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ASCO2026 レポート 老年腫瘍(前編)

レポーター紹介ここ数年、ASCO Annual Meetingでは、高齢者機能評価(Geriatric Assessment:GA)や、GAで明らかになった脆弱性に対するサポートの有用性を検証する研究が発表され、老年腫瘍学の領域を大いに盛り上げてきた。ASCO2026では、日常診療を大きく変えるような重要な試験(pivotal study)は多くなかったものの、高齢患者をどのように評価して治療選択に結びつけるか、GAを忙しい日常診療の中でどう使える形にするか、さらに、がんを患う高齢者(以下、高齢がん患者)に多い老年症候群にどのように介入するか、という観点から興味深い研究が報告されていた。その中から、筆者が興味深いと感じた研究を抜粋して紹介する。高齢がん患者をどう評価するか - 「fitかどうか」ではなく「どこが脆弱か」をみる高齢がん患者の診療で最も悩ましいのは、「この患者さんに標準的ながん治療を行ってよいのか」という問いである。暦年齢だけで判断すべきではないことは、すでに多くの医療者が理解している。しかし、では何をもって積極的治療に適していると判断し、何をもって慎重な治療選択が必要と考えるべきなのか。この問いに答えるのは、日常診療でも臨床試験でも、いまだに簡単ではない。この問いに答えるために、欧州の老年腫瘍学では、GAを用いて高齢がん患者を、fit、vulnerable、frailと分類することがある。しかし、もともとfitやfrailは老年医学の用語であり、腫瘍学の用語ではない。老年医学では、『自立度』を軸として、「健常(fit)」、「要介護状態(disability)」、その中間を「フレイル(frailty)」と分類することが多い(注:老年医学の領域でも定義は定まっていない)。一方、腫瘍学では、『がん治療の適応』を軸として、「若年者と同じ標準治療ができる(fit)」、「非常に弱い治療や緩和・支持療法ならできる(frail)」、その中間を「用量などを調整した弱い治療ならできる(vulnerable)」と分類することが多い(図)。図 日常診療における高齢者の分類方法画像を拡大する脆弱な高齢者に対するエプコリタマブ+R-mini CVP(#7002)この問題を考えるうえで、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)を有する脆弱な高齢者を対象としたエプコリタマブ+R-miniCVPに関する試験は興味深かった1)。脆弱な高齢者を対象として、アントラサイクリンを抜いたR-miniCVP(リツキシマブ+減量シクロホスファミド+ビンクリスチン+プレドニゾロン)に抗CD3/CD20二重特異性抗体であるエプコリタマブを併用する治療の有用性を評価した第II相試験が実施された。特筆すべきは、脆弱な高齢者を定義する際に、simplified Geriatric Assessment(sGA)というツールを用いたところである。sGAでは、年齢(閾値:80歳)、日常生活動作(ADL)、手段的日常生活動作(IADL)、併存症(CIRS-Gを使用)を組み合わせて、患者をfit、unfit、frailに分類する。DLBCL患者に用いられてきた簡便なツールであり、予後と関連することが示されている2)。本試験の中間解析において、この集団におけるエプコリタマブ+R-miniCVPの有望な結果が示されたが、老年腫瘍学的には、高齢者機能評価の一種であるsGAを用いて対象集団を定義したという点が興味深い。すなわち、この試験におけるunfit/frailとは、漠然と「高齢で弱っている患者」を指す言葉ではなく、標準的なアントラサイクリンを含んだレジメンに適しているかどうかを高齢者機能評価で規定したという点で興味深いのである。一方で、sGAは実用的である反面、分類は大まかであると言える。たとえば80歳以上であれば、ADL、IADL、併存症に大きな問題がなくてもfitには分類されない。より多面的に高齢がん患者を評価する試みも必要である。高齢がん患者をより多面的に分類するツール(FI-CGA-10)の検討(#1656)このような問題意識に対して、日本から高齢がん患者をより多面的に分類するツールの有用性を評価する研究が報告された3)。治療方針決定前にGAを実施された高齢者1,630例を対象として、日本の研究グループが開発したツール「FI-CGA-10」が、予後を予測するかを評価した前向きコホート研究である。FI-CGA-10は、認知機能、気分、コミュニケーション能力(視力+聴力)、移動能力、転倒、栄養、ADL、IADL、社会支援の有無、併存症の10領域から構成される。その合計点数に基づき、患者をfit、pre-frail、frailに分類する4)。本研究の結果、fit群をreferenceとすると、pre-frail群の死亡ハザード比は2.26、frail群では5.06であった。また、年齢、性別、がん種、病期を含むモデルにFI-CGA-10を加えることで、1年全生存率の予測精度を示す指標(C-index)は、0.70から0.76に改善した。ここまでは単なる予後因子解析にみえるが、重要なのは、FI-CGA-10が「どのような患者が脆弱なのか」を、単一の指標ではなく複数の領域から評価している点である。高齢患者の評価では、Performance Statusや年齢だけでは不十分であり、身体機能、日常生活機能、栄養状態、認知・心理面、社会的背景などを含めて総合的に捉える必要があることは以前から指摘されてきた。FI-CGA-10は、そのようなGAの考え方を、実際に予後予測に利用できる形に整理した試みといえる。すなわち、「どのような評価を用いれば高齢患者を分類できるのか」という問いに対して、本研究はGAを基盤とした多面的評価が有力な選択肢であることを示している。前編まとめこのようにASCO2026では、高齢患者をどのように分類し、治療判断に結びつけるか検討する演題が複数報告されていた。ただし、ここで重要なのは、「予後が悪い患者」と「治療から利益が得られない患者」は同じではないという点である。FI-CGA-10でfrailと分類されたからといって、必ずしも治療強度を下げるべきとは言えず、G8低値だからといって、特定の治療を控えるべきとも限らない。高齢がん患者の評価は、治療の可否を機械的に決めるための「線引き」ではなく、患者の医学的・機能的状況を整理し、奏効率や生存期間中央値だけでは捉えきれない治療の利益と負担を共有するための「対話の土台」と捉えるべきである。治療によって何を得たいのか、どの程度の有害事象や通院負担を許容できるのか、残された時間をどのように過ごしたいのかによって、適切な選択は大きく異なる。どの高齢患者が積極的治療に適しているのか。その問いに対する明快な答えはまだない。しかし、ASCO2026で報告された一連の研究は、fit、unfit、frailなどの分類で単純に線を引くのではなく、患者の脆弱性を多面的に評価し、その人にとって意味のある治療選択を考えるShared Decision Makingにつなげることの重要性を示していたと言える。後編に続く1)Chihara D, et al. Phase 2 trial of epcoritamab in combination with rituximab-mini CVP for older unfit/frail or anthracycline-ineligible adult patients with newly diagnosed diffuse large B-cell lymphoma: Interim futility analysis.2)Merli F, et al. Simplified Geriatric Assessment in Older Patients With Diffuse Large B-Cell Lymphoma: The Prospective Elderly Project of the Fondazione Italiana Linfomi. J Clin Oncol. 2021;39:1214-1222.3)Nishijima TF, et al. Validation of a 10-item frailty index based on a comprehensive geriatric assessment (FI-CGA-10) for predicting survival in older adults with cancer.4)Nishijima TF, et al. A 10-Item Frailty Index Based on a Comprehensive Geriatric Assessment (FI-CGA-10) in Older Adults with Cancer: Development and Construct Validation. Oncologist. 2021;26:e1751-e1760.

