。老年腫瘍学は、高齢がん患者の脆弱性を評価するだけでなく、そこで明らかになった問題に対して、どのような介入が本当に患者の転帰を改善するのかを検証していく段階に来ているのだと思う。おわりにASCO2026の老年腫瘍に関連する演題を振り返ると、「高齢がん患者にGAを行うべきか」という議論は、少しずつ次の段階へ進んでいるように感じた。「GAは重要である、暦年齢だけで判断してはいけない」という総論を繰り返すだけなら難しくない。難しいのは、その評価を忙しい診療の中で実際に行い、患者にとって意味のある治療選択や支援につなげることである。個人的には、近年「GAを実施すること」自体がやや一人歩きし、日常診療で医療者が本当に困っていることが、置き去りにされているのではないかと感じることもあった。しかし、今回紹介した演題からは、高齢がん患者をどう分類するか、GAをどう日常診療に持ち込むか、術後せん妄をどう予防するのかという、医療者が実際に悩んでいる問いを研究として扱い、少しずつ前に進めようとする姿勢が感じられた。GAを実施しただけで患者の転帰が良くなるわけではないし、frailと分類しただけで治療方針が自動的に決まるわけでもない。術後せん妄も、薬剤を1つ追加すれば解決するほど単純ではない。それでも、こうした問いに正面から向き合う研究が積み重なっていることは、老年腫瘍学に関わる者として率直に嬉しく、非常に有意義な学会であったと感じた。1)Naeim A, et al. GRACE: A conversational AI platform for geriatric oncology risk and capability evaluation.2)Sadahiro R, et al. Ramelteon for prevention of postoperative delirium in elderly cancer patients: A randomized, double-blind, placebo-controlled multicenter trial, JORTC-PON02/J-SUPPORT2103/NCCH2103

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再発・難治性多発性骨髄腫、トアルクエタマブ+ダラツムマブ±ポマリドミドでPFS延長/NEJM

