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早期アルツハイマー病、OGA阻害薬ceperognastatの有用性/JAMA

 O-結合型N-アセチルグルコサミニダーゼ(OGA)阻害薬のceperognastatは、早期症候性アルツハイマー病(AD)の疾患進行抑制効果が認められなかった。米国・Eli Lilly and CompanyのAdam S. Fleisher氏らが、日本を含む5ヵ国72施設で実施した無作為化二重盲検プラセボ対照第II相試験「PROSPECT-ALZ試験」の結果を報告した。OGAを阻害することで、過リン酸化タウの蓄積や神経原線維変化の形成を抑制できることが示唆されていたことから、開発が行われていた。JAMA誌オンライン版2026年7月13日号掲載の報告。主要評価項目は軽度~中等度のタウ蓄積患者集団のiADRSスコア変化量 研究グループは、ベースラインにおけるミニメンタルステート検査(MMSE)スコアが22以上30以下、臨床認知症評価尺度(CDR)全般的スコア(CDR-GS)が0.5または1.0かつ記憶領域スコアが0.5以上で、p-tau217血漿中濃度の上昇とフロルタウシピル(18F)を用いたPET検査により脳内タウ蓄積が確認された、早期症候性アルツハイマー病患者を対象とした。被験者をceperognastat 0.75mg群、同3mg群またはプラセボ群に1対1対1の割合で無作為に割り付け、1日1回経口投与した。 主要評価項目は、フロルタウシピル(18F)PETにより軽度~中等度のタウ蓄積が認められた患者集団における、ベースラインから投与100週までの統合アルツハイマー病評価尺度(iADRS)スコアの変化量とした。成功基準は、iADRSスコアにより測定された疾患進行がプラセボと比較して25%以上減少する確率が60%以上であることと定義した。 副次評価項目は、全体集団におけるiADRSスコアのベースラインからの変化量、主要評価項目解析対象集団におけるフロルタウシピル(18F)PETの標準化取り込み値比(SUVR)、両集団におけるCDR領域スコア合計(CDR-SB)、アルツハイマー病評価尺度認知下位尺度(ADAS-Cog13)、手段的日常生活動作能力の評価尺度(ADCS-iADL)、MMSEスコアおよび体積磁気共鳴画像法(VMRI)のベースラインからの変化、および全体集団における安全性であった。主要評価項目は未達 2021年9月~2024年8月に、2,178例がスクリーニングを受け327例が無作為化された(ceperognastat 0.75mg群110例、同3mg群109例、プラセボ群108例)。全体集団の平均年齢は73.4歳、女性が201例(61.5%)であった。このうち、フロルタウシピル(18F)PETにより軽度~中等度のタウ蓄積が認められた259例(ceperognastat 0.75mg群87例、同3mg群86例、プラセボ群86例)が主要評価項目解析対象集団となった(平均年齢74.3歳、女性62.2%)。 主要評価項目解析対象集団において、100週時のiADRSスコアのベースラインからの変化量は成功基準を満たさなかった。100週時のiADRSスコアのベースラインからの事後平均変化量は、ceperognastat 0.75mg群で-8.39、同3mg群で-13.27、プラセボ群で-10.07であり、プラセボ群に対する疾患進行比はceperognastat 0.75mg群0.84(95%信用区間[CrI]:0.66~1.04)、同3mg群1.32(95%CrI:1.10~1.58)であった。これは、それぞれ進行が16%少なく、32%多いことに相当する。 副次評価項目についても有益性は認められなかった。76週時のSUVRのベースラインからの最小二乗平均変化量は、外側側頭葉においてceperognastat 3mg群でプラセボ群と比較し統計学的に有意に小さかった(p=0.04)。VMRIでは、ceperognastat群においてプラセボ群と比較し全脳体積の減少が少なかった(プラセボ群と比較し、ceperognastat 0.75mg群で43.2%、同3mg群で49.5%減少、いずれもp<0.001)。 ceperognastat 3mg群は重篤な有害事象(ceperognastat 0.75mg群12.0%、同3mg群26.4%、プラセボ群15.7%)および重度の有害事象(それぞれ6.5%、13.6%、6.5%)の発現割合が高かった。

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中高年のp-tau217値、認知機能低下を予測/JAMA

 米国・Mass General BrighamのRachel F. Buckley氏らは、6件の長期追跡研究に参加した認知機能が正常な中高年のデータを統合し、血漿中リン酸化タウ217(p-tau217)値の増加が、認知機能障害への進行リスクおよび認知機能の低下速度と関連していることを明らかにした。アルツハイマー病(AD)の血液バイオマーカー、とくに血漿p-tau217値は、認知機能が正常な人のAD初期の脳病理を正確に反映することから、認知機能障害への進行リスクとの関連について検証が求められていた。著者は、「今回の結果は、認知機能が正常な高齢者における予後予測モデルの開発、および認知機能低下の長期リスクの推定においてp-tau217が有用であることを支持するものであり、AD治療薬の臨床試験の設計に示唆を与えるものであった。認知機能が正常な個々人の予後予測や臨床的な意思決定に役立てるために、無作為抽出集団でのさらなる検証が必要である」とまとめている。JAMA誌オンライン版2026年7月14日号掲載の報告。p-tau217とAβ PETのデータを有する認知機能が正常な中高年のデータを統合し評価 研究グループは、北米、日本、オーストラリアにおける6件の観察研究および臨床試験(Alzheimer’s Disease Neuroimaging Initiative[ADNI]、Anti-Amyloid Treatment in Asymptomatic Alzheimer's[A4]研究とこれに関連する観察研究のLongitudinal Evaluation of Amyloid Risk and Neurodegeneration[LEARN]研究、Harvard Aging Brain Study[HABS]、Wisconsin Registry for Alzheimer's Prevention[WRAP]、Health and Aging Brain Study-Health Disparities[HABS-HD])の参加者で、ベースラインで血漿p-tau217値およびAβ PET画像のデータがあり、認知機能が正常な中年~高齢者のデータを統合した。 主要アウトカムは、認知機能障害(軽度認知障害、認知症の診断、または臨床認知症評価尺度[CDR]総スコアが2回連続で0.5以上)への進行までの期間であった。副次アウトカムは、前臨床期アルツハイマー病の認知機能複合評価指標(PACC、高値ほど認知機能が良好であることを示す)の経時的変化であった。解析は、2025年9月~2026年5月に実施された。ベースラインのp-tau217値が高いほど認知機能障害への進行リスクが高い 解析対象は2,684例で、年齢中央値は69.6歳(四分位範囲[IQR]:66.2~74.2)、女性が1,697例(63%)であった。なお、本研究では年齢基準は設けられておらず、最低年齢は46歳であったが、55歳未満の参加者は95例(3.5%)であった。 追跡期間の中央値は5.4年(IQR:2.4~7.2)、最長は13.5年であった。 2,684例中139例(5%)が10年以上追跡を受けており、うち36例(26%)が認知症へ進行した(進行までの平均期間は7.3年)。 主要アウトカムである認知機能障害への進行は478例に認められ、進行までの期間の中央値は4.1年(IQR:3.2~5.7)であった。 ベースラインのp-tau217値の1標準偏差(SD)増加は、認知機能障害への進行と有意に関連していた(ハザード比[HR]:1.38、95%信頼区間[CI]:1.30~1.46)。この関連は、Aβ PET-センチロイド値を調整後も認められた(HR:1.32、95%CI:1.24~1.41)。 また、p-tau217値の高値(+1.1~2.4 SD)群および超高値(>+2.5 SD)群は、低値(<-0.5 SD)群と比較して進行リスクが高く(それぞれHR:2.34[95%CI:1.60~3.44]、HR:4.66[95%CI:3.17~6.85])、進行の絶対リスクは5年間でp-tau217高値群24%(95%CI:20~28)、超高値群38%(95%CI:33~43)であった。 p-tau217値の増加は、PACCスコアの変化に基づく認知機能の低下速度とも関連していた。全例のベースラインのPACCスコアは-0.8から2.7の範囲であった。PACCスコアの5年間の年換算変化は、p-tau217超高値群で-0.07単位/年(95%CI:-0.10~-0.05)に対し、低値群では0.03単位/年(95%CI:0.02~0.04)であった。