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ガソリンスタンドの近くに住む子どもはがんリスク上昇の可能性

 ガソリンスタンドの近くに住む子どもは、白血病やその他の小児がんを発症するリスクが高い可能性のあることが報告された。モントリオール大学(カナダ)のStephane Buteau氏らの研究の結果であり、詳細は「Environmental Pollution」に4月1日掲載された。 この研究から、自宅からガソリンスタンドまでの距離が近いほど、子どものがんリスクが高い傾向が示された。統計学的には明確な有意差は認められなかったものの、100m以内ではリスクの上昇が認められた。また、研究者らによると、蒸気回収システム(給油時などに気化したガソリンが大気中に放出される量を減らす装置)の設置を義務付ける条例がある地域では、リスク上昇は小さい傾向がみられたという。 Buteau氏は、「蒸気回収システムのような対策は、設置が容易でコストもあまりかからず、地域住民の有害成分への曝露量を減らして、健康面に大きなメリットをもたらす」と述べている。なお、本論文中の研究背景には、「ガソリンには白血病との関連が指摘されている既知の発がん性物質であるベンゼンが含まれている」と記されている。ベンゼンは、車両への給油時や、タンクローリーから地下タンクへガソリンを移す際に、蒸発して環境中に放出される。 Buteau氏らの研究では、カナダのケベック州の新生児82万4,414人の健康状態を追跡し、自宅の近隣のガソリンスタンドまでの距離と発がんリスクとの関連を検討した。対象は自宅から半径500m以内の全てのガソリンスタンドまでの距離の逆数を合計し、その四分位数で4群に分類された。自宅から500m以内にガソリンスタンドがない家庭の子どもを基準として、交絡因子(出生時の性別、母親の年齢と併存疾患、妊娠中の大気汚染や高圧送電線への曝露、都市化レベル、近隣の社会経済的地位など)を調整した上で、がんリスクを検討した。 その結果、第4四分位群(自宅から半径500m以内にあるガソリンスタンドの数が上位25%〔最も多い層〕)の子どもは白血病リスクが34%高く(ハザード比〔HR〕 1.34〔95%信頼区間1.01~1.77〕)、全てのがんのリスクも18%高い傾向がみられた(HR 1.18〔同1.00~1.38〕)。 また、自宅から100m以内にガソリンスタンドが存在する家庭の子どもは、500m以内にガソリンスタンドが存在しない家庭の子どもよりも、発がんリスクが高い傾向が認められた(白血病はHR 1.35〔0.74~2.47〕、全てのがんではHR 1.14〔0.80~1.63〕)。この傾向は、ガソリンスタンドに蒸気回収システムの設置が義務化されているモントリオール市を除外した場合により顕著だった(白血病はHR 1.55〔0.72~3.30〕、全てのがんではHR 1.42〔0.93~2.18〕)。 この結果を基にButeau氏は、「蒸気回収システムの設置義務がどの程度順守されているのかは、正確には分からない。しかし、この施策が実際に大気中への有害成分の排出量を減らすという仮説を裏付ける、説得力のある知見が得られた」と話している。 研究者らは、「本研究結果は、ガソリンからの排出物を小児がんの潜在的なリスク因子として考慮すべきであることを示唆している」と結論付けている。なお、Buteau氏は、「これまでの研究で、小児がんのうち遺伝的要因のみに起因するものはわずか5~10%であり、残りは他の要因、特に環境要因によるものだ」との解説を加えている。

