医療一般|page:1

治療抵抗性再発単極性うつ病と治療抵抗性双極性うつ病との違い

 重度かつ持続的な精神疾患は、英国人の約3%に影響を及ぼしており、重大な障害および平均寿命の有意な低下と関連している。これには、主に治療抵抗性再発単極性うつ病や治療抵抗性双極性うつ病の2つのタイプがある。両疾患おける表現型の違いや抗うつ薬に対する治療反応の違いは、神経異常の違いを示唆している。双極性うつ病は、単極性うつ病との臨床的鑑別が困難な場合もあるが、両疾患で治療法が異なるため、これらを客観的に鑑別する方法の開発は重要である。英国・ダンディー大学のSzabolcs Suveges氏らは、強化学習ドリフト拡散モデルを用いた意思決定および報酬獲得・損失回避タスク中に取得した事象関連fMRIを用いて、治療抵抗性再発単極性うつ病と双極性うつ病患者の一般成人精神医学において長期フォローアップ調査を行った。Brain誌オンライン版2025年8月4日号の報告。

入浴関連死、最もリスクの高い都道府県は?

 日本人は頻繁に入浴する習慣があるため、とくに高齢者では世界で最も溺死率が高い。入浴関連死の予防は公衆衛生上の喫緊の課題となっている。奈良県立医科大学の田井 義彬氏らは、1995年~2020年の日本全国の入浴関連溺死約11万例について調査した。その結果、屋外の低気温が入浴関連死のリスクを高めるだけでなく、そのリスクが温暖な鹿児島県でとくに顕著であることが示された。本研究は、Environmental Health and Preventive Medicine誌2025年号に掲載された。

脱毛に関する誤解と恐怖は化学療法の忌避につながる

 抗がん薬による治療(化学療法)で皮膚や髪、爪に生じ得る副作用について多くの人が誤解しており、そのような副作用に対する恐怖が治療の忌避や遅延につながり得ることが、新たな研究で示された。米ジョージ・ワシントン大学皮膚科分野のAdam Friedman氏らによるこの研究結果は、「Journal of Drugs in Dermatology(JDD)」8月号に掲載された。  この研究では、ワシントンD.C.の中で最も医療サービスが不足している南東部において開催された2つの健康フェアへの参加者を対象に調査が行われ、回答が得られた77人のデータが分析された。これらの参加者の大半(88.3%)は女性で、年齢は45〜54歳、黒人が71.5%を占めていた。

起立時のめまいや動悸に心不全治療薬が有効かも

 立ち上がったときに動悸やめまい、ふらつきを感じたことはないだろうか。これは、体位性頻脈症候群(POTS)と呼ばれる症状で、上記の症状に加え、疲労感や運動障害、胸痛、ブレインフォグ、吐き気などを伴うこともある。新たなパイロット研究の結果によると、イバブラジンと呼ばれる心不全治療薬が、POTS患者の心拍数の増加を抑え、血圧には影響を与えずに他の症状を大幅に改善する可能性のあることが示された。米バージニア大学保健学部のAntonio Abbate氏らによるこの研究結果は、「Journal of Cardiovascular Pharmacology」7月号に掲載された。  Abbate氏は、「これらの結果は、不適切な心拍数の増加こそが不調の原因であり、血圧に影響しない薬により心拍数を減らすことで生活の質(QOL)に違いをもたらすことができることを示唆している」とバージニア大学のニュースリリースの中で述べている。

体重を減らしたいなら超加工食品の摂取は控えめに

 体重を減らしたい人は、超加工食品の摂取を控えた方が良いようだ。新たな研究で、加工を最小限に抑えた食品(MPF)を中心とした食事を摂取した場合、超加工食品(UPF)を中心とした食事を摂取した場合と比べて、栄養価が同等であっても体重の減少幅は約2倍であったことが示された。英ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン(UCL)のChris van Tulleken氏らによるこの研究結果は、「Nature Medicine」に8月4日掲載された。  Van Tulleken氏は、「現在の世界の食料システムは、特に安価で不健康な食品が広く入手できることが原因で、食生活に関連した健康状態の悪化と肥満を促進している。この研究は、脂肪、塩分、砂糖などの栄養素に加え、食品の高度な加工が健康に及ぼす影響の大きさを浮き彫りにしている」とUCLのニュースリリースで語っている。

