医療一般

ER+/HER2-進行乳がん、オラパリブ+デュルバルマブ+フルベストラントの有効性

 転移を有するER+/HER2-乳がんに対し、PARP阻害薬、ER阻害薬、PD-L1阻害薬の併用が、関連するゲノム変化のある患者に有効であり、毒性プロファイルも許容できるものであったことが多施設共同単群第II相DOLAF試験で示された。フランス・Institut Regional du Cancer de MontpellierのSeverine Guiu氏らがClinical Cancer Research誌オンライン版2025年9月23日号で報告した。  本試験では、転移を有するER+/HER2-乳がんに対する2次治療または3次治療として、オラパリブ+フルベストラント+デュルバルマブの3剤併用療法の有効性と安全性を評価した。対象は、相同組み換え修復(HRR)遺伝子の体細胞または生殖細胞系列変異、マイクロサテライト不安定性(MSI)状態、内分泌抵抗性関連変異のいずれかを有する患者であった。主要評価項目は24週無増悪生存(PFS)率であった。

BUD/GLY/FOR配合薬が喘息にも有効(KALOS/LOGOS)/ERS2025

 吸入ステロイド薬(ICS)/長時間作用性β2刺激薬(LABA)でコントロール不良の喘息において、慢性閉塞性肺疾患(COPD)治療薬として用いられるブデソニド・グリコピロニウム臭化物・ホルモテロールフマル酸塩水和物(BUD/GLY/FOR)のトリプル製剤が有効であることが示された。欧州呼吸器学会(ERS Congress 2025)において、Alberto Papi氏(イタリア・フェラーラ大学)が、国際共同第III相試験「KALOS試験」および海外第III相試験「LOGOS試験」の統合解析の結果を報告した。

双極性うつ病に対する抗うつ薬治療後の躁転リスク〜ネットワークメタ解析

 抗うつ薬の躁転リスクは、双極性うつ病の治療において依然として大きな懸念事項である。しかし、抗うつ薬の種類による躁転リスクへの具体的な影響は、依然として不明である。スペイン・バルセロナ大学のVincenzo Oliva氏らは、各抗うつ薬とプラセボを比較することにより、双極性うつ病における躁転リスクを評価するため、システマティックレビューおよびネットワークメタ解析(NMA)を実施した。EClinicalMedicine誌2025年8月7日号の報告。  2025年2月19日までに公表された研究をClinicalTrials.gov、CENTRAL、PsycINFO、PubMed、Scopus、Web of Scienceのデータベースよりシステマティックに検索した。対象は、双極性うつ病における急性期抗うつ薬治療を評価したランダム化比較試験(RCT)とし、言語制限なしに抽出した。主要アウトカムは、抗うつ薬治療後の躁転リスクとした。頻度主義NMAを用いてリスク比(RR)および95%信頼区間(CI)を推定した。感度分析は、治療レジメン(単剤療法または併用療法)、ベースライン時の重症度、躁転の定義、研究設定、精神疾患合併症、治療期間、非薬物療法の併用、企業スポンサード、バイアスリスクに基づき実施した。エビデンスの確実性の評価には、CINeMAフレームワークを用いた。

鼻血の初の全国調査、多い季節・年齢・性別・治療法は?

 鼻出血(鼻血)の発生率のピークは冬季にあることが複数の研究で示されているが、研究のほとんどは単施設または特定の地域のデータに基づいており、全国的な季節的傾向、年齢と性別の分布、地理的パターンは不明である。今回、岡山大学の牧原 靖一郎氏らは、日本における鼻出血治療の季節的、人口統計学的、地域的差異を明らかにするため、全国行政データベースを用いて疫学調査を行った。その結果、鼻出血は冬季、小児と高齢者、男性に多く、また、地域によって処置の傾向が異なっていることがわかった。Auris Nasus Larynx誌2025年10月号に掲載。

関節リウマチの一因は免疫の早期老化?

