高齢のHER2陽性早期乳がん患者における長期転帰の予測に、多遺伝子アッセイ「HER2DX」が有用である可能性が示された。また探索的解析の結果、同アッセイによるpCRスコア高値群で術後化学療法の上乗せが有効となることも示唆された。名古屋市立大学臨床研究戦略部の能澤 一樹氏が、RESPECT試験の追加解析「Trans-RESPECT」の結果を、第23回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO2026)で発表した。
RESPECT試験は本邦で実施された第III相無作為化比較試験で、70~80歳のHER2陽性早期乳がん患者を対象に、術後トラスツズマブ単独療法(H群)とトラスツズマブ+化学療法(H+CT群)を比較。トラスツズマブ単独療法の非劣性は証明されなかったが、3年DFS率は92.4%vs.95.3%であり、トラスツズマブ単独療法が高齢患者における治療選択肢の1つとなりうることが示された。
<HER2DXとは>
HER2陽性早期乳がんに特化した多遺伝子アッセイ。27遺伝子の発現を解析し、リスクスコアとpCRスコア、ERBB2 mRNAスコアを算出する。本解析では、リスクスコアについてカットオフ値を50とし、低リスク(1~49)および高リスク(50~99)に分類している。
主な結果は以下のとおり。
・RESPECT試験の対象者275例のうち、適格患者154例(H群74例、H+CT群80例)についてHER2DXによる評価が行われた。
・本解析対象者の患者背景は、平均年齢がH群73.6歳vs.H+CT群73.9歳、ER陽性が41.9%vs.46.3%などおおむねバランスがとれていたが、pN0の症例は90.5%vs.77.5%とH群でより多くを占めていた。
・HER2DXリスクスコアにより、40例(H群16例vs.H+CT群24例)が高リスク群、114例(58例vs.56例)が低リスク群に分類された。
・10年RFS率はHER2DX高リスク群68.0%vs.低リスク群77.9%(ハザード比[HR]:0.48、95%信頼区間[CI]:0.23~1.01、p=0.05)、10年OS率は69.7%vs.85.9%(HR:0.34、95%CI:0.15~0.80、p=0.01)であった(追跡期間中央値:9.1年)。
・感度分析の結果、5、6、7、8、9、10年のすべての時点でRFSとOSのHR推定値は低リスク群において良好であり、一貫して0.50未満であった。
・HER2DX pCRスコア(高値/中間~低値)別にみた10年OS率は、pCR高値群ではH群66.4%vs.H+CT群94.4%(HR:0.23、95%CI:0.05~1.08、p=0.04)と化学療法併用群で生存期間の延長が認められたが、中間~低値群では88.6%vs.76.2%(HR:1.68、95%CI:0.50~5.60、p=0.40)と認められず、トラスツズマブ単剤においても良好な全生存期間を示した。
能澤氏は、HER2DX低リスクと判定された患者を中心に、治療方針決定におけるHER2DXの有用性を検証する前向き試験の実施が期待されるとした。
(ケアネット 遊佐 なつみ)