ギャンブル依存の“やめられない”、複数の脳領域が連動か

 「なぜギャンブルをやめられないのか?」。最新の研究から、その背景には“脳の複数の領域”と“気分の落ち込み”が関わっていることがわかってきた。扁桃体と腹側線条体という脳の領域が連動すると、「ギャンブルをしたい」という強い欲求が生まれ、この関係にはうつ症状が関与しているという。研究は京都大学大学院医学研究科(当時)の石川柚木氏、同大学附属病院精神科神経科/デイ・ケア診療部の鶴身孝介氏らによるもので、詳細は「Addiction Biology」に7月17日掲載された  ギャンブル障害(GD)は、持続的なギャンブル行動とその悪影響を特徴とする精神疾患であり、強い欲求(渇望)が中心的な役割を担う。ギャンブルへの渇望は多面的なプロセスであり、楽しいと認識する「期待(Anticipation)」、強い衝動を表す「欲求(Desire)」、ネガティブな気分からの逃避を意味する「解放(Relief)」の3側面から構成される。この構造はコカインやたばこの渇望とも類似している。報酬が存在する際の渇望は、報酬追求行動に関与する扁桃体と腹側線条体(VS)の機能的結合によって調整されると考えられるが、報酬が存在しない際の渇望と両者の安静時機能的結合(rs-FC)との関係は未解明である。さらに、うつ症状がこの関係を仲介する可能性も示唆されている。本研究では、GD患者において扁桃体–VSのrs-FCが渇望と関連するという仮説を立て、うつ症状がその媒介因子として機能するかを検討することを目的とした。

BPSDに対する非薬理学的介護者介入の比較〜ネットワークメタ解析

 認知症の行動・心理症状(BPSD)の軽減に非薬理学的な介護者介入は有用であるが、最も効果的な非薬理学的介入は、依然として明らかとなっていない。中国・杭州師範大学のXiangfei Meng氏らは、BPSDに対するさまざまな介護者介入とそれらの症状に対する介護者の反応を比較するため、システマティックレビューおよびネットワークメタ解析を実施した。International Journal of Nursing Studies誌2025年10月号の報告。  2023年10月18日までに公表された研究を、PubMed、Embase、Cochrane Library、Cumulative Index to Nursing and Allied Health Literature(CINAHL)、PsycINFOよりシステマティックに検索した。バイアスリスクの評価にはRoB2、エビデンスの信頼性の評価にはCINeMA(Confidence in Network Meta-Analysis)を用いた。頻度主義的枠組みを用いたランダム効果ネットワークメタアナリシスを実施した。主要評価項目は、BPSD症状およびBPSDに関連する介護者の反応とした。

成人遅発型ポンペ病に2種類併用の治療薬を発売/アミカス

 アミカス・セラピューティクスは、成人遅発型ポンぺ病を対象とする新規併用療法の治療薬であるシパグルコシダーゼ アルファ(商品名:ポムビリティ)とミグルスタット(同:オプフォルダ)を8月27日に発売した。  ポンぺ病(糖原病II型)は、ライソゾーム内のグリコーゲンの分解に関与する酵素である酸性α-グルコシダーゼ(GAA)をエンコードする遺伝子の突然変異によって起こる希少疾病。この酵素の機能障害により、ライソゾーム内にグリコーゲンが蓄積し、細胞機能の障害が進行し、筋力、運動および肺機能が低下する。患者は、全世界で5,000~1万人と推定され、わが国では約130人とされている。

日本における手術部位感染の分離菌の薬剤感受性~全国サーベイランス

 手術部位感染(SSI)から分離された原因菌に対する各種抗菌薬の感受性について、日本化学療法学会・日本感染症学会・日本臨床微生物学会(2023年には日本環境感染学会も参画)による抗菌薬感受性サーベイランス委員会が、2021~23年に実施した第4回全国サーベイランス調査の結果を報告した。第1回(2010年)、第2回(2014~15年)、第3回(2018~19年)のデータと比較し、主に腸内細菌目細菌において抗菌薬感受性が低下した一方、MRSA発生率は減少したことが示された。Journal of Infection and Chemotherapy誌2025年9月号に掲載。