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多発性骨髄腫治療薬イサツキシマブ、皮下注射製剤の承認取得/サノフィ

 サノフィは2026年6月19日、イサツキシマブ(商品名:サークリサ)について、皮下注射製剤の製造販売承認を取得した。この承認は、多発性骨髄腫に対する、ポマリドミド・デキサメタゾン併用療法(Pd)、カルフィルゾミブ・デキサメタゾン併用療法(Kd)、ボルテゾミブ・レナリドミド・デキサメタゾン併用療法(VRd)を対象としている。 今回の承認により、イサツキシマブは点滴静注製剤に加え、皮下注射製剤による提供が可能になる。皮下注射製剤では、市販のシリンジを用いた手動による皮下投与が可能になり、静脈内投与と比較して投与に要する時間の大幅な短縮が可能で、患者さんや医療従事者の負担を軽減することが期待される。また、皮下投与では静脈内投与より緩徐に吸収されるため、infusion reaction発現率の低下が臨床試験で示されている。なお、臨床試験では、開発中のEnable Injections社のハンズフリー自動インジェクターであるenFuse OBIを用いて皮下投与された。 今回の承認は、国際共同第III相試験であるIRAKLIA試験を含む5つの試験結果に基づいている。IRAKLIA試験では、レナリドミドおよびプロテアソーム阻害薬を含む1次治療以上の前治療歴がある再発または難治性の多発性骨髄腫の成人患者を対象に、PdにイサツキシマブをOBIを用いて1,400mg皮下投与を併用する治療法と、10mg/kg静脈内投与を併用する治療法を比較した。結果は、奏効率(ORR)と定常状態における投与前血中薬物濃度(トラフ濃度)を複合主要評価項目として、静脈内投与に対する皮下投与の非劣性が示された。ORRは皮下投与群71.1%、静脈内投与群70.5%であり、安全性データは、これまで静脈内投与で確立されている安全性プロファイルと同様であった。また、OBIを用いた皮下投与の重大な安全上の問題は認められなかった。

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タファシタマブとレナリドミドの併用、再発・難治性のびまん性大細胞型B細胞リンパ腫に承認/インサイト・ジャパン

 インサイト・バイオサイエンシズ・ジャパン合同会社は6月19日、タファシタマブ(商品名:ミンジュビ)とレナリドミドの併用療法について、再発または難治性のびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)の治療として、製造販売承認事項一部変更の承認を取得したことを発表した。タファシタマブは、国内で再発または難治性の濾胞性リンパ腫に対するリツキシマブおよびレナリドミドとの併用療法として承認されており、本承認が2つ目の効能の承認となる。 本承認は、自家造血幹細胞移植の対象とならない再発・難治性のDLBCLを対象とした国際共同第II相試験であるMOR208C203試験(L-MIND試験)と、国内第Ib/II相試験であるINCMOR 0208-102試験パート4(グループ6)(J-MIND試験)の結果に基づいている。 L-MIND試験における独立評価委員会の評価において、主要評価項目である奏効率(ORR)は58.8%であり、そのうち完全奏効(CR)は41.3%、部分奏効(PR)は17.5%であった(データカットオフ:2018年11月30日)。追跡期間中央値44ヵ月以上における奏効期間中央値は未達だった。また、J-MIND試験における独立評価委員会判定によるORRは71.4%であり、そのうちCRは45.2%、PRは26.2%であった(データカットオフ:2023年8月31日)。主な副作用は好中球減少、血小板減少などであった。

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テクリスタマブとトアルクエタマブの併用、髄外性形質細胞腫を有する再発・難治性多発性骨髄腫に承認/J&J

 Johnson & Johnson(日本における医療用医薬品事業の法人名:ヤンセンファーマ)は2026年6月19日、B細胞成熟抗原(BCMA)とCD3を標的とする二重特異性抗体であるテクリスタマブ(商品名:テクベイリ)とGタンパク質共役型受容体ファミリーCグループ5メンバーD(GPRC5D)とCD3を標的とする二重特異性抗体のトアルクエタマブ(商品名:タービー)との併用療法について、髄外性形質細胞腫(EMD)を有する再発または難治性の多発性骨髄腫の治療法として、製造販売承認事項一部変更の承認を取得したことを発表した。本併用療法の承認取得は日本が世界で初めてとなる。 今回の承認取得は、EMDを有し、免疫調節薬、プロテアソーム阻害薬および抗CD38モノクローナル抗体製剤の治療歴を有する再発または難治性の多発性骨髄腫患者を対象に、テクリスタマブとトアルクエタマブの併用療法の有効性と安全性を評価したRedirecTT-1試験第II相に基づく。本試験において、これら2剤の併用療法の全奏効率は79%で、54%が完全奏効以上を達成し、1年時点での無増悪生存率は61%であった。

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Mim8―次世代FVIII mimetic開発競争(解説:長尾梓氏)

