夜間・24時間血圧が、死亡リスク上昇と関連/JAMA

提供元:ケアネット

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公開日:2019/08/21

 

 夜間および24時間血圧の上昇は、死亡や心血管アウトカムのリスク上昇と関連し、他の診察室ベースの血圧や自由行動下血圧で補正しても、このリスクの上昇は維持されることが、ベルギー・ルーヴェン・カトリック大学のWen-Yi Yang氏らの検討で明らかとなった。研究の詳細は、JAMA誌2019年8月6日号に掲載された。血圧は、全死亡および心血管特異的な致死性・非致死性のアウトカムの既知のリスク因子とされる。一方、血圧インデックス(測定法、測定時間)がこれらのアウトカムと強い関連を有するかは不明だという。

IDACOのデータを用いた縦断的コホート研究
 研究グループは、血圧インデックスと、死亡および複合心血管イベントの関連を評価する目的で、縦断的な住民ベースのコホート研究を行った。

 解析には、International Database on Ambulatory Blood Pressure in Relation to Cardiovascular Outcome(IDACO)に登録されたデータを用いた。対象は、1988年5月~2010年5月の期間に開始され、2006年8月~2016年10月の期間に最終フォローアップが行われた欧州、日本を含むアジア、南米の研究に参加した成人1万1,135例であった。

 看護師/医師が測定した血圧、自動診察室血圧の評価を行い、24時間血圧、昼間(欧州と南米は午前10時~午後8時、アジアは午前8時~午後6時)または夜間(欧州と南米は午前0時~午前6時、アジアは午後10時~午前4時)の血圧、およびdipping比(夜間血圧を昼間血圧で除した値)について検討した。

 主要アウトカムは、血圧の20/10mmHg上昇ごとの死亡または心血管イベントのリスクとし、多変量で補正したハザード比(HR)を算出した。心血管イベントは、心血管死、非致死的な冠動脈イベント、心不全、脳卒中の複合とした。曲線下面積(AUC)の変化により、モデル性能の改善を評価した。

心血管リスク推定の至適な測定値の可能性
 1万1,135例の年齢中央値は54.7歳(IQR:41.6~67.3)、女性が49.3%であった。アジア人が1,887例(17.0%)含まれた。追跡期間中央値13.8年の時点で、2,836例(18.5/1,000人年)が死亡し、2,049例(13.4/1,000人年)が心血管イベントを発症した。

 全死亡および心血管イベントは、すべての測定法および測定時間において単回測定の収縮期血圧と有意な関連を示した(いずれもp<0.001)。たとえば、夜間収縮期血圧に関しては、全死亡のHRは1.23(95%信頼区間[CI]:1.17~1.28)、心血管イベントのHRは1.36(1.30~1.43)であり、24時間収縮期血圧ではそれぞれ1.22(1.16~1.28)、1.45(1.37~1.54)であった。また、自動診察室血圧の収縮期血圧では、全死亡のHRは1.08(1.04~1.12)、心血管イベントのHRは1.19(1.14~1.24)だった。

 夜間収縮期血圧および24時間収縮期血圧と主要アウトカムの関連は、他のすべての収縮期血圧インデックスで補正しても、有意な差が維持されていた(HRの範囲:1.17[95%CI:1.10~1.25]~1.87[1.62~2.16])。

 単回収縮期血圧インデックスを含む基本モデルは、死亡のAUCが0.83、心血管アウトカムのAUCは0.84を達成した。他の血圧インデックスを含む基本モデルに、24時間または夜間収縮期血圧を加えると、全死亡のAUCの改善が0.0013から0.0027に、複合心血管アウトカムのAUCの改善は0.0031から0.0075に増加した。一方、24時間または夜間収縮期血圧を含むモデルに、すべての収縮期血圧インデックスを加えても、モデル性能は改善されなかった。

 これらの知見は、拡張期血圧に関しても、一致して認められた。

 著者は、「24時間および夜間血圧は、他の血圧インデックスと比較して、モデル性能の改善度は統計学的に小さいものの、心血管リスクの推定において至適な測定値と見なしうると考えられる」としている。

(医学ライター 菅野 守)

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コメンテーター : 石川 讓治( いしかわ じょうじ ) 氏

東京都健康長寿医療センター 循環器内科 部長

J-CLEAR推薦コメンテーター