認知症高齢者は、抗精神病薬の副作用に対しとくに脆弱である。非定型抗精神病薬ブレクスピプラゾールは、アルツハイマー病に伴うアジテーションに対する治療薬として、多くの国で承認されている。米国・Otsuka Pharmaceutical Development & CommercializationのAlpesh Shah氏らは、認知症患者に対するブレクスピプラゾールの安全性と忍容性を評価するため、3つのランダム化試験と1つの継続試験の統合解析を行った。CNS Drugs誌オンライン版2025年7月19日号の報告。
アルツハイマー病に伴うアジテーションを有する認知症患者を対象とした、3つの12週間ランダム化二重盲検プラセボ対照第III相試験と、1つの12週間実薬継続第III相試験のデータを統合した。安全性アウトカムには、治療関連有害事象(TEAE)、体重変化、自殺念慮、錐体外路症状、認知機能障害を含めた。検討対象となったデータセットは2つ。1つは、ブレクスピプラゾール0.5〜3mg/日とプラセボを投与した3つのランダム化試験のデータを統合した12週間のデータセット。もう1つは、ブレクスピプラゾール2〜3mg/日の親ランダム化試験と継続試験のデータを統合した24週間のデータセット。
主な結果は以下のとおり。
・12週間で1件以上のTEAEが報告された患者は、ブレクスピプラゾール群で655例中335例(51.1%)、プラセボ群で388例中178例(45.9%)であり、投与を中止した患者は、それぞれ41例(6.3%)、13例(3.4%)であった。
・発現率が5%以上の唯一のTEAEは頭痛であった(ブレクスピプラゾール群:50例[7.6%]、プラセボ群:36例[9.3%])。
・脳血管性TEAE(ブレクスピプラゾール群:0.5%、プラセボ群:0.3%)、心血管性TEAE(ブレクスピプラゾール群:3.7%、プラセボ群:2.3%)、錐体外路症状関連TEAE(ブレクスピプラゾール群:5.3%、プラセボ群:3.1%)、および傾眠/鎮静関連TEAE(ブレクスピプラゾール群:3.7%、プラセボ群:1.8%)の発現率は、両群間でおおむね同程度であった。
・死亡例は、ブレクスピプラゾール群で6例(0.9%)、プラセボ群で1例(0.3%)であり、死亡原因はブレクスピプラゾールとは関連がないと考えられ、アルツハイマー病で予想されるものとおおむね一致していた。
・24週間で1件以上のTEAEが報告された患者は、ブレクスピプラゾール群で226例中110例(48.7%)であり、そのうち19例(8.4%)は投与を中止した。
・頭痛は、発現率が5%以上の唯一のTEAEであった(18例[8.0%])。
・継続試験中の死亡例はみられなかった。
・12週間および24週間にわたる体重、自殺傾向、錐体外路症状の平均変化は、最小限であり、認知機能の悪化は認められなかった。
著者らは「ブレクスピプラゾールまたはプラセボを投与された1,000例を超える対照患者の統合データを考慮すると、アルツハイマー病に伴うアジテーションを有する認知症患者において、ブレクスピプラゾールは24週間までおおむね忍容性が高いと考えられる」と結論付けている。
(鷹野 敦夫)