職場のセクハラは自殺行動と強く関連/BMJ

提供元:ケアネット

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公開日:2020/09/25

 

 職場におけるセクシュアルハラスメントは自殺行動と関連するとの仮説を裏付ける結果が、スウェーデン・ストックホルム大学のLinda L. Magnusson Hanson氏らによる、同国の生産年齢労働者8万5,000例規模の前向きコホート研究により示された。両者の関連性は指摘されてはいたが、これまで大規模な住民ベースのコホート研究は行われていなかったという。著者は、「本結果は、職場環境を考慮した自殺防止策が有用である可能性を示唆するものである。さらなる調査を行い、因果関係、職場におけるセクハラのリスク因子、および業務に関連するセクハラと自殺行動の関連を明らかにする必要がある」と述べている。BMJ誌2020年9月2日号掲載の報告。

平均追跡期間13年、生産年齢の有給労働者男女8万5,205例のデータを分析

 職場におけるセクハラへの曝露と自殺および自殺企図との関係についての解析は、1995~2013年に、業務に関連するセクハラ曝露などを含む自己申告のアンケートに回答した、さまざまな職業における生産年齢の有給労働者男女8万6,451例を対象に行われた。分析サンプルには、セクハラ、フォローアップ期間、および年齢に関する有効なデータが入手できた8万5,205例を包含した。

 主要アウトカムは、行政の記録で裏付けられた自殺と自殺企図とした(平均追跡期間13年)。

自殺行動はセクハラへの曝露と強く相関

 自殺および自殺企図の各分析対象者のうち、追跡期間中に、自殺で死亡したのは125例(0.1%)、自殺企図は816例(1%)であった(それぞれ1,000人年当たり0.1例と0.8例)。

 全体として、職場におけるセクハラ曝露があった自殺は11/4,095例、非曝露の自殺は114/8万1,110例であり、曝露があった自殺企図は61/4,043例、非曝露の自殺企図は755/8万513例であった。

 一連の社会人口学的特徴で補正後のCox回帰分析の結果、職場のセクハラは、自殺(ハザード比:2.82、95%信頼区間[CI]:1.49~5.34)および自殺企図(1.59、1.21~2.08)の両方の過剰リスクと関連しており、推定リスクは、ベースラインの健康状態および業務の特性で補正後も有意に増大した。また、男性と女性に明らかな差は見つからなかった。

(ケアネット)

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コメンテーター : 折笠 秀樹( おりがさ ひでき ) 氏

統計数理研究所 大学統計教員育成センター 特任教授

滋賀大学 データサイエンス・AIイノベーション研究推進センター 特任教授

J-CLEAR評議員