高齢入院患者におけるベンゾジアゼピン中止パターンとそれを阻害する因子

提供元:ケアネット

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公開日:2025/08/29

 

 退院後のベンゾジアゼピン(BZD)長期使用は、高齢患者におけるBZD依存や重篤な薬物有害事象リスクを高める可能性がある。しかし、高齢者におけるBZD中止パターンとそれに関連する因子についての研究は限られている。米国・ハーバード大学のChun-Ting Yang氏らは、高齢者における入院後のBZD中止のパターンと関連因子を特定するため、後ろ向きコホート研究を実施した。Journal of the American Geriatrics Society誌オンライン版2025年7月27日号の報告。

 本コホート研究は、2004年1月〜2025年2月までのOptum CDMデータを用いて実施した。対象は、入院後30日以内に新たにBZD使用を開始した65歳以上の患者。不安症、精神疾患、アルコール乱用、てんかん発作、ホスピスケアを受けている患者は除外した。BZD中止は、BZD使用終了から15日を超える期間と定義した。主要解析では、カプランマイヤー法を用いて中止率を推定し、患者特性とBZD中止との関連はCox比例ハザードモデルを用いて解析した。死亡の競合リスクを補正するため、打ち切り確率の逆重み付け(IPW)を適用した。

 主な結果は以下のとおり。

・対象患者数は3万3,449例(平均年齢:73.1±5.8歳、男性の割合:51.7%)。
・IPW加重BZD中止率は、30日時点で53.3%(95%信頼区間[CI]:52.7〜53.8)、60日時点で86.7%(86.3〜87.1)、90日時点で92.6%(92.3〜93.0)であった。
・30日時点でのBZD中止率は、2004年の31.7%(95%CI:29.5〜33.9)から2024年の71.1%(68.7〜73.5)へと増加が認められた。
・研究期間中のBZD中止率は、年間4%の増加を示した。
・BZD中止を阻害するリスク因子は、次のとおりであった。
【不眠症】ハザード比(HR):0.66、95%CI:0.63〜0.69
【中等〜重度のフレイル】HR:0.82、95%CI:0.75〜0.85
【入院後/初回BZD使用前の抗うつ薬新規使用】HR:0.80、95%CI:0.76〜0.85
【入院後/初回BZD使用前の非定型抗精神病薬新規使用】HR:0.90、95%CI:0.82〜0.99

 著者らは「精神疾患の病歴のない高齢者における入院後のBZD中止率は、時間経過とともに上昇していた。しかし、とくに不眠症や中等〜重度のフレイルを有する高齢者においては、BZD中止に依然として課題が残存しており、今後の効果的な減量戦略策定のターゲットとなるであろう」とまとめている。

(鷹野 敦夫)