透析中の運動療法が血液透析誘発性心筋スタニングを軽減することが報告されているが、日常診療での実施には設備やスタッフ配置など多くの課題がある。今回、透析前の運動療法でも透析中の運動療法と同等の心保護効果があることが、フランス・Avignon UniversityのMatthieu Josse氏らによって明らかになった。Clinical Journal of the American Society of Nephrology誌オンライン版2025年8月12日号掲載の報告。
本研究は非盲検ランダム化クロスオーバー試験として実施され、末期腎不全患者25例を対象に、(1)運動療法を伴わない標準的な血液透析を実施(標準透析)、(2)血液透析中に運動療法を実施(透析中運動)、(3)運動療法を終えてから血液透析を実施(透析前運動)の3種類の介入をランダムな順序でそれぞれ実施した。2次元心エコー検査と全血粘度の測定は、透析開始直前と透析中負荷ピーク時に実施した。心血管血行動態は30分ごとにモニタリングした。
主な結果は以下のとおり。
・左室局所壁運動異常は、標準透析と比較して、透析中運動および透析前運動で有意に減少した。
-透析中運動:1.60セグメント減少(95%信頼区間[CI]:0.09~3.10、p=0.04)
-透析前運動:1.72セグメント減少(95%CI:0.21~3.22、p=0.02)
・心筋スタニング抑制効果は、透析中運動と透析前運動で差はなかった(p=0.86)。
・血行動態は、運動期間を除けば透析中運動と標準透析で類似しており、透析前運動と標準透析では完全に同様であった
・透析中運動では全血粘度低下が抑制され、高せん断速度での全血粘度変化と左室局所壁運動異常の減少に有意な関連が認められた(p=0.006およびp=0.04)。
・透析前運動では、左室局所壁運動異常の改善と血行動態変化との有意な関連は認められなかった(p>0.42)。
これらの結果より、研究グループは「血液透析前の運動療法は、透析中の運動療法と同等の心保護効果をもたらした。この効果は、血行動態の変化によるものではなく、運動そのものに由来する可能性が高い」とまとめた。
(ケアネット 森)