 トアルクエタマブは、骨髄腫細胞表面に発現するGタンパク質共役型受容体クラスCグループ5メンバーD(GPRC5D)と、T細胞上に発現するCD3受容体を標的とする二重特異性抗体。本薬は、正常B細胞への作用は限定的であり、管理可能な感染症プロファイルを示すため併用療法への組み込みが可能とされる。イタリア・トリノ大学のRoberto Mina氏らMonumenTAL-3 Investigatorsは「MonumenTAL-3試験」において、既治療の再発・難治性多発性骨髄腫患者では、トアルクエタマブ+ダラツムマブ+ポマリドミド(Tal-DP)およびトアルクエタマブ+ダラツムマブ(Tal-D)はダラツムマブ+ポマリドミド+デキサメタゾン(DPd)による標準治療と比較して、2年の時点での無増悪生存率が有意に優れ、全生存率も良好であることを示した。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2026年6月13日号に掲載された。18の国と地域の無作為化第III相試験 MonumenTAL-3試験は、日本を含む18の国と地域の182施設で実施した非盲検無作為化第III相試験(Johnson & Johnsonの助成を受けた)。2022年11月~2025年3月に、年齢18歳以上、再発・難治性多発性骨髄腫を呈し、レナリドミドおよびプロテアソーム阻害薬を含む1ライン以上の治療歴のある参加者を登録した。 被験者864例(年齢中央値64歳[範囲:30~88]、男性496例[57.4%])を、Tal-DP(287例)、Tal-D(287例)、DPd(290例)の投与を受ける群に無作為に割り付けた。 主要評価項目は、無増悪生存期間(無作為化の日から病勢進行または全死因死亡の発生までの期間)とし、独立審査委員会が評価した。全奏効、残存病変陰性完全奏効も良好 全体(864例)の診断からの経過期間中央値は3.8年(範囲:0.3~22.0)、前治療ライン数中央値は2(範囲:1~8)であった。833例(Tal-DP群276例、Tal-D群274例、DPd群283例)が少なくとも1回の試験薬の投与を受けた。今回の中間解析時の追跡期間中央値は24.6ヵ月(範囲:0.03~35.4)だった。 24ヵ月時の無増悪生存率の推定値は、Tal-DP群が81.3%、Tal-D群が77.6%、DPd群は51.2%であった。病勢進行または全死因死亡のハザード比(HR)は、DPd群に対するTal-DP群で0.28(95%信頼区間[CI]:0.20~0.40、p<0.001)、DPd群に対するTal-D群で0.33(0.24~0.46、p<0.001)であり、いずれも有意差を認めた。 また、全奏効(部分奏効以上)(Tal-DP群88.2%およびTal-D群88.5%vs.DPd群77.6%、両比較ともp<0.001)、完全奏効以上(71.1%および69.0%vs.34.5%、両比較ともp<0.001)、測定可能な残存病変が陰性の完全奏効(52.3%および46.3%vs.15.9%、両比較ともp<0.001)の割合は、いずれも有意差がみられた。 一方、24ヵ月全生存率の推定値は、Tal-DP群が89.2%、Tal-D群が87.9%、DPd群は79.1%であり、全死因死亡のHRは、DPd群に対するTal-DP群で0.47(95%CI:0.30~0.73、p=0.0006)、DPd群に対するTal-D群で0.51(0.33~0.78、p=0.0015)とトアルクエタマブを含むレジメンで良好であったが、いずれも事前に規定された中間解析の有意水準(p=0.0001)を満たさなかった。Grade3、4の好中球減少が高頻度に 最も頻度の高いGrade3または4の有害事象は好中球減少(Tal-DP群76.4%、Tal-D群29.2%、DPd群86.2%)であった。重篤な有害事象は、Tal-DP群で63.0%、Tal-D群で52.6%、DPd群で53.7%に、致死的な有害事象はそれぞれ1.8%(5例)、4.0%(11例)、4.6%(13例)に発生した。 サイトカイン放出症候群はTal-DP群で67.8%(Grade1が55.8%、Grade2が11.2%)、Tal-D群で58.4%(同48.9%、8.8%)に発生した。イベントのほとんどが一過性(発症期間中央値2日[範囲:1~57])で、1例(Tal-D群)を除き消退した。本症により4例(Tal-DP群1例、Tal-D群3例)でトアルクエタマブの投与中止に至り、2例(いずれもTal-D群)で全試験薬が投与中止となった。 免疫エフェクター細胞関連神経毒性症候群はTal-DP群で2.9%、Tal-D群で1.8%に発生した。Tal-DP群の3例がGrade3で、イベントはすべて消退した。 感染症は、Tal-DP群で87.3%、Tal-D群で84.3%、DPd群で83.0%に発生した。Grade3または4の感染症の発生率はそれぞれ37.7%、29.2%、42.4%であり、最も頻度が高かったのは肺炎(13.8%、9.5%、19.1%)であった。致死的感染症は0.7%(2例)、1.5%(4例)、1.8%(5例)に認めた。早期ラインの新たな選択肢 著者は、「Tal-DPおよびTal-Dはいずれも、再発または難治性多発性骨髄腫の早期ラインの治療における新たな選択肢となる」としている。 また、「本試験はTal-DPとTal-Dの比較を目的としたものではなかったが、トアルクエタマブ+ダラツムマブ療法にポマリドミドを追加することで、無増悪生存期間、奏効持続期間、全生存期間の改善を認めた一方で、血液毒性や重症感染症のリスクが増加した。Tal-DPとTal-Dのいずれを選択するかは、個々の患者の特性や治療目標を考慮して決定すべきである」と指摘している。

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【GET!ザ・トレンド】Less is More?β-ラクタマーゼ阻害薬nacubactamが拓くAMR治療の展望