 2026年4月、NEJM誌にMim8(denecimig)の第III相試験(FRONTIER2)が掲載された。血友病A診療において、エミシズマブに続く新たなFactor VIII mimeticとして注目される報告である。 しかし、本試験の意義は単に「新薬が有効だった」という点にとどまらない。むしろ、「Factor VIII mimetic」という薬剤クラスが、エミシズマブ一強時代から次のステージへ進み始めたことを示している点にある。Factor VIII mimetic 血友病Aでは第VIII因子(FVIII)が欠乏するため、FIXaとFXを橋渡しできず、十分なトロンビン産生が得られない。 エミシズマブは、この問題を「FVIIIそのものを補充する」のではなく、「FVIIIaの機能を模倣する二重特異性抗体を作る」という発想で解決し、血友病治療に革命をもたらした。皮下注射で投与でき、インヒビターの有無を問わず有効であり、従来の静脈内定期補充療法から患者を解放した。 そして今、そのコンセプトをさらに発展させた次世代FVIII mimeticの開発競争時代に入っている。Mim8(Novo Nordisk) Mim8はエミシズマブと同様に、FIXaとFXを橋渡しする二重特異性抗体であるが、FIXaとの相互作用を最適化することで、より高い凝固活性を目指して設計された。前臨床試験ではエミシズマブを上回る止血活性が示されており、FRONTIER2試験でその臨床的有効性が確認された。NXT007(Chugai/Roche) NXT007は「エミシズマブの後継分子」とも呼べる存在である。 エミシズマブは共通の軽鎖を用いる特殊な構造を有するが、NXT007ではFIXa側とFX側にそれぞれ最適化された軽鎖を導入し、さらにFc領域も改変することで薬物動態を改善した。開発目標として「非血友病レベルの止血能(hemostatic normalization)」が掲げられている点が特徴的である。現在、第III相試験が進行中である。Inno8(Novo Nordisk) Inno8はさらに新しいFVIII mimetic候補であり、現在は初期臨床開発段階にある。ナノボディを利用したなんと飲み薬である。2024年に第I相試験が開始され、まず健常成人における安全性および薬物動態が評価されている。現時点では有効性データは限定的であるが、Novo NordiskがMim8に続く次世代候補として開発を継続している点は興味深い。 エミシズマブの登場により、皮下注射による非因子製剤は血友病Aの日常診療に定着した。そして今、次世代FVIII mimeticは「正常に近い凝固能」を目指し、さらに内服薬という新たな治療概念も現実味を帯びつつある。

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新規診断AML、経口decitabine-cedazuridine+ベネトクラクスが有用/NEJM

 新たに診断された75歳以上または強力な寛解導入療法非適応の急性骨髄性白血病(AML)患者において、経口decitabine-cedazuridineとベネトクラクスの併用療法により、骨髄抑制作用が認められたものの、薬物相互作用を起こすことなく約半数の患者で完全寛解が認められた。米国・New York Presbyterian HospitalのGail J. Roboz氏らが、第I/II相多施設共同非盲検非無作為化臨床試験「ASCERTAIN-V(ASTX727-07)試験」の結果を報告した。75歳以上または強力な寛解導入療法非適応のAML患者に対しては、アザシチジンまたはdecitabineとベネトクラクスの併用療法が標準治療であるが、非経口投与は患者と医療従事者の双方に負担となっている。経口配合薬であるdecitabine-cedazuridineはAML治療薬として欧州で承認されており、静脈内投与のdecitabineと同等の薬物動態特性を有するが、単剤療法での生存期間延長効果は限定的であった。NEJM誌2026年6月4日号掲載の報告。第I/II相試験で、薬物動態と完全寛解率を評価 研究グループは、75歳以上の患者または18歳以上で強力な化学療法が非適応の、新たにAMLと診断された患者に、decitabine-cedazuridineおよびベネトクラクスを経口投与した。 全例に、1サイクルを28日として、1日目から5日目までdecitabine-cedazuridine(decitabine 35mg、cedazuridine 100mg)を経口投与し、ベネトクラクス400mgを1日1回経口投与した。ベネトクラクスは、腫瘍崩壊症候群を軽減するため第1サイクルに用量漸増投与(1日目100mg、2日目200mg、3日目以降400mg)を行った。 第IIb相では、第I相で観察された骨髄抑制を軽減するため、骨髄芽球の消失が確認された場合、decitabine-cedazuridineおよびベネトクラクスの投与期間を短縮することが推奨された。 主要評価項目は、第I相では第2サイクルの5日目および15日目に評価したベネトクラクスの血中濃度曲線下面積(AUC0-24)および最高血中濃度(Cmax)(decitabine-cedazuridine併用不問)とし、第IIa相では第2サイクルの5日目および15日目のベネトクラクスのAUC0-24およびCmax、ならびに完全寛解とし、第IIb相では完全寛解とした。薬物相互作用は認められず、完全寛解率は47% 2021年1月~2022年2月に30例(第I相)、2021年11月~2024年3月に58例(第IIa相)および101例(第IIb相)の、計189例が登録された。 第I相および第IIa相の薬物動態解析の結果、decitabine-cedazuridineとベネトクラクスの間に薬物相互作用は認められなかった。 第IIb相において、完全寛解は47%(95%信頼区間[CI]:36~57)に認められた。また、副次評価項目である完全寛解または血液学的回復が不完全な完全寛解の患者の割合は63%(95%CI:53~73)で、全生存期間中央値は15.5ヵ月(95%CI:7.6~推定不能)であった。 第IIb相におけるGrade3以上の有害事象の発現率は、貧血30%、好中球減少症26%、発熱性好中球減少症25%で、30日時点の死亡率は3%、60日時点の死亡率は10%であった。