 関節リウマチ(RA)は、免疫システムの早期老化が一因で生じる可能性のあることが、新たな研究で示された。この研究では、関節痛や関節炎を有する人において、免疫の老化が進んでいる兆候が認められたという。英バーミンガム大学免疫老化分野のNiharika Duggal氏らによるこの研究の詳細は、「eBioMedicine」に9月3日掲載された。  Duggal氏らは、「これは、免疫の老化がRAの発症に直接的な役割を果たしている可能性があることを示唆している」と述べている。RAは、免疫系が自身の関節を攻撃することで発症する自己免疫疾患の一種である。

搾乳した母乳は採乳時間に合わせて授乳すべき

 母親が朝に搾乳した母乳を乳児に夕方に与えると、母乳が持つ本来のリズムと異なる合図を乳児に与えてしまう可能性があるようだ。母乳の中には、乳児の睡眠・覚醒リズムに関与すると考えられるホルモンや免疫因子なども含まれているが、それらは日内で変動することが、新たな研究で明らかにされた。このことから研究グループは、午前中に搾乳して保存した母乳を午後や夕方に与えると、意図せず乳児の休息を妨げる可能性があると警告している。米ラトガース大学栄養科学分野のMelissa Woortman氏らによるこの研究結果は、「Frontiers in Nutrition」に9月5日掲載された。

大豆製品の摂取と不眠症との関係

 不眠症は、中高年にさまざまな悪影響を及ぼす疾患である。食生活の調整により、不眠症の改善が期待できることが注目を集めている。中国・温州医学大学のLanrong Sun氏らは、中高年における大豆製品の摂取と不眠症の関連性を調査し、炎症性因子の役割を検証するため、横断的研究を実施した。Nature and Science of Sleep誌2025年8月13日号の報告。  対象は、台州市温嶺病院の心臓内科を受診または入院した45歳以上の中高年877例(女性の割合:35.01%)。大豆製品の摂取量は、食品摂取頻度質問票(FFQ)を用いて評価した。睡眠状態は、不眠症重症度指数(ISI)を用いて定量化した。大豆製品の摂取量の中央値(IQR)は週1回以下(週1回以下、週2~6回)であり、不眠症スコアの平均値は、5.43±5.13であった。

タレトレクチニブ、ROS1陽性非小細胞肺がんに承認/日本化薬

 日本化薬は、2025年9月19日、Nuvation Bioから導入したタレトレクチニブ (商品名:イブトロジー)について、「ROS1融合遺伝子陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌」を効能又は効果とした製造販売承認を取得した。  同承認はROS1融合遺伝子陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺がん(NSCLC)を対象とした2つの第II相臨床試験(TRUST-IおよびTRUST-II)の結果などに基づくもの。これらの試験により、日本人患者も含め、ROS1融合遺伝子陽性の切除不能な進行・再発のNSCLC 患者に対するタレトレクチニブの有効性が示された。

超音波ヘルメットによって手術なしで脳刺激療法が可能に

 脳深部刺激療法(deep brain stimulation;DBS)は、てんかんやパーキンソン病から群発頭痛、うつ病、統合失調症に至るまで、さまざまな疾患の治療に有望であることが示されている。しかし残念ながら、DBSでは医師が患者の頭蓋骨に穴をあけ、微弱な電気パルスを送る小さなデバイスを埋め込むための手術が必要になる。こうした中、新たな超音波ヘルメットによって、手術を行わずに脳の深部を正確に刺激できる可能性のあることが示された。英ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン(UCL)のBradley Treeby氏らによるこの研究の詳細は、「Nature Communications」に9月5日掲載された。

糖尿病患者の約半数は自分の病気に気付いていない

 世界中の糖尿病患者の半数近くが、自分が糖尿病であることを知らずにいるとする研究結果が、「The Lancet Diabetes & Endocrinology」に9月8日掲載された。米ワシントン大学健康指標評価研究所のLauryn Stafford氏らの研究によるもので、全糖尿病患者の中で適切な血糖管理が維持されているのは5人に1人にとどまることも示されている。  この研究により、世界の15歳以上の糖尿病患者の44.2%が、自身の病気を認識していないと推計された。論文の筆頭著者であるStafford氏は、「2050年までに世界の糖尿病患者数は13億人に達すると予想されている。もし、半数近くの患者が、命に関わることもある深刻な健康状態にあることに気付いていない状況がこのまま続いたとしたら、糖尿病という病気はサイレント・エピデミック(静かなる疫病)へと移行していくだろう」と述べている。