薬剤耐性菌(AMR)は公衆衛生における世界的な社会課題である。なかでもカルバペネム系抗菌薬に耐性を示すカルバペネム耐性腸内細菌目細菌(CRE)はWHOの細菌優先病原体リストにおいて、クリティカル(最重要)に分類されている。そのCREに対し、Meiji Seikaファルマは新規β-ラクタマーゼ阻害薬nacubactam(OP0595)を承認申請中である。CRE感染症に対する同剤の特徴と効果、さらに新規抗菌薬開発の課題について、同社研究開発本部の加藤誠司氏らに話を聞いた。喫緊の課題カルバペネム耐性腸内細菌目細菌(CRE)AMRついての世界的な調査報告書であるJim O'Neill氏による耐性菌レポートによれば、新規抗菌薬の研究開発等の対策を講じなければ2050年までに年間1,000万人がAMRにより死亡すると報告されている。これを受け、WHOが薬剤耐性に関するグローバル・アクションプランを策定し、それを基に日本を含む世界各国がそれぞれの国の課題に応じたアクションプランを策定し取り組んでいる。抗菌薬に耐性を示す代表的な機序としてβ-ラクタム系抗菌薬の分解酵素であるβ-ラクタマーゼがある。カルバペネマーゼはβ-ラクタマーゼの1種で、その名のとおりカルバペネム系抗菌薬を分解する酵素である。カルバペネム系抗菌薬は重症感染症治療に使用される。最後の砦であるカルバペネム系抗菌薬を無効化するカルバペネマーゼ産生菌による感染症は、患者の重篤化、入院長期化、さらに死亡率の増加を招く。そのためCRE感染は5類感染症として全例報告が義務付けられるなど、日本でも喫緊の課題とされている。nacubactamによるβラクタマーゼへの阻害活性と、エンハンサー効果nacubactamは、Meiji Seikaファルマが自社で創出した新規β-ラクタマーゼ阻害薬である。2025年12月にカルバペネム系薬に耐性のグラム陰性菌による感染症治療薬として国内承認申請された。同剤はβ-ラクタム薬(セフェピム[CFPM]またはアズトレオナム[AZT])との併用で、CREに対するβ-ラクタム薬の分解を阻害するだけでなく、併用するβ-ラクタム薬の抗菌活性を増強させるという従来のβ-ラクタマーゼ阻害薬にはない特性を持っている。具体的には、nacubactamはPBP2の阻害作用を有する。一方、CFPMやAZTといったβ-ラクタム系抗菌薬はPBP3を阻害する。つまり、CFPMおよびAZTとnacubactamの併用により、PBP2とPBP3双方を阻害して抗菌活性・殺菌作用を増強することが可能となる(エンハンサー効果)。β-ラクタマーゼ阻害薬を単味製剤として開発していることも大きな意味を持つ。単味製剤のメリットとして既存抗菌薬との組み合わせ次第で将来出現する細菌にも柔軟に対応できる可能性がある。また、既存の抗菌薬と組み合わせて耐性菌に対応できるため、従来の配合剤のようにそれぞれのβ-ラクタム薬との配合剤を新薬として医療機関で保管する必要がなくなり、薬剤数抑制の観点からもメリットが生まれると考えられる。β-ラクタマーゼはAmbler分類でクラスAからDに分かれている。国や地域によって優勢なクラスや型が異なり、それに応じて有効な薬剤も変わる。画像を拡大するなかでもクラスBに有効な薬剤は限られており、その対策には課題が残る。最新報告によれば、国内のCREは約1,000例で、大部分はクラスBのIMP型だ。また、近年はクラスBのNDM型も増加傾向にある。厚生労働省によるカルバペネム低感受性腸内細菌目細菌株の感性率を見ると、セフェピムおよびnacubactamとの併用(以下、CFPM/NAC)はクラスA、C、Dのβラクタマーゼに高い感性率を示す。また、アズトレオナムおよびnacubactamとの併用(以下、AZT/NAC)はA、C以外にもクラスB(IMP型、NDM型とも)にも高い感性率を示すことが明らかになっている。画像を拡大する2つの第III相国際共同試験nacubactamの臨床開発では、欧州・日本を含むアジアで2つのグローバル第III相臨床試験(Integral-1、Integral-2)が実施された。Integral-1試験は、カルバペネム感受性の複雑性尿路感染症または急性単純性腎盂腎炎患者を対象に、CFPM/NACおよびAZT/NACをカルバペネム系抗菌薬であるイミペネム/シラスタチン(IPM/CS)と比較した二重盲検比較試験である※。