serelaxin、急性心不全の予後改善せず/NEJM

提供元:ケアネット

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公開日:2019/09/02

 

 急性心不全で入院した患者の治療において、serelaxinの静注はプラセボに比べ、180日時の心血管系の原因による死亡および5日時の心不全の悪化の発生率を改善しないことが、イタリア・ブレシア大学のMarco Metra氏らが行ったRELAX-AHF-2試験で示された。研究の詳細は、NEJM誌2019年8月22日号に掲載された。リラキシンは、妊娠中に観察される心血管や腎臓の機能の変化に寄与するホルモンであり、末端器官では血管拡張、抗線維化、抗炎症作用を示す。serelaxinは、ヒトリラキシン-2の遺伝子組み換え製剤であり、血管拡張作用(うっ血を軽減)と直接的な臓器保護作用の双方により効果を発揮する。先行研究のRELAX-AHF試験では、プラセボに比べ入院中の心不全の悪化の発生率が低く、探索的解析により180日時の心血管死の発生率が低い可能性が示唆されていた。

35ヵ国546施設が参加したプラセボ対照無作為化試験
 本研究は、35ヵ国546施設が参加した多施設共同二重盲検プラセボ対照イベント主導型試験であり、2013年10月2日~2017年2月1日の期間に患者登録が行われた(Novartis Pharmaの助成による)。

 対象は、年齢18歳以上、急性心不全で入院し、呼吸困難、胸部X線上のうっ血、血漿ナトリウム利尿ペプチド濃度の上昇、軽度~中等度の腎機能障害がみられ、収縮期血圧125mmHg以上の患者であった。

 被験者は、受診後16時間以内に、標準治療に加え48時間serelaxin静注(30μg/kg体重/日)を施行する群またはプラセボ群に無作為に割り付けられた。

 主要エンドポイントは、180日時の心血管系の原因による死亡と、5日時の心不全の悪化とした。

収縮期血圧は3日間、有意に低下
 6,545例がintention-to-treat解析の対象となった。serelaxin群に3,274例(平均年齢73.1±11.2歳、男性60.4%)、プラセボ群には3,271例(72.8±11.2歳、59.0%)が割り付けられた。平均追跡期間は、serelaxin群が167.6±38.2日、プラセボ群は166.5±40.0日だった。

 平均収縮期血圧は、投与から30分後にはserelaxin群がプラセボ群に比べ有意に低下し、この差は72時間後まで持続した。

 180日の時点で、心血管系の原因による死亡は、serelaxin群が3,274例中285例(8.7%)、プラセボ群は3,271例中290例(8.9%)で発現し、両群間に差は認めなかった(ハザード比[HR]:0.98、95%信頼区間[CI]:0.83~1.15、p=0.77)。

 5日の時点での心不全の悪化は、serelaxin群が227例(6.9%)、プラセボ群は252例(7.7%)にみられ、両群間に差はなかった(HR:0.89、95%CI:0.75~1.07、p=0.19)。

 また、180日時の全死因死亡の発生率(serelaxin群11.2%、プラセボ群11.9%、HR:0.94、0.81~1.08)、180日時の心血管系の原因による死亡と心不全または腎不全による再入院の複合の発生率(24.3%、24.9%、0.97、0.88~1.07)、および初回入院期間(中央値:6.8日、6.9日、平均群間差:-0.183、95%CI:-0.645~0.280)についても、両群間に有意差は認めなかった。

 投与から5日以内に1つ以上の有害事象を発現した患者の割合は、serelaxin群が53.1%、プラセボ群は52.1%であった。有害事象はそれぞれ55.3%および54.5%で、重篤な有害事象は12.6%および13.1%で認められた。低カリウム血症(8.1%、7.5%)と心不全(5.9%、6.6%)の頻度が高く、筋攣縮(2.5%、1.5%、p=0.006)には有意差がみられた。

 著者は「180日時の心血管系の原因による死亡に関して、先行のRELAX-AHF試験で観察された有益性は再現されなかったが、RELAX-AHF試験の結果は偶然によるものであったと考えられる」としている。

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(医学ライター 菅野 守)

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コメンテーター : 絹川 弘一郎( きぬがわ こういちろう ) 氏

富山大学大学院医学薬学研究部内科学第二(第二内科) 教授

J-CLEAR推薦コメンテーター