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カフェインは頭痛を誘発するのか、軽減するのか

 カフェインは、鎮痛作用と頭痛の誘因となる可能性という二面性を有している。エジプト・Beni-Suef UniversityのMona Hussein氏らは、この二面性に焦点を当て、カフェインと頭痛との多面的な関係を検証し、さらにカフェインの鎮痛作用の根底にあるメカニズムを明らかにするため、ナラティブレビューを実施した。Brain and Behavior誌2026年6月号の報告。 本ナラティブレビューでは、カフェインの薬理作用、アデノシン受容体調節への関与、さまざまな頭痛タイプ(片頭痛、睡眠時頭痛、硬膜穿刺後頭痛[PDPH]、薬剤の使用過多による頭痛[MOH]、カフェイン離脱性頭痛など)への影響に関する実験的、臨床的、疫学的な研究のエビデンスを統合し、検討を行った。 主な内容は以下のとおり。・カフェインは、アデノシン受容体拮抗作用、プロスタグランジン産生抑制、GABA-A受容体調節、コリン作動性伝達の促進などを介して鎮痛作用を発揮する。・また、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)、アセトアミノフェン、オピオイドなどの鎮痛薬の有効性を増強することが示唆された。・片頭痛においては二面性を示し、アデノシンを介した血管拡張の抑制や薬剤吸収の改善によって発作を緩和する一方で、過剰摂取や不規則な摂取によるマグネシウム枯渇、利尿作用、睡眠障害などのメカニズムを通じて、発作を誘発する可能性がある。・片頭痛以外では、睡眠時頭痛やPDPHに対して治療的効果を示すが、長期的な使用は神経適応変化を介してMOHの一因となる可能性が示された。・カフェインの急激な中止は、カフェイン離脱性頭痛を頻繁に引き起こす可能性がある。 著者らは「カフェインは、さまざまな頭痛タイプにおいて複雑な役割を担っており、治療薬としても、また頭痛を誘発する因子としても作用する可能性が示唆された。その作用は、摂取量、摂取タイミング、個人の感受性、頭痛のタイプによって異なる。これらのメカニズムを理解することは、臨床的な推奨事項を策定し、頭痛管理におけるカフェイン利用を最適化するうえで不可欠である」と結論付けている。

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AD診断のAβPET、センチロイドの適正なカットオフ値は/JAMA

 アミロイド陽電子放出断層撮影(PET)は、アルツハイマー病(AD)の神経病理学的指標であるアミロイドβ(Aβ)の脳内沈着の測定法であり、研究および臨床の現場で広く用いられている。センチロイド(Centiloid)尺度は、AβPET画像の視覚的読影に有益とされる客観的かつ標準化された指標であり、臨床での使用に有望と考えられている。米国・カリフォルニア大学サンフランシスコ校のGanna Blazhenets氏らMeta-Centiloid研究グループは、AD診断におけるAβPETの信頼性の高い陽性判定の基準となるセンチロイドのカットオフ値を確定する目的で検討を行った。研究の成果は、JAMA誌オンライン版2026年7月13日号に掲載された。約5万例(53研究)の個別データのメタ解析 研究グループは、既存の研究の個別の参加者データを収集し、メタ解析を実施した(米国国立老化研究所[NIA]などの助成を受けた)。2024年10月の時点で、PubMedを検索してセンチロイド値が記載された研究を特定し、責任著者に個別の参加者データの提供を依頼した。追加データとして、2024年7月~2025年7月にリポジトリや学会で発表された情報を使用した。 対象は、センチロイド値、放射性トレーサー、年齢、性別を記載した研究とし、Aβ検査の結果の提供は求めなかった。各研究を、統一された統計学的パイプラインを用いて解析し、各研究の推定値を変量効果メタ解析で統合した。 解析には、15ヵ国の53件の研究から得た5種類の放射性トレーサーを用いて取得した横断的なAβPETスキャンデータ(参加者4万9,227例)を使用した。各研究の参加者数の範囲は115~1万350例(中央値373例)で、平均年齢は71歳、女性が2万6,606例(54%)であった。データが得られた4万7,596例中2万4,968例(52%)が認知機能障害を有していた。二重カットオフ法により、陰性は<11、陽性は>26 混合ガウスモデル(GMM)に基づくデータ駆動型のアプローチにより、51件の研究(参加者4万8,786例)で二峰性分布が確認され、陽性判定の単一カットオフ値として18センチロイド(95%信頼区間[CI]:16~19、I2=97%)が導出された。 データ駆動型の二重カットオフ法では、センチロイド値が11(95%CI:9~13、I2=95%)未満の場合はそのスキャンを陰性と解釈し、センチロイド値が26(95%CI:24~28、I2=95%)を超える場合は陽性と解釈することに関して、高い信頼性が示された。 また、AβPETスキャンの二値(陽性または陰性)の視覚的読影結果を用いた対応分析(36件の研究、参加者3万5,045例)において、センチロイドは視覚的陽性を高い精度で予測し(コーエンκ係数0.86、95%CI:0.83~0.89、I2=96%)、カットオフ値は27センチロイド(95%CI:24~30、I2=80%)であった。中間値(11~26)の場合は慎重な解釈が必要 著者は、「AβPETのメタ推定による陽性閾値は、データ駆動型の手法に基づく場合は18~20センチロイド、視覚的読影に基づくアプローチの場合は23~27センチロイドに集中していたが、研究間の異質性は依然として残る」、「単一のカットオフ値に内在する不確実性に対処するため、二重カットオフ法の枠組みを採用したところ、高い信頼性をもって、11センチロイド未満を陰性、26センチロイド超を陽性と分類できることが示された。中間範囲(11~26センチロイド)に該当する所見、とくに視覚的読影でも判断が不確実な場合は、解釈に慎重を期すべきである」としている。

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心筋梗塞を経験した人は認知機能の低下が速い

 心筋梗塞の既往がある人は認知機能の低下が速く、認知機能障害へ進行するリスクも高いことを示すデータが報告された。心筋梗塞を経験していない人と比較して、認知機能障害に進行するリスクが、1年当たり約5%高いという。米オハイオ州立大学のMohamed Ridha氏らの研究によるもので、詳細は「Stroke」に5月14日掲載された。 この研究は、脳卒中リスクの地理的・人種的差異を検討する疫学研究(REGARDS)のデータを用いて行われた。追跡開始時点(ベースライン)で認知機能障害が記録されていた人や、解析に必要なデータのない人などを除外し、2万923人(年齢中央値63歳〔四分位範囲57~70〕、女性57.2%)を、中央値10.1年(四分位範囲7.0~12.1)追跡して、認知機能の低下速度と認知機能障害の発生リスクを心筋梗塞の既往の有無で比較した。対象者は毎年1回、電話による6項目の課題から成る認知機能のスクリーニング(スコア範囲0~6)を受け、スコアが5点未満の場合に認知機能障害と判定された。 ベースラインにおいて、全体の10.4%に心筋梗塞の既往が認められた。その内訳は、自己申告があるが心電図異常は認められないケース(自己申告による心筋梗塞)が5.2%、自己申告と心電図異常がともに認められるケース(臨床的心筋梗塞)が1.3%、自己申告はないが心電図異常が認められるケース(無症候性心筋梗塞)が3.8%だった。 認知機能に影響を及ぼし得る因子(年齢、性別、人種、BMI、喫煙・飲酒・運動習慣、高血圧、糖尿病、腎機能、冠動脈疾患、心房細動、教育歴、収入、抑うつ傾向、居住地域など)を調整後、心筋梗塞の既往のある人はその既往のない人よりも、認知機能障害のリスクが1年当たり4.8%高いことが示された(オッズ比〔OR〕1.048〔95%信頼区間1.025~1.072〕)。心筋梗塞を経験した自覚のない無症候性心筋梗塞のみを対象とした解析でも、ほぼ同様のリスク上昇が観察された(OR1.047〔同1.010~1.085〕)。 男女別に解析した結果、男性では、全ての心筋梗塞の既往が認知機能障害リスクと有意に関連していた。一方、女性では、自己申告による心筋梗塞と無症候性心筋梗塞は認知機能障害リスクとの関連が有意だったが、臨床的心筋梗塞については非有意だった。研究者らは、「無症候性心筋梗塞は女性に多いため、この結果は重要だ」としている。 論文の筆頭著者であるRidha氏は、これらの結果の総括として、「米国民の間では認知症や認知機能低下による負担が増大していることから、心筋梗塞のような心血管疾患が脳の健康にどのような影響を与えるかを理解することが欠かせない」と述べている。また、「心筋梗塞の既往のある患者を診る臨床医は、認知機能の低下を抑制するためにできることを伝える必要がある」と付け加えている。

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刺身は絶品、だが海水浴では危険な魚【中毒診療の初期対応】第10回

<今回の症例>年齢・性別16歳・男子高校生患者情報夏休みに家族と沖縄に遊びに来ていた。水深1~2メートルほどの岩礁帯でシュノーケリングをしていたが、フィンをつけた足で岩場に立とうとしたところ、突然足底部に激しい痛みを感じた。それと同時に、丸い岩のような魚がゆったりと逃げていくのが見えた。急いで岸にあがったところ、フィンには何かが貫通した跡があり、足底部には直線上に並んだ3つの刺傷を認めた。<問題1>画像を拡大する局所症状としては、刺された直後より激しい痛みが生じ、60~90分でピークに達して、1~2日で和らぐ。また、発赤・紅斑・水疱・皮膚壊死・腫脹・コンパートメント症候群などが生じる。全身症状としては、筋力低下、呼吸筋麻痺、徐脈、血圧低下、急性循環不全、心室性不整脈が生じる。まれに死亡例も報告されている。<問題2> 1) 上條 吉人編. 臨床中毒学 第2版. 医学書院. 2023.