IPM/CSに対する主要評価項目(投与終了7日後の総合臨床効果)において、AZT/NACは非劣性を、CFPM/NACは非劣性かつ優越性を証明した。結果は米国の感染症の学会であるIDWeek2025で反響を呼びThe Lancet Infectious Diseases誌による学会のハイライトにも取りあげられ、試験の内容はThe Lancet2026年5月16日号に掲載された。※通常の成人で、セフェピム2g+nacubactam1g、アズトレオナム2g+nacubactam1gまたはIPM1g /CS1g (いずれも1日3回静注)を投与もう1つの第III相試験であるIntegral-2試験は、CRE感染症患者を対象とした試験である。欧州臨床微生物学感染症学会議(ESCMID Global2026)では口頭演題に採択され発表に至っている。ESCMID Global 2026では、nacubactamに関する10演題が発表され、いずれも活発な議論が展開されたという。同剤に対する世界的な注目度の高さが窺える。新たなスタイルで行われたnacubactamの開発新規抗菌薬の開発にはさまざまな困難が伴う。感染症は被験者数が限られているため、臨床開発において症例を集積するには多くの国・施設の協力が不可欠だ。その分、開発コストは莫大になる。一方で、適正使用により患者数が限定されるなか、安定供給のための製造コストも増加しており経済合理性の欠如から、大手製薬メーカーが抗菌薬開発から撤退する負のサイクルに陥っている。nacubactamの開発に当たってはAMEDによる医療研究開発革新基盤創成事業(CiCLE)の支援を得ている※。この研究課題では、第I相試験の薬物動態(PK/PD)からシミュレーションした用法用量を、第II相を介さずに第III相試験で検証している。結果は評価項目を達成し、第II相試験を省略して開発することが可能となった。困難な状況の中で「プロジェクトメンバー全員が、CREによる感染症に苦しむ患者さん全員を救うという思いでnacubactamの開発にあたっている」と加藤氏は述べる。※CiCLE研究開発課題「非臨床PK/PD理論を活用した新規β-ラクタマーゼ阻害剤(OP0595)の単味製剤の研究開発」プル型インセンティブの拡大が抗菌薬開発の鍵を握る新規抗菌薬の開発にあたっては、承認取得後の課題も深刻だ。上市後の適正使用を徹底すると使用症例数は絞られ、販売額は縮小する。加藤氏によれば、新薬の上市まで至った会社も事業が維持できず倒産する事例も少なくない。新規抗菌薬の開発を支える仕組みとして、研究開発費を支援するプッシュ型インセンティブと、承認・発売後の採算性を維持・向上させるプル型インセンティブ制度がある。国内ではプル型インセンティブとして抗菌薬確保支援事業が設けられているが、その予算枠では安定供給に資する製造コストを維持するのに課題もあり、今後の抗菌薬開発においてはプル型インセンティブの拡充がより重要になっていくと考えられる。Meiji Seikaファルマとしても、製薬協と連携しながらプル型インセンティブの拡大に向け、国への働きかけを続けている。nacubactamは新たなβ-ラクタマーゼ阻害薬として、β-ラクタム薬との併用で従来にはない強力な抗菌活性を発揮する。また、単味製剤の利点を生かし、新たな組み合わせを開発することで将来的に新たな耐性菌に備えることができる可能性を持つ。第一歩としてCREという最重要耐性菌に立ち向かうnacubactamに注目したい。 参考 1) O'Neill J, Review on Antimicrobial Resistance. Tackling Drug-Resistant Infections Globally: Final Report and Recommendations. Wellcome Trust and HM Government 2) 厚生労働省 薬剤耐性ワンヘルス動向調査年次報告書(サマリ版) 3) 国立健康危機管理研究機構(JIHS)国際感染症センターカルバペネム耐性腸内細菌科細菌(CRE)感染症に関する一般的事項 4) 国際健康危機管理研究機構(JIHS)カルバペネム耐性腸内細菌目細菌(CRE)感染症, 2024年現在 5) Takahashi S, et al. Lancet.2026;407:1929-1940.