早期梅毒に対するペニシリンの1回投与、3回投与と同等の効果を示す

 早期梅毒に対するペニシリンの1回投与は、現在、臨床現場で広く行われている3回投与と同等の治療効果を有することが、新たな臨床試験で示された。ベンザチンペニシリンG(BPG)の3回投与は、早期梅毒の治療に追加的な効果をもたらさないことが示されたという。米国立アレルギー感染症研究所(NIAID)の資金提供を受けて米アラバマ大学バーミンガム校のEdward Hook III氏らが実施したこの研究結果は、「The New England Journal of Medicine(NEJM)」に9月3日掲載された。

新薬が血圧コントロール不良の慢性腎臓病患者に降圧効果

 アルドステロンというホルモンを合成する酵素を阻害する新薬のバクスドロスタットの投与により、既存の薬では高血圧をコントロールできなかった慢性腎臓病(CKD)患者の収縮期血圧が約5%低下したとする第2相臨床試験(FigHTN)の結果が報告された。米ユタ大学保健学部のJamie Dwyer氏らによるこの研究結果は、米国心臓協会(AHA)のHypertension Scientific Sessions 2025(9月4〜7日、米ボルチモア)で発表されるとともに、「Journal of the American Society of Nephrology」に9月6日掲載された。Dwyer氏は、「CKDと高血圧を抱えて生きる人にとって、この研究結果は励みになる。この2つの病状はしばしば同時に進行し、危険な悪循環を生み出す」と述べている。

睡眠障害を有するうつ病に対するブレクスピプラゾール補助療法の有効性

 うつ病患者では、睡眠障害を伴うことが多い。デンマーク・H. Lundbeck A/SのFerhat Ardic氏らは、うつ病および睡眠障害患者におけるブレクスピプラゾール併用療法の有効性を評価するため、3つのランダム化比較試験(RCT)の事後解析を実施した。Frontiers in Psychiatry誌2025年8月7日号の報告。  抗うつ薬治療で効果不十分なうつ病患者を対象とした、ブレクスピプラゾール併用療法に関する3つのプラセボ対照RCTのデータを統合した。ハミルトンうつ病評価尺度(HAM-D)の睡眠障害因子(SDF、不眠症に関する3項目の合計)を用いて、対象患者をベースラインの睡眠障害レベルにより高SDF群(SDF:4以上)と低SDF群(SDF:4未満)に分類した。Montgomery Asbergうつ病評価尺度(MADRS)合計スコア、SDFスコア、その他の有効性スコアの変化について、抗うつ薬治療にブレクスピプラゾール2mgまたは3mgを併用した群(ブレクスピプラゾール併用群)と抗うつ薬治療にプラセボを併用した群(プラセボ群)との比較を行った。安全性は、治療関連有害事象(TEAE)の発現率により評価した。

男性の身長の高さとがんリスク、関連がみられたがん種は

 600万人以上を対象とし、性別・身長とがんの関連を検討したこれまでで最大規模の研究において、39種中27のがん種において身長の高さががんリスク増加と統計学的有意に関連し、男性では悪性黒色腫、急性骨髄性白血病、唾液腺がん、結腸がんでとくに身長の高さによる過剰がんリスクが高かった。スウェーデン・カロリンスカ研究所のCecilia Radkiewicz氏らによる、International Journal of Cancer誌オンライン版2025年8月26日号への報告より。

日米の高齢者がん手術、術後転帰に大きな違い

 高齢者の消化器がん外科手術において、日本と米国の全国データベースを比較すると、年齢に伴う術前合併症や術後転帰の変化パターンは類似しているものの、移動能力や機能面では両国間に差があることが明らかになった。福島県立医科大学の小船戸 康英氏らによる本研究はAnnals of Gastroenterological Surgery誌2025年4月21日号に掲載された。  がんは日米両国における主要な死因の1つであり、生涯に少なくとも一度はがんを経験する人口の割合は日本で5割超、米国で4割弱と推定されている。外科治療は依然としてがんの根治的治療の主軸であり、世界的な高齢化のなか、併存疾患や虚弱状態を多く有する高齢がん患者を対象とした研究の重要性が増している。