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ST合剤に「急性汎発性発疹性膿疱症」の重大な副作用追加/厚労省

 2026年6月16日、厚生労働省より添付文書の改訂指示が発出され、抗菌薬のスルファメトキサゾール・トリメトプリム(商品名:バクタ配合錠、バクトラミン配合錠ほか、通称:ST合剤)の「重大な副作用」の項に「急性汎発性発疹性膿疱症」が追加された。急性汎発性発疹性膿疱症の発生状況と改訂の理由 急性汎発性発疹性膿疱症の症例を評価し、専門委員の意見も聴取した結果、本剤と事象との因果関係が否定できない症例が集積したことから、使用上の注意を改訂することが適切と判断された。なお、国内症例は12例で、うち医薬品と事象との因果関係が否定できない症例は4例(死亡0例)であった。その他、添付文書が改訂された薬剤 同日、ほかの医薬品についても使用上の注意の改訂指示が出されており、主な変更点は以下のとおり。◯炭酸リチウム 「禁忌」の項から「妊婦又は妊娠している可能性のある女性」が削除された。これに伴い、「特定の背景を有する患者に関する注意」において、妊婦には「治療上やむを得ないと判断される場合を除き、投与しないこと」に改められ、新たに「生殖能を有する者」への注意喚起(催奇形性に関する十分な説明など)が新設された。◯カルボキシマルトース第二鉄、含糖酸化鉄 「重大な副作用」の項に「低リン血症、骨軟化症」が新設・追加された。また、重要な基本的注意として、投与開始前や投与中の定期的な血清リン値の測定と、骨軟化症を疑う症状が現れた際の処方医への相談を患者に指導する旨が追記された。◯バレメトスタットトシル酸塩 「重要な基本的注意」の項に、「急性骨髄性白血病や骨髄異形成症候群などの二次性悪性腫瘍が発現する可能性」について追記され、患者の状態を十分に観察することが求められている。

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高リスクDLBCLの初回治療、タファシタマブ+レナリドミド+R-CHOPでPFS延長/Lancet

 未治療の高リスクびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)患者の約40%は、初回治療のR-CHOP療法(リツキシマブ、シクロホスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチン、prednisoneまたはプレドニゾロン)で再発・進行に至る。ドイツ・University Hospital MunsterのGeorg Lenz氏らMIND Study Investigatorsは、DLBCLを含む高リスクB細胞リンパ腫を対象とした検討(frontMIND試験)で、R-CHOP+タファシタマブ(Fc領域を改変した抗CD19モノクローナル抗体)+レナリドミド(tafa-len-R-CHOP)療法がR-CHOP療法と比較し、無増悪生存期間(PFS)を有意に延長したことを示した。ただし、追加併用により、治療中に発現し死亡に至った有害事象(TEAE)を含む有害事象の増加が認められた。全生存期間(OS)に関するデータは未成熟で追跡調査が継続されているが、著者らは「循環腫瘍DNA(ctDNA)を含むさらなる解析で、tafa-len-R-CHOP療法で観察されたPFS改善に分子学的奏効がより深く寄与しているかどうか評価できるだろう。tafa-len-R-CHOP療法は、高リスクDLBCLや高悪性度B細胞リンパ腫(HGBL)患者の新たな初回治療となる可能性がある」と述べている。Lancet誌オンライン版2026年5月30日号掲載の報告。tafa-len-R-CHOP療法とR-CHOP療法を比較する国際共同試験 MIND試験は北米・南米、欧州および日本を含む環太平洋地域の298施設で行われた第III相無作為化二重盲検プラセボ対照試験。対象は、18~80歳で未治療の高中リスクまたは高リスクのDLBCL、もしくはHGBLの患者であった。 研究グループは被験者を、International Prognostic Index(IPI)または年齢補正IPI、試験地で層別化し、標準治療の21日サイクル6回投与のR-CHOP療法群またはtafa-len-R-CHOP療法群に1対1の割合で無作為に割り付けた。R-CHOP療法は、初日にリツキシマブ375mg/m2、シクロホスファミド750mg/m2、ドキソルビシン50mg/m2、ビンクリスチン1.4mg/m2(最大2mg)を静脈内投与し、prednisoneまたはプレドニゾロン100mg/日を1~5日目に経口投与した。これらに加えてtafa-len-R-CHOP療法群では、タファシタマブ(12mg/kgを1、8、15日目に静脈内投与)とレナリドミド(25mg/日を1~10日目に経口投与)が投与された。 主要評価項目は、試験担当医師の評価によるPFS(無作為化から病勢進行または全死因死亡までと定義)で、ITT集団で評価した。安全性は副次評価項目として、試験薬を少なくとも1回投与された全被験者を対象に評価した。2年PFS率tafa-len-R-CHOP療法群71.1%vs. R-CHOP療法群62.9% 2021年5月11日~2023年3月2日に1,229例がスクリーニングされ、899例が無作為化された(tafa-len-R-CHOP療法群448例[50%]、R-CHOP療法群451例[50%])。両群の人口統計学的および疾患の特性はバランスが取れており、年齢中央値は65歳、IPI 3またはaaIPI 2が503例(56%)、IPI 4~5またはaaIPI 3が388例(43%)、ECOG-PS 2が283例(31%)、485例(54%)が腫瘤性病変(直径7.5cm以上)を有していた。 追跡期間中央値35.2ヵ月(95%信頼区間[CI]:35.0~35.4)の主要解析時点において、PFSはtafa-len-R-CHOP療法群がR-CHOP療法群より改善し(ハザード比[HR]:0.75、95%CI:0.59~0.96、p=0.0194)、2年PFS率はtafa-len-R-CHOP療法群71.1%(95%CI:66.3~75.4)、R-CHOP療法群62.9%(57.9~67.5)であった。 OSの中間HRは0.85(95%CI:0.63~1.14)で統計学的有意差は認められなかった(p=0.2703)。3年OS率はtafa-len-R-CHOP療法群81.1%(95%CI:77.0~84.6)、R-CHOP療法群77.8%(73.5~81.5)であった。 Grade3以上の全TEAE発現率は、tafa-len-R-CHOP療法群(384/443例[87%])がR-CHOP療法群(340/447例[76%])よりも高率であった。さらに、死亡に至ったTEAEの発現率もtafa-len-R-CHOP療法群(26例[6%])がR-CHOP療法群(17例[4%])よりも高率であった。一方で、試験中のすべての死亡例は、tafa-len-R-CHOP療法群(82例[19%])がR-CHOP療法群(97例[22%])よりも少なかった。 投与データに基づくすべての試験薬の早期中止率は、tafa-len-R-CHOP療法群(71/443例[16%])とR-CHOP療法群(66/447例[15%])で同程度であった。