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ASCO2026 レポート 老年腫瘍(前編)

レポーター紹介ここ数年、ASCO Annual Meetingでは、高齢者機能評価(Geriatric Assessment:GA)や、GAで明らかになった脆弱性に対するサポートの有用性を検証する研究が発表され、老年腫瘍学の領域を大いに盛り上げてきた。ASCO2026では、日常診療を大きく変えるような重要な試験(pivotal study)は多くなかったものの、高齢患者をどのように評価して治療選択に結びつけるか、GAを忙しい日常診療の中でどう使える形にするか、さらに、がんを患う高齢者(以下、高齢がん患者)に多い老年症候群にどのように介入するか、という観点から興味深い研究が報告されていた。その中から、筆者が興味深いと感じた研究を抜粋して紹介する。高齢がん患者をどう評価するか - 「fitかどうか」ではなく「どこが脆弱か」をみる高齢がん患者の診療で最も悩ましいのは、「この患者さんに標準的ながん治療を行ってよいのか」という問いである。暦年齢だけで判断すべきではないことは、すでに多くの医療者が理解している。しかし、では何をもって積極的治療に適していると判断し、何をもって慎重な治療選択が必要と考えるべきなのか。この問いに答えるのは、日常診療でも臨床試験でも、いまだに簡単ではない。この問いに答えるために、欧州の老年腫瘍学では、GAを用いて高齢がん患者を、fit、vulnerable、frailと分類することがある。しかし、もともとfitやfrailは老年医学の用語であり、腫瘍学の用語ではない。老年医学では、『自立度』を軸として、「健常(fit)」、「要介護状態(disability)」、その中間を「フレイル(frailty)」と分類することが多い(注:老年医学の領域でも定義は定まっていない)。一方、腫瘍学では、『がん治療の適応』を軸として、「若年者と同じ標準治療ができる(fit)」、「非常に弱い治療や緩和・支持療法ならできる(frail)」、その中間を「用量などを調整した弱い治療ならできる(vulnerable)」と分類することが多い(図)。図 日常診療における高齢者の分類方法画像を拡大する脆弱な高齢者に対するエプコリタマブ+R-mini CVP(#7002)この問題を考えるうえで、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)を有する脆弱な高齢者を対象としたエプコリタマブ+R-miniCVPに関する試験は興味深かった1)。脆弱な高齢者を対象として、アントラサイクリンを抜いたR-miniCVP(リツキシマブ+減量シクロホスファミド+ビンクリスチン+プレドニゾロン)に抗CD3/CD20二重特異性抗体であるエプコリタマブを併用する治療の有用性を評価した第II相試験が実施された。特筆すべきは、脆弱な高齢者を定義する際に、simplified Geriatric Assessment(sGA)というツールを用いたところである。sGAでは、年齢(閾値:80歳)、日常生活動作(ADL)、手段的日常生活動作(IADL)、併存症(CIRS-Gを使用)を組み合わせて、患者をfit、unfit、frailに分類する。DLBCL患者に用いられてきた簡便なツールであり、予後と関連することが示されている2)。本試験の中間解析において、この集団におけるエプコリタマブ+R-miniCVPの有望な結果が示されたが、老年腫瘍学的には、高齢者機能評価の一種であるsGAを用いて対象集団を定義したという点が興味深い。すなわち、この試験におけるunfit/frailとは、漠然と「高齢で弱っている患者」を指す言葉ではなく、標準的なアントラサイクリンを含んだレジメンに適しているかどうかを高齢者機能評価で規定したという点で興味深いのである。一方で、sGAは実用的である反面、分類は大まかであると言える。たとえば80歳以上であれば、ADL、IADL、併存症に大きな問題がなくてもfitには分類されない。より多面的に高齢がん患者を評価する試みも必要である。高齢がん患者をより多面的に分類するツール(FI-CGA-10)の検討(#1656)このような問題意識に対して、日本から高齢がん患者をより多面的に分類するツールの有用性を評価する研究が報告された3)。治療方針決定前にGAを実施された高齢者1,630例を対象として、日本の研究グループが開発したツール「FI-CGA-10」が、予後を予測するかを評価した前向きコホート研究である。FI-CGA-10は、認知機能、気分、コミュニケーション能力(視力+聴力)、移動能力、転倒、栄養、ADL、IADL、社会支援の有無、併存症の10領域から構成される。その合計点数に基づき、患者をfit、pre-frail、frailに分類する4)。本研究の結果、fit群をreferenceとすると、pre-frail群の死亡ハザード比は2.26、frail群では5.06であった。また、年齢、性別、がん種、病期を含むモデルにFI-CGA-10を加えることで、1年全生存率の予測精度を示す指標(C-index)は、0.70から0.76に改善した。ここまでは単なる予後因子解析にみえるが、重要なのは、FI-CGA-10が「どのような患者が脆弱なのか」を、単一の指標ではなく複数の領域から評価している点である。高齢患者の評価では、Performance Statusや年齢だけでは不十分であり、身体機能、日常生活機能、栄養状態、認知・心理面、社会的背景などを含めて総合的に捉える必要があることは以前から指摘されてきた。FI-CGA-10は、そのようなGAの考え方を、実際に予後予測に利用できる形に整理した試みといえる。すなわち、「どのような評価を用いれば高齢患者を分類できるのか」という問いに対して、本研究はGAを基盤とした多面的評価が有力な選択肢であることを示している。前編まとめこのようにASCO2026では、高齢患者をどのように分類し、治療判断に結びつけるか検討する演題が複数報告されていた。ただし、ここで重要なのは、「予後が悪い患者」と「治療から利益が得られない患者」は同じではないという点である。FI-CGA-10でfrailと分類されたからといって、必ずしも治療強度を下げるべきとは言えず、G8低値だからといって、特定の治療を控えるべきとも限らない。高齢がん患者の評価は、治療の可否を機械的に決めるための「線引き」ではなく、患者の医学的・機能的状況を整理し、奏効率や生存期間中央値だけでは捉えきれない治療の利益と負担を共有するための「対話の土台」と捉えるべきである。治療によって何を得たいのか、どの程度の有害事象や通院負担を許容できるのか、残された時間をどのように過ごしたいのかによって、適切な選択は大きく異なる。どの高齢患者が積極的治療に適しているのか。その問いに対する明快な答えはまだない。しかし、ASCO2026で報告された一連の研究は、fit、unfit、frailなどの分類で単純に線を引くのではなく、患者の脆弱性を多面的に評価し、その人にとって意味のある治療選択を考えるShared Decision Makingにつなげることの重要性を示していたと言える。後編に続く1)Chihara D, et al. Phase 2 trial of epcoritamab in combination with rituximab-mini CVP for older unfit/frail or anthracycline-ineligible adult patients with newly diagnosed diffuse large B-cell lymphoma: Interim futility analysis.2)Merli F, et al. Simplified Geriatric Assessment in Older Patients With Diffuse Large B-Cell Lymphoma: The Prospective Elderly Project of the Fondazione Italiana Linfomi. J Clin Oncol. 2021;39:1214-1222.3)Nishijima TF, et al. Validation of a 10-item frailty index based on a comprehensive geriatric assessment (FI-CGA-10) for predicting survival in older adults with cancer.4)Nishijima TF, et al. A 10-Item Frailty Index Based on a Comprehensive Geriatric Assessment (FI-CGA-10) in Older Adults with Cancer: Development and Construct Validation. Oncologist. 2021;26:e1751-e1760.

