難聴高齢者の補聴器、認知機能低下を予防できる集団は?/Lancet

提供元:ケアネット

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公開日:2023/08/01

 

 認知機能が正常で難聴を有する高齢者において、補聴器を用いた聴覚介入は、認知機能低下のリスクが高い集団では3年後の認知機能の低下を抑制したが、低リスクの集団ではこのような効果はない可能性があることが、米国・ジョンズ・ホプキンズ大学ブルームバーグ公衆衛生大学院のFrank R. Lin氏らが実施した「ACHIEVE(Aging and Cognitive Health Evaluation in Elders)試験」で示唆された。研究の詳細は、Lancet誌オンライン版2023年7月18日号で報告された。

観察研究の参加者を含む米国の無作為化試験

 ACHIEVE試験は、米国の4つの地域の研究施設で実施された非盲検無作為化対照比較試験であり、2017年11月~2019年10月に参加者のスクリーニングが行われた(米国国立衛生研究所[NIH]の助成を受けた)。

 対象は、未治療の両側性難聴を有し、認知機能障害のない70~84歳の高齢者であり、進行中の縦断研究であるARIC研究(心疾患と脳卒中のリスク因子、および心血管系と認知機能の関連の解明を目的とする)の参加者と、同一の地域で新たに募集したボランティアが含まれた。

 被験者は、聴覚介入(聴覚カウセリングと補聴器の提供)を受ける群、または対照として健康教育(健康教育を行う医療従事者との個別の面接で、慢性疾患の予防に関するトピックスを学習)を受ける群に、1対1の割合で無作為に割り付けられ、6ヵ月ごとにフォローアップが行われた。

 主要エンドポイントは、包括的な神経認知機能評価バッテリーを用いた、標準化された因子に関する総合認知機能スコアのベースラインから3年目までの変化量(SD単位)であった。

ARICと新規コホートで効果が異なる

 977例(ARICコホート238例[24%]、新規コホート739例)を登録し、介入群に490例、対照群に487例を割り付けた。全体の平均年齢は76.8(SD 4.0)歳、523例(54%)が女性、858例(88%)が白人だった。ARICコホートは新規コホートに比べ、年齢が高く、認知機能低下のリスク因子が多く、ベースラインの認知機能スコアが低かった。

 ARICコホートと新規コホートを合わせた主解析では、3年間の総合認知機能スコアの変化量(SD単位)は、対照群が-0.202(95%信頼区間[CI]:-0.258~-0.145)であったのに対し、介入群は-0.200(-0.256~-0.144)であり、両群間に有意な差は認められなかった(群間差:0.002、95%CI:-0.077~0.081、p=0.96)。

 一方、事前に規定された感度分析では、3年後の認知機能の変化量に関して、認知機能低下のリスクが高いARICコホートは低リスクの新規コホートに比べ、聴覚介入の効果が有意に高かった(pinteraction=0.010)。また、全コホートで使用された分析パラメータを変えた別の感度分析では、主要エンドポイントの結果に実質的な変化はなかった。

 両群とも、予想外の有害事象や、この試験に起因する重大な有害事象の報告はなかった。

 著者は、「認知機能低下のリスクが高い難聴の高齢者に聴覚介入を行うと、3年以内の認知機能低下を抑制できる可能性がある」とまとめ、「これらの知見を統合すると、難聴は、認知症の予防の取り組みにおいて、とくに重要な世界的な公衆衛生の対象となる可能性が示唆される」と指摘している。

(医学ライター 菅野 守)