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レカネマブで重度アルツハイマー病への進行は何年遅らせることができるか

 主要な臨床試験において、レカネマブなどによる抗アミロイド療法は、早期アルツハイマー病患者の臨床認知症評価尺度(CDR-SB)スコアの悪化を統計的に有意に遅らせることが示されている。CDR-SBにおける治療群間の差を「疾患進行の遅延期間」に換算することは、患者や介護者に対して臨床的な意義をより効果的に伝える一助となりうる。米国・CurtのTroy Williams氏らは、レカネマブの長期的な「疾患進行の遅延期間」を推定するため、本研究を実施した。Alzheimer's & Dementia誌2026年6月21日号の報告。 Alzheimer's Disease Neuroimaging InitiativeおよびNational Alzheimer's Coordinating Centerのデータを用いて、疾患進行モデルを構築した。レカネマブの第III相試験であるClarity AD試験から得られた「疾患進行を37%遅延させる」という治療効果の指標を適用し、レカネマブの長期的な有効性を推定した。 主な結果は以下のとおり。・自然経過モデルでは、軽度認知障害(MCI)から高度アルツハイマー病に進行するまでの期間は11.5~13.7年と推定された。・CDR-SBスコア3.2の時点で治療を開始した場合、レカネマブは、患者が治療を継続したと仮定すると重度アルツハイマー病への進行を2.5~3.7年遅らせ、治療中止を考慮した場合でも2.0~3.0年遅らせると推定された。・これらの結果は、異なるデータセット間でも一貫していた。 著者らは「本予測結果は、レカネマブがアルツハイマー病への臨床的進行を大幅に遅延させ、患者がより軽度な段階で過ごす時間を維持できることを示唆している」としている。

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デュシェンヌ型筋ジストロフィー〔DMD:Duchenne muscular dystrophy〕

1 疾患概要■ 定義デュシェンヌ型筋ジストロフィー(Duchenne muscular dystrophy:DMD)は、機能的ジストロフィンの欠損により、進行性の筋力低下および筋萎縮を来すX染色体潜性遺伝疾患である。小児期に発症する筋ジストロフィーの中で最も頻度が高く、重症型に位置付けられる。■ 疫学男児出生約3,500~5,000人に1人の割合で発症する。人種による発症頻度の明らかな差はない。女性保因者も骨格筋症状や心筋症を呈することがあり、定期的な評価が推奨される。■ 病因X染色体短腕(Xp21.2)に位置し、筋細胞膜直下に存在する細胞骨格タンパク質であるジストロフィン遺伝子(DMD遺伝子)の変異(欠失、重複、微小変異など)が原因である。ジストロフィンは細胞骨格と細胞外基質を連結し、筋収縮時の機械的ストレスから細胞膜を保護する役割を担う。機能的ジストロフィンが欠損することで筋細胞膜の安定性が失われ、筋線維の壊死と再生が繰り返され、最終的に筋組織が脂肪組織や結合組織に置換される。■ 症状乳幼児期から運動発達の遅れ(定頸や歩行開始の遅延など)として認識されることが多い。幼児期には転びやすい、走れない、階段昇降が困難といった症状が顕在化する。床から立ち上がる際に、自身の膝や大腿に手をついて立ち上がる登攀性起立(ガワーズ徴候)や、腓腹筋の仮性肥大が高頻度に見られる。また、認知機能や発達特性(知的障害、注意欠如・多動症、自閉スペクトラム症など)を合併することがある。筋力低下は体幹および近位筋から始まり、次第に遠位筋へと進行する。従来は10歳前後で歩行を喪失することが多かったが、現在ではステロイド療法などにより歩行可能期間は延長している。歩行喪失後は車椅子の使用が必要となる。病状の進行に伴い、脊柱変形(側弯症)、呼吸筋力低下による呼吸機能障害、および拡張型心筋症に類似した心筋障害を合併する。嚥下機能障害や消化管の蠕動運動低下も生じうる。さらに、長期経過では骨粗鬆症や骨折、肥満なども重要な合併症となる。■ 分類ジストロフィン遺伝子変異に起因する疾患群は「ジストロフィノパチー」と総称される。DMDはジストロフィンがほぼ完全に欠損する重症型である。その一方で、遺伝子変異があるものの、異常なジストロフィンタンパク質が一部産生され、臨床症状がより軽度で歩行機能が長期に維持されるタイプを「ベッカー型筋ジストロフィー」(BMD)と分類する。■ 予後かつては20歳前後で呼吸不全や心不全により死亡することが多かった。しかし、非侵襲的陽圧換気療法(NPPV)などの呼吸管理の進歩、心筋保護薬の早期導入、ステロイド治療の普及、さらに多職種による集学的ケアの確立により、歩行可能期間および生命予後は大きく改善しており、40~50代以上まで生存する患者も増えている。2 診断 (検査、鑑別診断を含む)初めに診断のフローチャートを示す(図)。図 デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)の診断フローチャート画像を拡大する血液検査では、筋崩壊を反映してクレアチンキナーゼ(CK)値が著明に上昇する(数千~数万IU/L)。とくに発症初期や無症状の乳幼児期においても異常高値を示すため、スクリーニングとしてきわめて有用である。偶発的な肝酵素(AST、ALT)の上昇を契機に発見されることも多く、肝疾患との鑑別においてCK値の確認が必須である。確定診断には遺伝子検査が行われる。まず、MLPA法などによりDMD遺伝子の欠失・重複変異を検索する。これで変異が同定されない場合は、次世代シークエンサー(NGS)などを用いて点変異や微小欠失・挿入などの塩基配列解析を行う。遺伝子診断で確定できない特殊例では筋生検を考慮する。鑑別診断としては、ベッカー型筋ジストロフィー(BMD)、肢帯型筋ジストロフィー、脊髄性筋萎縮症(SMA)、先天性ミオパチー、多発性筋炎などが挙げられる。診断確定後は遺伝カウンセリングを行い、保因者診断や家族への遺伝学的情報提供についても検討する。3 治療現在、疾患を完全に治癒させる根治療法は確立していないが、病状の進行遅延を目的とした薬物療法と、合併症に対する対症療法・集学的ケアが行われる。薬物療法の基本はステロイド薬(プレドニゾロンなど)の投与である。これにより筋力低下の進行を遅らせ、歩行可能期間の延長、呼吸・心機能の低下抑制、側弯の進行防止などの効果が得られる。また、近年、特定の遺伝子変異を対象としたエクソンスキップ療法が実用化されている。これはアンチセンス核酸を用いてmRNAの成熟過程で特定のエクソンを読み飛ばし、機能は不完全ながらも一部機能するジストロフィンタンパク質を産生させる治療である。国内ではエクソン53スキッピング薬であるビルトラルセン(商品名:ビルテプソ点滴静注)が承認されている。対症療法として、関節可動域(ROM)維持、装具療法、立位保持、呼吸リハビリテーションを継続的に実施することが重要である。呼吸機能障害に対しては、早期からの呼吸機能評価とNPPVの導入、機械的咳介助が行われる。心筋障害に対しては、ACE阻害薬の早期からの投与が推奨されている。病状の進行や変化に応じて、アンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)、β遮断薬、ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(エプレレノンなど)の併用などが検討される。4 今後の展望(治験中、研究中の診断法や治療薬剤など)今後の有望な治療法の1つが遺伝子治療である。アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターを用いて、全身投与により骨格筋および心筋へのマイクロジストロフィン遺伝子の導入を図る治療法(デランジストロゲン モキセパルボベク、商品名:エレビジス点滴静注)は、国内でも2026年2月に承認された。本来のジストロフィン遺伝子は巨大でありAAVベクターに全長を搭載できないため、マイクロジストロフィンは筋細胞膜の安定化に不可欠な最重要機能ドメイン(領域)のみを残し、全長の約3分の1に小型化した人工遺伝子である。導入後の長期的な有効性評価に加え、安全性課題として急性肝障害、血小板減少、心筋障害、および重篤な免疫性筋炎への注意とモニタリングが今後の重要な課題となっている。また、筋肉の成長を阻害するミオスタチンを標的とした抗体薬や、炎症・線維化を抑える新たな低分子化合物などの臨床試験が進行しており、病態や進行段階に応じた治療の選択肢がさらに広がることが期待される。5 主たる診療科(紹介すべき診療科)小児神経科、脳神経内科、小児科、リハビリテーション科、整形外科、循環器内科、呼吸器内科、臨床遺伝科など※本疾患は進行に伴い全身性の合併症や認知・発達特性を伴うため、スクリーニングで疑われた段階、あるいは確定診断後は、神経筋疾患を専門とする医療機関において、リハビリテーション、循環器、呼吸器、整形外科、栄養、心理、遺伝カウンセリングなど多職種連携による集学的治療が可能な体制へ紹介することが望ましい。※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考となるサイト(公的助成情報、患者会情報、主要な研究グループ、その他参考となるサイト)診療、研究に関する情報NMDポータルサイト(神経筋疾患ポータルサイト):デュシェンヌ型筋ジストロフィー(国内の神経筋疾患に関する情報を集約した総合サイト。最新の診療ガイドラインやケア、研究動向に関するリソースが網羅的に提供されている)難病情報センター 筋ジストロフィー(指定難病113)(医療費助成の対象疾患であり、公的制度の概要や申請手続きに関する基礎情報が得られる)Remudy(神経筋疾患患者登録システム)(国立精神・神経医療研究センター[NCNP]が運営する患者レジストリ。疫学データと市販後調査を区別して収集・管理しており、適切な情報提供や臨床試験の強力な基盤として機能している)MDクリニカルステーション(筋ジストロフィーの臨床研究班による、医療従事者および患者・家族向けの診療ガイドラインやケアマニュアル等の情報提供サイト)患者会情報一般社団法人 日本筋ジストロフィー協会(JMDA)(患者や家族への支援、情報提供、交流活動を行う代表的な患者会組織) 1) 日本神経学会ほか監修. デュシェンヌ型筋ジストロフィー診療ガイドライン2014. 南江堂:2014. 2) Komaki H, et al. Ann Clin Transl Neurol. 2020;7:2393-2408. 3) Mendell JR, et al. N Engl J Med. 2023;388:2368-2371. 4) Nakamura H, et al. Orphanet J Rare Dis. 2013;8:60. 5) 難病情報センター. 筋ジストロフィー(指定難病113). 公開履歴初回2026年7月24日