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ガソリンスタンドの近くに住む子どもはがんリスク上昇の可能性

 ガソリンスタンドの近くに住む子どもは、白血病やその他の小児がんを発症するリスクが高い可能性のあることが報告された。モントリオール大学(カナダ)のStephane Buteau氏らの研究の結果であり、詳細は「Environmental Pollution」に4月1日掲載された。 この研究から、自宅からガソリンスタンドまでの距離が近いほど、子どものがんリスクが高い傾向が示された。統計学的には明確な有意差は認められなかったものの、100m以内ではリスクの上昇が認められた。また、研究者らによると、蒸気回収システム(給油時などに気化したガソリンが大気中に放出される量を減らす装置)の設置を義務付ける条例がある地域では、リスク上昇は小さい傾向がみられたという。 Buteau氏は、「蒸気回収システムのような対策は、設置が容易でコストもあまりかからず、地域住民の有害成分への曝露量を減らして、健康面に大きなメリットをもたらす」と述べている。なお、本論文中の研究背景には、「ガソリンには白血病との関連が指摘されている既知の発がん性物質であるベンゼンが含まれている」と記されている。ベンゼンは、車両への給油時や、タンクローリーから地下タンクへガソリンを移す際に、蒸発して環境中に放出される。 Buteau氏らの研究では、カナダのケベック州の新生児82万4,414人の健康状態を追跡し、自宅の近隣のガソリンスタンドまでの距離と発がんリスクとの関連を検討した。対象は自宅から半径500m以内の全てのガソリンスタンドまでの距離の逆数を合計し、その四分位数で4群に分類された。自宅から500m以内にガソリンスタンドがない家庭の子どもを基準として、交絡因子(出生時の性別、母親の年齢と併存疾患、妊娠中の大気汚染や高圧送電線への曝露、都市化レベル、近隣の社会経済的地位など)を調整した上で、がんリスクを検討した。 その結果、第4四分位群(自宅から半径500m以内にあるガソリンスタンドの数が上位25%〔最も多い層〕)の子どもは白血病リスクが34%高く(ハザード比〔HR〕 1.34〔95%信頼区間1.01~1.77〕)、全てのがんのリスクも18%高い傾向がみられた(HR 1.18〔同1.00~1.38〕)。 また、自宅から100m以内にガソリンスタンドが存在する家庭の子どもは、500m以内にガソリンスタンドが存在しない家庭の子どもよりも、発がんリスクが高い傾向が認められた(白血病はHR 1.35〔0.74~2.47〕、全てのがんではHR 1.14〔0.80~1.63〕)。この傾向は、ガソリンスタンドに蒸気回収システムの設置が義務化されているモントリオール市を除外した場合により顕著だった(白血病はHR 1.55〔0.72~3.30〕、全てのがんではHR 1.42〔0.93~2.18〕)。 この結果を基にButeau氏は、「蒸気回収システムの設置義務がどの程度順守されているのかは、正確には分からない。しかし、この施策が実際に大気中への有害成分の排出量を減らすという仮説を裏付ける、説得力のある知見が得られた」と話している。 研究者らは、「本研究結果は、ガソリンからの排出物を小児がんの潜在的なリスク因子として考慮すべきであることを示唆している」と結論付けている。なお、Buteau氏は、「これまでの研究で、小児がんのうち遺伝的要因のみに起因するものはわずか5~10%であり、残りは他の要因、特に環境要因によるものだ」との解説を加えている。

