重度かつ持続的な精神疾患は、英国人の約3%に影響を及ぼしており、重大な障害および平均寿命の有意な低下と関連している。これには、主に治療抵抗性再発単極性うつ病や治療抵抗性双極性うつ病の2つのタイプがある。両疾患おける表現型の違いや抗うつ薬に対する治療反応の違いは、神経異常の違いを示唆している。双極性うつ病は、単極性うつ病との臨床的鑑別が困難な場合もあるが、両疾患で治療法が異なるため、これらを客観的に鑑別する方法の開発は重要である。英国・ダンディー大学のSzabolcs Suveges氏らは、強化学習ドリフト拡散モデルを用いた意思決定および報酬獲得・損失回避タスク中に取得した事象関連fMRIを用いて、治療抵抗性再発単極性うつ病と双極性うつ病患者の一般成人精神医学において長期フォローアップ調査を行った。Brain誌オンライン版2025年8月4日号の報告。
単極性うつ病と双極性うつ病の両方において、報酬学習シグナルが同様に鈍化し、損失回避学習シグナルが増加し、同様の精神運動遅延がみられるとの帰無仮説を検証した。
主な内容は以下のとおり。
・帰無仮説と一致し、両疾患タイプにおいて、意思決定の異常な遅延が認められ、個々の患者における強化学習ドリフト拡散モデルのパラメータ推定値は、うつ病の重症度と相関していた。
・単極性うつ病では、ポジティブなフィードバックの結果と価値のシグナルが鈍化し、ネガティブなフィードバックのシグナルが増加することが示唆された。
・しかし、帰無仮説とは対照的に、双極性うつ病は線条体の報酬予測誤差シグナル伝達が維持され、単極性うつ病でみられた海馬および外側眼窩前頭葉における損失事象の強化符号化が欠如していた。
・全体として、治療抵抗性再発単極性うつ病と治療抵抗性双極性うつ病は、外側眼窩前頭皮質の報酬価値シグナルと扁桃体の損失価値シグナルに関して、対照群と比較し、同様の神経異常パターンを示した。
・しかし、両疾患は、とくに海馬、線条体、外側眼窩前頭葉の機能に有意な違いがみられ、客観的な鑑別が可能であることが示唆された。
・神経画像解析の結果とサポートベクターマシンを用いた場合、精度74.3%で両疾患を鑑別可能であった。
著者らは「本結果を確認するためにも、重度かつ持続的な治療抵抗性再発単極性うつ病および治療抵抗性双極性うつ病患者を対象としたさらなる研究が求められる」としている。
(鷹野 敦夫)