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高用量DHAサプリ、認知機能低下の抑制効果示せず

 多くの米国人が、加齢に伴う認知機能の低下を防ぐことを期待して魚油のサプリメントを摂取している。魚油に含まれているオメガ3系不飽和脂肪酸のDHA(ドコサヘキサエン酸)やEPA(エイコサペンタエン酸)は、中性脂肪の低下など健康へのさまざまな効果が報告されている。しかし、「EBioMedicine」に6月18日付で発表された最新の研究で、こうしたサプリメントには期待されるような認知機能向上効果はない可能性が示唆された。 論文の筆頭著者である米南カリフォルニア大学ケック医学部神経学分野のHussein Naji Yassine氏は、「誰もがアルツハイマー病予防の“特効薬”を望んでいる。しかし、今回の研究では、魚油のサプリメントに脳の健康を守る効果は確認されなかった。オメガ3脂肪酸は、認知機能に必要な脳細胞同士の結合を形成する上で重要な役割を果たすものの、今回の結果は、魚油のサプリメントがアルツハイマー病予防策として有効であることを支持するものではなかった」と説明している。 この臨床試験では、DHAの摂取量が1日200mg未満で、認知症ではないが認知症リスク因子を1つ以上有する55~80歳の参加者365人(平均年齢66.4歳、女性58%)を対象に、高用量のDHA摂取(2g/日)により中枢神経系にDHAが十分に取り込まれるかを検証した。中枢神経系へのDHAの取り込みを反映する指標は脳脊髄液中のDHA/アラキドン酸(AA)比とし、これを主要評価項目とした。参加者は、高用量DHAを毎日摂取する群とプラセボを摂取する群にランダムに割り付けられた。 その結果、6カ月後の脳脊髄液中のDHA/AA比は、DHA群で0.17上昇したのに対し、プラセボ群では0.02低下していた。群間差は0.19であり、統計学的に有意であった(95%信頼区間0.16~0.21、P<0.0001)。しかし、24カ月時点の脳容積や認知機能評価については、両群間で有意な差は認められなかった。 これらの結果から研究グループは、「DHAサプリメント単独では、最も一般的な認知症であるアルツハイマー病を予防できる可能性は低い」と結論付けている。Yassine氏は、「アルツハイマー病のリスク低減に最も有効なのは、生涯を通じて健康的な生活を維持することだ。具体的には、定期的な運動、十分な睡眠、そしてバランスの取れた食事が重要だ」と述べている。

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第70回 あなたの体は何歳ですか?「老化時計」が明かす、臓器ごとに進む老いの正体

この100年で人間の平均寿命はおよそ2倍になりました。ところが、健康に過ごせる期間(健康寿命)は同じペースでは延びておらず、心臓病やがん、認知症、身体の障害などを抱えて暮らす人はむしろ増えています。この「長生きするけれど健康ではない」というギャップを埋める鍵として注目されているのが、老化の速さそのものを数値で測る「生物学的時計」です。今回はそんな概念を取り扱った論文をもとに最新の知見をシェアしていきます1)。老化は「一定のスピード」では進まないかつて老化は、誰の体でも年齢とともに一定の速さで進むものと考えられてきました。しかし近年の大規模な研究で、その常識は覆されつつあります。血液中のタンパク質やDNAの変化を数万人規模で追跡すると、老化は一定ではなく、人生のなかで何度か「波」となって加速することがわかってきたのです2)。論文の中では、成人期におよそ3つの大きな転換期があると指摘されています。目安は「30~40歳ごろ」「60~70歳ごろ」「80歳前後」。この時期に体内の分子レベルの変化が一気に進むことが、複数の独立した研究で繰り返し確認されています。つまり老化は坂道をなだらかに下るというより、階段を数段まとめて下りるようなイメージに近いのです。この転換期は、生活を見直したり対策を打ったりする「介入の窓」にもなりうると期待されています。脳と免疫の「若さ」が寿命を左右するもう1つの重要な発見が、同じ人の体の中でも臓器ごとに老化のスピードが違うということです。心臓は実年齢より若いのに、肝臓は老けている、といったことが実際に起こります。英国の大規模データを用いた研究では、ある臓器が実年齢より「老けている」人ほど、その臓器に関連する病気や死亡のリスクが高いことが示されました。とくに3つ以上の臓器で老化が進んでいる人では、その傾向がはっきりと強まります。また、脳の生物学的な老化が進んでいる人では、アルツハイマー病を発症するリスクが約3.1倍に上ったと報告されています。逆に、脳や免疫が「若い」状態を保っている人は長生きしやすい傾向がありました3)。老化時計を活用することで、症状が出るより何年も前に、リスクの高い人を見つけ出せる可能性もあるわけです。老化時計は遅らせられる?では、この時計の進み方は変えられるのでしょうか。論文によれば、運動、適度なカロリー制限、オメガ3脂肪酸やビタミンDの摂取などが、DNAの老化の指標をわずかに遅らせる可能性が報告されています4)。また、少し有名な話になりましたが、帯状疱疹ワクチンの接種者で認知症が少なく、老化が緩やかだったという研究も複数あります5)。糖尿病や肥満の治療に使われるGLP-1受容体作動薬にも、老化を遅らせる働きの可能性が指摘されています。ただし、過度な期待は禁物です。これらの効果は示されているとしてもまだ「わずか」で、長期的に寿命や健康寿命を本当に延ばすのかは未確認です。また、市販されている老化測定検査は測定方法がバラバラで標準化されておらず、同じ人が受けても結果が大きく食い違うことがあります。現時点では、個人が一度の検査結果に一喜一憂する段階にはありません。大切なのはおそらく、特別な検査を受けることよりも、運動・睡眠・食事といった昔から知られた生活習慣が、体の「老化時計」の進み方に確かに影響するという事実です。ただし、ここでご紹介した「老化時計」は、病気になってから治す「後追いの医療」から、リスクを早期に見つけて防ぐ「先手の医療」へと転換する、次の大きな一歩になろうとしているのもまた事実だと思います。1)Wyss-Coray T, et al. Biological aging clocks in health and disease. Nat Med. 2026;32:2383-2394.2)Oh HS, et al. Organ aging signatures in the plasma proteome track health and disease. Nature. 2023;624:164-172.3)Balachandran A, et al. Pace of aging associations of healthspan and lifespan in older adults in the US and UK. Nat Aging. 2025;5:1132-1142.4)Belsky DW, et al. DunedinPACE, a DNA methylation biomarker of the pace of aging. eLife. 2021;11:e73420.5)Kim JK, et al. Association between shingles vaccination and slower biological aging: evidence from a U.S. population-based cohort study. J Gerontol A Biol Sci Med Sci. 2026;81:glag008.