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多発性骨髄腫治療薬イサツキシマブ、皮下注射製剤の承認取得/サノフィ

 サノフィは2026年6月19日、イサツキシマブ(商品名:サークリサ)について、皮下注射製剤の製造販売承認を取得した。この承認は、多発性骨髄腫に対する、ポマリドミド・デキサメタゾン併用療法(Pd)、カルフィルゾミブ・デキサメタゾン併用療法(Kd)、ボルテゾミブ・レナリドミド・デキサメタゾン併用療法(VRd)を対象としている。 今回の承認により、イサツキシマブは点滴静注製剤に加え、皮下注射製剤による提供が可能になる。皮下注射製剤では、市販のシリンジを用いた手動による皮下投与が可能になり、静脈内投与と比較して投与に要する時間の大幅な短縮が可能で、患者さんや医療従事者の負担を軽減することが期待される。また、皮下投与では静脈内投与より緩徐に吸収されるため、infusion reaction発現率の低下が臨床試験で示されている。なお、臨床試験では、開発中のEnable Injections社のハンズフリー自動インジェクターであるenFuse OBIを用いて皮下投与された。 今回の承認は、国際共同第III相試験であるIRAKLIA試験を含む5つの試験結果に基づいている。IRAKLIA試験では、レナリドミドおよびプロテアソーム阻害薬を含む1次治療以上の前治療歴がある再発または難治性の多発性骨髄腫の成人患者を対象に、PdにイサツキシマブをOBIを用いて1,400mg皮下投与を併用する治療法と、10mg/kg静脈内投与を併用する治療法を比較した。結果は、奏効率(ORR)と定常状態における投与前血中薬物濃度(トラフ濃度)を複合主要評価項目として、静脈内投与に対する皮下投与の非劣性が示された。ORRは皮下投与群71.1%、静脈内投与群70.5%であり、安全性データは、これまで静脈内投与で確立されている安全性プロファイルと同様であった。また、OBIを用いた皮下投与の重大な安全上の問題は認められなかった。

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タファシタマブとレナリドミドの併用、再発・難治性のびまん性大細胞型B細胞リンパ腫に承認/インサイト・ジャパン

 インサイト・バイオサイエンシズ・ジャパン合同会社は6月19日、タファシタマブ(商品名:ミンジュビ)とレナリドミドの併用療法について、再発または難治性のびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)の治療として、製造販売承認事項一部変更の承認を取得したことを発表した。タファシタマブは、国内で再発または難治性の濾胞性リンパ腫に対するリツキシマブおよびレナリドミドとの併用療法として承認されており、本承認が2つ目の効能の承認となる。 本承認は、自家造血幹細胞移植の対象とならない再発・難治性のDLBCLを対象とした国際共同第II相試験であるMOR208C203試験(L-MIND試験)と、国内第Ib/II相試験であるINCMOR 0208-102試験パート4(グループ6)(J-MIND試験)の結果に基づいている。 L-MIND試験における独立評価委員会の評価において、主要評価項目である奏効率(ORR)は58.8%であり、そのうち完全奏効(CR)は41.3%、部分奏効(PR)は17.5%であった(データカットオフ:2018年11月30日)。追跡期間中央値44ヵ月以上における奏効期間中央値は未達だった。また、J-MIND試験における独立評価委員会判定によるORRは71.4%であり、そのうちCRは45.2%、PRは26.2%であった(データカットオフ:2023年8月31日)。主な副作用は好中球減少、血小板減少などであった。