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再発・難治性多発性骨髄腫、テクリスタマブ単剤でPFS延長(MajesTEC-9)/NEJM

 1~3ラインの治療歴のある再発・難治性多発性骨髄腫患者の治療では、担当医選択のレジメンと比較してテクリスタマブは、無増悪生存期間(PFS)および全生存期間(OS)を有意に改善し、その一方でGrade3または4の感染症の頻度が高いことが、フランス・ナント大学病院のCyrille Touzeau氏らが実施した「MajesTEC-9試験」で示された。テクリスタマブは、多発性骨髄腫細胞上に発現するB細胞成熟抗原(BCMA)とT細胞上に発現するCD3を標的とする二重特異性抗体である。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2026年5月29日号で報告された。24ヵ国の無作為化第III相試験 MajesTEC-9試験は、日本を含む24ヵ国162施設で実施した非盲検無作為化第III相試験(Johnson & Johnsonの助成を受けた)。2023年4月~2025年4月に参加者を登録した。 対象は、抗CD38モノクローナル抗体およびレナリドミドを含む1~3ラインのレジメンによる治療歴があり、病勢が進行または直近のレジメンが奏効しなかった再発・難治性多発性骨髄腫の患者であった。 被験者を、テクリスタマブ(皮下投与)または担当医が選択したレジメン(ポマリドミド+ボルテゾミブ+デキサメタゾン[PVd]、カルフィルゾミブ+デキサメタゾン[Kd]のいずれか)を受ける群に、1対1の割合で無作為に割り付けた。抗菌薬の予防投与と免疫グロブリン補充療法が推奨された。 主要評価項目はPFS(無作為化の日から病勢進行または死亡の日までの期間)とし、独立審査委員会が評価した。CR以上の達成率も有意に優れる 593例を登録し、テクリスタマブ群に296例、PVd/Kd群に297例を割り付けた。574例(テクリスタマブ群291例、PVd/Kd群283例)が実際に試験薬の投与を受け、PVd/Kd群のうち86例(30.4%)がPVd、197例(69.6%)はKdを受けた。 全体の年齢中央値は70歳(範囲:34~86)、173例(29.2%)が75歳以上で、290例(48.9%)が女性であった。前治療ライン数中央値は2(範囲:1~3)であり、128例(21.6%)が1ラインのみを受けていた。治療期間中央値は、テクリスタマブ群が13.1ヵ月、PVd/Kd群は7.0ヵ月だった。 追跡期間中央値17.3ヵ月の時点における推定18ヵ月PFS率は、PVd/Kd群が26.9%(95%信頼区間[CI]:21.1~33.0)であったのに対し、テクリスタマブ群は69.8%(95%CI:63.7~75.1)と有意に優れた(ハザード比[HR]:0.29、95%CI:0.23~0.38、p<0.001)。 完全奏効(CR)以上(65.9%vs.16.8%、リスク比:3.95、95%CI:3.03~5.14、p<0.001)の達成率はテクリスタマブ群で有意に高く、全奏効(部分奏効[PR]以上:84.5%vs.54.2%、リスク比:1.56[95%CI:1.39~1.75])の達成率もテクリスタマブ群で高かった。 また、推定18ヵ月OS率についても、テクリスタマブ群で有意に良好だった(79.2%[95%CI:73.5~83.8]vs.68.6%[95%CI:62.4~74.0]、HR:0.60[95%CI:0.43~0.83]、p=0.002)。Grade3、4の有害事象の頻度が高い、厳密な感染予防策が重要 Grade3または4の有害事象は、テクリスタマブ群の84.9%、PVd/Kd群の76.3%に発生し、Grade5(死亡)の有害事象の発生率はそれぞれ6.5%および3.5%であった。 テクリスタマブ群では、サイトカイン放出症候群が66.0%に発生し、そのほとんどがGrade1(48.8%)または2(16.5%)で、Grade3は2例のみであり、Grade4または5は認めなかった。免疫エフェクター細胞関連神経毒性症候群(ICANS)は4.1%にみられ、Grade1が2.4%、Grade2が1.4%で、Grade3の1例はテクリスタマブの投与中止に至った。 Grade3または4の感染症は、テクリスタマブ群で頻度が高かった(41.6%vs.29.0%)。致死的感染症は、テクリスタマブ群で16例(5.5%)、PVd/Kd群で8例(2.8%)に発生した。 著者は、「PVd/Kd群の3分の2以上が、後治療として二重特異性抗体療法またはCAR-T細胞療法を開始したにもかかわらず、テクリスタマブ群はCRの確率がより高く、OSがより延長した」「重篤な感染症のリスクがあるため、感染症管理では厳密な感染予防策と免疫グロブリン補充療法が不可欠である」としている。 また、「これらの結果は、多発性骨髄腫の2次治療およびそれ以降の治療選択肢として、テクリスタマブを基盤とし、グルココルチコイドの使用を控えるレジメンを支持するものである」と指摘している。