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アルツハイマー病検出に有望な血液バイオマーカー、認知機能が正常なアジア人での精度は?

 血液バイオマーカーは、アルツハイマー病を検出する有望なツールと考えられる。しかし、認知機能が正常なアジア人集団において、血液バイオマーカーの性能は依然として不明であった。認知機能が正常なアジア人を対象に、血液バイオマーカーの識別性能を評価するため、システマティックレビューおよびメタ解析が実施された。Ageing Research Reviews誌2026年7月号の報告。 認知機能が正常なアジア人集団を対象に、血漿中のp-tau217、Aβ42/40および複合バイオマーカーがアミロイドβ(Aβ)PET陽性を識別する能力を評価するため、システマティックレビューおよび変量効果モデルを用いたメタ解析を実施した。CENTRAL、PubMed、CINAHLより、システマティックに文献検索を行った。主要解析では、AβPET陽性の識別能力を評価するため、p-tau217およびAβ42/40それぞれの曲線下面積(AUC)を統合した。副次的解析では、AβPET陽性群と陰性群におけるp-tau217およびAβ42/40のバイオマーカー濃度の標準化平均差(SMD)を検討した。さらに、p-tau217/Aβ42やp-tau217とAβ42/40の組み合わせモデルを含む複合バイオマーカーのAUCを統合した。 主な結果は以下のとおり。・解析対象は、解析可能な11のデータセットおよび認知機能が正常な参加者2,566人を含む9つの研究。・統合AUCは、血漿p-tau217で0.88、血漿Aβ42/40で0.86であった。・副次的解析では、AβPET陽性群と陰性群の間の統合SMDは、p-tau217で2.28、Aβ42/40で-1.17であった。・複合バイオマーカーはより高い識別能を示した。統合AUCは、p-tau217/Aβ42で0.920、p-tau217とAβ42/40の組み合わせモデルで0.924であった。 著者らは「認知機能が正常なアジア人集団において、血漿中のp-tau217およびAβ42/40は、AβPET陽性に対する良好な識別能力を示した。今後は、さらなる標準化、外部検証、プロスペクティブ評価が求められる」としている。

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なぜ一生懸命な介護者ほど嫌われるのか?医師が認知症介護者の悩みに提案できること【外来で役立つ!認知症Topics】第43回

研修医時代に教わった「2つの言葉」今回は、患者・家族との会話、つまり「認知症医療面接」について述べたい。研修医の頃に教わったことで、今でも強く記憶に残ることが2つある。1つは、患者やその家族から話を聞くときに、一区切りついたら「それは本当に大変ですね」と言うように教わったことだ。これは話し手に安心感と、「受け入れてもらっている」という気持ちをもたらす言葉だ。もう1つは、少しシニカルながら、「その話は大切なので後で詳しくお聞きしましょう」だ。話し手が冗長になったり、話が飛んでまとまらなくなったりすることも珍しくはない。そんな時に使う。本音で「その話もういいです」と言うのではあまりにも露骨だから、こう言うのである。筆者の場合、後になって再度聞くことはまれである。また、患者さんで私のその発言を思い出し、後からまた言い出した人もいない。介護者が直面する「2つの切実な悩み」介護者から訴えられて、返事に窮するものがある。たとえば、「自分の介護における苦しさや大変さを親族や知友にわかってもらえない」。また「いつも腹立ちながら、一生懸命に介護しているのに、介護されるほうは自分のことをとても嫌う」。これらは非常に多く遭遇する悩みである。周囲に大変さをわかってもらえないとくに配偶者の兄弟・姉妹には、なかなか大変さがわかってもらえない。多くは「たまに来る」存在なので、被介護者にとっては新鮮で楽しいひと時になる。短時間ならニコニコと楽しそうに過ごされるから、彼らには「どこがおかしいの?」ということになってしまうのだ。この対策としてよく言われるのは、彼らの自宅に最低1泊してきてもらうことである。そうすれば実態の多くがわかるはずだということだ。容易に引き受けてくれる人は少ないが、やってみると大抵はわかってもらえる。以前、身近に認知症の人がいて、その生活実態を知っている人は、日本人の5人か6人に1人だという新聞記事を読んだことがある。「そんなものか!」と驚いた。高齢化社会といってもそんなに少なければ、自分の周囲で愚痴を言っても介護の苦労をわかってもらえることはまれだ。認知症者を身近に経験してないと、本当にはわかってもらえない。一生懸命に介護しているのに、本人に嫌われる精一杯張って介護している自分のことを嫌う――これもまた、介護者には大きなストレスだ。こうした訴えに、筆者はまず「当事者は、一番よく介護する者を嫌う。これは一つの鉄則だ」と述べる。主たる介護者は、24時間365日頑張っている。そんな日常だから、当人のへまに遭遇することも多ければ、腹立ちも多い。逆ギレも日常茶飯事かもしれない。するとつい本音、つまり「できていない、迷惑をかけられている」といった意味の発言が出かねない。たとえ認知症になっても、人は穏やかな心、柔和な気持ちで過ごしたいと思っている。ところが、少し不快なことが起こったり、プライドを傷つけられと感じたりしたら、たちまちカッと燃え上がる。ある仏教者は、人の心は本来「瞬間湯沸かし器」だと言う。認知症介護の大原則として、「だめ」という注意、禁止、否定が当事者の怒りを生むと言われる。また「逆らってはいけない」の真意は、介護の基本は怒らせないことにあるということだ。つまり認知症になっても、人には「俺の考えや判断が正しい」という自負・プライドがある。それだけに、上に述べたような介護者の本音は、「馬鹿にされた、恥をかかされた」と思わせる強いパンチになる。こうした日常が積み重なると、当事者は主たる介護者を最も嫌うようになる。これを介護施設の職員と比べるとわかりやすい。彼らは、決まった時間だけ当事者に対応すればよい。理不尽なことや暴言を言われても、「まあまあ時間まで」と思って我慢もできる。あるいは心にもないお世辞やお追従も言える。その結果、当事者は自負やプライドを満たしてもらえるわけだ。「小さな声」の効用さて、こうしたことを考えた時、医療・介護者側にどんなことができるだろうか? まず1つに「小さな声の効用」を教えることだ。人間は怒ってくると声が大きくなる。また、大きくなると怒りがより募る。それとは違うが、難聴の人には嫌でも大声で話さなくてはいけない。すると当事者は、「なぜ怒っているんだ」と反応することが常だ。大声と怒りの関係には、感情の座とされる扁桃核が介在している由。そこで逆に、できるだけ小さな声で、耳元でささやくようにしゃべるのも効果的だ。当人が穏やかになるのに伴い、介護する側の気持ちも和らいでくる。「その日暮らしの精神」次に、介護者に限ったことではないが、人の気持ちは揺れる。とくに介護者は、使命感の一方で自己嫌悪・憎悪を繰り返しがちだから心が安定しない。「認知症の人と家族の会」では昔から「その日暮らしの精神」という言葉がある。つまり「先のことを取り越し苦労しない。今この時を何とかやり過ごせたら先はなんとかなる」という意味だろう。この言葉を心に唱えるだけでも、介護者の助けになる。本稿を「男子三日会わざれば刮目して見よ」で締めたい。男子に限らないが、日々努力する人は三日も経てば目覚ましい成長を遂げることがある。それを正しく観察し、当事者と介護者を褒めることが大切だ。当事者なら、日々のウォーキングを処方されて本当に欠かさず実行する者、潔く免許返納して清々している者もいる。介護者なら、泣きべそと愚痴が続く人、声高に同席する当事者を詰るだけの人としか印象に残らないケースもある。ところがある日、「この人、悟ったな! 変身したよ!」と痛感するようなことを経験する。このような場合、褒め言葉は無意識に出るだろう。現実には、もっとありふれた変化や成長をキャッチし、それに言及することがより大切かもしれない。そうした積み重ねが医師と患者・介護者の関係を自然と円滑にしていくと思う。

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ナッツで認知症は予防可能か?