空気清浄機と血圧の関係/JACC

 粒子状物質(PM)による大気汚染は、心血管疾患のリスク因子であり、血圧上昇にも関与している可能性が指摘されている。そこで、家庭用のHEPA(High Efficiency Particulate Air)フィルター付き空気清浄機が血圧を低下させるか検討することを目的として、米国の幹線道路の近隣に居住する成人を対象に、プラグマティック臨床試験が実施された。本研究結果は、Doug Brugge氏(米国・コネチカット大学)らにより、JACC誌2025年8月26日号で報告された。

科学分野において組織的な不正行為が急速に増加

 科学における不正行為が広がり、学術研究の健全性に深刻な脅威をもたらしていると、米ノースウェスタン大学工学・応用数学教授のLuis A.N. Amaral氏らのグループが警鐘を鳴らしている。Amaral氏らの報告によると、秘密裏に不正を働く人のネットワークが広がり、かつてないほど速いペースで科学分野において虚偽の成果が生み出されているという。詳細は、「Proceedings of the National Academy of Sciences(PNAS)」に8月4日掲載された。  科学における不正行為に関するニュースは通常、論文の撤回、データの改ざんまたは盗用など、成功のために近道をしようとする個人による単発の事例について報じたものが多いとAmaral氏らは言う。しかし、同氏らが今回行った調査によって、世間の目に触れないところで虚偽の科学を量産している闇のネットワークの存在が明らかになった。

心アミロイドーシスの生存率向上に新たな治療選択肢/アルナイラム

 トランスサイレチン型心アミロイドーシス(ATTR-CM)治療薬として、2025年6月25日に国内で適応追加承認を取得した核酸医薬のブトリシラン(商品名:アムヴトラ)。この治療薬が果たす役割について、7月に開催されたアルナイラムのメディアセミナーで北岡 裕章氏(高知大学医学部 老年病・循環器内科学 教授)が解説した。  心アミロイドーシスは心不全の原因疾患の1つで、2025年3月に発刊された『2025年改訂版 心不全診療ガイドライン』においてもその項目が設けられ、心不全として鑑別診断が重要な疾患として位置付けられた(推奨表57参照)。しかし現状は、「循環器医でもアミロイドーシスの概念をあまり持っていない医師も少なくない」と北岡氏は問題提起する。その理由について、「たった10年前には患者が300例ほどしかいないとされ、原因として疑うのは非常に難しい時代だった」とコメント。しかし、時代は変わり、核医学検査による診断法が確立したことで、120万人いると推定される心不全患者の10%程度をATTR-CMが占めることも明らかになってきている。とくにATTR-CMwtは加齢に起因することから、高齢者で診断されることが“まれではない”状況になっているが、2019年に治療薬として四量体安定化薬が処方できるようになったことで、「指数関数的に治療を受けられる患者数が増加している」と説明した。

LP.8.1対応組換えタンパクコロナワクチン、一変承認を取得/武田

 武田薬品工業は8月27日のプレスリリースで、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)のオミクロン株LP.8.1を抗原株とした組換えタンパクワクチンの「ヌバキソビッド筋注1mL」について、厚生労働省より一部変更承認を取得したと発表した。ヌバキソビッド筋注は、同社がノババックスから日本での製造技術のライセンス供与を受けたもので、LP.8.1対応ワクチンは9月中旬以降に供給が開始される予定。  2025年5月28日に開催された「厚生科学審議会 予防接種・ワクチン分科会 研究開発及び生産・流通部会 季節性インフルエンザワクチン及び新型コロナワクチンの製造株について検討する小委員会」において、2025/26シーズンの定期接種で使用する新型コロナワクチンの抗原組成は、WHOの推奨と同様に、「1価のJN.1、KP.2もしくはLP.8.1に対する抗原又は令和7年5月現在流行しているJN.1系統変異株に対して、広汎かつ頑健な中和抗体応答又は有効性が示された抗原を含む」とされている。

高齢入院患者におけるベンゾジアゼピン中止パターンとそれを阻害する因子

 退院後のベンゾジアゼピン(BZD)長期使用は、高齢患者におけるBZD依存や重篤な薬物有害事象リスクを高める可能性がある。しかし、高齢者におけるBZD中止パターンとそれに関連する因子についての研究は限られている。米国・ハーバード大学のChun-Ting Yang氏らは、高齢者における入院後のBZD中止のパターンと関連因子を特定するため、後ろ向きコホート研究を実施した。Journal of the American Geriatrics Society誌オンライン版2025年7月27日号の報告。