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第317回 埼玉県立小児医療センターの死亡事故、何があったのか(後編)

INDEX故意の仮説をする場合過失の仮説をする場合小児ALL治療の背景と事件の事実関係について触れた前回を踏まえ、今回は「なぜこうした事故が起こってしまったのか?」を深掘りしてみたい。ちなみに病院側の調査では、調剤記録、投与記録、手順書、ダブルチェック体制などを確認したものの、明確な違反は見つからなかったとしている。事故調査委員会が特定できなかったものを不謹慎と言われるのを承知で、可能性のある原因を私個人として考えてみた。前提として、故意か過失かによって大きく変わってくる。故意の仮説をする場合まず、故意という仮説である。この場合に一般的に考えられる可能性は、(1)髄腔内注射(以下、髄注)薬への意図的混入(2)シリンジすり替え(3)調製工程への介入(4)特定患者やその担当医を標的とした行為、となる。いずれも悪意がある前提となり、そもそも常識的な思考(少なくとも私自身もその範疇の人間である前提)では、もはや理解不能である。このうちまず(4)については、ビンクリスチンが検出された3例は、事案の発生時期が異なる患者であり、特定の患者を標的として行われたとは考えにくい。これら3例の担当医が同一人物かそれとも異なるかは情報がない。もし、同一担当医でその個人に恨みを持っていた人物が意図的に混入したとしても、結果の重大性は予測しえたわけで、「そこまでするのか?」というレベルである。ただ、繰り返しになるが故意でこうした重大な結果を招くようなことをする人物がいたとしたら、およそ常識で測れない思考をしている可能性はあるので、可能性がゼロとは言えない。また、(1)、(2)は(4)と関連するもので、あくまで理論上は可能かもしれないが、率直に言ってこの可能性を考え出したら安全対策は際限のないものになる。(3)も(1)と(2)と同様であり、また通常、注射製剤や髄注の調製を行う無菌室は入退室記録や監査記録が存在するため、1人での実行は容易ではない。実際、同センターでは注射製剤などの調製はセキュリティーカードを3回使って入退室する薬剤部の1室で行われ、「ビンクリスチンなどはこの部屋の鍵付き保管庫で保管されていた」と報じられていることなども考えると、調剤室で悪意を持って行うことはかなり難易度が高いと言わざるを得ない。繰り返しになるが、故意の可能性を前提とした場合、もはやどの段階でも完璧な対策はないと言える。その意味では前述の医療事故調査委員会が「故意の可能性でも対応し得る再発防止対策を立てた」との主張は、個人的にはややピンと来ない。過失の仮説をする場合一方、過失との仮説はどうか? 私個人のない頭で考えた場合、(1)調剤時の取り違え(2)ラベル貼付ミス(3)投与時の取り違え(4)シリンジへの微量混入(5)システム的欠陥、などが思い浮かぶ。(1)はメトトレキサート髄注用シリンジ、ビンクリスチン静注用シリンジが同時に準備され、医師、看護師、薬剤師が誤って入れ替えるケースで最も古典的なビンクリスチン髄注事故の事例である。世界では数多く報告されているビンクリスチン髄注事故の原因と1つ言われている。(2)は静注と髄注のシリンジのラベルを誤って逆に貼り付けたなどのケースであり、(3)は正しく調剤・ラベル貼りが正しくても実際の処置室で静注と髄注が同じトレイ上に存在し、医師がそれを取り違えて投与するケースである。(3)も(1)と同様に過去の事故では多い原因である。もっとも過去に何度も髄注事故が明らかになっているビンクリスチンの場合、現在はミニ点滴バッグに充填するのが一般的と言われる。これまで同センターの記者会見で記者の質問に対し、「髄注用シリンジはいわゆる静注シリンジとは別のもので、コネクターも違い、通常ではコネクトもできない状態になっているので、混入するということは通常ではなかなか考えにくい」と答えている。ただ、髄注、静注ともシリンジを利用していたとしても(1)~(3)のいずれも個人的には今回の原因と考えるのは難しい。というのも、どれも単純な偶発ミスといえ、同一施設で約9ヵ月間に3回も発生するようなものとは考えにくいからである。とくに(3)については、前述の通り、このような事故を防ぐために静注と髄注の実施日を変えることが現在では当たり前に行われているからである。(4)については、同じ作業台や器具を使用した場合、交差汚染が起こる可能性があり、個人的には過失の中でも最も有力視している原因である。同センター側はビンクリスチンとそのほか薬剤の調製は同じ安全キャビネットを使用し、調製時間をずらす形にしており、手順書上の問題はなかったとしている。一方で、同センター側内での関係者の聞き取り調査では「通常の手順と違ったことがあったか?」とダイレクトに聞いているだけであり、調製現場に監視カメラはないため、確実に手順書通りだったかは確認するすべがない。たとえばビンクリスチンを採取したシリンジを本来は廃棄すべきにもかかわらず、そのまま使って髄腔用の薬剤を調製した場合などには発生する可能性がある。ただ、この場合、今回の3例以外にも同センターでは過去にほかの髄注も行っているはずであり、薬剤部として手順書の順守が形骸化していたというよりは、特定の薬剤師個人の中で形骸化していたならばあり得ることだ。(5)は、静注薬と髄注薬を同日に調製、保管場所が近接、ダブルチェックの形骸化など、単一工程ではなく複数工程で問題が常態化していたならば、今回のように短期間で複数回の事故発生の可能性はある。もっとも2025年という特定時期に事故が集中的に発生している現実を考えれば、相当程度の属人性の考慮が必要である。いずれにせよこの件に関しては非常に理解しがたいことを前提に考えねばならない。事故調査委員会が原因と特定しきれないのも、率直に言ってしまえば、当たり前ではないことを前提に調査を進めなければならない点が大きな障害になっていると考えられる。この件については、すでに埼玉県立病院機構は3月段階で大宮警察署に今回の事案を届け出ており、最終的にはこの捜査結果も待たねばならない。それでも原因が特定できないとなると、謎は深まるばかりである。参考1)厚生労働省:埼玉県立小児医療センターの報道に関する対応状況について(報告)令和8年3月26日