 ナッツは、さまざまな健康上のベネフィットと関連付けられている。しかし、認知症との関連をめぐるエビデンスは、いまだ結論が出ていない。中国・浙江大学のMengjia Zhao氏らは、3つのプロスペクティブコホート研究を対象に、ナッツ摂取と認知症の長期リスクとの関連を検討することを目的に、本研究を実施した。Nutrients誌2026年5月28日号の報告。 「Health and Retirement Study(HRS:2013~20年)」、「Framingham Offspring Study(FOS:1998~2018年)」、「Whitehall II Study(WHII:2002~16年)」のデータを用い、ベースライン時点で認知症でなかった45歳以上の成人を対象に解析を実施した。木の実およびピーナッツを含むナッツの摂取量の評価には、妥当性が確認された食物摂取頻度調査票(FFQ)を用いた。HRSではベースライン時に1回、FOSおよびWHIIでは複数回の調査を通じ、繰り返し評価が行われた。すべての原因による認知症の発症は、HRSでは妥当性が確認されたアルゴリズム、FOSでは専門家パネルによる判定、WHIIでは医療記録との照合によって特定された。ナッツ摂取と認知症発症との関連について、コホートごとにCox比例ハザードモデルを用いて推定を行ったうえで、それらの結果をプールした。 主な結果は以下のとおり。・全フォローアップ期間19万914人年において、3つのコホートの参加者合計1万7,349人のうち、992人で認知症発症が確認された。・多変量調整後の解析では、ナッツ摂取量が多いほど、認知症リスクが低下することが認められた。・摂取量0g/日を基準とした場合の統合ハザード比(HR)は、0.1~5.0g/日群で0.80(95%信頼区間[CI]:0.69~0.94、I2=0.0%)、5.0g/日超群で0.76(95%CI:0.58~0.99、I2=40.4%)であり、有意な傾向が認められた(p-trend=0.015)。 著者らは「中高年では、ナッツの摂取量が多いほど認知症発症リスクが低いことが示唆された。また、統合解析において用量反応関係も認められた。これらの予備的な結果は、ナッツを脳の健康に良い食事パターンの一部として取り入れることを支持するものである」と結論付けている。

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トゥレット症候群、当事者の深刻な実態が明らかに

 トゥレット症候群(TS)は、ときに冗談の対象として扱われることもあるが、当事者にとって極めて過酷な状態であることが、米トゥレット協会(TAA)が6月11日に公表した調査(2026 Impact Survey Report)で示唆された。この調査によると、TSまたはその他のチック症を有するティーンおよび成人の4人に1人が、生涯のどこかの時点で自殺を試みたことがあることが明らかになった。また、チック症を理由に差別を受けたと報告した割合も約7割に上った。 TAA会長兼CEOであるIan Lang氏はニュースリリースの中で、「2026年の調査結果は、TSおよびその他のチック症を抱える人が必要とする支援を確実に受けられるようにするために、いかに多くの課題が依然として残されているかを示す行動喚起である」と述べている。 チック症とは、本人の意思とは無関係に、まばたきや肩をすくめるなどの動作が突発的に繰り返される運動チックと、咳払いや発声などを伴う音声チックを特徴とする神経発達症である。TSは、複数の運動チックと1種類以上の音声チックの両方が1年以上にわたり続く場合に診断される。 今回の研究では、2026年のImpact Surveyにおいてオンライン調査を完了した754人(成人455人、小児183人、ティーン116人)の回答が分析された。その結果、TSまたはその他のチック症を有する成人の71%、および小児の69%近くが、チック症を理由に差別を経験したと回答していた。精神面への影響も深刻で、当事者の約4人に1人が生涯のいずれかの時点で自殺を試みた経験があると回答しており、「自分が死ねば、自分も家族も楽になる」と感じた経験を持つ人も、成人で18%、ティーンで20%に上った。 診断までの時間については、成人の84%と小児の76%は「症状の出現から診断まで1年以上を要した」と回答した。また、チックによる身体的負担も大きく、成人の82%、小児の69%が、チックに由来する痛みを経験していることが示された。さらに、家庭や経済面への負担も大きく、保護者の18%が子どものケアのために離職や転職、勤務時間の削減を余儀なくされていることや、28%がカウンセリングや通院、学習支援などの費用負担に困難を抱えていることを回答した。治療面では、ティーンの17%が症状管理のために5種類以上の薬を試した経験があり、成人の41%、ティーンの45%が、現在の治療薬ではチックが十分にコントロールされていないと回答した。 2026年の初めに英国のアカデミー賞(BAFTA賞)授賞式で起きた出来事は、TSがいかに困難で深刻なものであるかを浮き彫りにした。TSの当事者であり、英国のインディペンデント映画『I Swear』の題材にもなったJohn Davidson氏が、壇上でプレゼンターを務めていた黒人俳優のMichael B. Jordan氏とDelroy Lindo氏に対してNワード(人種差別的な侮蔑語)を発したのだ。観客には事前にDavidson氏の症状について説明があったとされ、事後に司会者のAlan Cumming氏は理解を求め、発言によって不快感を与えた可能性について謝罪したとCNNは報じている。Davidson氏自身は、この出来事の後、式典を離れた。同氏は、「自分のチックが周囲に苦痛や困惑を与えていることを認識していたため、式の途中で会場を後にすることにした」と話した。 Lang氏は、「スティグマ(偏見)、差別、経済的困難、そして必要なサービスへの限定的なアクセスが、いまだに非常に多くのTS患者にとっての現実である。人々が必要なケアを受け、当然受けるべき支援を得て、スティグマや差別から解放され、自分が望む人生を生きられるような仕組みを構築する時期はとうに過ぎている」と強調している。

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デュシェンヌ型筋ジストロフィーの遺伝子治療薬への期待/中外