日本人の日常会話頻度と認知症リスク

 中高年を対象とした大規模集団コホートで、日常会話の頻度と認知症リスクとの関連を検討した結果、会話頻度が低いと認知症リスクが高く、会話が月1回未満の場合は認知症リスクが2倍を超えることが示唆された。国立がん研究センターの清水 容子氏らがArchives of Gerontology and Geriatrics誌オンライン版2025年8月5日号に報告。  本研究は、2000~03年に多目的コホート研究であるJPHC研究で日常会話頻度を報告した50~79歳の参加者について、認知症の発症を2006~16年の介護保険認定記録を用いて追跡した。生活習慣や既往歴などの因子を調整したCox比例ハザードモデルを用いて、ハザード比(HR)および95%信頼区間(CI)を推定した。また、居住形態(独居もしくは同居)と性別によるサブグループ解析を実施した。

人工甘味料はがん免疫療法の治療効果を妨げる?

 マウスを用いた新たな研究で、一般的な人工甘味料であるスクラロースの使用は、がん患者の特定の免疫療法による治療を妨げる可能性のあることが示唆された。この研究ではまた、マウスに天然アミノ酸であるアルギニンのレベルを高めるサプリメントを与えると、スクラロースの悪影響を打ち消せる可能性があることも示された。米ピッツバーグ大学免疫学分野のAbby Overacre氏らによるこの研究結果は、「Cancer Discovery」に7月30日掲載された。  Overacre氏は、「『ダイエットソーダを飲むのをやめなさい』と言うのは簡単だが、がん治療を受けている患者はすでに多くの困難に直面しているため、食生活を大幅に変えるよう求めるのは現実的ではないだろう」と話す。同氏はさらに、「われわれは、患者の現状に寄り添う必要がある。だからこそ、アルギニンの補給が免疫療法におけるスクラロースの悪影響を打ち消すシンプルなアプローチとなり得るのは非常に喜ばしいことだ」と述べている。

富裕層の医師はどれくらい?/医師1,000人アンケート

 野村総合研究所が2025年2月に公開したレポートによると、2023年の日本の富裕層・超富裕層の世帯数は前回調査(2021年)から11.3%増加し、合計約165万世帯となった。これは全体の約3%に当たる。では、医師のなかに富裕層・超富裕層はどれくらいいるのだろうか。そこで、CareNet.comでは20~60代の医師1,005人を対象に、世帯年収・純金融資産額に関するアンケート調査を実施した(2025年7月27日~8月2日実施)。本アンケート調査では、世帯年収と純金融資産額を調査し、富裕層・超富裕層の割合を算出した。また、資産運用の成功/失敗のエピソードも募集した。

cN0乳がんのセンチネルリンパ節生検省略、リアルワールドで見逃されるpN+の割合は?

 INSEMA試験やSOUND試験の結果から、乳房温存術を受けるHR+/HER2-の臨床的腋窩リンパ節転移陰性(cN0)早期乳がんの一部の患者では、センチネルリンパ節生検(SNB)は安全に省略可能であるとされつつある。しかし、リンパ節転移の有無は術後治療の選択に極めて大きな影響を及ぼすため、SNB省略のde-escalation戦略の妥当性については依然として議論の余地がある。そこで、Nikolas Tauber氏(ドイツ・University Hospital Schleswig-Holstein)らは、INSEMA試験の基準を満たす患者にSNBを行い、その病理学的結果や術後治療への影響を解析することで、SNB省略時の影響をリアルワールドで推計した。その結果がEuropean Journal of Surgical Oncology誌2025年8月14日号に掲載された。

退職は健康改善と関連、とくに女性で顕著――35ヵ国・10万人規模の国際縦断研究/慶大など

 退職が高齢者の健康に与える影響は一様ではない。近年、多くの国で公的年金の受給開始年齢が引き上げられ、退職時期の後ろ倒しが進んでいる。こうした状況に対し、退職の健康影響を検討した研究は数多いが、「認知機能を低下させる」「影響はない」「むしろ有益である」と結果は分かれていた。  慶應義塾大学の佐藤 豪竜氏らの研究グループは、米国のHealth and Retirement Study(米国健康・退職調査:HRS)をはじめとする35ヵ国の縦断調査データを統合解析し、50〜70歳の10万6,927例(観察数39万6,904例)を対象に、退職と健康・生活習慣の関連を検証した。本研究の結果はAmerican Journal of Epidemiology誌オンライン版2025年6月13日号に掲載された。