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高リスク多発性骨髄腫、MRD陰性維持期間とPFSの関連

 多発性骨髄腫において微小残存病変(MRD)陰性は生存率の向上と関連しているが、高リスク多発性骨髄腫におけるMRD陰性の予後的価値については明らかになっていない。今回、中国・The First Affiliated Hospital of Sun Yat-sen UniversityのHuan Liu氏らは移植適応の初発多発性骨髄腫を対象にした単施設の後ろ向き研究を実施し、個別治療の指針となる最短のMRD陰性維持期間を検討した。その結果、MRD陰性を2年維持した高リスク患者は標準リスク患者と同様の無増悪生存期間(PFS)を示し、さらに4年の維持によりPFSが改善されることが示唆された。Cancers(Basel)誌2026年5月12日号に掲載。 本研究は、同院において初期治療後に連続して2回以上MRD陰性を達成した移植適応の初発多発性骨髄腫223例を対象とし、リスク別にMRD陰性維持の生存への影響を解析した。 主な結果は以下のとおり。・MRD陰性期間が2年以上の高リスク群と標準リスク群の間で、PFSに差は認められなかった(70.77ヵ月vs.67.38ヵ月、p=0.529)。・標準リスク群では、MRD陰性を2~3年維持した患者と3年以上維持した患者との間で、PFSに差は認められなかった(72.25ヵ月vs.107.50ヵ月、p=0.103)。・高リスク群では、4~5年維持した患者と5年以上維持した患者の間に差は認められなかった(未到達vs.84.53ヵ月、p=0.136)。・患者全体で、2年以上の維持期間は全生存期間の延長と関連していた。 著者らは、「長期的なMRD陰性の維持は良好な予後と関連している。2年以上のMRD陰性の維持は高リスク細胞遺伝学的異常の悪影響を軽減し、また、限定的な症例に基づく探索的解析ではあるが、高リスク多発性骨髄腫患者において4年以上の維持がPFS延長と関連する可能性が示された」としている。

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シンポジウム座長インタビュー:名古屋市立大学 飯田 真介 氏【第51回日本骨髄腫学会学術集会:独占インタビュー】

名古屋市立大学 飯田 真介 氏:シンポジウム座長インタビュー(インタビュアー:獨協医科大学埼玉医療センター 田村 秀人 氏)出演名古屋市立大学医薬学総合研究院 生体総合医療学講座 血液・腫瘍内科学分野飯田 真介 氏

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シンポジウム座長インタビュー:日本赤十字社医療センター 塚田 信弘 氏【第51回日本骨髄腫学会学術集会:独占インタビュー】

日本赤十字社医療センター 塚田 信弘 氏:シンポジウム座長インタビュー(インタビュアー:獨協医科大学埼玉医療センター 田村 秀人 氏)出演日本赤十字社医療センター塚田 信弘 氏

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