 中外製薬は、デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)に対する国内初の再生医療等製品として、デランジストロゲン モキセパルボベク(商品名:エレビジス点滴静注)を2026年2月20日に発売した。この発売によせて、本剤の概要や治療における臨床的位置付けなどについて、発売後の適正使用推進体制の説明と合わせてメディアセミナーを開催した。 DMDは、筋肉に関わるタンパク質のジストロフィン産生に影響を及ぼすDMD遺伝子の突然変異が原因で発症する希少遺伝性疾患。幼少期に発症し、徐々に筋力が低下していくことで日常生活に大きな影響を及ぼすため、早期からの適切な治療介入が求められる。未治療だと呼吸不全などを起こし、生命予後に影響する。 デランジストロゲン モキセパルボベクは、短縮型ジストロフィンの発現を介してDMDの原因に働きかけるようデザインされた薬剤である。2025年5月13日に条件及び期限付承認を取得し、2026年2月20日に薬価収載・販売された。筋機能を改善し、筋力の低下を防ぐ治療薬 はじめに同社からデランジストロゲン モキセパルボベクの製品説明が行われた。本薬剤の構造は、機能的な短縮型ジストロフィンであるデランジストロゲン モキセパルボベク マイクロジストロフィン(以下「マイクロジストロフィン」)をコードする遺伝子を含む非複製型の遺伝子組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ベクターであり、骨格筋および心筋での発現を最適化するα-ミオシン重鎖クレアチンキナーゼ7(MHCK7)プロモーター/エンハンサーにより制御する。 本薬剤の作用機序としては、搭載されたマイクロジストロフィン遺伝子が骨格筋および心筋で発現すると考えられる。また、マイクロジストロフィンが筋細胞で発現することで、筋機能を改善し、筋力の低下を防ぐと考えられている。本薬剤はすでに薬価収載・販売されているものの、条件及び期限付承認であり、第III相試験が現在行われている。生命予後が40歳に届くのが難しい希少疾病 「デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)の疾患と治療、遺伝子治療の診療体制、適正使用と臨床的位置づけについて」をテーマに小牧 宏文氏(国立精神・神経医療研究センター トランスレーショナル・メディカルセンター センター長)が疾患概要について、講演を行った。 DMDは、ジストロフィンの欠損などにより筋肉が壊れやすく、かつ不可逆的な変性により、筋肉の再生ができない疾患。2~4歳ごろに症状が現れ始め、自然歴では5歳ごろをピークに運動能力が低下、ガワーズ徴候などがみられ、10歳前後に歩行能喪失となり車椅子が必要になる。未治療では呼吸器筋や心筋に影響があり、生命予後は10代とされる。現在でも、患者の生命予後はいまだ30歳前後を超える程度であり、根本治療が求められている。ただ、近年では、専門の医療施設で30代後半まで生命予後が延長しており、最近は大学生も多くなったほか、就労している患者もいる。 治療は、プロアクティブかつ包括的な多職種連携の診療が集学的治療(ベース治療)として確立され、患者の社会参加や就労・就学の実現に向けて治療が行われている。具体的には、呼吸管理として非侵襲的陽圧換気療法(NPPV)の適切な導入と定期的モニタリング、呼吸リハビリテーションがなされ、身体機能管理として関節可動域訓練、姿勢管理、拘縮などの予防が行われている。薬物療法としてはステロイド投与による歩行可能期間の延長、全身管理としてACE阻害薬などを用いた心機能ケア、栄養指導、嚥下機能評価などが行われている。 とくに薬物治療について、2026年6月現在でステロイド、ビルトラルセン(商品名:ビルテプソ点滴静注)、そして、デランジストロゲン モキセパルボベクを用いることができる。デランジストロゲン モキセパルボベクのような遺伝子治療が求められる医学的背景として、病状管理の継続を前提としつつ、「根本原因(ジストロフィン欠損)へと直接アプローチする次世代治療の導入が臨床現場における長年の課題であった」と小牧氏は説明した。投与前、投与後でも適切なフォローが必要なデランジストロゲン モキセパルボベク デランジストロゲン モキセパルボベクによる治療の流れとしては、投与前のスクリーニングにおいて、抗AAVrh74抗体が陰性であることの確認に加え、禁忌となる特定の遺伝子変異(エクソン8および/または9の欠失)の除外が行われる。さらに、免疫抑制および有害事象予防を目的に、本薬剤の投与前よりプレドニゾロンの投与が開始される。投与後は免疫介在性筋炎などのモニタリングのために、投与後3ヵ月は継続的な血液検査が行われる。投与後は免疫抑制作用があるので基本は自宅療養となる。 本薬剤の承認のために国際共同第III相臨床試験EMBARK試験パート1が行われた。遺伝子変異が確認された4~7歳の歩行可能な男児125例を対象に、安全性と有効性を評価した国際共同第III相ランダム化二重盲検クロスオーバープラセボ対照試験。主要評価項目はノース・スター歩行能力評価(NSAA)総スコアのベースラインから52週までの変化量、主な運動機能に関連する副次評価項目は、床からの立ち上がり時間(TTR)、10m歩行/走行(10MWR)を評価した。 その結果、高いほど良好を示すNSAAによる総スコアについて、52週時点でデランジストロゲン モキセパルボベク群は2.57ポイントの向上だったのに対し、プラセボ群は1.92ポイントの向上だった(群間差:0.65、p=0.24)。また、副次評価項目であるTTR時間のベースラインから52週までの変化量では、デランジストロゲン モキセパルボベク群が-0.27秒、プラセボ群が0.37秒、群間差は-0.64秒だった(p=0.0025[名目上のp値])。 本剤では厳格な適格性確認とモニタリングが求められる継続的な管理が必要とされる。とくに投与後約90日間は肝酵素、心筋逸脱酵素、血小板などを週1回程度測定し、異常検知時はBRIDGE-NMD(神経筋疾患遺伝子治療安全性最適化ネットワーク)と即時連携がされる。その理由として、米国で非歩行患者への投与で急性肝不全が発生し、その後死亡した症例の報告があったためとされる。 わが国では、安全対策の強化として全国の患者、全国の医師と日本小児神経学会などに所属する医師をつなぎ、専門的な助言や情報提供・相談、患者への適正な治療の提供ができる体制を「Eコンサルテーション」として構築している。 今後は、レジストリを活用した長期的なエビデンス構築とともに、免疫介在性反応、海外の重篤な有害事象を集め、施設要件と適応の厳格化、BRIDGE-NMDによる全例事前評価、投与後の集中モニタリングなどを通じて、安全性リスクに対して構造的に対応する。 最後に小牧氏は、「固有のリスクを客観的に評価し、個人の経験則ではなく、国レベルの構造的なインフラによって安全性を管理する体制が稼働している。非常に今回良かった点としては、産官学連携がうまくいっていることであり、今後もしっかり安全性を重視しながら、この体制を維持していきたい」と抱負を述べ、講演を終えた。

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第69回 その関節サプリ、大丈夫ですか? グルコサミンとアルツハイマーの気になる関係

膝や腰の痛みを和らげたいと、グルコサミンのサプリメントを毎日飲んでいる方は少なくないと思います。日本では、ドラッグストアなどでも気軽に買える、いわば国民的サプリの1つです。ところが2026年、そのグルコサミンがアルツハイマー病を「悪化させる」可能性を指摘した研究が発表され、大きな話題を呼びました1)。今回は、この少し不安をかき立てるニュースを読み解いてみたいと思います。脳への「糖の付け過ぎ」という新しい視点この研究がまず注目したのは、アルツハイマー病の脳で起きている、ある変化でした。私たちの体の中では、タンパク質に糖の鎖を付ける「糖鎖修飾」という作業が絶えず行われています。ところがアルツハイマー病の脳では、この糖の付け過ぎ(研究者が「ハイパーグリコシレーション[過剰糖鎖化]」と呼ぶ状態)が起きていたのです。マウスの実験では、糖鎖を作る働きを遺伝子操作で抑えると記憶が改善し、逆にグルコサミンを口から与えると、記憶の成績が悪化しました。グルコサミンはまさに、この糖鎖の材料になる物質です。つまり、材料を余計に足すと病気の脳ではかえって悪さをする、という筋書きが見えてきたわけです。実際の患者データでも同じ傾向が動物実験だけなら「マウスの話でしょう」で片付けることができるでしょう。しかしこの研究チームは、実際の患者さんの電子カルテも調べました。米フロリダ大学のデータベースから、認知症(アルツハイマー型を含む)の患者約2万4千人と、その前段階にあたる軽度認知障害(MCI)の患者約4万2千人を、およそ5年間追跡したのです。すると、グルコサミンを使っていた認知症の患者では、死亡リスクが約25%高いという関連が見られました。さらに、軽度認知障害から認知症へと進んでしまう人の割合も、グルコサミン使用者で約25%多かったのです。対象となった患者のうち、およそ8%がグルコサミンを使っていたと推計されており、決して珍しい習慣ではありません。アメリカだけで100万人を超える認知症の方が、知らずのうちにこのサプリを続けている可能性がある。研究チームはそう警鐘を鳴らしています。ただし、うのみにはできないここで冷静になりたいのが、この研究の「限界」です。患者さんのデータはあくまで過去のカルテをさかのぼって眺めた観察研究であり、「グルコサミンが原因で悪化した」と証明したものではありません。グルコサミンを飲む人は関節に不安を抱えているなど、そもそも背景が異なる可能性があり、その違いが結果に影響したのかもしれません。実際、興味深いことに、認知症のない人や健康なマウスでは、グルコサミンによる悪影響は見られませんでした1)。影響が出るのは、すでに病気が進んだ脳に限られる可能性があるのです。研究者たちも、結論を出すにはきちんと計画された臨床試験(ランダム化比較試験)が必要だと明言しています。では、私たちはどうすればよいのか過度に怖がる必要はありません。少なくとも現時点のエビデンスは、「健康な人が関節のためにグルコサミンを飲むと認知症になる」ことを示したものではありません。一方、すでにアルツハイマー病や認知症と診断されている方、あるいはご家族がグルコサミンを常用している場合には、一度、主治医に相談してみる価値は十分にあるかもしれません。サプリメントは医薬品ほど厳しく品質が管理されていないという事情もあります。「体に良かれ」と続けている習慣を、ときどき立ち止まって見直してみること。それこそが、こうした新しい研究が教えてくれる、一番実用的な学びなのかもしれません。1)Hawkinson TR, et al. Hyperglycosylation is a metabolic driver of Alzheimer's disease. Nat Metab. 2026;8:1410-1425.