ひどい乗り物酔いを音楽が緩和

 車酔いや船酔いのときには気分が良くなる音楽を聴くと良いことが、新たな研究で示唆された。ヨット・ロックや明るいポップミュージックのような音楽が、乗り物酔いによる吐き気の緩和に役立つ可能性のあることが明らかになったという。西南大学(中国)のQizong Yue氏らによるこの研究の詳細は、「Frontiers in Human Neuroscience」に9月3日掲載された。  この研究では、穏やかで楽しい音楽を聴いた人は乗り物酔いからより早く回復する傾向にあることが明らかになった一方で、悲しい音楽は何の役にも立たないどころか、むしろ逆効果になる可能性も示唆されたという。Yue氏は、「われわれの結論に基づけば、移動中に乗り物酔いの症状を経験している人は、明るい音楽や穏やかな音楽を聴くことでその症状を和らげることができる」とFrontiers Media社のニュースリリースの中で述べている。

生後1週間以内の侵襲性感染症が小児てんかんリスクと関連

 てんかんは小児期に発症することの多い神経疾患で、健康や生活への影響が生涯にわたることも少なくないため、予防可能なリスク因子の探索が続けられている。オーフス大学病院(デンマーク)のMads Andersen氏らは、新生児期の侵襲性感染症罹患に伴う炎症が脳損傷を引き起こし、てんかんリスクを押し上げる可能性を想定し、全国規模のコホート研究により検証。結果の詳細が「JAMA Network Open」に7月7日掲載された。  この研究では、1997~2013年にデンマーク国内で、在胎35週以上の単胎児で重篤な先天異常がなく出生した全新生児を対象とし、2021年まで、または18歳になるまで追跡した。生後1週間以内に診断された敗血症または髄膜炎を「出生早期の侵襲性細菌感染症」と定義し、そのうち血液または脳脊髄液の培養で細菌性病原体が確認された症例を「培養陽性感染症」とした。てんかんは、診断の記録、または抗てんかん薬が2回以上処方されていた場合で定義した。

性的マイノリティ女性は乳がん・子宮頸がん検診受診率が低い、性特有の疾患における医療機関の課題

 性的マイノリティ(SGM)の女性は、乳がんや子宮頸がんの検診受診率が非SGM女性に比べて低いことが全国調査で明らかになった。大腸がん検診では差がみられず、婦人科系がん特有の課題が示唆されたという。研究は筑波大学人文社会系の松島みどり氏らによるもので、詳細は「Health Science Reports」に8月4日掲載された。  がん検診は、子宮頸がんや乳がんの早期発見と死亡率低下に重要な役割を果たしている。先進国と途上国を含む10カ国以上では、平均的なリスクを持つ全年齢層で20%の死亡率低下が報告されている。しかし、日本では2022年時点での子宮頸がん・乳がんの検診受診率はそれぞれ43.6%、47%にとどまっている。この受診率の低さの背景として、教育や所得の問題が議論されてきたが、日本ではSGMの問題という重要な視点が欠けていた。

従来2台必要な眼科手術機器を1台で/日本アルコン

 日本アルコンは、白内障および網膜硝子体手術を1台でこなす“UNITY VCS”の発売に際し、都内でメディアセミナーを開催した。白内障は加齢により起こる水晶体が混濁する疾患だが、高齢化社会のわが国では患者数、手術数ともに増加している。今回発売される本機は、従来は別々のプラットフォームに搭載した手術装置で行われていた白内障および網膜硝子体手術が1台のプラットフォームに集約され、処置室の省スペース化を実現する。  セミナーでは、白内障などの疾患概要と手術の講演のほか、本機の機能紹介などが行われた。本機は秋以降に発売が開始される。

僧帽弁クリップ術やアブレーションによる心房中隔欠損が問題に、その対策とは/日本心臓病学会

 第73回日本心臓病学会学術集会が9月19~21日に高知にて開催された。シンポジウム「循環器内科が考える塞栓症予防-左心耳閉鎖、PFO閉鎖、抗凝固療法-」において、赤木 禎治氏(心臓病センター榊原病院 循環器内科)が、「医原性心房中隔欠損の現状と治療」と題し、心血管インターベンション治療の普及に伴い増加傾向にある心房中隔裂開の対策や課題などについて報告した。  経カテーテル僧帽弁形成、左心耳閉鎖やアブレーションなどの心血管インターベンション治療中に心房中隔を損傷し、中隔が裂けて発生する心房中隔欠損(ASD)を医原性心房中隔欠損(iASD)と呼ぶ。カテーテル操作に起因する中隔裂開として発生するが、術者の技量に関係なく一定の頻度で発生し、一部の患者では急激な血行動態の破綻を招くという。