コロナによる医療中断で回避可能な入院リスク増/BMJ

提供元:ケアネット

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公開日:2023/07/28

 

  英国・リバプール大学のMark A. Green氏らは、同国7つの住民ベース縦断研究のコホートデータを解析し、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)流行中に医療へのアクセスが中断された人は、回避可能な入院をより多く経験していたとみられることを報告した。COVID-19流行中に医療サービスや治療へのアクセスがどの程度中断したかは、幅広い研究によって明らかとなっているが、この中断と健康への悪影響との関連を評価する研究が求められていた。著者は、「今回の調査結果は、パンデミックの短期的・長期的影響への対応や、将来のパンデミック時の治療・処置体制確保のために、医療投資を増やす必要性を浮き彫りにしている」と述べている。BMJ誌2023年7月19日号掲載の報告。

英国の7つの縦断研究からコホートデータを解析

 研究グループは、UK Longitudinal Linkage Collaborationを利用して、イングランドのNHS Digitalの電子健康記録とリンクした住民ベースの縦断研究コホートデータを、2020年3月1日~2022年8月25日の期間について入手した。

 主要アウトカムは回避可能な入院で、適切なプライマリケア診療で入院を防ぐことができる状態(ambulatory care sensitive condition:ACSC)や急性増悪で入院の可能性はあるが入院を最小限にするためにプライマリケアで治療を試みるべき状態(emergency urgent care sensitive condition)での緊急入院と定義し、医療へのアクセスとの関連を解析した。

新型コロナ流行で医療中断を経験した人は、回避可能な入院のリスクが高い

 計9,742例(縦断コホートのサンプル構造で調整した加重割合35%)が、COVID-19流行中に何らかの形で医療へのアクセスが中断されたと自己報告した。

 アクセスが中断された人は、あらゆるACSC(オッズ比[OR]:1.80、95%CI:1.39~2.34)、急性のACSC(2.01、1.39~2.92)、慢性のACSC(1.80、1.31~2.48)による入院のリスクが高かった。プライマリケア医または外来受診(予約済み)および手術、がん治療などの処置へのアクセスが中断された経験のある人は、回避可能な入院の指標と正の関連が認められた。

 なお、著者は、観察研究であり因果関係は説明できないこと、COVID-19流行前の医療へのアクセスの困難さに関するデータがないことなどを研究の限界として挙げている。

(医学ライター 吉尾 幸恵)