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テクリスタマブとトアルクエタマブの併用、髄外性形質細胞腫を有する再発・難治性多発性骨髄腫に承認/J&J

 Johnson & Johnson(日本における医療用医薬品事業の法人名:ヤンセンファーマ)は2026年6月19日、B細胞成熟抗原(BCMA)とCD3を標的とする二重特異性抗体であるテクリスタマブ(商品名:テクベイリ)とGタンパク質共役型受容体ファミリーCグループ5メンバーD(GPRC5D)とCD3を標的とする二重特異性抗体のトアルクエタマブ(商品名:タービー)との併用療法について、髄外性形質細胞腫(EMD)を有する再発または難治性の多発性骨髄腫の治療法として、製造販売承認事項一部変更の承認を取得したことを発表した。本併用療法の承認取得は日本が世界で初めてとなる。 今回の承認取得は、EMDを有し、免疫調節薬、プロテアソーム阻害薬および抗CD38モノクローナル抗体製剤の治療歴を有する再発または難治性の多発性骨髄腫患者を対象に、テクリスタマブとトアルクエタマブの併用療法の有効性と安全性を評価したRedirecTT-1試験第II相に基づく。本試験において、これら2剤の併用療法の全奏効率は79%で、54%が完全奏効以上を達成し、1年時点での無増悪生存率は61%であった。

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Mim8―次世代FVIII mimetic開発競争(解説:長尾梓氏)

 2026年4月、NEJM誌にMim8(denecimig)の第III相試験(FRONTIER2)が掲載された。血友病A診療において、エミシズマブに続く新たなFactor VIII mimeticとして注目される報告である。 しかし、本試験の意義は単に「新薬が有効だった」という点にとどまらない。むしろ、「Factor VIII mimetic」という薬剤クラスが、エミシズマブ一強時代から次のステージへ進み始めたことを示している点にある。Factor VIII mimetic 血友病Aでは第VIII因子(FVIII)が欠乏するため、FIXaとFXを橋渡しできず、十分なトロンビン産生が得られない。 エミシズマブは、この問題を「FVIIIそのものを補充する」のではなく、「FVIIIaの機能を模倣する二重特異性抗体を作る」という発想で解決し、血友病治療に革命をもたらした。皮下注射で投与でき、インヒビターの有無を問わず有効であり、従来の静脈内定期補充療法から患者を解放した。 そして今、そのコンセプトをさらに発展させた次世代FVIII mimeticの開発競争時代に入っている。Mim8(Novo Nordisk) Mim8はエミシズマブと同様に、FIXaとFXを橋渡しする二重特異性抗体であるが、FIXaとの相互作用を最適化することで、より高い凝固活性を目指して設計された。前臨床試験ではエミシズマブを上回る止血活性が示されており、FRONTIER2試験でその臨床的有効性が確認された。NXT007(Chugai/Roche) NXT007は「エミシズマブの後継分子」とも呼べる存在である。 エミシズマブは共通の軽鎖を用いる特殊な構造を有するが、NXT007ではFIXa側とFX側にそれぞれ最適化された軽鎖を導入し、さらにFc領域も改変することで薬物動態を改善した。開発目標として「非血友病レベルの止血能(hemostatic normalization)」が掲げられている点が特徴的である。現在、第III相試験が進行中である。Inno8(Novo Nordisk) Inno8はさらに新しいFVIII mimetic候補であり、現在は初期臨床開発段階にある。ナノボディを利用したなんと飲み薬である。2024年に第I相試験が開始され、まず健常成人における安全性および薬物動態が評価されている。現時点では有効性データは限定的であるが、Novo NordiskがMim8に続く次世代候補として開発を継続している点は興味深い。 エミシズマブの登場により、皮下注射による非因子製剤は血友病Aの日常診療に定着した。そして今、次世代FVIII mimeticは「正常に近い凝固能」を目指し、さらに内服薬という新たな治療概念も現実味を帯びつつある。

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