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感染症は認知症リスク上昇と関連しているのか

 感染症が認知症リスクに及ぼす影響については、生物学的加齢の加速による影響との比較において、どの程度なのかは明らかではない。中国・北京大学のRuoxi Ding氏らは、感染症と認知症の関連性を評価し、生物学的加齢の加速が感染症と認知症リスクの関係を修飾するかどうかを検討した。Brain, Behavior, and Immunity誌2026年10月号の報告。 2006~10年の英国バイオバンク・コホートデータより抽出された37~73歳の参加者33万9,463例を対象とし、プロスペクティブ研究を実施した。入院治療を受けた感染症と認知症の既往は、医療記録統計およびスコットランド疾病記録との連結によって特定した。入院治療を受けた感染症と認知症発症リスクとの関連性を評価するために、Cox回帰モデルを用いた。表現型年齢は、米国国民健康栄養調査(NHANES)IIIのデータを用いて開発された検証済みの死亡リスクアルゴリズムから算出した。感染症と認知症(すべての原因による認知症、若年性認知症、血管性認知症、アルツハイマー病)との関連性を評価するため、Cox比例ハザードモデルを用いた。 主な結果は以下のとおり。・13.51年のフォローアップ期間中に、5,638例の認知症の新規発症が確認された。・入院治療を受けた感染症は、認知症リスクの増加と有意な関連が認められた(ハザード比[HR]:2.39、95%信頼区間[CI]:2.25~2.53)。・病原体の種類、臨床的重症度分類、解剖学的部位にかかわらず、一貫したパターンが認められ、ほとんどの感染症が若年性認知症リスクの増加と有意に関連していた。・この影響は、APOEε4保有者と非保有者の両方において、また認知症のサブタイプや社会人口統計学的グループ間でも一貫して認められた。・表現型年齢と感染症の相互作用は、認知症リスクと有意な関連を示した(HR:1.20、95% CI:1.06~1.37)。このことは、表現型年齢加速状態によって判断される生物学的に高齢な人ほど、感染症関連入院と認知症発症との関連が強いことを示している。 著者らは「感染症は、アルツハイマー病、血管性認知症、若年性認知症を含むすべての認知症リスクの増加と関連しており、表現型年齢加速は感染症と認知症の関連性をさらに強めている。APOEε4保有状態は、感染症と認知症の年齢層別関係および表現型年齢加速の調整効果の両方を修飾すると考えられる。今回の研究結果は、認知症予防のための潜在的な戦略として、感染予防と抗老化介入の重要性を強調するとともに、戦略設計の際には、APOEε4遺伝子保有状況と年齢層別化を考慮する必要があることを示唆している」としている。

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再発性多発性硬化症、リツキシマブvs. ocrelizumab/NEJM

 疾患活動性が認められる再発性多発性硬化症(MS)患者において、疾患活動性の抑制(治療開始後6~24ヵ月のMRIにおける評価)に関して、リツキシマブのocrelizumabに対する非劣性が示され、重篤な有害事象の発現頻度は同程度であった。ノルウェー・Haukeland University HospitalのOivind Torkildsen氏らOVERLORD-MS Investigatorsが、第III相無作為化二重盲検多施設共同非劣性試験「OVERLORD-MS試験」の結果を報告した。再発性MSに抗CD20モノクローナル抗体は有効だが、これまで直接比較のエビデンスは観察研究のデータに限られていた。NEJM誌2026年7月2日号掲載の報告。6~24ヵ月のMRIで新規病変/病変拡大が非検出の患者の割合で評価 OVERLORD-MS試験は、年齢18~60歳で、直近12ヵ月に再発性MSの再発を診断され、炎症性の疾患活動性の症状(直近12ヵ月に1回以上の臨床的再発、またはMRI上で認められた1つ以上の新規病変/病変拡大で定義)を示し、EDSSスコア0~4.0(スコア範囲:0~10、高スコアほど障害の程度が大きいことを示す)であった患者を対象とした。 研究グループは、被験者をリツキシマブまたはocrelizumabの投与を受ける群に3対2の割合で無作為に割り付け、6ヵ月ごとに24ヵ月間治療した。 主要エンドポイントは、治療開始後6~24ヵ月のT2強調MRIにおける新規病変または病変拡大が認められなかったこととした。非劣性の定義は、リスク群間差(リツキシマブ-ocrelizumab)の95%信頼区間(CI)下限が-10%ポイント以上とした。副次エンドポイントには、有効性および安全性などが含まれた。リツキシマブ群92.2%、ocrelizumab群94.8%で非劣性を確認 2020年11月~2022年11月に218例が無作為化され、216例が治療を受けた(リツキシマブ群132例、ocrelizumab群84例)。 治療開始後6~24ヵ月にT2強調MRIにおける新規病変/病変拡大が認められなかった患者の推定割合は、リツキシマブ群92.2%、ocrelizumab群94.8%であった。リスク群間差は-2.6%ポイント(95%CI:-9.4~4.3)であり、事前に規定した非劣性基準を満たした。 再発率、障害アウトカム、および認知機能プロファイルは、両群間で同様であった。 感染症は、リツキシマブ群(82%)でocrelizumab群(69%)より多く認められたが、重篤な有害事象の発現頻度は同程度であった(それぞれ8%と7%)。

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レトロなビデオゲームが脳卒中後の上肢の機能を改善か

 脳卒中患者の上肢(腕、手)の機能回復に、1990年代スタイルのレトロなゲームが役立つ可能性があるようだ。スクリーン上のヘリコプターを操縦して動くターゲットを攻撃するなどのタスクを行うビデオゲームを通して脳卒中患者の筋肉を再訓練することで、脳卒中後に見られる筋の同時収縮パターンが減少し、上肢機能が改善する可能性が示された。米ノースウェスタン大学神経学・神経科学教授のMarc Slutzky氏らによるこの研究の詳細は、「Neurorehabilitation and Neural Repair」に6月8日掲載された。 脳卒中により脳がダメージを受けると、脳からの運動シグナルが乱れて筋肉の協調性が低下し、異常な同時収縮が起きるようになる。そのため、上腕二頭筋が誤ったタイミングで収縮してしまい、肘をまっすぐ伸ばした状態で腕を前方へ伸ばすことが難しくなるという。 今回報告されたビデオゲームは、この異常な同時収縮を減らすことを目的に開発された、神経リハビリテーション用筋電インターフェース(myoelectric interface for neurorehabilitation;MINT)を用いたシステムである。MINTシステムでは、機能障害がある側の腕に装着した小型デバイスが、筋肉を動かす際の電気的活動を筋電図(EMG)として測定する。プレイヤー(脳卒中患者)が動かすカーソルは、このデバイスにより測定されたEMGを基に制御される。例えば、上腕二頭筋はカーソルを右に、三角筋はカーソルを上に動かす。一方、これらの筋肉が同時に収縮すると、カーソルは斜めに動く。この仕組みにより、異常な同時収縮が見られる筋群について、それぞれの筋肉を個別に活動させる訓練が行われる。 今回の研究では、脳卒中患者を、MINTシステムで2筋または3筋を個別にコントロールする訓練を行うMINT群と、1種類の筋肉のみを使用する対照群にランダムに割り付け、MINTシステムの実行可能性と有効性を検討した。MINT群は、1日90分、週6日間の訓練を、2〜3週間おきに訓練する筋肉を切り替えながら行った。 その結果、3筋をコントロールする訓練を行ったMINT群でのみ、脳卒中後の上肢機能の評価尺度であるWMFT(ウルフ・モーター・ファンクション・テスト)が6週間で約6.8秒有意に改善した。そのほかの群では、有意な改善は認められなかった。MINT群全体では4.1秒の改善が認められた。さらに、プロトコル通りに介入を受けた参加者を対象に解析すると、3筋制御群では対照群と比較して、WMFTが7.5秒有意に改善していた。また、筋の同時収縮の低下と上肢の運動機能の改善との間に有意な関連が認められた。 Slutzky氏は、「われわれは今回、従来とは異なるアプローチで研究を実施した。脳卒中患者の上肢の障害に対する直接的な治療を行い、特定の動作ができるようになるかどうかだけでなく、上肢機能そのものがどの程度改善するのかを測定した。その結果、われわれの訓練が実際に患者に改善をもたらしたことが分かった」と言う。 しかも、参加者たちはゲームを楽しんでいたという。ある参加者はアンケートで、「体験全体が楽しく、有益だった」と回答していた。また、「間違いなくこのゲームから身体的にも精神的にも良い影響を受けた」と回答した参加者もいた。 研究グループは現在、このゲームに用いるウェアラブルデバイスのワイヤレス化を進めるとともに、ゲームをより魅力的にするための改良に取り組んでいる。また、このアプローチを脳卒中患者の下肢の機能回復にも応用できるかどうかを検証する計画もあるという。

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